闇に光る目


データ

脚本は藤川桂介
監督は鈴木俊継

ストーリー

行方不明の無人宇宙船、サクラ9号を警備隊のレーダーが捕捉。
しかしサクラ9号をアンノン星に送りこむアンノン星計画は3か月前から中止されており、キリヤマもマナベもサクラ9号が戻ってくるという話は一切聞いていなかった。
不審がるキリヤマたち。
サクラ9号が戻ってくる地点に向かうホーク1号。
地獄山近辺に着陸するサクラ9号。
地獄山近辺には宇宙局があり、またサクラ9号に細菌等が詰め込まれてる可能性もあるので、ダンたちは回収作業に向かう。
地獄山に到着したダンたちだったが、その目の前でサクラ9号は爆発した。
「我々の姿を見て自爆したんじゃないのか」とアマギ。
怪しい音を聞くダン。
しかしアマギとアンヌにはその音は聞こえない。
音のする方へダンが行くと、岩肌に不気味な目のようなものが光った。
しかし目が閉じると同時に怪しい音も消えてしまう。
ダンの下へ駆け寄るアマギとアンヌ。
しかしまた怪しい音がすると、今度はアマギとアンヌが頭を押えてうずくまった。
「硫黄の煙を吸い過ぎたらしい」とアマギ。
その頃山の麓ではヒロシという少年が大きな石を抱えて歩いていた。
「弱虫ヒロシが来たぞ」。
いじめっ子たちに見つかったヒロシ。
ヒロシははいじめっ子たちに取り囲まれてしまう。
「いやに綺麗な石じゃないか。どこで拾ってきたんだ」。
いじめっ子の一人に聞かれるヒロシ。
「地獄山で拾ったんだ」。
石を渡すよう言われたヒロシはそれを断る。
無理やり石を奪おうとするいじめっ子たち。
すると突如木の幹から目のようなものが現れ、いじめっ子たちが頭を痛がり始めた。
そこへダンたちが通りかかった。
さっきと同じ音を聞いたダンは木の幹の目に気が付きウルトラガンを発射。
しかし目は跡形もなく消えてしまった。
子供たちを病院に送ってキリヤマに連絡をするダン。
「あの子たち、ヒロシっていう子と地獄山で拾ってきた石の取りあいをしてる時にやられたそうよ」とアンヌ。
「なに?石」とダン。
一人だけ無事だったヒロシは自室で拾ってきた石を磨いていた。
すると突如電気が消える。
部屋のドアも開かない。
閉じ込められるヒロシ。
母親に助けを呼ぶヒロシ。
「坊や、そんなことをしても無駄だ」。
急に不気味な声が聞こえてくる。
「お前は誰だ」とヒロシ。
「私の体を返してもらいに来た」と声。
「そんなもの知らないよ」とヒロシ。
すると闇に大きな目が浮かび上がる。
驚いて声を上げるヒロシ。
「私の体はそこにある。ほら、君の机の上だ」。
「嘘だ。これは僕が拾った石だ」。
「それは宇宙船を爆破する時に一緒に飛ばしてしまった私の体だ」。
「こんな石がどうして体になるの」。
「頼む。それを誰にも気付かれないように地獄山の煙の中に落としてくれ。その代り君の言うことも聞いてあげる」。
「僕の言うこと?」
「君はいつもみんなにいじめられているだろ。私の頼みを聞いてくれれば君を一番強い子供にしてあげる」。
頷くヒロシ。
ヒロシだけが無事だったことに疑問を抱いたダンたちはヒロシの家に向かう。
道中、ダンたちの乗ったポインターが急停車した。
しかし異常は見当たらない。
怪しい音を聞いたダンはすかさず銃を撃つ。
そこには例の目が開いており、目の主は呻いて姿を消した。
ヒロシの家に着いたダンはヒロシの母親にヒロシの部屋に案内してもらう。
しかし、ヒロシはいなかった。
ヒロシの母親からヒロシが地獄山から石を拾ってきたことを聞かされるダン。
ダンはヒロシを探しに行く。
その頃ヒロシは地獄山の駐在所の前を通っていた。
警官に見つかったヒロシは急いでその場を走り去る。
不審に思ってヒロシに声をかける警官。
そこへポインターがやってきた。
話を聞いたダンは捜索隊を組織するよう警官に指示する。
二手に分かれてヒロシを探すダンたち。
捜索隊に行く手を阻まれるヒロシ。
しかし怪しい目が光ると捜索隊は皆倒れてしまった。
地獄山へ向かう橋を渡るヒロシ。
目の主に「何をしようとしているの?」と尋ねるヒロシ。
「我々の星の平和を二度と荒らしに来ないようにするだけだ」と主。
「嫌だ嫌だ。僕帰る」。
石を投げだすヒロシ。
しかし目の主は「約束を破ることはできない。それに強い子にもなれないぞ」と警告する。
泣く泣く石を運ぶヒロシ。
そこへダンがやって来た。
しかしその直後に橋が破壊され、ダンは転落してしまう。
アンヌに連絡し、早く頂上へ行くようにとダン。
キリヤマに報告するアンヌ。
キリヤマたちもホークで地獄山へ向かう。
頂上へ先回りしたアンヌとアマギはヒロシを見つけるが、すぐ例の目により倒されてしまった。
地獄山の煙の中に石を捨てようとするヒロシ。
それを見てヒロシを止めようとするダン。
しかし石は谷を落下する。
「さあ、帰るんだ」とダン。
「嫌だ。僕は強い子にしてもらうんだ」とヒロシ。
落下した石は巨大化し怪獣になる。
そしてその目には例の目が。
「君が持ってきた石はあの怪獣だったんだよ」とダン。
「嘘だ。嘘だ」とヒロシ。
足場が崩れ転落する二人。
そこへ到着したホークが怪獣を攻撃するも、逆にやられてしまう。
不時着するホーク。
ホークに迫る怪獣。
キリヤマたちはホークを放棄し地上から攻撃する。
セブンに変身するダン。
「お前は地球に何しに来たんだ?」
怪獣に呼びかけるキリヤマ。
「我々のアンノン星を攻撃してきた地球を破滅させにだ」。
「攻撃だって?それは違う。我々が宇宙船を打ち上げたのは宇宙の平和利用のためだったんだ」。
「地球人の言うことは信じられない」とアンノン。
そこへセブンが飛んできた。
お互い光線を出し合うセブンとアンノン。
光線技がセブンに通用せず逃げようとするアンノン。
セブンはストップビームでアンノンの体を宙に浮遊させる。
「キリヤマが言ったことは嘘ではない。地球人は決して君の星を侵略したのではないのだ」とセブン。
「本当なのだな」。
「私も同じ宇宙人だ。嘘は言わない」。
「ようし。セブンの言うことは信用しよう。しかしアンノン星はいかなる星からの侵略目標にもさせない」。
怪獣から目が分離する。
セブンと一緒に飛んでいく目。
「あいつ目だけじゃないか」とソガ。
「きっと頭脳だけの宇宙人なんだ」とキリヤマ。
「そうか。あの石は活動するのに必要な体だったんだ」とフルハシ。
ヒロシを駐在所に送り届けるダンたち。
そこにはヒロシの母と子供たちが待っていた。
「みんな心配して来たんだよ」とダン。
「僕嫌だ」とヒロシ。
「本当に強い子はみんなと仲良く出来る子なんだよ」とダン。
「さ、行きなさい」とアンヌ。
子供たちの「おい」という呼びかけに応えるヒロシ。
抱き合うヒロシたち。
「よかったなあ、ヒロシくん」。
見届けて基地へ帰るダンたち。

解説(建前)

なぜアンノンはすぐに石に乗り移らなかったのか。
アンノンの本体である目はヒロシの部屋まで来ていた。
そのまま石に乗り移ってしまえば、わざわざ地獄山までヒロシを誘導する必要はない。
これはやはり、あの石はあくまで怪獣の核になる部分で他の破片は宇宙船を爆破した際、山に落ちたと解釈するのが素直であろう。
また、山は噴煙を上げていたことから、その周りの溶岩をも体に取り込んだのかもしれない。
いずれにせよ、あの石だけでは巨大化は無理なのであろう。

ダンだけに聞こえた音は何か。
音はアンノンが目を開けている時だけ聞こえるようなので、アンノンが発する超音波の類であろう。
アマギやアンヌに聞こえなかったのは、人間の耳で捉えられる周波数を超えていたからだと思われる。
この超音波は人の耳には聞こえないが、人の脳波には届くのであろう。
そして人の意識を失わせる。
一方ウルトラセブンであるダンはそれを音として捉え、しかもそれに耐えることができた。
人間の中でヒロシだけ無事だったのは、アンノンが超音波を出す方向をコントロールしたのか、若しくはアンノンの石のおかげか、いずれかであろう。

感想(本音)

夜の場面が中心なので印象としては地味な作品。
また、子供が中心となる作劇はセブン全体の中ではやや異色であろう。
これは脚本家の藤川氏によると、まだセブンの対象年齢を高めに設定する以前に書かれたからとのこと。
敵として宇宙人は出てくるが目だけの宇宙人という、何となくウルトラQ的な敵。
一応セブンが仲裁するというセブンらしさもあるのだが、どちらかというとファンタジー寄りな作品であろう。

本話の特徴は先述したとおり子供中心の話という点。
子供向け番組なのに子供中心だと異色というのも異色だが(笑)、セブンはそういう番組なので仕方ない。
おまけに本話は子供ゲストのほぼ単独主役。
完成作品ではそうでもないが、脚本段階ではジュブナイル的な要素がもっと前面に出ていた可能性は高い。
ただ子供主役のエピソードは「怪しい隣人」等もあり、そこまでこの話が特別というわけではなかろう。

本話はもっぱらヒロシが中心だが、ヒロシを演じたのは初代マンの「怪獣殿下」にゲスト出演した稲吉くん。
ちょっと気の弱いいじめられっ子的な役はお手の物なのか、役によく嵌っていた。
ただ、最初に石を取られそうになっても必死で抵抗するなど、いじめられっ子にしては案外骨がある。
昔のいじめと今のいじめを一緒にしてはいけないのだろうか。
そう言えばのび太も案外骨があるし、昔はいじめられっ子もそこそこタフだったのかもしれない。
しかしアンノンはどうやってヒロシを強い少年にするつもりだったのか。
その辺りは超能力で何でもありなのだろう。

今回は隊員たちはほとんど活躍なし。
特にアンヌとアマギは完全にやられ役。
同じ鈴木監督の「怪しい隣人」とは違い、アンヌにヒロインとしての見せ場はなかった。
これは本話の中心がヒロシにあるためであろう。
キリヤマたちもあっさりアンノンに敗北しており、こちらもあまりいいところはなかった。
ただ、キリヤマにはアンノンの襲来目的を聞くという最大の見せ場があった。
まあ、結局誤解を解いたのはセブンなので活躍というほどでもないが。

今回は何といってもアンノンの設定の勝利だろう。
地球の観測ロケットが原因で宇宙人が攻めてくるというパターンは前回と同じだが、今回はそれを口実に地球を侵略するのではなく、セブンに仲裁されて矛を収めた点が大きく異なる。
シリーズ構成的には似たような話が続くのは如何とも思うが、結末が逆なのでこれはこれでありだろう。
しかしセブンの説得に承服するアンノンというのはわかるが、セブンとの戦闘に完敗した後だけに負け惜しみにしか聞こえないのが残念(笑)。
まあアンノン星人が大挙してやってきたらさすがのセブンでも危ういので、全面戦争を回避したという意味では説得の意味もあったろう。
何より平和主義的な結末は本話が初めてなので、その辺りは意外と大人向けの話かもしれない。

本話のテーマは2つ。
ヒロシの成長と宇宙人との共存共栄。
まずヒロシの成長であるが、物語的には「本当に強い子はみんなと仲良く出来る子なんだよ」というダンのセリフに集約されている。
ただ、これは客観的に見るといじめっ子たちが折れたともいえ、むしろ成長したのはいじめっ子たちではないかという疑いもある。
しかもいじめっ子たちが改心した理由もよくわからないし、こっちのテーマはやや取ってつけた感が強い。

一方宇宙人との共存共栄。
こちらはセブンの仲裁により誤解が解けアンノンは矛を収めたので、一応は成功したと言えるだろう。
ただ、アンノンは地球人は全く信用しておらず、本当の意味で両者がわかりあえたかは怪しい。
傍から見ると地球人はペダン星を偵察したり、ギエロン星を破壊したり、ザンパ星人を全滅させたりとやってることはかなり過激。
いくら平和利用だなんだと言ったところで、自分たちがやりたいようにやってるだけと思われて仕方ないであろう。

このテーマはさらに宇宙開発と他者の権利の尊重というテーマにも敷衍できるが、ここまで来ると話が大きくなりすぎて解決は無理。
そもそも現実の社会がそういう権利の衝突で満ち溢れており、あまりに相手の権利を尊重すると何もできなくなってしまう。
結局宇宙人との共存共栄というテーマも一筋縄ではいかず、アンノンが帰ったから解決というわけにはいかないだろう。
ただ、一筋縄ではいかないという点は描けているので、テーマ的には描けていると言っても過言ではあるまい。
そういう意味ではなかなか大人な結末と言えるであろう。

本話は子供向けに子供中心に話が作られているが、テーマ的にはむしろ大人向けの作品と言えそうである。
脚本家の藤川氏は素直に子供の世界を描いたらしいが、正直完成作品からはヒロシの成長は読み取り難い。
本来は従であったはずのアンノンの設定が完成作品では主に変えられたのではないか。
本話が子ども中心のファンタジーでありながらセブンらしさを失わないのは、ここまで築かれてきたセブンの世界観の中に上手く話を嵌めこんだからであろう。
その分ジュブナイルとしての出来は今一つになってしまったが、逆にセブンらしいSF的な話としては面白い話に仕上がったと思う。

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