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プロジェクトブルー
データ
脚本は南川龍
監督は野長瀬三摩地
ストーリー
地球防御バリアを破って侵入する謎の物体。
物体はそのまま大気圏を突破し、山へ墜落して炎上した。
しかしこの事件はただの山火事とみなされ、ウルトラ警備隊にも通報されなかった。
その頃警備隊基地では落ち着かない様子のフルハシ。
「こう事件がなくっちゃ、体が鈍ってしょうがありませんよ。月へ行っている、アマギとソガが羨ましいですね」とフルハシ。
「宮部博士のプロジェクトブルー、つまり地球防御バリアが完成したらいよいよ暇になるぞ」とキリヤマ。
地球防御バリアとは月と地球を磁力線の網で包み込んでしまうもので、宇宙からの侵略を防ぐことを目的としていた。
「しかし隊長、バリアのおかげで宇宙人は入ってこないかもしれませんが、我々も月までしか行けぬことになって、地球の発展という面からみれば、損失の方が多いのではないでしょうか?」とダン。
それに対してバリアには秘密の出入り口を何か所か作ることになっているとキリヤマ。
「宮部博士だ。大丈夫だよ」。
その頃宮部博士は久しぶりに取れた休日を妻のグレースと過ごすため、車で帰路についていた。
明日はグレースの誕生日。
道端に人影を見かけて車を止める博士。
しかしそこには誰もいなかった。
不思議がる博士。
家に着いた博士はグレースから明日は慈善パーティの準備で出かけなくてはならないと聞かされる。
グレースにプレゼントのドレスを渡す博士。
「あなたの休みが急に決まったから誰もお呼びできないわ」とグレース。
「明後日はもう月に帰らなくちゃならないんだから、せめて明日のお祝いは二人きりでやろうよ」と博士。
楽しく談笑する二人。
そこに急に大きな地震が起きた。
博士に抱き着くグレース。
その頃警備隊には月基地のアマギから、宮部計画の機材に爆薬を仕掛けている宇宙人らしき者を発見したと連絡が入る。
追跡したが宇宙人は消えてしまったとのこと。
「ウルトラ警備隊が行ってて、よかったですね」とアンヌ。
「何かが起こりつつある。そんな気がしますね」とダン。
キリヤマはダンにホーク3号でパトロールへ出るよう指示する。
その頃博士とグレースは屋敷の中を調べていた。
気象台に聞いても地震は観測されてないという。
「もう大丈夫だよ。さあ、心配することはないよ。それより、明日のプランを考えよう」と博士。
寝室に入る2人。
深夜2時、寝苦しさを感じた博士が目を開けると、そこには不気味な顔が。
驚いて起き上がる博士。
しかしそこには誰もいなかった。
「あなたは疲れてるのよ。夢を見たのね」とグレース。
そのまま眠りにつく二人。
翌朝、博士が目を覚ますと既にグレースは車で出かけていた。
カセットテープに残された伝言を聞く博士。
グレースの伝言通り冷蔵庫から食事を取り出す博士。
その時、食卓が急に浮かび上がり、中から地下に通じる階段が現れた。
不審に思い階段を降りる博士。
しかし急に蓋が閉まり、閉じ込められてしまう。
四方から飛び出す紐に絡めとられる博士。
博士は地下室のベッドに張り付けにされてしまった。
「宮部博士。目が覚めたかね」。
「誰だ、お前は誰だ」と博士。
「私はバドー星人。宇宙の帝王だ」。
バドー星人がかつて太陽系に来た時、地球はまだ火の玉で、唯一知的生物のいる冥王星を滅ぼしたという。
我々の他にそんな生物の存在は許せないと星人。
「それじゃ、今度は?」と博士。
「その通り。今度は地球の番だ」と星人。
「地球にはウルトラ警備隊がいる。むざむざとお前たちにやられんぞ」。
「無駄なことだ。この地球がなくなればそれで終わりではないか」。
「我々は地球を爆破する。この宇宙から消してしまうのだ」と星人。
星人は、自分たちの宇宙船がバリアに触れて爆発したことから、プロジェクトブルーの計画書を奪うためにこの家に来たという。
バリアがある限り、星人の宇宙船は地球に近づけない。
その頃ホークでパトロールしていたダンが大気中に多量の放射能を検出する。
タケナカ参謀によるとV2とV3の間に試験的に張ったバリアに隕石が衝突した報告があったという。
その頃宮部博士の屋敷に妻のグレースが帰宅。
博士のスーツを調べ、博士が財布も持たずに外出したことを不思議に思うグレース。
寝室の録音したテープを再生すると不気味な笑い声が。
「あなた、またいたずらして。私を怖がらそうってんでしょ」とグレース。
一方地下では博士が星人の自白電波に耐えていた。
星人は博士の妻グレースを標的にして、博士に口を割らせようとする。
不審に思ったグレースは警備隊に電話するが、電話の線は切れていた。
その直後、呼び鈴が鳴り驚いて電話に出るグレース。
しかし、そこからは不気味な笑い声が。
停電する部屋。
ライターをつけ、懐中電灯を探すグレース。
ろうそくに火をつけ屋敷の中を彷徨うグレース。
階段を降りるグレースの姿をモニターに映して博士に見せる星人。
「奥さんが大事なら書類のあり場所を言うんだ」と星人。
星人はグレースの頭上の電灯を落とすか、持っている手すりを折ると博士を脅す。
その時、グレースの頭上の電灯が落下。
間一髪で難を逃れるグレースだが、気を失ってしまった。
「今のはわざと奥さんに当てなかった。今度はそうはいかんぞ」と星人。
その頃警備隊では博士の家に電話が通じないことから、ダンとアンヌが博士の警護に向かうことになった。
2人が駆け付けると、中から星人に襲われるグレースの声が聞こえてくる。
ドアを破って中に入る二人。
ダンがグレースを襲っている星人をウルトラガンで狙撃すると、星人は炎となって燃え尽きた。
グレースをアンヌに任せて屋敷内で博士を探すダン。
すると階段の下から何者かが急に狙撃してきた。
それを交わしてウルトラガンを放つダン。
そこには姿を消していた星人が潜んでいた。
燃え尽きる星人。
セブンに変身したダンは鏡の中に手を当て、その中に入っていった。
そこは星人の地下基地につながっていたのだ。
博士を人質に逃げようとする星人。
地下基地は実は円盤の内部でそのまま脱出できるようになっていた。
2時間後に地球を破滅させるという爆弾を仕掛けて、円盤を浮上させる星人。
逃げる円盤に追いついたセブンだが、入り口のところで扉に挟まれてしまった。
巨大化して円盤ごと地上に連れ戻すセブン。
するとそこに巨大化した星人が現れた。
石をぶつけたり、凶器で目つぶしをする星人。
しかし最後はセブンに投げ捨てられ、血反吐を吐いて死亡した。
博士から爆弾のことを聞いたセブンはテレポーテーションで博士を屋敷に戻すと、再び鏡の中へ。
アンヌも一緒に入ろうとするが、顔をぶつけてしまう。
爆弾を持ったセブンはそれを宇宙に放擲。
アンヌに書類の隠し場所を聞かれた博士は特殊なライトをグレースの服に当てて、そこに書いてある文書を見せる。
「あなたのプレゼントにこんな仕掛けがしてあったの?驚いたわ」とグレース。
ダンを探しに階下へ降りるアンヌ達。
その前に扉を開けてダンが現れた。
「山の方へ逃げた宇宙人をやっつけてきたよ」とダン。
「宇宙人は全滅。宮部博士は無事に助け出しました」。
基地へ報告するダン。
「全部ウルトラセブンの働きです」とアンヌ。
解説(建前)
星人はどうやって博士の屋敷の地下に基地を作ったのか。
まず、どうやって博士の屋敷の場所を突き止めたかであるが、これは単に博士を尾行したのであろう。
そういうシーンもあったし。
博士の屋敷を突き止めた星人はその地下に隠していた円盤を潜らせた。
円盤はバリアを爆薬で破壊して侵入させたか、まだバリアが張られていないところから侵入したのであろう。
そして夜のうちに円盤と食堂を繋げる工事を行ったのである。
星人はなぜ博士のプロジェクトブルーに拘ったのか。
地球人を全滅させるだけなら、持ち込んだ爆弾で十分だと思われることから問題となる。
まず、そもそもその爆弾で地球を破壊できるのか否か疑問もあるが、これに関しては星人の証言を一応信用することにしよう。
では、なぜ自分たちの宇宙船が地球へ入ることに拘ったのか。
これはやはり、地球人を根絶やしにするだけでなく、その後地球に移り住むのが目的だったのであろう。
星人は自らを宇宙の帝王と名乗り、過去に冥王星人を滅ぼしたという。
普通に戦闘しても、警備隊に勝てるつもりでいたのであろう。
あくまで地球破壊は最終手段だったのだ。
ただ、そこで疑問になるのが、星人はおそらくセブンが地球を守っていることを知っているだろうという点。
セブンが地下に入ってきたら人質を連れて逃げ出すなど、明らかにセブンに対しては警戒している。
それでも本隊が宇宙船で地球へやって来たら勝てるつもりだったのだろうか。
ちょっと矛盾する気もするが、宇宙の帝王という自信からは本隊さえくれば、セブンですら倒せるつもりだったのだろう。
そもそも宇宙の帝王が自分たちより弱い知的生物を根絶やしにするという発想がよくわからないが、それだけ自信を持っていたのだろう。
自信の根拠はともかくとして。
感想(本音)
子供の頃、宇宙の帝王のあまりの弱さに拍子抜けしたのを覚えている。
おそらくそれは私だけではあるまい。
それだけ「宇宙の帝王」というのは子供にとってはインパクトのあるフレーズなのである。
ただ、大人になって見返すと、本話はホラー風味に重点を置いた娯楽編。
バド星人が宇宙の帝王か否かというのは特に意味はない。
そして完全に悪役レスラーな星人のファイト。
この辺りは狙ってコミカルにやっているのであろう。
とすると、やはり「宇宙の帝王」というのはハッタリで、お笑い要素というのが大人目線からの正しい解釈と思われる。
しかし、そうは言っても子供にはそこまで読み取れない。
博士に不釣り合いな金髪の奥さんといい、バド星人の醜悪な顔といい、よくわからないというのが本当のところであろう。
そういう意味では本作の評価は微妙である。
大人目線からはそれなりに面白い作品であるが、子供にとってはやはり「宇宙の帝王」が期待外れだったというのがどうしても印象に残る。
ある程度視聴者層を上に設定しているセブンとはいえ、ちょっと冒険しすぎではないか。
妙に艶めかしい奥さん。
大人の目線からは、久しぶりに帰ってきて二人で寝室に入ったら、そりゃねと変な想像もしてしまう(笑)。
まあ、奥様は魔女みたいな海外ドラマを子供が見ていた時代だから、違和感はないのかもしれないが。
本話はやはりバド星人に尽きるだろう。
気になったのは劇中ではバドー星人だった点だが、この際どっちでもいいだろう。
とにかく、今まで出てきた敵でも最弱の部類に入るくらい弱い(笑)。
ただ、それはあくまで肉弾戦の話であって、本人たちが言うように冥王星を滅ぼしたり、地球を爆破する爆弾を持っていたりするなら、それなりに文明度は高いと言えよう。
人間が地球の支配者たるのは、腕力より科学力の賜物。
そういう意味ではバド星人が宇宙の帝王であっても、何ら不思議はない。
とは言え、セブンが来たらそそくさと逃げ出したり、プロジェクトブルーにビビッて博士を脅したり、あっけなくバリアで宇宙船が破壊されたりと、肝心の科学力にも疑問がある。
やっぱり洋物ホラーテイストにコミカルな味付けをしたという、それ以上の意味を星人自身持ってないと考えるのが妥当であろう。
その他気になった点。
やはり博士の奥さんのグレースが気になる(笑)。
セブンは海外を意識して敢えて日本的なものは排除していたそうだが、外人が多く出るのもその特徴の一つであろう。
日本建築より洋館が多く出ることからもそれはわかるが、奥さんまで外人にする必要はないだろうに(笑)。
やたらと気を失ったり、やはりコント風。
合ってるのか合ってないのかよくわからない吹替といい、今見ると結構インパクトがある。
子供の頃は奥さんのこととかあまり覚えてなかったんだけどね。
しかし奥さんが何者でどうやって知り合ったか、謎な夫婦である。
博士の家では夫婦間でカセットに伝言を残す習慣があるらしい。
パソコンはもちろん、留守電すらない時代だから、当時としては相当先進的だったであろう。
ただ、やはり冷蔵庫のおかずを電子レンジでチンとまではいかなかったようだ。
さすがにこの時代に電子レンジはなかったのだろう。
なぜか機密文書を奥さんのドレスに仕立てる博士。
これはもう完全にギャグだろう。
そもそも一泊の帰宅で機密文書を持ってくる方がおかしいのだが、肌身離さず持っていたいくらい重要ということか。
その割には奥さんのドレスというのもどうかと思うが、この辺りの整合性は気にしてはいけない。
個人的にはエースの梶隊員のように頭を指さして欲しかったが、落ちとしてはドレスに仕込むという方が面白いのは確か。
カーテンが引かれるエンディングといい、海外のコメディドラマを意識したんだろうな。
この辺りは監督兼脚本家の野長瀬氏の好きなように撮ったという感じがする。
本話はなぜか、アマギとソガが月へ行ったことになっていて出ないが、これはなぜだろう?
まあ、博士邸中心に展開するからダンとアンヌすらそれほど出番はないのだが、それでもソガとアマギを出演させるくらい容易いはずである。
まさかこれでギャラが削られるというわけではなかろうから、単に監督が2人を休ませてあげただけとか。
話の筋的には必要はないので、思い切って出演者を減らしたのは正解ではあるが。
一方ダンとアンヌは一応見せ場はあった。
この辺りはやはり主役と言ったところか。
今回は特撮面で結構頑張っていた。
特にセブンが鏡の中に入っていく演出は秀逸。
バド星人が燃えるシーンなども、単に消滅するよりは凝った演出。
ただ、その分戦闘シーンは地味だった。
それを補うためのプロレスファイトだったのか。
ところでバド星人は一体何人いたのか?
映像で見る限りは3人だが、3人で地球侵略に来たのだろうか?
本隊の宇宙船があるにしても、星全体で地球の知的生物を滅ぼすためにやってくるとも考えづらいので、やはり一部の海賊みたいな連中かもしれない。
まあ、その辺りは本話に限らないのでスルーしよう。
気になるのがプロジェクトブルーの今後。
こんなものが完成したらウルトラセブンの出番がなくなるどころか、ウルトラシリーズまで終わってしまう(笑)。
ただ、実際はシリーズは終わらなかったし、相変わらず宇宙はMATステーションとかZATステーションが警備をしていた。
MAC基地なんか宇宙にあるしね。
結局プロジェクトブルー計画は失敗に終わったのであろう。
機構に致命的な弱点があったとか、予算が莫大に掛かって費用対効果に問題があったとか、そういう理由があったのであろう。
まあ、バド星人レベルの侵入を許してる時点で、あんまり使えそうにないけどね(笑)。
本話の脚本は南川竜こと野長瀬三摩地監督本人。
こういうホラーテイストは「緑の恐怖」や「人間標本5.6」などでもお馴染みである。
本話も野長瀬氏らしい話。
氏はウルトラマン時代から多くの脚本を執筆している。
ウルトラシリーズ初期を支えた重要な作家とも言えよう。
本話はエピソード的にはそこまで特筆するものはないが、平均レベルは十分超えており楽しめる作品。
ツッコミどころも満載だし、気楽に肩の力を抜いて見るのがいい作品であろう。
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