湖のひみつ


データ

脚本は金城哲夫
監督は野長瀬三摩地

ストーリー

パトロールから帰還したダンとフルハシ。
木曽谷付近に巨大な物体が落下したとの子供の通報のため、2人はすぐに調査に出かけるよう隊長から指示を受ける。
ホーク3号で出発する2人。
現場付近の湖に到着した2人は釣り人に木曽谷への道を尋ねる。
ここ暫く誰も入ってないところだと釣り人。
すると釣り人の竿に反応があり、浮が沈んだ。
リールを巻く釣り人。
しかしそこへ謎の少女が泳いできて、針を外してそのまま泳ぎ去った。
「危ないところだったわ。あなたにはまだ大事な役目があるのよ。さあ早くお逃げ。注意しなきゃだめよ」。
そう言うと助け出した魚のような生物を放流する少女。
少女を追ってきたダンたち3人。
しかし寸でのところで逃げられる。
「この近くの娘ですか?」とフルハシ。
「さあ、見かけないねえ」と釣り人。
目的地の木曽谷へ向かう2人。
険しい森を抜けると、川の側に大きな円盤が着陸していた。
武器の点検をする2人。
円盤の外装が焦げていたことから、円盤が大気圏を突入してきたと推測するフルハシ。
2人は円盤の中に入る。
操縦室のような部屋へ入る2人。
すると怪しい人影が。
機械の隙間に逃げ込んだ人影の主に銃を突きつける2人。
するとそこから現れたのは先ほどの少女だった。
不敵に笑う少女。
「さっきの方たちなのね。びっくりしたわ」と少女。
「びっくりしたのはこっちだよ。どうしてこんなところに」とフルハシ。
「ここまで追ってこないと思ったからよ」と少女。
「なぜあんなことしたんだい」とフルハシ。
「人間に食べられるなんて魚がかわいそうだわ」と少女。
「待てよ。女の子の脚であの険しい山道をどうして我々より先に来ることができたんだろう。それに呼吸一つ乱れてない。靴も綺麗だ」内心訝しがるダン。
「変だ」。
思わずつぶやくダン。
「ここにいては危ないよ。君にはわからんだろうけど、これは宇宙人が乗ってきた宇宙船だよ」とフルハシ。
すると突然室内に煙が充満し、三人は意識を失ってしまった。
かすれる意識の中ウルトラアイが宇宙人らしき者に盗まれるのに気づくダン。
しかし体の自由が利かない。
麻酔から覚めたダンはウルトラアイが盗まれたことを確認。
フルハシを起こして円盤の外へ出るダン。
「敵は僕の正体を知り、秘密のウルトラアイを奪ったに違いない。何者だろう。恐るべき奴だ。なんとしてでも奪い返さねばならん。ウルトラアイは僕の命なんだ」とダン。
少女を連れて基地に戻ったフルハシは隊長にダンが行方不明だと告げる。
もしかして宇宙人にとアマギ。
しかし「そう簡単にやられるような代物ではないよ。モロボシダンは」と隊長。
調査へ向かうよう進言するソガを制止する隊長。
「ダンがあるいは何かを掴んでいるかもしれん。彼に期待しよう」。
その頃ダンは必死に敵を追い求めていた。
一方基地に連れ帰った少女はアンヌの治療を拒否。
苦しそうにしているという。
円盤の前で敵を待ち伏せするダン。
しかし何物も現れない。
アンヌの治療を拒否する少女を説得するフルハシ。
しかし誰にも触られたくないと突っぱねる少女。
説教するフルハシを制止するアンヌ。
「もういいのよ、何もしないわ」とアンヌ。
「わがまま言ってごめんなさいね、アンヌさん。私とっても眠いの」と言って布団を被る少女。
少女はアンヌとフルハシが出ていくとにっこり笑う。
一方、円盤を待ち伏せていたダンはさっきの少女が岩陰にいるのを発見する。
逃げる少女を必死で追うダン。
しかし追いつきそうになったところで少女は消えてしまった。
本部のアンヌに連絡を取るダン。
「ダン。一体どうしたって言うの?本部に連絡もしないで単独行動取ったりして。隊長がぷりぷりよ」。
ダンは例の少女が基地から出ないよう見張りをアンヌに頼む。
「うん。わかったわ」とアンヌ。
一方円盤に戻ったもう一人の少女は湖から怪獣エレキングを出現させた。
湖へ向かったダンはウルトラガンでエレキングを攻撃。
ダンは本部に連絡を取ろうとするも妨害電波のため連絡が取れなかった。
セブンに変身できないダンはカプセル怪獣ミクラスを差し向けた。
格闘するエレキングとミクラス。
目撃者の釣り人から怪獣出現の報が入った警備隊はダンに連絡を取ろうとするが応答がない。
ホークで出動する隊員たち。
その頃医務室で寝たふりをしていた少女はアンヌの隙を見て起き上がり、アンヌに襲い掛かる。
首を絞められ気を失うアンヌ。
一方善戦していたミクラスもエレキングの尻尾から出る電流攻撃にKOされてしまった。
現場の湖に到着した隊員たちはホークでエレキングを攻撃。
応戦するエレキング。
エレキングの光線が命中し不時着するホーク。
その頃基地内では少女が作戦室に忍び込み機器を破壊していた。
さらにホーク2号を乗っ取り脱出する少女。
円盤内に侵入したダンは少女を捕まえ、ウルトラアイを取り戻した。
少女を振りほどいて円盤から出たダン。
ダンはそのままセブンへ変身しエレキングと対決する。
不時着した警備隊員はボートで川を下りながらエレキングを攻撃。
そのときセブンが飛んできた。
エレキングと対決するセブン。
エレキングを投げ飛ばすセブン。
一方ホーク2号で円盤に戻って来た少女は円盤内で気を失ってる少女を抱え起こす。
すると少女2人は瓜二つだった。
「エレキング。ウルトラセブンを倒すのよ。必ず倒すのよ」と少女。
エレキングの尻尾が巻きつき電流攻撃を受けるセブン。
しかしセブンは電流を耐えると尻尾を千切って脱出。
エメリウム光線、アイスラッガーの連続攻撃でエレキングを破壊した。
「エレキングが負けたわ」と少女。
すると倒れていた少女も「早く逃げましょう」という。
離陸する円盤。
「作戦の失敗ね。ウルトラアイを盗み損なうなんて」。
「地球を甘く見すぎてたわね」。
「でも諦めたわけじゃないわ。もっと強い怪物を育てて、今度こそ地球上の人間を皆殺しにするのよ」。
「素敵だわ。そうなったらあの美しい星は私たちのものになるのね」。
「きっと成功するわ。地球人の男性はかわいい子に弱いってことがわかったんだもの」。
2人は少女の姿からピット星人の姿に戻る。
その時円盤内に警報が響いた。
追撃するセブンに光線を浴びせる円盤。
しかしセブンはものともしない。
最期はエメリウム光線で円盤は破壊される。
地上へ戻るセブン。



解説(建前)

ピット星人はなぜモロボシダンがセブンだということを知っていたのか。
これは地球へ来る前から情報屋等を通じてダンがセブンであることを知っていたと解釈するのが素直であろう。
星人は地球侵略にはセブンが最も邪魔な存在であると考えていた。
そのため、ダンを木曽谷までおびき寄せウルトラアイを奪う作戦を立てたのである。
なぜダンがウルトラアイを使って変身するのを知っていたかについては謎も多いが、この後もウルトラアイが盗まれる事例が頻発することから、侵略宇宙人組合では常識となっていたと考えるしかない。
あるいは宇宙人の科学力ではウルトラアイが変身アイテムだと見抜くことは容易いのかもしれないが、いずれにせよセブンについてある程度の情報がないとこのような計画を立てるのは難しいであろう。

ではピット星人はなぜ変身アイテムであるウルトラアイを叩き壊さなかったのか。
壊してしまえばセブンに変身できなくなるのであるから、そちらの方がより確実な作戦と思われる。
これはおそらく単純に壊せなかったと解釈するしかないであろう。
ウルトラアイはレオの中で考察したが、ダンが体内に蓄積したエネルギーをスパークさせるのに必要なアイテム。
ちょっとやそっとでは壊れない強度を有すると思われる。
どこかに捨てても探し出されたら終わりだし、自分が持って逃げ回るのが一番時間が稼げる。
また人間体のダン相手なら普通の宇宙人なら負けないであろうし、作戦としては妥当であろう。
ただ、ピット星人はアンヌを不意打ちで倒すのがやっとの腕力なので、その辺りが誤算であったのは間違いない。

エレキングは何故いきなり巨大化したのか。
エレキングは普段は小型化して湖の中で餌を食べたりエネルギーを貯めているが、ピット星人が円盤から指令を出すと湖に電気が流れそれを吸収して巨大化するのであろう。
いずれにせよ成長したというよりは本来の姿に戻ったと解釈するのが妥当である。
ダンに追跡されたピット星人が消えたのはなぜか。
おそらく事前に隠れ場所を用意していてそこへ入ったらどこかへワープするようになっていたのであろう。
星人の科学力なら不可能ではない。

感想(本音)

突っ込みどころは多いがセブンを代表する傑作エピソードの一つ。
特にエレキングが暴れる後半の特撮の迫力は今見ても感動する。
本話は制作第一話ということもあり、撮影に相当時間を掛けたらしく、ピット星人役の高橋礼子さんのインタビューによると1か月ほど掛かったらしい。
ロケと特撮シーンも違和感なく繋がっており、映画並みのクオリティはさすがである。

本話は何と言ってもピット星人のキャラが印象に残る。
ピット星人を演じたのは当時15歳の高橋礼子という女優さん。
ウルトラセブン研究読本で彼女の初めてのインタビューが読めるが、当時高校生だった彼女はこの撮影で夏休みが丸々潰れたのが原因で女優を辞めてしまったとのこと。
例の「地球人の男性はかわいい子に弱いってことがわかったんだもの」というセリフによく突っ込みが入るが、今見ると子供の頃見た印象よりはかわいいと思う。
なんとなく顔立ちが沖縄系な感じもするがその辺りは不明。
児童劇団出身ということで、かわいくも憎らしい宇宙人役を好演していたと思う。

本話は前述した通り突っ込みどころが多い。
まず解釈に苦労したウルトラアイが盗まれるパターン。
変身アイテムが盗まれるというのはセブンでやたら頻発するが、なぜセブンだけこの展開が多いのだろうか。
もちろんアイテムで変身する場合、アイテムがないという事態は容易に想定できるので不自然ではないが、ただ、敵宇宙人がそれを知っているというのはさすがに違和感を感じる。
ウルトラセブンがウルトラアイで変身するというのは宇宙ではそこまで有名なのだろうか?
しかもウルトラアイを盗むのは基本的に女性に化けた宇宙人ばかり。
この辺りは007的なスパイものの影響もあったのかもしれない。

ピット星人がかわいいか否かは個人の主観に委ねるとして(笑)、実際にダンとフルハシ、特にフルハシは若い女が相手ということで完全に油断していた。
普通に考えたら円盤の中に娘が一人でいる時点で怪しいだろ。
それを疑いもせず本部に連れて帰るとか、ちょっと失態としか。
案の定計器を破壊されてるし。
また、アンヌも娘が怪しいとダンから聞いていたのにあっさり後ろから羽交い絞めにされて気を失う始末。
殺されなかっただけマシだぞ。
ただ、ピット星人は地球人を皆殺しにすると言う割にはアンヌを殺さなかったり、男の隊員も光線を浴びせただけで生死は不明だった。
案外血を見るのは嫌いというか自らの手を汚すのは嫌というタイプだったのかもしれない。

ウルトラアイを盗まれたため別行動を取るダン。
ダンは最初少女を怪しんでいたが、気を失う間際に見た星人の姿に騙されたのであろう。
しかし、円盤を見張っていてフルハシが基地に連れて行ったはずの少女を発見して疑惑が確信に変わった。
そこで漸くアンヌに連絡を取ったのである。
ただ、いくらウルトラアイが盗まれたと言っても隊長に無断で別行動を取るのは組織として問題では?
一方、キリヤマはダンが簡単にやられるような代物ではないとか、何か掴んでるかもしれないとかやたらとダンを信頼している。
もしかしてキリヤマはダンの正体にある程度気づいていたのではないか。
少し前まで風来坊だった人間に対する信頼にしては異常すぎるし。

本話は何と言ってもエレキングの暴れる特撮シーンが素晴らしい。
湖が盛り上がって巨大な姿を現すエレキング。
何とも言えないデザインだが、個人的には無表情な感じがする口の形がお気に入り。
口から出す怪光線もリアルな感じで良い。
また甲高い鳴き声も良かった。
今回は撮影も物凄く凝ってる。
特に上からのアングルはエレキングの巨大感をよく表現していたと思う。
さらにカプセル怪獣ミクラスとの格闘。
今回はダンが変身できないということで、ミクラスの登場に必然性がありよかった。
ミクラスはエレキングを投げ飛ばすなど怪力ぶりを発揮したが、最後は尻尾による電流攻撃でノックダウン。
相変わらず見事なかませ犬役で、最後セブンが同じ構図で電流に耐え尻尾をぶっちぎるシーンをうまく引き立てていた。

エレキングの最期はなかなかグロくて今の基準では無理そう。
見てる方は爽快なのだが。
逃げるピット星人の円盤を容赦なく破壊するセブン。
勝手に地球に来て侵略行為を企てたのだから当然だが、今の日本の防衛体制からは少しやりすぎに見えなくもない。
冷戦下のセブン撮影当時では普通の感覚だったのだろう。
ピット星人の「かわいい娘に弱い」のセリフはその後醜悪な姿に変身するという落ちの前振りなので、そこをことさらに取り上げるのは女優さんにも気の毒。
また同じ顔をした星人ということで高橋さんの出番はかなり多かったが、別に同じ顔にする必要はなかった気が。
ところで星人は誰をモデルにあの顔に変身したのか。
そもそも星人に地球人の美醜の感覚はわからないはずなので、微妙な顔になったのはその辺りにも原因があるかもしれない(失礼)。

その他感想。
子供の通報に律儀に出動する隊員たち。
TACも見習え(笑)。
「しまった。ウルトラアイが盗まれた」と大声で言うダン。
まあ、ドラマなので(笑)。
アンヌ役のひしみさんは本人は女優業があまり好きではなかったと言ってるが、結構演技力あると思う。
特に表情が良い。
個人的にツボだったのはダンから連絡があったときビデオシーバーに映るアンヌ。
何故か髪を整えるアンヌ。
相変わらずビデオシーバーの原理はよくわからない。
そして「隊長がぷりぷりよ」とアンヌ。
どんな受け答えなんだよと(笑)。

本話の脚本はメインライターの金城哲夫。
地球侵略を企てる敵宇宙人が怪獣を連れてくるという展開は、初代ウルトラマン最終回を彷彿とさせる。
基地が破壊されるというのも共通しており、多分に意識したのではないか。
ただ、本話と初代マン最終回の大きな違いは本話がピット星全軍ではなく非常に個人レベルでやってきてる点。
「そうなったらあの美しい星は私たちのものになるのね」というセリフにも見られるように、2人はあたかも美術品や宝石を盗む盗賊のような感覚で侵略を企ててるように見える。
つまり、宇宙人であるという側面よりも悪人という側面の方が強調されているのである。
セブンではこの後もほとんど人間と変わらないような宇宙人が結構出てくる。
もちろん星を挙げて侵略してくる者もいるが、侵略の動機がバラエティに富んでるのもセブンの特徴であろう。
そして一人の宇宙人としてそれに対峙するダン。
ここに後の人間ウルトラの萌芽を見ることができる。
本話はセブンのみならず後のシリーズのフォーマットになったという点、重要なエピソードである。

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