人喰い沼の人魂


データ

脚本は田口成光。
監督は岡村精。

ストーリー

ある夜、次郎はおねしょをしたことで父親に家を追い出されてしまう。
次郎は母親をなくしてから父の手一つで育てられていた。
次の日が父親の42歳の誕生日だったことから、次郎は沼に出て父の好きな花を摘みに行く。
すると沼から怪しい人魂が。
次郎は通行人が人魂に呑み込まれるのを目撃する。
その頃付近をパトロールしていた東もその人魂を目撃。
翌日ZATでそのことを報告した東は隊員たちに馬鹿にされる。
そこへ次郎からZATに人魂を見たと電話が入る。
次郎に子ども電話相談室へ電話をするように言う南原。
そこへ隊長が来て、宇宙ステーションV9に異動になった西田に代わって入隊した上野を紹介する。
子ども電話相談に電話した次郎は、そういうことは警察に言うようにとアドバイスを受ける。
その夜次郎は警官に相談し、次郎の父と警官は2人で沼にパトロールに出た。
3人が沼の前で見張っていると、そこに近所の住人の熊谷が通りかかった。
すると沼から怪獣が出現。
熊谷は怪獣に呑み込まれ、次郎の父もカプセルに捕えられ怪獣に呑み込まれてしまう。
翌日連絡を受けたZATは沼を捜索する。
次郎はZATの隊員に対して、電話しても取り合ってもらえなかったと責め立てる。
「皆弱虫だから逃げてしまったんだ」と次郎。
すると沼に釣り糸を垂らしていた北島が、次郎の父の長靴を釣りあげた。
次々と村人の遺留品を釣り上げる北島。
荒垣は沼の底を調べるためペルミダー2号を出動させる。
ペルミダーに乗り込むことを志願した東は北島とともに地下へと潜る。
沼の真下に辿りついた2人は、沼の底が怪獣の巣になっているのを発見。
ロケット弾で攻撃するペルミダー。
しかし怪獣は暴れだし、口から炎を吐き出しペルミダーに襲い掛かる。
体当たりを仕掛けて怪獣を地上に追い出そうとする2人。
体当たりを受けた怪獣は地上へと逃げ出したが、ペルミダーも怪獣に突き刺さってしまった。
ペルミダーが突き刺さっていることから攻撃できないZAT。
2人はドリルを逆回転させ何とか怪獣から離れる。
すると東は怪獣に竹槍を持って向かう次郎の姿を目撃する。
次郎は父の仇を自分で討とうとしていた。
ピンチに陥る次郎。
そこへ森山のホエールが空から攻撃。
その隙に東は次郎を助け出し、次郎に父親が生きていることを告げた。
次郎に父親を助けると約束する東。
次郎は約束に従い警官の下へ避難する。
怪獣に単身挑みかかる東。
しかし東は怪獣のカプセルに捕まってしまった。
腕のバッジが輝いてタロウに変身する東。
トンダイルは口から火薬弾を吐き出すが、森山のホエールに全て撃ち落されてしまった。
最後はストリウム光線でトンダイルを大破させるタロウ。
「俺の父ちゃんは帰ってこなかった」と次郎。
しかしタロウは地下のカプセルを沼面に浮かび上がらせ、カプセルに捕まっている人たちを解放した。
父と抱擁する次郎。
次郎は42歳の誕生日の祝いを述べるが、まだ41歳だと父に叱られる。
楽しそうに戯れる親子の姿を見守る隊員たち。
基地に帰った森山は隊長に操縦の腕を誉められる。

解説(建前)

トンダイルは何者か。
急にあの沼に棲み付いたとは考えにくいので、やはりかなり昔から沼に棲んでいたのであろう。
ただそれまであまり目撃されてなかったことから、暫く冬眠してたものと思われる。
おそらく何十年かに一度だけ現れて食料を集めるのではないか。
今まで発見されなかったのは、かつては神隠しということで処理されていたからであろう。
またカプセルが沢山あったが、全てのカプセルに人が入っていたわけではなく、他の食料や空のカプセルもあったのではないかと思われる。

感想(本音)

タイトルからもわかるように、妖怪譚風の話。
テーマも父と子に合わされており、今見るとやや教育ドラマっぽい。
演出も古臭いし、やや時代を感じさせる話だ。
見る人を選ぶ作品といえるであろう。
ただストーリーは極めて堅実。
ペルミダー2号での出動もあり、トンダイルとの戦いはなかなか楽しい。
あまり難しいことを考えることなく、気楽に楽しむタイプの作品だろう。
重いだけがウルトラではない。

話の出だしからいきなり古い集落の民家が。
2期ウルトラにはこういう昔の日本を感じさせる風景がよく登場する。
こういうのは好き嫌いもあろうが、やはりリアルタイムで生きていた者にとっては懐かしい風景である。
今となっては逆に貴重でさえあるだろう。
しかしこんな夜中に外へ追い出す父親は結構鬼。
それまでに行方不明者は出ていたはずなのに。
この辺りの曖昧さは本話の弱点か。

今回は宇宙ステーションに異動になった西田に代わって上野が初登場する。
この交代は急遽決まったようで、西田は何の前触れもなくいなくなってしまった。
個人的にも西田はいつの間にかいなくなっていた印象がある。
とは言え、まるっきり忘れていたわけでもないので、出演期間中はそれなりに印象に残る活躍をしていたともいえるであろう。
一方上野は、西田に勝るとも劣らないイケメン。
ちょっとジャニーズ風のルックスもあり、今ならライダーや戦隊の主演が回ってきそうである。

人魂の実験といってさおりを驚かす光太郎。
あまり必然性は感じられないシーンなので、無理やり白鳥家を絡めたのであろう。
坂田家もそうだったが、こういう設定は時にはマイナスになることもある。
脚本家もかなり苦労したのではなかろうか。
この辺り、最近のウルトラに家族がいない一因であろう。
しかしチューリップとコスモスを間違える光太郎って…。

警官役はウルトラでお馴染の大泉滉氏。
こういうとぼけた役はよく似合う。
特に警官役ははまり役であろう。
次郎役の子役も演技はもう一つながら、父を思う息子をよく演じていたと思う。
子役がメインになるのは賛否両論あるだろうが、この頃の特徴であろう。

今回はペルミダー2号が初登場。
地下での戦いはウルトラマンA第5話を髣髴させるものがあった。
ただエースとは違い、怪獣に突き刺さって地上に出てくるのはやはり作風の違いか。
とは言え、調査中に釣りをするのはさすがに行きすぎだと思う。
長靴を釣り上げる伏線ではあろうが、この辺りは眉をしかめる人もいるであろう。
今回注目は、森山隊員の初出動。
ホエールの見事な操縦振りや、トンダイルの吐く火炎玉を尽く撃ち落とす腕前といい、他の隊員も真っ青な実力である。
通信メインの隊員とはとても思えない。

今回の監督はタロウ初登板の岡村精氏。
エースでも見られた顔のアップを多用する演出が特徴的だった。
また手持ちカメラを使った撮影が多いのも特徴。
顔のアップが多いので、演じる役者さんも大変だと思う。
気になったのはラストシーン。
ZAT基地に帰ってきてからのシーンは何処となく無理やり繋げた感があった。
素直に次郎と父親で締めれば良かったと思うが、最後基地のシーンを入れる決まりでもあったのであろうか。
まだタロウの作風を掴みきれてないのかもしれない。

今回の脚本はメインライターの田口氏。
ただ話の内容はプロデューサーの熊谷氏の影響が大きいだろう。
タロウ初期の怪獣の特徴として挙げられるのは、現実の生物が巨大化したものが多いということ。
エースでもそういう傾向はあったが、エースの超獣が生物兵器的だったのに対して、タロウはなんとも妖怪的なのが特徴だ。
こういう傾向は、子どもが元来お化けや妖怪が好きだということに上手く合致する。
ドラマ的な深みは今ひとつの本話ではあるが、怪獣のキャラやZATの戦いぶりは子どもの歓心を得るには十分であろう。
私も最初はどうかと思ったが、意外と普通に見られるエピソードに仕上がっていると思う。

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