地底GO!GO!GO!


データ

脚本は上原正三
監督は円谷一

ストーリー

地下1000メートルの炭鉱で落盤事故が発生した。
作業員の一人薩摩次郎は、ペットのハツカネズミ「チュー吉」を助けるため逃げ遅れて生き埋めになってしまう。
救出が困難なこと、事故の原因に不審な点があることから炭鉱側は警備隊に次郎の救出と原因の調査を依頼。
隊員たちはすぐに現場に駆けつけた。
現場の作業員たちの話だと事故の前にフラッシュのような光を見たという。
また事故は今年になって三度目だがいずれも原因は不明だという。
「生存者は確認されたんですか?」とダン。
確認はできてないが、空気だけは送りこんでいると作業員。
「とにかく崩れが酷いもんですからねえ。生きてるかどうかも」と作業員。
すると別の作業員が「次郎は生きてますよ。ミラクルマンだから」と応じる。
話によると次郎は200メートルの谷底に落ちた際にもかすり傷を負っただけで無事生還したという。
それを聞いて思い当るダン。
「200メートルの谷底に落ちて助かるわけがない。もしかしてあの青年では」。
坑道へ向かう隊員たち。
そこへアマギから連絡が入る。
地震研究所へ問い合わせたが、付近で地震は観測されてないという。
一方取り残された次郎は配管を通じて地上に助けを求めていた。
ソガはその音をキャッチ。
ダンは空気管を覗き込み、中の青年が自分が助けた青年であることを確認する。
「やっぱりあの青年だ。僕が地球へやって来て初めて会った地球人。そう。彼は僕の分身なのだ」。
地球へやって来たセブンは、仲間を助けるために自らのザイルをナイフで切り崖下へ転落する次郎を助けた。
その勇気に感銘したセブンはその魂と姿をモデルにモロボシダンへと変身したのである。
「こうしてウルトラ警備隊モロボシダンが誕生したのだ。彼は僕の分身だ。何としても助け出さねば」とダン。
キリヤマにマグマライザーで地底へ行くことの許可を得るダン。
次郎をいち早く救出するため地下1000メートルまで一気に潜るよう指示するキリヤマ。
同時に謎の地震源の調査も命令する。
マグマライザーに乗り込む、ダン、ソガ、アマギ、アンヌ。
炭鉱の中へ突入していくマグマライザー。
そのまま一気に地下1000メートルまで掘り進む。
一方閉じ込められた次郎の身辺には水道管から漏れ出た水が徐々に侵食していた。
「炭鉱の中で溺死するなんて、つまんないよな」。
チュー吉に話しかける次郎。
「俺はミラクルマンだ。そう簡単にはくたばらんぞ」。
しかし次郎の目は徐々に見えなくなっていた。
酸素が足りなくなっていたのだ。
一方深度1000メートルに達したマグマライザーは水平方向への移動を開始。
岩盤を掘り進んでいたマグマライザーは突如巨大な風穴に遭遇した。
そこへ岩盤内に空気を送り込んでいた空気孔が塞がったと連絡が入る。
急いで現場へ向かうよう指示を出すキリヤマ。
風穴の中を進むマグマライザー。
行く手を遮る岩石を破壊しようとレーザーを放射するが、岩盤はびくともしない。
「これはただの岩石ではないぞ。すると、謎の地震源」とダン。
その時、マグマライザーの背後のシャッターが下り、ダンたちは閉じ込められてしまった。
本部への連絡も遮断される。
チュー吉と一緒に助けを待つ次郎。
ダンは非常事態だとマグマライザーに積んであるMS爆弾を使用することを決意。
マグマライザーを降り、爆弾を仕掛けるダン。
爆破を確認したソガたちはマグマライザーを降りてダンを探す。
しかしダンは見つからなかった。
爆弾によって空いた穴から謎の地底都市が見えてるのに気付く3人。
「これが謎の地震源か」とアマギ。
ダンが地底都市に連れ去られたと考えた3人はダン救出のために中に侵入。
すると3人の背後から怪しいロボットが銃を構えて接近してきた。
迎え撃つソガ。
しかしウルトラガンをものともせずロボットは反撃する。
銃を撃たれて銃を落とすソガ。
胴体部分は通用しないと考えたアマギはロボットの頭部を攻撃。
するとロボットは崩れ落ちた。
地底基地の中に潜入した3人だが、ロボットがパトロールしていてダンを見つけられない。
ソガは基地を破壊するためMS爆弾を取りにマグマライザーへ戻る。
一方捕まったダンは鉄板の上で手足を拘束されていた。
ダンを焼き殺そうと鉄板の温度を上げるロボット。
なんとか手の拘束具を外してセブンに変身しようとするダンだが、ウルトラアイは他の装備とともに棚に置かれていた。
ベルトのバックルの装置を使ってウルトラアイを自分の下へ飛ばすダン。
すかさずウルトラアイを掴んだダンはセブンに変身した。
敵の攻撃を交わし、ワイドショットを浴びせロボットを倒すセブン。
空を飛び基地を脱出すると、そのまま気を失っている次郎を救出しマグマライザーに次郎を乗せる。
一方ソガたちは、基地を破壊するためにMS爆弾を仕掛けているところをロボットに見つかってしまう。
そこへダンが現われ背後からロボットを狙撃。
そのままダンたちはマグマライザーに乗り込み地上へと脱出した。
地上に戻り、担架で運ばれる次郎。
「お前は本当にミラクルマンだよ」。
喜ぶ仲間たち。
「地震源が地底都市だったとは夢にも思わなかったよ」とキリヤマ。
「まったく驚きましたよ」とソガ。
「我々は地球に関することすら、まだまだ知らないことが多いんだな」とキリヤマ。
大爆発する地底都市。
あの巨大な地底都市はなんだったのか。
宇宙人の侵略都市だったのか。
もしかすると我々地球人より遥かに昔から地球に住んでいる、地底人類の文化都市だったのかもしれない。

解説(建前)

地底都市は誰が何の目的で作ったのか。
まずロボット(以下ユートムという)が何者かだが、素直に考えるとロボットである以上、自律的な存在ではなく誰かが何らかの目的で作ったのであろう。
侵入者を捕まえたり攻撃したりしていることから、やはり警備用に作ったものと思われる。
ただ、ユートムの行動を見ていると侵入者を即射殺するのではなく、体以外を狙ったり、拘束してから蒸し殺そうとしたり、まず侵入者の属性を見極めているように思われる。
この辺り、ユートムを作った主(たち)は結構平和主義者なのかもしれない。

では、そのユートムを作った主(たち)はどうなったのか。
普通に考えると、あの爆発では生きていられないから全滅ということになろう。
しかし、そもそも本話ではその主(たち)は登場すらしなかった。
これはどういうことであろう。
まず考えられるのはその主(たち)は地底都市の中の別の場所にいたという可能性。
ただこの説も、ユートムがダンを拘束した時に声も姿も見せなかったところから微妙であろう。
普通なら誰かがユートムに指図するはずである。

とすると、主は既に地底都市にはいなかった可能性が高い。
何らかの事情で死んでしまったか、単に地底都市を残して他の場所に移動したかわからないが、地底都市にはもはやユートムしか残ってなかったのではないか。
そしてユートムたちは炭鉱の採掘により自分たちの都市が見つかってしまうのを恐れ、自己防衛的に地震を発生させたのであろう。
強引にまとめてしまうと、地球若しくは他の星に住んでいたものが、何らかの目的で地下に都市を建設した。
将来的に地上を侵略しようとしていたのか、単に人目を忍んで地下で生活をしていたのかはわからない。
ただ、何らかの事情でユートムだけが残されて、機械的に防衛行動を行っていたのであろう。
SF的に考えるとロボットの反乱でユートムが地底都市を乗っ取ったという説も面白いが、意外と平和的なロボットなので、その可能性は低いと考える。

感想(本音)

モロボシダンの誕生秘話が語られる珍しい回。
上原氏が脚本を書いているが、この設定自体を考えたのが誰かも興味深いところだ。
普通に考えるとメインライターの金城氏を中心に皆で考えて、それを盟友の上原氏が脚本に書いたといったところだろうが、本話の監督が円谷氏なので円谷氏が考えたのかもしれない。
いずれにしてもウルトラ一族が実在の人間を生き移して地球に滞在するという設定が初登場した回ということで、重要であろう。

「え?初登場?他にもあったっけ?」と思われた方もいると思うが、客演時のハヤタについては再合体した描写もないので、ハヤタをモデルに初代マンが変身したと解釈するのが妥当である。
郷や北斗のように合体したまま宇宙へ帰ったわけではないので、ハヤタ本人は地球の他の場所で生きていると思われる。
その解釈からはタロウも光太郎以外の地球人に変身して再登場することが可能であるが、その辺りは篠田氏の出演の可能性を諦めない円谷側のスタンスであろう。

ちょっと話が脱線したが、この頃は初代マンしか前例がなく、しかも初代マンとセブンの繋がりも明確ではなかったので、セブン独自の設定が必要となったのであろう。
別に誰かをモデルに変身する必要などないので、この設定を描く必要性は低いと思うが、スタッフの拘りなのか、単に森次氏の一人二役で話を作りたかったのか。
単に後者という気もしないではないが、主役俳優の一人二役という点でも、珍しい回と言えるであろう。

本話の最大の疑問は、なぜ誰もダンを見て次郎そっくりだと気が付かなかったか。
どう見ても同じ顔なのに誰も指摘しないのは不自然すぎる。
これはもう、本当に気が付かなかった、若しくは気が付いたけど明らかに別人だから言わなかったと解釈するしかないだろう(笑)。
ダンがウルトラ警備隊の服を着ていること、作業員たちは次郎のことが心配で気が動転していた、坑道の中は暗くてダンの顔がよく見えなかった、警備隊員も救出した次郎の顔をよく見なかった。
この辺りがそれを補強する材料になるだろうか。
まあ、結局は撮影側のミスというか配慮不足なのだが(笑)。
ダンが後からマグマライザーで合流するくらいの設定にすればよかったのだが、主役なので出番を増やした結果作業員たちと直接対峙することになってしまったのであろう。

今回はウルトラでは定番の地底戦車登場回。
原理的にドリルで掘り進むことは可能なのかという疑問もあるが(空想科学読本等でお馴染み)、見た目に説得力があればそれでいいだろう(笑)。
ただ、相当危険な任務なのに、隊員を4人も乗せるのはどうかと思ったが。
この辺りは脚本上の都合と考えるしかないであろう。
TACは隊長自ら地底で遭難しちゃったしね。
まあ、本話ではマグマライザーそのものは無事だったので、最終的に難なく脱出できたのだが、さすがにあれだけの爆弾を仕掛けるのは逃げ遅れた場合のことを考えてなさすぎだと思う(笑)。

もう一つ大きな疑問として、果たして地底都市をソガたちの独断で破壊して良かったのかという点が挙げられる。
地上との連絡が絶たれていたため仕方ない面もあるが、ダンを救出する前に爆弾を仕掛けるのはさすがに無茶すぎ(笑)。
まあ、キリヤマに聞いても当然「破壊せよ」という結論になるだろうが(笑)、この辺りの思想は警備隊内でも徹底されているようだ。
まあ、無断で地底都市を作って、しかもダンを拉致したり先に手を出してるのはユートム側なのだから、ちょっとやり過ぎとは言え地球防衛の目的からは妥当な措置だろう。

一瞬の甘さや判断ミスが地球人全体の生命に関わってくるので、逆にこれくらいシビアでないと防衛隊員は務まらない。
この辺りは人道主義的な観点からは非道に見えるが、「ダークゾーン」回でもそうであったように、現実主義的対応で個人的には妥当だと思う。
こういう脚本を沖縄出身で所謂左翼に属すると思われる上原氏が書いているというのが興味深いところだ。
まあ、脚本家論は他にも専門的な人が色々書いているので、ここでは掘り下げない。

今回もセブンではお馴染みウルトラアイがなくて変身できないシーンが登場。
まあ今回は盗まれたのではなく、単に手の届かない場所に置いてあっただけだが、セブンではこのパターンがやけに多いのは作劇上の都合なのだろうか。
この反動なのか新マンでは変身アイテムがなくなってしまったが、ベルトのバックルに思わぬ装置がついていたり、それなりに見せ場にはなっていると思う。
ただ、憑依型ではなく変身型のセブンがここまで変身アイテムに頼らないといけないのはどうかと思うが。
ウルトラアイはレオの1話でも書いたが種火を着火するようなアイテムだと思うので必要だとは思うが、それにしてもせめて念力で引き寄せるくらいはできないのか。
スターウォーズなどを見てると落としたライトセーバーをルークがフォースで引き寄せるシーンがあるが、あんな感じでやってくれるとかっこいいと思う。

本話の脚本は前述したように上原氏。
「帰ってきたウルトラマン」のメインライターである上原氏だが、本話は如何にもセブンというSFチックな話になっている。
ユートムや地底都市が何物かを明かさないところは如何にもセブン的。
これが二期ウルトラだと如何にも悪そうな星人が出てきて侵略目的等をご開陳してくれるのだが(笑)、こういう脚本を書けるところはさすが上原氏といったところであろう。
もちろん、星人相手にウルトラマンが戦ってという展開も面白いんだけどね。
ただ、セブンの活躍が敵ロボットを倒すよりも次郎を救出するところがメインになっているところが、セブンの良さであり自由さであろう。
今のスポンサー優位の制作環境ではとても作れそうにないし。

本話の監督は第1期ウルトラを支えた円谷一氏。
作品面だけでなく円谷プロの代表としてもウルトラの基盤を作った円谷氏の存在は大きいだろう。
ビラ星人の回でも指摘したが、円谷氏はあまり細かい粗は気にしないタイプのようだ。
これはあくまでウルトラは子供向けの番組であり、そういう細かい整合性よりも話の分かりやすさ、絵的な面白さを重視するからであろう。
本話でも次郎がダンにそっくりという点をスルーしたが、下手にそれに拘るよりも地底という制約された環境での救出劇、謎の地底都市等をメインにした方が面白い。
この辺りは今のやたらと設定や整合性に拘る特撮ファンも反省した方がいいと思う。
まあ、こんな解釈サイトを運営しておいて言えるセリフではないんですけどね(笑)。
話は逸れたが本話はユートムの如何にもなデザインといい、地底都市といい、所謂子供向けSF小説的な楽しさと次郎救出劇、セブン誕生秘話と盛り沢山の内容を上手く(強引に?)まとめた佳作と言えるであろう。

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