空間X脱出


データ

脚本は金城哲夫
監督は円谷一

ストーリー

月に一度の特別訓練に参加する警備隊員たち。
その日はキリヤマの指揮の下スカイダイビングの訓練が行われた。
浮かない顔のアマギ。
キリヤマに続いてダイブする隊員たち。
嫌がるアマギを押し出すソガ。
続いてソガも降下する。
先に着地したキリヤマたちはアマギとソガを待つが2人は降りてこない。
航空機に確認するキリヤマ。
しかし2人は既に飛び降りたという。
「風に流されたのかなあ」とダン。
その頃着地目標を外れたアマギは装着したパラシュートが木に引っ掛かり宙づりとなっていた。
パラシュートを外して脱出するアマギ。
キリヤマたちを探すアマギだが、辺りには誰もいない。
巨大なダニの襲撃を受けるアマギ。
それを振り払って必死に仲間を探す。
木に引っ掛かっているパラシュートに脚を取られるアマギ。
見るとそのパラシュートにはソガからの伝言が記されていた。
「コノモリハフツウノモリデハナイ」。
ビデオシーバーでソガに連絡を取ろうとするが、妨害電波で通信は不能であった。
不快な鈴のような音に耳を塞ぐアマギ。
その音の先には巨大な星人が。
ウルトラガンで攻撃するも星人は姿を消してしまう。
一方フルハシはヘリコプターで上空から二人を捜していた。
助けを求めるソガの声を聞きつけるアマギ。
ソガは底なし沼の中で脚を取られ身動きができない状態だった。
ソガの指示でロープを放り投げるアマギ。
アマギの助けでソガは何とか岸までたどり着いた。
「この森はどこだ」とソガ。
「俺にもわからん。大きなダニや亡霊のようなものがいるんだ。どうやら僕たち二人だけがとんでもないところへ迷い込んでしまったのさ」とアマギ。
「鈴の音を聞かなかったか」とアマギ。
しかしソガは知らないという。
本部へ連絡するソガ。
基地へ帰ったキリヤマはマナベ参謀に2人が行方不明であると報告する。
そこへ二人のビデオシーバーらしき電波が届いたと連絡が入った。
「二人とも今までどこをうろついていたんだ。2時間も空を散歩してたなんて言い訳は許さんぞ」とキリヤマ。
「我々のいるここは一体どこなんです」。
「寝ぼけたことを言うな。それはこっちの言うセリフだ」。
現在地を知らせるように言うキリヤマだがアマギはわからないと言う。
その時鈴の音がビデオシーバーを通して響いてきた。
苦しみだすアマギ。
人並み外れた聴覚を持つダンも耳を塞いで苦しむ。
「おい、しっかりしろ。場所はどこだ」とキリヤマ。
「霧の掛かった森の中です」。
必死に伝えるアマギ。
そこで交信は途絶えた。
ダンとアンヌにホーク3号で霧の掛かった森を探すよう指示するキリヤマ。
しかしダンとアンヌは森を発見することはできなかった。
パラシュートでテントを張りソガを介抱するアマギ。
「救援を待ってはいられないよ。早くこの森を脱出しよう」とソガ。
「こういう場合は下手に動かん方がいい」とアマギ。
「まるで雲の巣に掛かった虫じゃないか。このまま食われるのをじっと待てと言うのか」。
「そうじゃない。いざという時に備えてエネルギーを蓄えておくんだ」とアマギ。
外で鈴の音が聞こえたため様子を見に行くアマギ。
一緒に外へ出るソガ。
2人は頭上に地球らしきものが浮かんでいるのを目撃する。
「我々のいるこの森は、地球ではないとすると一体どこだ」とアマギ。
2人の捜索を諦め基地へ戻るダンとアンヌ。
キリヤマに報告をしていると、再びアマギから連絡が入った。
「我々のいるところは地球ではありません」とアマギ。
「どうもある空間に引っかかってるんです。脱出不可能です。救援願います」。
それを聞いていたマナベは疑似空間だという。
マナベが2年前ワシントン基地にいた頃、同様な事件があったという。
「大気圏内に不可思議な空間を作り、獲物を狙うんだ」とマナベ。
そこへ再び鈴の音が響いてきた。
「ベル星人に間違いない。あの鈴の音は脳波を狂わせる恐ろしい力を持ってるんだ」。
疑似空間を発見するのは不可能だとマナベ。
その頃二人は巨大なクモの出す毒ガスを浴び苦しんでいた。
スパイダーでクモを爆殺するソガ。
キリヤマたちはホーク1号で疑似空間の捜索へ向かう。
キリヤマはアマギたちにビデオシーバーの発信を続けるよう指示する。
ビーコンで逆探知して二人を見つけるという。
電波が発信される方へと近づくホーク。
巨大な雲を発見したダンたちはその中に疑似空間があるのではと推測する。
「電波はあの雲の中からです」とアンヌ。
雲の中へ突入するホーク。
すると中には巨大な森が広がっていた。
ホークの音を聞いて喜ぶアマギたち。
しかし不意に二人はさっきのクモとは別個体のクモに襲われる。
2人の悲鳴を聞きつけ駆けつけるキリヤマたち。
2人を救出するキリヤマとアンヌ。
ダンは残ってクモを退治する。
その時また鈴の音がしてダンは頭を抱えて倒れてしまった。
倒れ込んだダンは掛け声とともにセブンに変身。
ベル星人と対峙するセブン。
しかし鈴の音に苦しめられてまともに戦えない。
一方的に蹴り飛ばされるセブン。
しかし徐々に慣れてきたのか飛び蹴りで反撃するセブン。
さらにベル星人を片エビ固めにする。
空を飛んで逃げる星人にアイスラッガーを放つセブン。
さらに空を飛び星人を追跡する。
星人の脚を捕まえたセブンはそのまま空中旋回。
しかし星人は隙をついてセブンの手を振りほどいた。
再び星人を追うセブン。
星人の脚を掴んだセブンは星人を投げ飛ばすとストップビームで星人を撃墜。
すると星人が作り出していた疑似空間も消え始める。
沼に墜落した星人にとどめを刺すセブン。
ホークに戻ったキリヤマたちは森が消えていくのを発見。
アンヌはダンを探そうとするが、「もう間に合わん」とアマギに止められる。
そのままホークを離陸させるキリヤマ。
ホークは辛くも空間から脱出した。
一方セブンはホークに入り込み変身を解除。
消えていく疑似空間。
「疑似空間を作り出すなんて恐るべき宇宙人だ。皆、こんな言葉を知っているか。神なき知恵は知恵ある悪魔を作ることがある。どんな優れた科学力を持っていても、奴らは悪魔でしかないんだ」とキリヤマ。
「隊長。知恵ある悪魔から地球を守る我々の任務は非常に重大だというわけですね」とダンの声。
「ダン。どこにいるの」とアンヌ。
「ベータ号です」とダン。
「皆無事だったのか。よかった。よかった」とキリヤマ。

解説(建前)

ベル星人を倒すと疑似空間も消滅したのはなぜか。
そもそも疑似空間がどうやって作られたのかが問題となる。
まず、ベル星人の超能力で作られたと考えるのが、ベル星人の死とともに消滅した説明としてはわかりやすいであろう。
しかし、そんな超能力というのがあるのだろうか?
疑似空間には森があり、沼があり、生物まで生息している。
これらが全てベル星人の超能力で作られたと考えるのは無理があるだろう。
やはり疑似空間そのものはベル星人とは無関係に存在していると考えるのが妥当である。

では、疑似空間はどこに存在しているのか?
見たところは地球そのものだから、実は地球のどこかのジャングルや孤島が疑似空間の正体と考えることもできるだろう。
しかし、それなら通信が出来なかったり、レーダーで探知出来なかったりまではしないのではないか。
また、地球上にはいないような生物もいる。
やはり他の惑星のどこかに存在していると考えるのが妥当であろう。
とすると、それはベル星ということになろうか。
つまり疑似空間とはベル星のどこかのジャングルや孤島と解釈するのが妥当であろう。

では、なぜベル星人の死とともに消滅したのか。
これもやはり森や沼そのものが消滅したのではなく、そこへ通じる空間というかワームホール的なものが消滅したと解釈するのが妥当である。
そして、それを消滅させたのはベル星人であろう。
セブンと戦って敗れた星人は自分の星を守るため、地球とベル星を繋いでいたワームホールを切断した。
若しくは他のベル星人の仲間がいて、切断した。
いずれにせよ、ワームホールそのものは高度な科学技術に基づいて作られていたものと思われる(イカルス星人とかヤプールとかが使っていたような技術)。
ベル星人の超能力という可能性は低いであろう。

感想(本音)

SFでは定番の別世界漂流もの。
まあSFに関しては無知なのでそういうジャンルがあるのかもわからないが(笑)、「怪しき隣人」や「地底Go!Go!Go!」など、セブンでもお馴染みの設定である。
今回はアマギとソガ、特にアマギが主役というセブンでは珍しい話。
アマギがパラシュートや爆薬が苦手という設定は、さすがにウルトラ警備隊員としてどうなんだという気もするが、秀才キャラだからそれほど違和感はないか。
実際はソガがヘタレてアマギが活躍する話だから、弱気な面はあまりフィーチャーはされない。
それは次のアマギ主役作である「700キロを突っ走れ!」を待つことになろう。

今回はウルトラ警備隊の特別訓練が見られるが、こういうのは科特隊にはなかった。
この辺り警備隊の軍隊ぽさがよく出ている。
ただ、パラシュート降下が特別訓練というのはどうなんだろ?
アマギの様子を見る限り、あまりパラシュートの訓練はしてなさそうだし。
そんなんじゃTACとかZATには入れないぞ(笑)。
まあ、警備隊は脱出より不時着を選択するから、あまり必要はないのかもしれないが。
しかしウルトラホークは撃墜されても大破するシーンはあまり思い浮かばない。
装甲が頑丈なのだろうか。
それともMATアローとかTACスペースがゼロ戦並にもろいのか。
いずれにせよ、1機あたりの値段となるとホークの方が高いであろう。

ソガがアマギに残した伝言「コノモリハフツウノモリデハナイ」。
敢えてカタカナにする必要があるのだろうか?
非常時だと平仮名よりカタカナの方が直線的だから書きやすいとか決まりでもあるのだろうか。
そう書置きしながら、底なし沼に嵌るソガ。
不用意すぎるぞ(笑)。
本話では直情的なソガと冷静なアマギが対比されていたが、実際アマギはそこまでの活躍はしていない。
その辺りはやや中途半端な気もした。

マナベはベル星人のことを知っていた。
ワシントン基地で同様な事件が起きた時も遭難者から通信が届いたのだろう。
ただ疑似空間は見つからなかったということだから、その遭難者は…。
しかしビーコンを探知するだけであっさり二人を発見する警備隊。
ワシントン基地には探知機がなかったのだろうか?
遭難者からの通信が届いていたはずなのだが。
これはやはり遭難者があっさり殺されたために、通信電波が途絶えてしまったと考えるしかあるまい。
しかしベル星人のやり方だとパラシュート訓練してる警備隊員しか捕まりそうにないが、効率が悪すぎないか?
実は報道されていないだけで、一般の旅客機なども捕まってるのかもしれない。

今回は疑似空間に捕まった2人が中心で、他の隊員はあまり目立っていない。
しかし主役のダンはさすがにそれなりに出番は多かった。
アンノン戦でも見られたが、今回もダンの鋭い聴覚が強調されていた。
それが仇となりピンチになるのだが、最後はそれを克服して勝利。
この辺りなぜ途中から耐えられるようになったのか不思議だが、徐々に慣れたとでも解釈しておこう。
まあ、ウルトラ族は超能力者でもあるので、ベル星人の音波を打ち消す音波を出すとかもできるであろうし、何とでもなるのかもしれないが。

本話の最大のツッコミどころはやはりキリヤマに見捨てられるダン。
あの状況では当然の判断だが、あれは明らかにダンは死んでるだろ(笑)。
このシーンはウルトラマンのメフィラス星人編でハヤタを見捨てるムラマツを彷彿させたが、キリヤマもあるいはダンの正体を知っている?
というか、元々科特隊にいたハヤタと違って明らかに怪しいダンの正体に誰も気づいてないというのも変な気がするが。
しかし「皆無事だったのか。よかった。よかった」というのはさすがに軽すぎだろ(笑)。
ただ今回はまだマシな方。
明らかにダンもろとも円盤を撃墜してるような回もあるしね。
この辺りはドラマ班と特撮班の齟齬みたいなものがあるのだろう。

本話のテーマは優れた科学力でもその使い方次第では天使にも悪魔にもなるということ。
と言いたいところだが、本話でそのテーマが描かれたというのは少々強引に過ぎよう。
確かにベル星人がやったことは人間の側から見ると悪魔の所業であるが、ベル星人が食べ物に困っていたのだとしたら、それは人間のやってることと大して変わらない。
そもそもベル星人が何のためにこういうことをしていたのかわからないんだから、科学批判も取ってつけた感は否めないだろう。
ただ、ベル星人の見た目はちょっとプレデターが入っているので、完全に娯楽で人間を狩っていたという可能性もある(笑)。
いずれにせよキリヤマのこのセリフにテーマが込められているのだとしたら、もう少しそこら辺りを丁寧に描く必要はあったであろう。

本話の脚本は金城哲夫。
如何にもセブンというSF色溢れる話になっている。
また「魔の山へ飛べ」に続いてアマギが活躍するなど、科学者ポジションの隊員が活躍するのも金城らしさか。
ただテーマについては今回はやや空振り気味。
準備稿にはベル星人が食用目的で人間を捕えている旨語るシーンがあったらしいが、最終的にカットされており、その辺り不明瞭になっている。
最後のセリフが唐突に聞こえるのも、やはりその辺りに原因があるであろう。

正直、本話におけるベル星人の行動は他の星人と比べて特別悪辣というわけではない。
なぜベル星人だけ特段、悪魔呼ばわりされたのであろうか。
その辺りが描けているともう少し重みのある話になったのであろうが、この辺りはメインライターとメイン監督の辛さか。
金城は後に「ノンマルトの使者」というぶっ飛んだ話を書くことになるが、この時期はまだまだ番組を成功させることを優先していたのであろう。
結果として、娯楽的にもテーマ主義的にも吹っ切れたものにはならなかった。
SFテイストや普段地味な隊員の活躍など見どころはあるものの、全体的に平凡に感じられるのはそういう中途半端ゆえであろう。
もう少し描きたいテーマを絞れていれば、もっと評価される話になったのではないか。
平均点はあげられるが、それ以上は厳しいというのが本話の評価である。

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