あっ!タロウが食べられる!


データ

脚本は田口成光。
監督は真船禎。

ストーリー

北島は神社で年男として節分の豆まきをしていた。
その様子を見て憤慨する怪しい老婆。
「我々鬼の仲間を人間どもなんかに苛めさせてたまるものか」。
しかし飛んできた豆を受けて老婆は逃げる。
老婆の正体は豆が苦手な宇宙人きさらぎ星人だった。
老婆は子供にせがまれ豆まきに参加する光太郎を見てさらに憤慨。
「宇宙人のくせに同じ宇宙人をいじめるなんて裏切りも甚だしい」。
光太郎の正体がタロウだと見抜く老婆。
北島と光太郎が家に来るのを楽しみに待つ一郎と二郎。
先に宿題を終えた兄の一郎は2人を迎えに行こうとするが、母親から弟の二郎の宿題を見るように言われ、渋々勉強につきあう。
北島と光太郎が持ってきてくれるお土産の話をする2人。
二郎はタロウの人形を、一郎はジェットコンドルのプラモデルを頼んだという。
羨ましがる二郎。
そこへ北島と光太郎がやって来た。
お土産を手渡す2人。
すると二郎が一郎のプラモデルが欲しいと母親に訴える。
プラモデルを取りあう2人。
しかし母親は一郎にお兄ちゃんだから我慢するように言う。
それを聞いた一郎は憤慨して家を飛び出した。
自分も長男だという北島が一郎を追いかけ、自らは末っ子の光太郎が二郎の面倒を見ることになった。
二郎に一郎が行く場所の心当たりがないかと尋ねる光太郎。
思い当った二郎は光太郎を連れて外へ出ていく。
途中、神社で豆を拾っていく二人。
しかし、その豆はきさらぎ星人が用意した偽の豆だった。
それを知らない光太郎は二郎に歳の数だけ豆を食べるといいとアドバイスする。
「僕は7つしか食べられないけど、お兄ちゃんは10も食べられるなんて不公平だな」と二郎。
「兄ちゃんは漢字だって君より沢山知ってるだろ」と光太郎。
「目方だって多いだろ。ご飯だって沢山食べるだろ。何でも君と同じわけにはいかないよ」。
説得する光太郎。
そこへ老婆の声が。
「ぼうや。沢山豆を食べるがいい」。
姿を現す老婆。
「豆はおいしいよ。豆は人の肉の味がする」。
「何てこと言うんですか。つまらないこと言わないでください」と光太郎。
すると老婆は目から怪しい光を放った。
苦しむ光太郎。
「ウルトラマンタロウは人間に食べられてしまう」と言い残し姿を消す老婆。
「今のは宇宙人かもしれない」と光太郎。
二郎に一郎がいると思われる河原に先に行くよう指示する光太郎。
一方河原では北島と一郎が話していた。
「どうして歳が上だから、我慢しなきゃならないの?」と一郎。
「君たち兄弟にとって、それが一番いい方法だからさ」と北島。
「そんなことないよ。二郎の奴が得をして、俺はいつも損をしてる」。
「君と二郎君が逆だったら、どうなる?君の方が体も大きいし、力も強いし、喧嘩したら確実に勝てるだろ?」
頷く一郎。
「そこが兄貴の辛いところさ。力が強い分だけ、我慢する力も強いんだ」と北島。
「そうかなあ」と一郎。
「そんなこと言ったら、俺は欲しいものも全部取られてしまうもん。損だなあ。やっぱし」。
「君はそんな二郎君のことを憎らしいと思うかい?」と北島。
「憎らしいと思ったこともあるけど、弟だもんな」と一郎。
「やっぱり二郎君のことかわいいと思ってんだろ?」
「あいつは俺のことなんかこれっぽっちも思ってやしないんだから」と一郎。
川に石を放り投げる一郎。
すると突如川から老婆が現われた。
飛び上がる老婆
着地した場所には二郎が。
「ウルトラマンタロウはお前に食べられて死ぬんだよ。ゆっくりゆっくり苦しんで死ぬんだ」と老婆。
「お前をいじめれば、タロウも現れるのさ」。
突如巨大化する老婆。
老婆が杖を振り回すと怪獣オニバンバに変身した。
応戦する北島。
しかしオニバンバはものともしない。
逃げる二郎を追うオニバンバ。
土管の中を必死に逃げる二郎。
合流した光太郎もオニバンバを攻撃。
しかしオニバンバの吐く炎で近寄れない。
土管に指を突っ込んで二郎を捕まえようとするオニバンバ。
光太郎たちと近くまで来た一郎は「二郎頑張れよ」と声を掛ける。
「兄ちゃん。助けて」と二郎。
石を投げて二郎を助けようとする一郎。
怒ったオニバンバは一郎の方へ迫ってくる。
その隙に二郎を助ける北島。
さらにZATのスカイホエールとコンドルも飛んできた。
しかし光太郎と一郎はオニバンバの吐く白い糸に絡め取られてしまう。
白い球状になった糸の中に閉じ込められる二人。
オニバンバはその球をこねて小さな豆にしてしまう。
「タロウは子供に食べられるんだよ」。
そう言ったオニバンバは2人の入った豆を豆まきの豆の中に紛れ込ませる。
姿を消すオニバンバ。
「兄ちゃんは死んでしまった」と二郎。
「一郎兄ちゃんはもういない。魚釣りに連れて行ってくれたのも兄ちゃんだった。自転車を教えてくれたのも兄ちゃんだった。もう宿題を見てくれる人もいない。喧嘩する相手もいない。兄ちゃーん」。
涙を流す二郎。
兄ちゃんの豆だと言って零れた豆を拾う二郎。
「光太郎さん。あんなに元気だったのに」と森山。
「宇宙人の婆さんめ。きっと兄ちゃんの敵を取ってやるからな」と二郎。
「神社にいたお婆さんが宇宙人に変身したんだ。鬼をいじめる奴は許さないと言って」。
説明する北島。
「そうか。宇宙人の正体は鬼だったのか」と荒垣。
今夜の節分の豆まきに鬼が現われるかもしれないと警戒するZAT。
パトロールを強化するZAT。
「兄ちゃん、豆が大好きだった。僕も豆を食べて兄ちゃんのように勇気のある子になるぞ」と二郎。
南原が豆を食べやすいようにとヘルメットを差し出す。
その中へ光太郎たちの入った豆と一緒に拾った豆を入れる二郎。
衝撃で揺れる光太郎たち。
光太郎の銃のエネルギーは僅かしか残っていない。
焦る光太郎。
「自分の歳の数だけ食べるといいことがあるって、東さんも言ってたんだ」。
自分の歳を数えて豆を食べる二郎。
中から銃を撃ち、豆に穴を空ける光太郎。
しかし穴から外を覗くと二郎の大きく空いた口が。
「食べられてしまうぞ」と光太郎。
「豆を食べて強くなって、兄ちゃんの敵を取るんだ」。
「もうすぐタロウは食べられてしまうぞえ」。
土管の中からその様子を見ている老婆。
豆はとうとう後二つになってしまった。
「お前の気持ちはわかったわかった。お願いだからこの豆を食べるな」。
中から必死に叫ぶ一郎。
「俺たちはこの中にいるんだ」。
光太郎も叫ぶ。
「あと2つだ。2つに1つの命とはこのことだぞえ」と老婆。
「君は兄さんを食べようとしているんだ」。
中から叫ぶ光太郎。
「やめろー。二郎ー」。
必死に叫ぶ一郎。
とうとう2人の入った豆だけになってしまう。
それを見て思わず高笑いしてしまう老婆。
それに気づいた二郎は2人の入った豆を落としてしまう。
他の豆の中に落ちる2人の入った豆。
「あの婆さんだ。あいつが宇宙人だ」。
老婆に気づいた二郎はZATにそのことを教える。
攻撃するZAT。
「かくなる上はタロウの豆もろともZATも焼き殺してくれるわ」。
炎を吐く老婆。
森山が逃げるように促すも二郎は兄ちゃんの敵を取ると老婆の方へ近づいていく。
巨大化してオニバンバに変身する老婆。
「鬼は外。鬼は外。兄ちゃんを返せ」。
オニバンバに向かって豆を投げつける二郎。
二郎は光太郎と一郎の入った豆をオニバンバに投げつける。
豆を棍棒で打ち返すオニバンバ。
オニバンバが光太郎たちの入った豆を打ち返すと、豆は真っ二つに割れ、中から光太郎たちが飛び出した。
元の大きさに戻る2人。
落下のさなかタロウに変身する光太郎。
無事一郎を助けたタロウはオニバンバの棍棒を奪い、オニバンバを痛めつけた。
「鬼は外。鬼は外」。
隊員たちと一緒に合唱する二人。
その声に合わせてオニバンバに豆を投げつけるタロウ。
豆が苦手なオニバンバは空を飛んで逃げ出す。
「畜生。来年のにはまた来るからなあ。それまで覚えてろ~」。
捨て台詞を吐くオニバンバ。
オニバンバに向かって忘れ物の棍棒を投げつけるタロウ。
棍棒は見事オニバンバの顔に命中。
オニバンバを見逃してやるタロウ。
その夜は満天の星空。
しかし相変わらず一郎と二郎は北島のプレゼントの件で喧嘩をしていた。
呆れる母親。
「まあまあいいじゃないですか元気で」と荒垣。
荒垣が帰って豆まきをしようと言うと、豆を持った光太郎が現われた。
驚く隊員たち。
荒垣たちに豆を投げつける光太郎。
最後は皆で豆まきをする隊員たち。

解説(建前)

きさらぎ星人は何をしに地球に来たのか。
これはやはり地球で自分たちの仲間が迫害されているという噂を聞いてやって来たのだろう。
ただ、やって来たのは老婆一人。
半分は海外旅行気分だったのではないか。
星を挙げて本格的に事を構えようということではないと思われる。
タロウが最後オニバンバを見逃したのもその辺りを慮ったのではないか。
ただし、あれだけ暴れたのだから被害も相当出たとは思うが。

感想(本音)

節分をテーマに書き上げたのだろうが、光太郎が豆に閉じ込められて食べられそうになるという、まさに童話チックな話。
人によってはふざけてるとしか思えない話なのだが、個人的にはよくこんなテーマで一本書き上げたなと逆に感心する。
タロウ脚本は誰でも書けるなんて言われるが、案外こんな話書くのは難しいと思うぞ(笑)。
正直侵略宇宙人が来てウルトラアイを盗んでといったシナリオの方が誰でも書けると思う。
まあ、それは置いておいて、感想を綴ることにしよう。

今回はやはり老婆のインパクトが大。
ねるねるねるねのCMに出てきそうな風貌だが、演じる役者さんはこれ以外の作品にはほとんど出ていないようだ。
正直滑舌も悪くセリフ回しも今一つでセリフを書き抜くのに苦労した。
ちょっと訛ってる感じからは地方の劇団の人だろうか?
かようになかなか味のある役者さんだったのだが、不気味さではやはり第二形態が一番であろう。
鬼婆の面が炎を吐くシーンはエース23話を思い出させたが、あの話も監督は真船氏。
今回もなかなか不気味なシーンに仕上がっていた。

怪獣体のオニバンバはやや雑な造形。
エースに出てきたオニデビルと比べるとやっつけ感は否めない。
ただ、レオのオニオンに比べるとまともだけどね。
オニバンバ自体はあんまり強くないのだが、光太郎と一郎を豆に閉じ込める超能力のおかげで結構な強敵。
こういう展開でタロウが絶体絶命に陥るという発想がなかなか面白かったと思う。
それを意識した真船演出も冴えていた。
特にただ豆をつまむだけなのにそれを何度もリピートさせて、絶体絶命感を演出していたのはさすが。

今回の話は一郎と二郎の兄弟愛。
普段は喧嘩が絶えないが、思いやり合う二人。
二郎役はレオのトオル役でお馴染み新井つねひろ氏。
どことなく屈折した感じはレオのトオルを思い出させるものだ。
ただ、髪がボサボサなのはなぜだろう。
一方、一郎役の小松陽太郎氏も子役として数々の映画やドラマに出演。
雰囲気も新井氏と似ており、実の兄弟と言われても違和感はないだろう。
ところで新井氏には当時既に芸能界で活躍する康弘氏という実の兄がいたはず。
本来なら康弘氏が兄役でもよかったと思うが、やはり年齢差が大きいため役に合わなかったのであろう。

今回の光太郎の変身も例によってバレバレ変身。
ただ、空を飛びながらだと相手を見る余裕なんてないだろうから、それで不問に付されているのかもしれない。
過去にもエースのサイゴン回の次郎君やロードラ回の六郎の親たちなど同様の例はあった。
この辺りがバレバレ変身の限界域なのだろう。
タロウの登場により助けられた一郎。
しかし光太郎は戻ってこない。
その割には呑気なZAT隊員たち。
この辺りはお約束というか、どうせ光太郎は無事なんだろうという隊員たちの楽観があったように思う。
一郎から一緒に豆に閉じ込められてた話は聞いていただろうし。

今回ちょっと疑問に思ったのが、あそこまでタロウを殺そうとしていた敵をあっさり逃がしたこと。
「ゆっくりゆっくり苦しんで死ぬんだ」とヒッポリト星人みたいなことも言ってるし(そこまで恨むようなことか?笑)。
しかも敵は来年も来ると言っている。
コミカルな話だから爆殺するオチよりはいいのかもしれないが、来年タロウがいる保証もなく、節分の豆まきの子供たちが危険に晒されるのだとしたら看過できるものではない気がするのだが。
まあ、老婆の気まぐれみたいな感じだからわざわざ来ないのかもしれないが、やはりここは定番の「もうしませ~ん」という反省を促すオチにした方がよかったように思う。

本話のテーマは前述したように兄弟愛。
ただ、基本コミカルな娯楽編なので、そこまで掘り下げてはいない。
「喧嘩する相手もいない」と二郎が兄のことを回想するシーンなどもあるが、それも一郎の「お願いだからこの豆を食べるな」と懇願するシーンのインパクトにかき消されてしまう(笑)。
逆にあまりテーマに拘らなかったのが作品的にはちょうどいいバランスになったと言えるだろう。
きさらぎ星人の主張もエースのナマハゲほどの説得力(?)はなかったし、娯楽に徹したのが結果的には正解だった。

本話の脚本は田口成光。
兄弟愛というテーマを中心にタロウのピンチや節分というイベントが無理なくまとめられており、非常に見やすい話。
きさらぎ星人がやってくるのは唐突ではあるが、タロウを狙う理由もはっきりしており、話の都合に合わせて暴れるのではなく、星人の行動に筋が通っているところも好感が持てる。
この辺りの安定感はさすがメインライターといったところか。
監督は前回に引き続き真船禎。
個人的に好きな監督というのもあるが、スローモーションやリピートなど相変わらず遊び心満点の演出が楽しい。
それでも老婆の不気味さ、豆が減っていく緊張感などしっかりポイントは押えており、こちらもさすがであろう。

本話は大人目線からは完全にギャグ回なのだが、子供の頃はタロウが食べられるというタイトルにもある通り、結構手に汗握って見ていた記憶がある。
話のテンポも良く、兄弟愛というテーマも一貫しており、見返してみると意外とよく出来ていて驚いた。
エピソードとしては変化球なのだが、ちゃんとストライクゾーンに入っているという感じだ。
このエピソードを見ていて思い出したのが初代マンの一連の佐々木・実相寺作品。
ガヴァドンやスカイドン、シーボーズなどこういうコミカルなノリは実相寺・佐々木コンビが得意とするところ。
やはりタロウは初代マンのリメイクというか、リブート的な作品なんだなと改めて感じた。
そういう意味でもタロウらしいエピソードと言えるであろう。

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