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人間牧場
データ
脚本は山浦弘靖
監督は鈴木俊継
ストーリー
海中から浮上する潜望鏡。
その下の円盤の中からブラコ星人が陸の方の様子を窺っていた。
海辺の別荘の中ではアンヌの友人石山ルリ子の誕生パーティが開かれていた。
ブラコ星人は円盤を岸に寄せ上陸する。
別荘で飼われている犬に吠えられた星人は犬を殺害。
犬の鳴き声が聞こえなくなったことを不審に思い、外の様子を見に行くアンヌとルリ子。
しかしルリ子は星人に攫われてしまった。
浜辺にアンヌがルリ子にプレゼントしたブローチが落ちていた。
拾い上げるアンヌ。
ブーツの中から照明弾を取り出し打ち上げるアンヌ。
すると沖の方に大きな円盤が浮かんでいた。
キリヤマに連絡を取るアンヌ。
警備隊の調べでは星人は犬を叩きつけて殺害するほどの怪力の持ち主で、浜辺の足跡から2メートル程度の大きさとわかる。
ポインターに乗り込み海へ入っていく隊員たち。
ポインターは海の上を浮上し、辺り一帯を捜索するも異常は見つからなかった。
円盤の中では捕らわれたルリ子が怪しい光の照射を受けていた。
一方キリヤマたちは浜辺の足跡が世界中で発見されていることをタケナカから知らされる。
足跡が発見された場所では動物が1頭ずつ盗まれているという。
そこへ浜辺でルリ子が発見されたとの報が入る。
ルリ子は意識不明だが生命に危険はないという。
目を覚ますルリ子。
しかしアンヌが呼びかけても反応がない。
手についている胞子を発見する隊員たち。
基地に戻り胞子を外科手術で取り除くが、ルリ子の染色体は凄い勢いで減っていた。
一方円盤を捜索するホークだが、円盤は見つからない。
メディカルセンターでうなされるルリ子の様子を見たアンヌは、ルリ子の全身が緑色に光っているのを見て驚く。
すると突如何処からかブラコ星人が現れた。
逃げまどうアンヌ。
悲鳴を聞いたダンは駆け付けるが、アンヌは気を失っていた。
星人と格闘するダン。
星人は駆け付けたキリヤマにより射殺される。
しかしアンヌもルリ子同様胞子を植え付けられ、緑色に発光していた。
奇病の原因を探るため、ブラコ星人の死体を解剖するキタムラ博士たち医療スタッフ。
解剖の結果、胞子が宇宙人の食料であることがわかる。
また、胞子は女性ホルモンによりよく育つという。
「まさに人間牧場ですね」とダン。
「このままでは地球上の女性全てが人間牧場にされる恐れがありますね」とキリヤマ。
星人は胞子に感染したルリ子を使って、地球上の女性全てを空気感染により胞子に感染させるつもりだった。
2人を隔離するキリヤマたち。
2人を助ける方法を博士に尋ねるダン。
「地球上では無理です。だが、たった一つ考えられる方法があります」と博士。
「どんな方法ですか」とダン。
「いや、やっぱり不可能だ」と博士。
なおも食い下がるダン。
博士は放射線アルファ73なら助けられる可能性があるという。
しかし放射線アルファ73は土星の鉱石にしか含まれていないという。
ホーク2号で土星へ向かうというダン。
しかし患者の命はあと15時間程度しかもたないので、間に合わないと博士。
絶望するダンとキリヤマ。
その頃ホーク1号は星人の円盤群と遭遇していた。
円盤と交戦するホーク。
連絡を受けたキリヤマはダンにホーク3号で出撃するよう命令する。
円盤群に特攻するダン。
攻撃を受け墜落するホーク3号。
ダンはセブンに変身し脱出。
しかしセブンはブラコ星人の電磁網に絡められピンチに陥る。
基地のキリヤマに報告するフルハシ。
「ウルトラセブンは土星へ行こうとしている。アンヌ隊員やルリ子さんの奇病を治すためだ。直ちに援護しろ」とキリヤマ。
フルハシたちの援護で脱出するセブン。
セブンはそのまま土星へ向かう。
一方円盤群はホーク1号の活躍で全滅した。
セブンが土星から持ち帰った鉱石を使い、放射線を2人に当てる博士たち。
生き返る2人。
そこへアマギとソガも戻ってきた。
「ダンはどうした?」とキリヤマ。
「どうしても見つかりません」とアマギ。
「あいつ、無理に突っ込むから」とソガ。
「なあに、ダンのことさ。きっとどこかで生きているさ」とキリヤマ。
その頃ダンは基地のガラスボードに向かって土星の絵を描いていた。
筆を咥えるダン。
解説(建前)
ブラコ星人はどうやって基地に潜入したのか?
まず基地の場所がなぜわかったかであるが、これは恐らくルリ子に発信機でもつけていたのであろう。
ではどうやって基地のセキュリティを突破したかであるが、これはブラコ星人の科学力と言うしかない。
ブラコ星人はその存在を知られることなく世界中の動物を集めていた。
足跡以外の痕跡が残っていなかったことから考えても、ブラコ星人は自らの姿を透明化若しくは保護色で見えなくすることができるものと考えられる。
当然赤外線等のセキュリティも突破できるのであろう。
では、なぜ突如アンヌの前に姿を現したのか?
普通に考えれば透明若しくは保護色のまま行動した方が有利である。
これは単に装置のエネルギーが切れたか、実力を行使するには装置のスイッチを切る必要があったか、いずれかであろう。
では、なぜ基地に潜入したか?
これはやはり自分たちの目的を知られないようにルリ子を奪還するか、殺害するためだったのであろう。
星人たちにとってルリ子が警備隊に救助されたのは誤算だった。
このまま調べられると自分たちの目的が知られてしまう。
さすがにブラコ星人の科学力でもルリ子を連れて基地から脱出するのは難しいと思われるので、やはりルリ子を殺して証拠隠滅を図るつもりだった可能性が高い。
なぜ星人の円盤群は警備隊に対して攻撃を仕掛けたのか。
それまで隠密行動を取っていたのに、いきなり総攻撃に出るのは不自然である。
これはやはり自分たちの計画が警備隊に知られたと察知したからであろう。
ルリ子殺害のために警備隊に侵入した部下が戻ってこなかった時点で、星人たちは計画がばれたと考えた。
作戦に失敗した時点で警備隊との交戦は決まっていたのであろう。
そして星人たちは警備隊を舐めていた。
簡単に基地に侵入できるくらいだから、大した科学力はないと思っていたのであろう。
ただ、警備隊は攻撃力に関しては宇宙でも有数である。
ペガッサ船団を破壊したり、キングジョーを破壊したり、後にはギエロン星も破壊している。
しかも警備隊の隊員たちは技術的にもレベルが高い。
ザンパ星人を滅ぼしたキリヤマやクラタほどではないにしても、少々の円盤群などはものともしない。
円盤群で警備隊に挑んだブラコ星人が返り討ちに合うのは必然であった。
感想(本音)
子供の頃見た記憶がほとんどない話。
改めて見て、それも納得。
ストーリーがわかりにくくて画面も暗い。
これでは子供受けは難しいであろう。
かと言って、大人にも受けてないのか、この話を称賛する人は見たことがない。
そういう意味ではちょっと中途半端な作品と言えるであろう。
私の評価もあまり高くはない。
ただ、つまらないかと言えば、案外そうでもない。
宇宙人が人間を食料にするために胞子を植え付けるというのは、短編SFとしてキャッチーなプロット。
演出もホラー風味で映像的にも楽しめる。
最後も敵を倒したら自動的に命が助かるパターンではなく、今でいう放射線治療という、なかなか科学的な方法。
しかもその放射線は土星に行かないと得られないという絶望と、それを可能にするセブンの使い方も秀逸だ。
それではなぜこの話はあまり評価されないのか。
それはやはりセブンがなぜ土星に行くのかという理由付けが弱いこととダンが正体バレバレに特攻するところだと思う。
子供向けとしては許容範囲だと思うが、やはり大人の鑑賞としては厳しい。
一応脚本ではセブンがいったん基地に戻って放射線アルファ73を入れるカプセルを取りに行くシーンがあるとのことであるが、仮にそのシーンがあったとしてもセブンがそのことを知ってる説明にはならない。
セブンがそれを知っているということはセブンの正体がダンであると考えるしかないのである。
しかもダンはどう考えても助からない状況でシレっと生きて帰ってる。
セブンではこういう展開が多いのでとやかく言うつもりはないが、少なくとも大人向けとしてはお粗末と言わざるを得ないだろう。
かように本話はラストの展開の詰めが甘いため、手放しでは褒めにくい。
それが本話の微妙な立ち位置に繋がってるのだと思われる。
ただ演出はその辺を上手く誤魔化している。
本話はたまには本編も撮ってみたいという特撮班の意向により全編特撮班が撮影している。
そのため本編シーンにも特撮シーンが多いのだが、ラストのダンが土星の絵を描くシーンは特撮を使わず普通に演出していた。
皆がダンを心配している中、キリヤマのセリフがありこのダンのシーンに繋げる演出は面白い。
下手にダンとの再会を描いて不自然さが強調されるよりは、はるかにスマートな終わり方である。
そもそも視聴者はダンが生きてることはわかってるんだから、変に取り繕う方が違和感は大きい。
ダンのお茶目な性格も出ており、全編暗く重い話の中、爽やかなラストにしたのは正解であった。
本話はセブンではお馴染み、アンヌの友人が襲われるパターンの話。
ダンのウルトラアイが盗まれるのと同じくらい定番の展開だ。
初代マンではあまりなかったパターンだが、その辺りは作劇上の都合もあり、とやかく言うのも野暮であろう。
セブンのゲスト女優は総じてレベルが高いのだが、ルリ子を演じた島つかさもなかなかの美人。
ファッションもあまり古さを感じさせないし、今に近いのかも。
個人的にはこの時代の女性はなかなか魅力的(笑)。
しかし別荘で誕生パーティって、おそらくかなりの資産家令嬢?
アンヌとはどういう知り合いなのか、ちょっと気になった。
ブラコ星人の目的は人間の女性を牧場代わりにして食料を育てるというもの。
ブラコ星で食糧危機でも起きたのだろうか?
それにしても、わざわざ他の星に来てまで胞子の宿主を探すというのは割が合わない気がする。
ワイルド星人は直接人間の生命が必要だったので地球まで来たのも理解できるが、食糧なら他に方法はいくらでもあるはず。
若しかするとブラコ星に食糧危機はなく、単に贅沢品を栽培するためだけに地球に来たのかもしれない。
ブラコ星の松茸みたいなものが採れなくなり人工栽培に取り組んだが、どうしても適度な宿主がいない。
そこで生物が豊富な地球に来たのであろう。
食に対する探究心はどこの星でも同じといったところであろうか。
前述したように本話は特撮班が本編まで撮影しているからか、胞子に侵された2人が緑色に発光するシーンなど特殊効果がふんだんに使われていた。
中でもインパクトがあったのは、宙に浮くポインターだろう。
ポインターはバリアを張ったりミサイルを発射したりとやたら高性能だが、今回はとうとう軽く空を飛んでしまった。
正直意味のあるシーンとは思えなかったが、この辺りはスタッフの遊び心なのだろう。
ただ、警備隊には攻撃用ヘリのような乗り物が見当たらないので、ポインターがその代わりなのかもしれない。
いずれにせよ、もの凄いテクノロジーである。
ウルトラセブン全般としてドラマパートは比較的淡々と進んでいく。
結構隊員たちの生命が危機に晒されるが、その割にはあっさりとした展開が多い。
この辺りがセブンのドラマの硬質なイメージに繋がるのであろう。
ただもう少しウェットなドラマが好きな人間からしたら、若干物足りないのも事実。
本話の予定調和が際立つのは、ドラマ的な弱さというのも一因だと思う。
とは言え、そういうセブンの作風だからこそ傑作となった回もある。
そしてウルトラ史上最もドラマチックな最終回。
ちょっと先取りしすぎだが、この手探り感がセブンの魅力でもあるだろう。
本話も成功したとは言い難いがチャレンジングな作品という点評価したい。
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