海底基地を追え


データ

脚本は赤井鬼介
監督は鈴木俊継

ストーリー

夜の海を航海する第三黒潮丸。
甲板に出て夜空を眺める船長と船員。
すると2人の目の前の海がいきなり盛り上がり、戦艦大和らしきものが浮上した。
戦艦の攻撃を受け炎上する黒潮丸。
第三黒潮丸が行方不明との連絡を受けた警備隊は、相次ぐ海難事故について話し合う。
そこへまたSOSが。
SOSのあった南鳥島付近へホーク3号で急行するアマギ。
付近の海域を調査するが、何も見つからなかった。
一方、黒潮丸の船長の遺族に会いに行ったダンとアンヌ。
遺族の話によると、船長が海上の緊急電話で「戦艦大和らしい姿が海上に現れた」と連絡してきたという。
ダンの報告を受け驚くタケナカ参謀。
そこへアマギが戻ってきて、SOS地点には何の痕跡もなかったと報告する。
訝しがるキリヤマ。
キリヤマはタケナカに徹底的に調査するよう進言する。
そこへパリ本部からも連絡が入った。
地中海や大西洋で行方無名の船舶が続出しているが、極東ではどうかという。
アマギとフルハシはハイドランジャーで徳之島へ調査に向かう。
キリヤマの指示で大和沈没地点を調査するフルハシ。
しかし沈没してるはずの大和はそこにはなかった。
その頃アマギは突如発生した泡のようなものに遭遇し、必死で回避。
また奇妙なヒトデ型の円盤を発見したフルハシは円盤を追跡するも逃げられてしまう。
アマギにヒトデ型の円盤に注意するよう連絡するフルハシ。
しかしアマギのハイドランジャーは円盤の出す泡状のものに捕まり、動けなくなってしまう。
キリヤマが必死に連絡を取るも、アマギのハイドランジャー2号と連絡が取れなくなった。
その頃下田に大和らしき戦艦が浮上した。
連絡を受けホーク3号で出撃するダン。
ハイドランジャー2号捜索のため徳之島上空を飛行していたキリヤマにも連絡が入る。
フルハシにアマギの捜索を託して、下田へ向かうキリヤマ。
直後、フルハシの乗るハイドランジャー1号もヒトデ型の円盤に捕まってしまった。
下田では再び浮上した戦艦が陸へ向かって砲撃を繰り返していた。
ホーク3号で空から攻撃するダン。
ポインターで到着したソガとアンヌも応戦。
しかしダンの乗ったホークは戦艦の砲撃を受け、海に墜落してしまう。
そこへキリヤマがホーク1号で下田に飛んできた。
キリヤマは巧みな攻撃で戦艦に大きなダメージを与える。
その頃タケナカの下へパリ本部から連絡が入る。
それによると、戦艦はアイアンロックスといい、海底に沈む戦艦などの鉄くずを集めて作った爆弾ロボットであるという。
欧州各国の基地が狙われ、静止して15分後に爆発することがわかった。
爆発まで13分と迫り、何もできないタケナカとキリヤマ。
隊員たちの行方もわからず、ひたすら待つしかできない。
一方ポインターで現場に待機していたソガから、アイアンロックスが砲撃しながら陸地へ近づいてくる旨報告が入る。
安全な所へ避難するよう指示するキリヤマ。
その頃漸く意識を取り戻したダンはセブンに変身。
アイアンロックスの前に立ちはだかる。
「来たかセブン。君は我々の力を知らなすぎる」。
アイアンロックスの中から何者かの声が聞こえてきた。
「我々は海底に眠るこの豊富な資源、それも地球人が利用していないものをいただくだけだ」。
声の主ミミー星人は、戦艦でセブンを砲撃する。
戦艦から出てきた鎖に手を繋がれてしまうセブン。
もがき苦しむセブン。
その間に刻々とタイムリミットが迫っていた。
空を飛んだセブンは体を回転させ光線を放つ。
さらに手の鎖をほどいてエメリウム光線を発射。
戦艦は大破炎上した。
それを見て逃げ出すミミー星人の円盤。
円盤が飛び立つとハイドランジャーも自由を取り戻し海面に浮上。
空を飛ぶ円盤を砲撃し、見事円盤を爆破した。
朝日の光を受けながら海を眺めるダン。

解説(建前)

なぜミミー星人はアマギ、フルハシを殺さず生け捕りにしたか。
まず考えられるのは、円盤に武器が装備されてなかったという可能性であるが、明らかに地球侵略若しくは攻撃に来ているのに円盤に武器がないとは考えにくい。
また既に海外の警備隊基地を爆弾攻撃してる星人が平和主義という可能性も低いであろう。
やはりこれはいざという時のための人質に二人を捕らえたと考えるのが素直である。

ただ、結局星人は二人を盾にして逃げるどころか二人を解放してしまい、二人の攻撃を受けやられてしまった。
これはどういうことか。
普通に考えるとかなり間抜けであるが、星人はとにかく早く逃げたかったのであろう。
セブンに勝ったつもりがアイアンロックスを破壊されパニックに陥ってしまった。
人間常に冷静に行動できるわけもない。
セブンのあまりの強さに恐れをなしたといったところであろうか。

感想(本音)

正直面白いか面白くないかと聞かれたら後者であろう。
演出は頑張ってはいるが、脚本が正直甘い。
結局、盛り上がりそうで盛り上がらないまま終わってしまった。
それぞれ面白くなりそうな要素はあったものの、それが上手く展開できなかった。
ただ、偶にはこういう話もあっていいと思う。
本話はドラマそのものよりも特撮や映像を楽しむ話。
ウルトラシリーズとしてはかなり異色な作品であるが、海中での戦闘や戦艦とセブンの対決など今までにない映像に挑戦している点は評価したい。

本話で一番目を引くのはやはり戦艦大和。
沈没してる戦艦大和を改造して復活させるというどこかで見たことあるような話であるが、宇宙戦艦ヤマトよりこちらの方が先。
似たようなモチーフであるが、当時から戦艦大和を復活させたいという願望があったのであろうか?
この辺りは戦艦大和に対する日本人の複雑な思いというものもあったであろう。
しかし、その大和が日本に向けて砲撃するという何ともシンボリックな展開。
しかも最後は自爆するという。
この辺りに何かメッセージを込めているというのは穿ちすぎであろうか。
いずれにせよ戦艦大和ありきで本話は考え出された可能性が高い。

ただ、戦艦大和だけだと、それこそ戦争がテーマになりそうであるが、本話のミミー星人は大和も含めた海底の鉄くずを集めてる点に注目したい。
これは今でいうリサイクル。
当時も瓶とか空き缶くらいは回収してたであろうが、まだまだ環境問題、ごみ問題への意識が低かった時代。
地球人自らが捨てたゴミが特攻して自爆するというなかなかアイロニックな話になっている。
ゴミ問題というと帰ってきたウルトラマンのゴキネズラ編など、昭和40年代後半には既に社会問題化していたが、これはその先駆けとも言えそうである。
まあ、スタッフはそこまで考えてはいないであろうが。

本話は前述したとおり、ドラマ的な展開はほとんどないに等しい。
一応敵に捕まったアマギをキリヤマが助けに行くという展開もあるが、それはあくまでストーリーの運びの一つに過ぎない。
帰ってきたウルトラマンのベムスター編ほど極端ではないが、基本敵との戦いに終始している。
まあセブンらしいとはいえるが。
ただ、その戦いにしても正直盛り上がりに欠ける。
敵が爆弾で攻撃できないという話は帰ってきたウルトラマンの「怪獣時限爆弾」と同じプロットであるが、本話は結局特に対策をしないままセブンが光線で爆破してしまった。
しかも敵が爆弾という設定は物語終盤に突如出てきた設定で、唐突感も否めない。
おまけに捕虜にしてたはずのアマギ、フルハシもあっさり解放。
これではミミー星人が間抜けすぎではないか。
戦艦が爆発しても全く被害も出てなかったし、この辺りの展開は完全に失敗と言えよう。

本話の見どころの一つはこれも前述したが、ハイドランジャーと敵円盤との攻防であろう。
セブンは「マックス号応答せよ」とか「ウルトラ警備隊西へ」など船が出る話が多いが、本格的な海底戦は今回が初めてであろう。
前回が地底だったので今回は海底ということではなかろうが、マグマライザーに続いて今度はハイドランジャーが活躍。
サンダーバードの影響もあるのかもしれないが、セブンのミリタリー色の強いところはマニア受けする要素の一つであろう。
さすがに海底のアイアンロックスとの戦闘は撮影が大変なのか描かれなかったが、その分港を爆撃するアイアンロックスのシーンは迫力満点であった。
今なら全部CGなのだろうが、この爆薬の多さが昭和特撮の魅力である。
プロの仕事にこう言っては失礼だが、作り手も案外童心に帰って撮影してるのかもしれない。
そういう大人のごっこ遊び的なところは、自ら大人になってみると共感できるところが大きい。
そもそもこのサイトがそういう評論ごっこ的なものなので。

本話に関しては突っ込めば色々突っ込めるのだが、ストーリー的には破綻もなく無難。
というか、破綻するほどの話は描かれず、淡々と進んでいくタイプの作品だ。
脚本は赤井鬼介。
後にウルトラ関連の書籍の編集等をしたとのことであるが、ウルトラシリーズに残した脚本はこの一作だけ。
どういう経緯で執筆することになったのかはわからないが、本話の脚本はかなりカット、改変されており、本話の欠点を脚本家にだけ求めるのは酷と言えよう。

監督は鈴木俊継。
こちらはレギュラー監督だけに、演出的な違和感はほとんどなかった。
ただ特撮パートが派手だっただけに、本編はかなりカット等を強いられたのではないかと思われる。
円谷は特撮班の方が立場が強くて、本編監督はかなり苦労したとのこと。
それがいいか悪いかは別として、何となく本話からはそういう裏事情も伺われる。
結果ドラマ的には単調、特撮的にはド迫力という話が出来上がったのであろう。
今までほとんど印象に残ってなかった話であったが、改めて見るとそこまで出来の悪い話ではない。
ウルトラは特撮シリーズなのだから、ドラマばかりに捕らわれていては、本質を見誤ることになるであろう。

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