東京の崩れる日


データ

原案は深田太郎。
脚本は石堂淑朗。
監督は岡村精。

ストーリー

ある夜、ビルを見回る警備員。
最近、高層ビルがボロボロになって崩落する事故が多発していた。
壁から不審な音を聞く警備員たち。
原因がわからず、翌日報告することにして引き上げる警備員たち。
しかし翌日、ビルがいきなり崩れだす。
報告を受けたZATの隊員たちは、自分たちの仕事ではないと乗り気でない。
しかし荒垣は隊員たちに調査に行くよう命じた。
現場では建築士の平田がビルのオーナーに設計ミスを責められていた。
コンクリートがスカスカになっていることから、手抜き工事ではないかと光太郎。
そこへ平田の息子トシオが現れる。
「お父さんはミスをするような人ではない」とトシオ。
夜のニュースで平田が設計ミスを責められてノイローゼになっていると聞いた健一は、その息子のトシオと一緒に現場のビルに調査に行く。
そこで巨大なアリを発見する2人。
アリの仕業と考えた2人はアリを捕まえて家に帰る。
健一は捕まえたアリを瓶に閉じ込めた。
しかしアリは健一が寝てる間にガラスを炎で溶かして瓶から脱出する。
翌日2人は、溶かされた瓶を持って近くのビルにアリを探しに行く。
新築のビルの壁から怪しい音を聞いた2人は中の人たちに避難するように言う。
しかし取り合ってもらえない2人はZATに連絡。
現場に急行した東と上野はすぐに調査。
ビルの中から大量の生物反応を検知した2人は、急いでビルの中にいる人たちを避難させる。
その直後、ビルの屋上から黒い大量のアリが噴き出した。
崩れだすビル。
ZATはコンドルを出動させ、ビルの上から殺虫剤を撒く。
一方東と北島はビルの中へ入り、中からアリを処分しようとする。
壁の中に大量のアリを見つけた東は、アリに向かって火炎を放射。
さらに殺虫ガスを噴射する。
しかしアリには火炎も殺虫剤も効かなかった。
ホエールに戻って蟻酸を分析するZAT。
すると蟻酸から多量のPG500が抽出された。
PG500は新建材の火災から発生するガスで、これが原因でアリの体質が変化したことがわかる。
ZATは蟻酸でアリを誘き出し、高圧電流で焼却する作戦を立てる。
上手くアリを誘き出したZAT。
しかし焼却しようと火炎放射したところ、アリたちは合体して1匹の怪獣に変化してしまった。
蟻酸を浴び墜落するホエール。
コンドルもアリンドウの吐く炎で墜落する。
アリンドウは強力な蟻酸を吐き出しビルを腐食させる。
さらに炎を吐くアリンドウ。
光太郎はアリンドウの触覚に飛び移り攻撃。
しかしビルに飛び移るのに失敗し、さらにアリンドウの攻撃でビルから転落してしまう。
タロウに変身する光太郎。
タロウはストリウム光線を浴びせるが、アリンドウには通用しない。
アリンドウの火炎放射に苦戦するタロウ。
水を浴びせて敵の動きを止めるタロウ。
最後は自らの体から炎を出し、アリンドウに浴びせて破壊した。
行方不明になる光太郎。
そこへ駆けつけるさおり。
すると光太郎が戻ってきた。
光太郎の無事を喜ぶさおりたち。
荒垣たちと合流した光太郎は、お互いの無事を喜び合った。

解説(建前)

アリンドウは何者か。
火炎放射で合体する性質から普通の蟻とは考えにくい。
やはりノコギリンのような宇宙昆虫と考えるのが素直であろう。
おそらく隕石のようなものに乗ってやってきたのではないか。
他の地域での発見例がないことからも、東京近辺に落下した隕石から出てきたものと思われる。
その後、コンクリートを食べることにより、大量に繁殖したのであろう。
合体に関しては、元々そういう能力が備わっていた、若しくはアリンドウの姿が成虫の姿と考えることも可能であろう。

感想(本音)

ZATが怪獣を作ってしまうお馴染のフォーマット。
このフォーマットは帰ってきたウルトラマンにおいて上原氏が採用したものであるが、防衛隊の奮闘とウルトラマンの活躍を同時に描くことが出来るというメリットがある。
反面、結局防衛隊の不甲斐なさばかりが目立ち、防衛隊不要論にも繋がりかねないというデメリットもある。
話の作りやすさから多用される傾向にあるが、大人の視点からはやはり問題を感じざるをえない。
もう少し上手く敵をパワーアップできないものか。
今では採用しづらいフォーマットであることは間違いないであろう。

ビルの崩落が手抜き工事ではないかと責められるシーン。
同じような事件が多発してるというのに少し無理がある。
子役を絡めるためであろうが、展開としては不自然であった。
子どもが簡単に発見できるアリを誰も発見していないというのも不自然であるし、この辺りは子役中心の作劇に伴う弊害であろう。
ただそれがタロウの設定である以上、ZATが地道に調査してアリを駆除するという展開に出来ないのは仕方あるまい。

今回さおりさんは最後だけの登場。
少々無理やり感があったが、これも設定である以上仕方あるまい。
主人公の家族設定は出番を作るのが本当に難しい。
最近のウルトラでレギュラー家族が登場しない一因でもあろう。
一方健一君は大活躍。
ジレンマの時のようにまた危険な目に遭うが、これも設定なのでスルーしよう。
バサラの回など、今後もバンバン危険に巻き込まれてくれる。

今回の監督は独特の演出が光る岡村精氏。
相変わらず手持ちカメラを使ったアップ撮影を多用。
手ブレの激しい映像は、ドキュメンタリー感を出すのに効果的だった。
ただし、あまり手ブレが大きいと見ていて疲れる場合もある。
またラストの強引な盛り上げも前話と共通する特徴。
正直見ていて古さを感じたが、この辺りはまだタロウの作風を掴めてないためであろうか。

今回もZATは色々な作戦を立て、蟻酸を分析してそれを作戦に生かすなどなかなか科学的である。
最終的に怪獣を巨大化させてしまうが、普通に考えれば火炎放射で怪獣が巨大化するなんて予想できるわけもなく、ZATを責めるのは酷であろう。
これがウルトラマンならイデ隊員の活躍がしっかり描かれるのであろうが、これもタロウの設定なので仕方あるまい。
ただ印象としてZATが不甲斐なく見えるのは避けられない。
話の展開のためであろうが、防衛隊のこのような扱いの悪さは2期の特徴の一つである。

今回も光太郎はかなり無茶な戦い。
落下しながらの変身は、ウルトラマン第2話「侵略者を撃て」を髣髴させた。
変身後いきなりストリウム光線を撃って破られるのもお約束。
必殺技をすぐに出した場合はその必殺技はすぐに破られるの法則通りであった。
しかし最後の技は何だったのであろうか。
タロウの技の多彩さはビジュアル的にはなかなか楽しい。

本話の脚本は石堂淑朗氏。
原案を基に書いているためか、石堂色は薄くなっている。
そのため突っ込みどころはそれほど多くないだろう。
一方、ドラマ部分については本話はあまり練れてない。
題材が題材だけに膨らませ難かったのであろうか。
結局父と子の物語も前振りだけで終わってしまった。

結果ストーリーは比較的淡々と進む。
ただこのような怪獣中心の話は原点回帰として評価できるであろう。
アリンドウとZAT及びタロウとの戦いはしっかり描けていた。
また石堂氏の特色である人間の嫌らしさもビルのオーナーなどでしっかり盛り込まれている。
ウルトラの基本は踏みつつ、タロウらしさも出す。
派手さはないものの、手堅く作られたエピソードといえるであろう。

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