幻の母は怪獣使い!


データ

脚本は大原清秀。
監督は深沢清澄。

ストーリー

ZAT基地へ帰還する光太郎。
基地では森山が持って来たオウムに言葉を真似させようと、隊員たちが賢明になっていた。
しかしこのオウムは全然真似をしないという。
餌を買い出しに森山と二人で出かける光太郎。
そこで中学時代の後輩島田にばったりと出くわす。
島田は遠洋漁業のまぐろ漁船の乗員だという。
島田が家に戻ると、公園でサッカーをしていた弟トモユキが駆け寄ってきた。
その頃家の中では、島田の父がロボット工学についての本をテーブルの上に広げて勉強していた。
2人が帰ってきたのを知り、慌てて本を隠す父。
島田が挨拶をしても父は無愛想に自分の部屋に戻ってしまう。
「親父の奴、相変わらず無愛想だな」と島田。
「でも程度があるよ。何があったって、ニコリともしないんだもの」とトモユキ。
「いいじゃないか。変わり者なのさ」と島田。
翌朝、早くから釣り具を持って家を出る島田の父。
「いってらっしゃーい」。
ベランダから声をかけるトモユキ。
「よお。行ってくるぞ」と父。
顔を見合わせて驚く島田とトモユキ。
「いつもはろくに返事もしないのに」と島田。
島田の父が歩いているところに車に乗って光太郎がやってきた。
「やあ、東さん。いつもタツオがお世話になっています」と父。
タツオに会いに家に寄って欲しいと言われ、光太郎は車を助手席のさおりに任せて島田の家に向かう。
島田の父に車に乗らないかと誘うさおり。
しかし島田の父は顔を強張らせてそれを断った。
「私、何か悪いこと言った?」とさおり。
「島田のお父さんはどういうわけか、車が大嫌いなんだよ」と光太郎。
「親父も昔はああじゃなかったんですけどね。おふくろが亡くなってからすっかり人が変っちまって」と島田。
島田の母親は島田が小学校4年の時、居眠り運転のトラックに轢き殺されたという。
母親の部屋は当時そのままに残っていた。
片付けようとすると、島田の父が怒るという。
部屋には島田の母が飼っていたというオウムの鳥かごが。
エレジアという名のオウムは島田の母が亡くなった途端に餌を食べなくなり死んだという。
島田が鳥かごを持ち上げると、その下にロボット工学の本が。
「お父さん、変った本を読んでるんだねえ」と光太郎。
「変だな。親父がこんな本読むなんて」と島田。
その頃釣り具を持った父は、湖畔の廃屋の地下室に入っていった。
地下室には多くのマネキンが。
白衣に着替える父。
大きなカプセルの前に立つ島田の父。
カプセルを開ける島田の父。
そこにはウェディングドレスを着た女性の姿が。
「聖子」と呟く島田。
「聖子。お前が死んでから今日でちょうど10年になる。あれからの私はどうしてもお前にもう一度会いたくってねえ。見よう見まねでロボット工学を勉強した。もちろん、子供たちには内緒でね。そしてとうとう、お前のロボットが完成したんだ。聖子、今のお前は私と結婚したあの日にそのままだよ」。
「あの時のお前は花束をこんな風に手に持って」。
ロボットの聖子の手に花束を持たせる島田の父。
「聖子。喜んでおくれ。私たちはまた会えるんだ。さあ、生き返ってあの懐かしい笑顔を見せておくれ」。
カプセルを閉め、起動スイッチを入れる島田の父。
しかしロボットの聖子は起動しない。
「きっとまだ何かが足りないんだ。私の技術が未熟なんだ」。
「今日はもう帰るよ。だが、聖子。私は諦めない。何年掛かってもお前を蘇らせてみせる」。
カプセルを閉めて廃屋を出る島田の父。
しかしカプセルの中では聖子の鼓動が動き始めた。
エンゲージリングに落ちた島田の父の涙が奇跡を起こしたのだ。
動き出した聖子は花束を持ったまま廃屋の外に出る。
子守唄を歌いながら湖畔を歩く聖子。
夜道を歩く聖子。
それを通りがかったパトカーが見つける。
警告する警官。
しかし聖子はいきなりパトカーに向かって走りだし、体当たりして車を破壊してしまう。
爆破炎上するパトカー。
そこへ飲みに行った帰りの光太郎と島田が通りかかった。
島田は酔っぱらってベロンベロンになっていた。
炎上するパトカーを見て近づく光太郎。
傍らに佇むウェディング姿の女性を見て驚く島田。
「母さん」。
笑いながら走り去る聖子。
「今の人、亡くなった母さんにそっくりだったんです」。
「そんな馬鹿な。目の錯覚じゃないのか」と光太郎。
家に帰り、島田の父に報告する2人。
「母さんの幽霊?」
驚く島田の父。
「しかし似てたなあ。母さんの結婚式の写真に。ウェディングドレスを着て、バラの花を持ってさあ」と島田。
思い当たる島田の父。
そこへラジコンのダンプカーが走ってきた。
「トモユキ、やめなさい」。
怒鳴りつける父。
「父さんが車を嫌いなこと知ってんだろ」と父。
家を出る父を不審に思い後をつける2人。
廃屋の中に入っていく島田の父。
「どうして親父の奴、こんなところに」と島田。
中へ入ろうとする2人。
しかし島田の父が血相を変えて出てきた。
「聖子~。何処行ったんだ~」。
辺りを探す父。
その隙に廃屋に入る2人。
地下室を見て驚く2人。
「前に見たことがある。これはロボット製造装置だぜ」と光太郎。
設計図を見つける光太郎。
「島田、わかったよ。君のお父さんはお母さんのロボットを作ってたんだ」。
「まさか」と島田。
島田に聖子の結婚式の写真を見せる光太郎。
その頃聖子は自分の墓へ向かっていた。
聖子が花束を掲げるとそこへ落雷が。
そのエネルギーを自分の墓石へ向けて放出する聖子。
すると聖子と一緒に葬られていたオウムのエレジアが怪獣となって復活した。
「エレジア、お聞き。私は車が憎い。お前の力で日本中の車を一台残らず壊しておしまい」。
エレジアに命令する聖子。
道路を破壊し、車を破壊するエレジア。
光太郎と北島が地上から攻撃していると、そこへ島田が走ってきた。
「何をしに来たんだ。危ないぞ」と光太郎。
すると北島がビルの上からエレジアに指示を出す聖子を発見する。
「母さんのロボットだ。あのロボットが怪鳥に命令してるんだ」と島田。
聖子を破壊しようとする光太郎。
そこに島田の父がやって来て光太郎を止める。
「父さんの作ったロボットが何をしたか。父さんもその目で見たろう」と島田。
「すまん。あのロボットには私の車を憎む気持ちが乗り移ってしまったんだ。しかしあれは私にとって」と父。
「母さんだって言うのかい?母さんが怪鳥に人殺しなんかさせるものか。あれはただのロボットさ。父さん。目を覚ませよ」。
そこへ荒垣から連絡が入る。
怪獣は世界モーターショーの会場へ向かっているという。
荒垣からロボットを破壊するよう命令を受ける光太郎。
それを聞いた島田は自分の手でロボットを破壊するという。
屋上で聖子と対峙する島田。
「動くなロボット。哀しそうな眼で見てもダメだ。お前を破壊する」。
銃の照準を合わせる島田。
そこへ聖子の子守唄が聞こえてきた。
それは島田が幼いころ母がいつも歌ってくれた子守唄であった。
「そんな唄やめろ。くたばれロボット」。
しかし引き金を引けない島田。
「母さん」。
膝から崩れる島田。
聖子はエレジアに飛び乗って去っていく。
「島田。どうした」と光太郎。
「東さん。すいません。僕は。僕には出来なかった」と島田。
「島田。誰だっておふくろの姿を撃てやしないよ。おそらく僕にだってできなかったさ」と光太郎。
逃げる子供たちを車に乗せるさおり。
そこには偶然島田の弟トモユキが乗っていた。
しかしエレジアはさおりの車を執拗に追う。
さおりの車を鷲掴みするエレジア。
車にトモユキが乗っているのを見てトモユキの名を呼ぶ島田の父。
鉄塔の上に立ち高笑いする聖子。
「聖子!あの車にはトモユキが。お前が産んだ子が乗っているんだ」と父。
「父ちゃん、怖いよ」とトモユキ。
「あれだけやれば、もう車への恨みは晴れたはずだ。頼む。もうやめてくれ」と父。
そこへ光太郎と北島、島田がやってきた。
聖子を銃で撃ち落す島田。
破壊される聖子。
一瞬動きが止まるエレジア。
エレジアは持っていた車を投げ飛ばした。
それを見てタロウに変身する光太郎。
タロウは車をキャッチしてさおりたちを救出する。
エレジアと空中戦を展開するタロウ。
しかしエレジアの吐く炎を浴びタロウは墜落。
さらに攻撃を受ける。
ストリウム光線を浴びせるタロウ。
大破するエレジア。
アンドロイド聖子の亡骸の前に立つ島田たち。
「父さん。これでいいんだ。これは悪魔の魂を持つロボットだったんだよ」と島田。
「しかし、かわいそうなことをしたな」と島田の父。
聖子に向かってリライブ光線を放つタロウ。
蘇る聖子。
聖子はそのまま昇天し、中天の星となった聖子は宇宙のロケットの道しるべとなった。
ZAT基地ではなかなか言葉を覚えなかったオウムがやっと言葉を覚えた。
「腹減った。腹減った」とオウム。
「誰だい。変な言葉を教えたのは」と南原。
「どうせ東さんよね」と森山。
否定する光太郎だが、「タロウだよ」とオウム。
爆笑する隊員たち

解説(建前)

アンドロイド聖子の動力源は何か?
さすがに島田の父でも新しいエネルギーまでは発明できないだろうから、電力と考えるのが妥当である。
巨大な充電池でも備えているのであろう。
ただ、それにしては聖子のエネルギーは無尽蔵である。
単純に電力のみとは考えづらい。
やはり何かが聖子に乗り移ったと考えるのが妥当であろう。

では、その何かとは何か。
まず本物の聖子が乗り移っているのは間違いあるまい。
これは島田が聞いた子守唄からも確実である。
では、車を破壊したのも聖子本人の恨みからなのか。
島田の父は自分の車を恨む気持ちが聖子に乗り移ったと言っている。
もちろん、それもあるだろう。
しかし、それだけでここまでの破壊活動ができるであろうか。
やはりもっと多くの交通事故の犠牲者の恨みが原動力となっていると考えた方がいいだろう。

おそらく東京中を彷徨う交通事故犠牲者の魂が雷となり聖子に乗り移ったのであろう。
そしてその魂はエレジアにも乗り移りエレジアを怪獣へと変えた。
あるいはマイナスエネルギーやカオスヘッダーの類かもしれない。
いずれにせよ車を憎む島田が作ったアンドロイド聖子がそういう魂の依代となったのである。
ただ、最後聖子は昇天して宇宙の灯台となった。
タロウのリライブ光線によって成仏できたとも解釈できるが、それだけではないであろう。
車が憎くてもそれに乗る子供たちには罪はない。
被害者たちの魂もそれに気づいたのではないか。
それにより被害者たちの魂も聖子と一緒に成仏できたのである。

感想(本音)

よく言われるように、怪奇大作戦テイストのエピソード。
ただ、解釈には苦労した。
中途半端にリアルな方が実は解釈が難しい。
怪奇大作戦もトリックというか使ってる道具自体はかなり無理だし。
物質を転送したり、人体を真空バラバラ切りにしたり。
まあ、そういう奇想天外というか、外連味があるからこそ面白いのであるが。
話が逸れてしまったので、以下感想に戻る。

島田の父が独学でアンドロイド聖子を作ってしまうのはやはり無茶。
そもそも島田の父の職業は何であろう?
島田が意外がっていたことから、エンジニアの類ではあるまい。
家では無愛想なのに外で営業の類をやってるとは考えにくいし、経理の類であろうか。
いくらなんでも学が全くないのにロボット工学が理解できるとは思えないので、それなりにいい大学くらいは出てるであろう。
その割には狭い団地に住んでいるが、それは奥さんとの思い出を守るため。
また、ロボットの研究には相当お金が掛かると思われるので、収入のほとんどは研究に回していたのではないか。

光太郎の後輩の島田を演じるのは、レオの白土隊員役でお馴染み松坂雅治氏。
氏はエースにも出演しており、地味に3作連続で出演している。
船員と聞いて光太郎の船乗り時代の後輩かと思ったが、意外にも中学時代の後輩であった。
島田は子供の頃からこの団地に住んでいることから、光太郎もこの付近に住んでいたことが判明。
ということは、白鳥家のことも知っていた?
ちょっと風来坊のイメージが変わってしまう。

車に対する恨みが怪獣を生み出すという展開は初代マンのヒドラを思い出す。
そう言えばヒドラもエレジアも鳥がモチーフになっている。
ヒドラを操っていたのはアキラ少年の霊、エレジアを操るのは聖子の霊。
共通点が多いが偶々なのか。
それにしても、この頃の特撮は妙に交通事故を題材にしたものが多い。
これも世相の反映か。
怪奇大作戦「果てしなき暴走」、新マンの「怪獣シュガロンの復讐」などなど。
当時は交通事故で毎年1万人以上死んでいたというから、今より身近なテーマだったのかもしれない。

自分で聖子を撃つと言って結局撃てない島田。
勝手にZATの武器持ち出しておいて、やっぱり撃てないって、おいおい。
光太郎の言うとおり、そりゃ自分の母親そのものの姿をしたロボットなんか簡単には撃てまい。
まあ、子守唄まで同じ声で歌われたら仕方ないとは思うが、一体何がやりたかったのか。
最後は自らの手で撃ち落としたとはいえ、結局ZATの邪魔をしただけであった。
ただそれを許した光太郎にも責任はあろう。
「おそらく僕にだってできなかったさ」って、じゃあ最初から止めとけ(笑)。

今回は健一の出番はなし。
さおりは車を運転して襲われる役どころだが、まあそれなりには目立っていただろう。
怪獣エレジアの鳴き声はバードンと同じ。
鳥怪獣ということで使いまわしているのだろうが、子供の頃はバードンの鳴き声はトラウマだったので、エレジアも怖かった。
今見てみると、強豪の多い鳥怪獣の割には結構弱いが。
着ぐるみも使い回しっぽいかな。
リライブ光線で復活する聖子。
タロウ終盤は結構何でもあり。

本話の脚本は大原清秀氏。
タロウのみの参戦となった大原氏のウルトラシリーズ最後の脚本である。
大原氏の特徴は人間ドラマをしっかり描いているところ。
デッパラス編の青春ドラマ、バサラ編の社会ドラマ、パンドラ編の恋愛ドラマ、メフィラス星人やマシュラ編の子供たちのドラマ。
後に大映ドラマで活躍する氏の片鱗が窺える。
本話も夫婦愛、家族愛をメインに据えて描いている。
交通事故の問題はあるものの、亡くなった妻を忘れられない哀しい夫の物語だ。

ただ、怪奇大作戦との違いは、島田や島田の父が最終的には生きている家族であるトモユキを選ぶところ。
これが怪奇大作戦だと、アンドロイド聖子と一緒に死ぬ末路であったろう。
この辺りがタロウらしさか。
そして聖子自身もしっかり昇天。
甘い展開ではあるが、子供向けとしては妥当な結末である。
まあ、最後に昇天したのが本物の聖子かアンドロイド聖子か議論の余地はあると思うが、アンドロイド聖子自身も何となく不幸を背負ったキャラ。
大元を辿るとやはり交通事故が悪いので、アンドロイド聖子も純粋な悪役とは言えない。
ある意味、アンドロイド聖子も交通戦争の犠牲者ではなかろうか。
そういう割り切れなさが残るところは、やはり怪奇大作戦的とも言えるであろう。

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