ウルトラ警備隊西へ(前編)


データ

脚本は金城哲夫
監督は満田かずほ

ストーリー

夜明けの神戸港。
海中から潜水服を着た一人の外国人の男が浮上する。
男は上陸してスーツに着替えると葉巻を咥えて歩き出した。
直後に停泊していた船が爆発。
それを見て逃げるように車に乗り込む男。
一方とある教会から一人の外国人の女が出てきた。
それをつける男。
しかし女はタクシーに乗り込み男から逃げる。
悔しがる男。
その頃外国人が立て続けに暗殺されるという事件が発生していた。
ウルトラ警備隊にも事件の連絡が入る。
セールスマン、ジャズメン、観光客、既に3人も殺されていた。
ソガはキリヤマに警備隊が捜査すべきと申し出るが、「そういう事件は警察がやる」とキリヤマは応じない。
「日本の信義に関わることです」と反論するソガ。
ダンやフルハシ、アンヌも応じる。
「それは司令部が決めることだ」とキリヤマ。
食い下がるフルハシに対し「いい加減にしないか。我々の任務はあくまで地球防衛だ。殺人事件の犯人を挙げることじゃない」とキリヤマは一喝する。
そこへマナベ参謀から内線が入った。
司令官室へ呼ばれたキリヤマはマナベから殺人事件の被害者が世界各地の地球防衛科学班のチーフであるという事実を聞かされる。
このことはキリヤマにも秘密とされていた。
キリヤマに事情を話すマナベ。
3か月前、ワシントン基地が暗黒の星と言われるペダン星に観測ロケットを打ち上げた。
しかし無人と思われていたペダン星人には人類と同等かそれ以上の頭脳を持った生物が存在していた。
しかもペダン星人はそれを地球からの侵略と誤解し、復讐すると無電を送ってきたのだ。
緊急事態として六甲山の防衛センターで防衛会議を開くことになった。
しかし、身分を隠して来日した科学者たちが3人も殺されてしまう。
既にペダン星人は地球に来ているのだ。
ワシントン基地では謝罪の電報を打ち続けているがぺダン星からの返事はないという。
以上がマナベの話であった。
「こうなったら、我々地球防衛軍としても何らかの作戦を考えねばならん。したがって、今回の会議はどうしても開く必要がある。フルハシ、ソガ、モロボシの3人を直ちに六甲に派遣し、防衛センターの警備に当ててもらいたい」とマナベ。
出動しようとするキリヤマを呼び止めるマナベ。
マナベは隣の部屋に保護されているワシントン基地の科学者ドロシーアンダーソンも一緒に連れて行くよう指示する。
ドロシーはペダン星人に関する資料を全て握っていた。
ドロシーは変な男につけまわされたため、基地に助けを求めてきたのだという。
サングラスをかけた外人の男の写真を見せられるキリヤマ。
ドロシーとともにシークレットハイウェイを通って六甲山へ向かうダンたち。
六甲山から神戸市内を見渡す3人とドロシー。
その時何者かが狙撃してきた。
咄嗟にドロシーを庇うダン。
撃った男はそのまま車で逃走した。
防衛センターへ急ぐ4人。
防衛センターは地球防衛軍の国際会議場であると同時に、地下には極東基地の誇る秘密の研究所があった。
地下の研究所へ行くと土田博士が武器の研究をしていた。
博士にドロシーを紹介するフルハシ。
「やあ。無事で良かった。あなたは今度の会議の中心人物ですからね」と土田。
「ドクター。会議は大丈夫ですか?ペダン星人は我々の動きを知っています」とドロシー。
「明朝南極の科学基地から2名の仲間が到着します。そうすれば会議は予定通り開かれますよ」と土屋。
「南極から?」
「なあに。今度は大丈夫です。海底深く、原子力潜水艦に乗ってやってくるんですから」。
その頃原子力潜水艦アーサー号は神戸ではなく博多へ向かって海底を進んでいた。
極東基地から神戸は危険だから博多へ行くよう指示が入ったのだ。
潜水艦内でチェスを打つ2人の科学者。
しかしその時何かが潜水艦にぶつかった。
大きく揺れる船内。
SOSの連絡を受けてハイドランジャーで発進するキリヤマたち。
しかし現場に到着する前にアーサー号は既に破壊されていた。
キリヤマ、アマギ、アンヌの3人はそのまま神戸港に上陸し、ダンたちと合流する。
「アーサー号のことを知ってるのはごく一部のものだけです」とダン。
「きっと防衛軍の中にスパイがいる」とキリヤマ。
一方港を歩いていたドロシーは待ち伏せしていた例の外国人の男に見つかってしまう。
手にしていた釣竿を振りかざしてドロシーの胸のペンダントを奪う男。
そこへ隊員たちがポインターで駆けつけた。
「遂に正体を現したなペダン星人」。
男に殴りかかる隊員たち。
しかし屈強な男はソガとフルハシを投げ飛ばす。
その時海の方から何者かが飛び込む音がした。
音のした方へ向かう隊員たち。
そこにはドロシーの着ていた服が浮かんでいた。
「この野郎。僕を誰だと思ってるんだ。この間抜け野郎。犯人を逃がしてしまったじゃないか」。
激高する外国人の男。
「犯人?」とダン。
「あの女こそ宇宙人のスパイだ。仲間を殺した犯人だ」と男。
驚くキリヤマ。
「君はいったい誰だ」とキリヤマ。
男はドロシーを護衛してきた秘密諜報員だという。
男の話によると、ドロシーは船の中で何者かに誘拐されてしまった。
ドロシーが偽物であるという証明にブローチを見せる男。
それは発信機になっていて、アーサー号の情報もそこから漏れていたのだという。
「そういえば彼女はいつもガムを噛んでいた。あのガムを噛む音が通信の暗号に使われていたんだ。くそう。それに気が付かないなんて、なんと迂闊な」。
内心悔やむダン。
「なぜそのことを早く連絡してくれなかったのです」とキリヤマ。
「身分証明書もパスポートも盗まれてしまい、自分を証明するものがないんです」と男。
また、自分の力で宇宙人を始末したかったと男。
本物のドロシーは殺されてるかもしれないという。
その頃防衛センターに、怪しげな飛行物体が数体飛来した。
それはアーサー号を破壊した兵器で、それぞれがロボットのパーツであった。
パーツが合体すると巨大ロボットキングジョーが出現。
防衛センターは迎え撃つも砲弾はキングジョーには全く効かない。
キリヤマに連絡を取る土田。
急いでセンターに戻る隊員たち。
ダンは一人港に残ってウルトラセブンに変身する。
キングジョーと戦うセブン。
しかし圧倒的パワーの前になすすべもない。
エメリウム光線を放つセブン。
しかし全く通用しない。
背負い投げを試みるもそのまま押しつぶされるセブン。
頼みのアイスラッガーも弾き返されてしまった。
組み敷かれるセブン。
立てウルトラセブン。
頑張れ我らのヒーロー。

解説(建前)

諜報員の男はドロシーをどのように神戸に送り届ける予定だったのか。
日本に集まってきた科学者たちはジャズメン等、身分を偽って来日していた。
今回の会議の最重要人物のドロシーが普通の旅客船で来日する可能性は低い。
何らかの偽装がなされていたのは間違いないであろう。
またドロシーの来日については、諜報員の存在など日本支部ですらその方法を把握していなかった。
したがって、南極基地のように防衛軍の乗り物で来たという可能性は低いであろう。
おそらく民間の商船、タンカー等に偽装した船で来日したのではないか。
ただ、男は身分を証明するものを全て奪われてしまった。
そこでやむを得ず船に積んでいた潜水服を着て密入国の形をとったと思われる。

スーツや車を用意したのは誰か。
男はアメリカの諜報員であるから、日本には当然多くの仲間がいるだろう。
その仲間に手配してもらって港の近くに用意してもらったものと思われる。
しかし男は身分を証明するものを奪われ、おそらく仲間との通信機器も奪われていた。
そのため仲間に助けを求めることができなかったのであろう。
もちろん自分のミスは自分で取り返したいという諜報員のプライドもあったであろうが。
では、船を爆破したのは誰か。
これは素直にペダン星人と考えるのが妥当であろう。
ドロシーが偽物とばれないための工作である。

偽ドロシーはどうやってウルトラ警備隊に助けを求めたのか。
普通に考えれば神戸から東京へ来るというのはかなり時間も掛かるし、そもそも日本に不慣れのドロシーに出来る芸当ではない。
また、それなら六甲の防衛センターへ逃げ込む方が早いはずである。
これは恐らく偽ドロシーが警察に助けを求めたことによるのであろう。
防衛センターは厳重な警備がされていたように、軍の機密事項である。
警察にドロシーを防衛センターへ送り届ける能力も権限もないであろう。
そこで警察が警備隊基地まで護送した。
男の写真は恐らく偽ドロシーが提供したものと思われる。

感想(本音)

2期以降のウルトラを見慣れてしまうと、外人が主要人物で登場する本話はなかなかの異色作。
ドロシーが偽物で怪しい外人男が実はいい者という、小さい子供が見たら混乱しそうな捻った展開もベタだが面白かった。
しかし、あれだけの情報で男をあっさり信じるキリヤマたちもどうなのか。
この辺りはワシントンに照会して確認を取ったと脳内補完しておこう。

また何と言ってもドロシーが美人。
昔は外国のドラマ(韓流じゃなく)がゴールデンでやってた時代だったから何も思わなかったが、最近こういう如何にも白人という青い目の美人てテレビで見ないなあ。
時代は移り変わるというのもあるが、今は個性的でないと生き残れない時代になったというのもあり、和洋問わずこういう正統派の美人さんて生き残りにくくなったと思う。
まあ、本題から逸れたのでそれくらいにしておこう。

子供時代に見た本話の印象はやはり合体ロボットキングジョーに尽きる。
ウルトラシリーズ初の本格的ロボット怪獣。
如何にもロボットという造形の中にも個性があり、シリーズでも屈指の人気怪獣というのも頷ける。
そしてキングジョーは異常に強い。
普通ヒーローが一度負けても次はリベンジするものだが、結局セブンはキングジョーに敵わなかった。
必殺技が全て破られマウントを取られるセブン。
展開的には初代マンの「さらばウルトラマン」に近いだろう。
セブン版ゼットンとも言えるのがキングジョーである。

また、キングジョーは合体ロボットの先駆けという存在でもある。
ロボットアニメから戦隊モノまで合体ロボットは今や当たり前であるが、当時はやはり画期的だった。
パーツだけでアーサー号を沈めたり、それぞれが戦闘能力が高いというのも合体ものの定番。
まあ、合体した瞬間に金属感が失われるのが残念だが、これは着ぐるみの宿命で仕方ないであろう。
防衛センターの砲撃をものともせずに接近するキングジョー。
ロボット怪獣の迫力がよく描けていたと思う。

外国人殺害の連絡が警備隊に入っていたが、殺人事件は警備隊の管轄外では?
しかし殺人事件の捜査がやりたいって、隊員たちはよほど暇だったのか?
宇宙から侵略者が頻繁にやってくる世界で、いくら外国人が被害者だからってあそこまで捜査をしたがるというのは異常。
キリヤマが言うことが正論であろう。
ただ、その後被害者が防衛軍の関係者とわかるため、キリヤマがちょっと頭の固い上司みたいになってしまったのは残念。
この辺りは後の防衛会議へと話を繋げるためであろうが、やや強引に感じられた。

科学班の極東基地代表の土田博士を演じるのは特撮ではお馴染みの土屋嘉男氏。
私はそれほど土屋氏の作品は見てないのだが、土田博士はレギュラーにしたいほどキャラが立っていた。
後の「帰ってきたウルトラマン」で伊吹隊長の候補だったというが、土屋氏の伊吹隊長も見てみたかったものだ。
またなかなかキャラが立っていたのが諜報員の外人男性。
他では見ない役者なのでモデルとかエキストラとかそういう人かもしれない。
そして吹き替えはかの山田康雄氏。
素顔はいい人そうな諜報員の声にしては尖がってる気がしたが(笑)、諜報員だからよしとしよう。
しかし「この間抜け野郎」とか妙に言葉遣いが悪いが、日本語をヤンキーにでも教わったのであろうか?

本話で注目はやはりアンヌの復帰であろう。
満田監督に干されていたため不自然に出ていない回があったが、今回の神戸ロケで晴れて復帰となったようだ。
しかし当時の子供たちでアンヌがいないことに気づいてた人はどれくらいいたのか。
私も大人になって言われて初めて気がついたが、所詮隊員なんてその程度の扱いだと思う。
まあ、青少年にとってはアンヌは隊員以上の存在ではあるのだが。

本話で最も気になったのは、ダンが一人神戸港に残って変身したシーン。
急いで変身しないといけないというのはわかるが、行動が不自然過ぎるだろう。
せめて諜報員と一緒に偽ドロシーを追うために残るくらいの設定にしてくれればよかったのだが、この辺りはさすがに乱暴すぎた。
ただ、ダンが乗ってる宇宙船がホークで破壊されたり(笑)、この辺りは何でもありがお約束なので、そういう時代だと思ってスルーするしかあるまい。
「ウルトラセブン研究読本」によると、当初の脚本ではキリヤマたちがダンがいないことに気付くというシーンがあったようだが、「あいつ、又か」「構わん、行け」というセリフを入れるくらいなら無視の方が正解ではある(笑)。

本話のテーマについては後編で語ることにする。
とにかく前編はスパイアクション風展開あり、合体ロボットの活躍あり、地球防衛軍という設定を生かしたスケールの大きさ等々、娯楽編としてとても充実していた。
後編への導入としては文句なしであろう。
キングジョーに組伏されて大ピンチのセブン。
後のシリーズも大ピンチで次回に続くというのは定番だが、やはりこの展開はいやが上にも盛り上がる。
これをリアルタイムで見てた子供たちは1週間気になっただろうな。
再放送世代には実感できないところではあるが、そういう意味ではリアルタイムで見た人ほど思い入れの深い話であろう。
ということで前編はこの辺で。
本サイトもいつ来るかわからない次回へ続くということで、楽しみにお待ち願う(笑)。

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