ウルトラの国大爆発5秒前!


データ

脚本は佐々木守。
監督は真船禎。

ストーリー

「ウルトラの国、攻撃30秒前」。
「攻撃25秒前。いよいよウルトラの国の最期だ」。
不敵に笑うテンペラー星人。
「我々テンペラー星人の全宇宙征服の野望の下に、あとわずかで潰え去るのだ」。
とその時チンパンジーの人形のシンバルが鳴った。
「攻撃を中止せよ。ただいま入った情報によれば、ウルトラ兄弟たちはウルトラの国にはいない」。
「なんだと。ウルトラマンやセブンたちは一体どこへ行ったのだ?」
「情報によれば、彼らはタロウに招待されて地球に遊びに行ったらしい」。
ウルトラの国への攻撃を中止し地球へ向かう星人の宇宙船。
その頃地球では光太郎に招待されたウルトラ兄弟たちが地球人の姿に戻って海岸へ集まっていた。
お互い自己紹介する兄弟たち。
ゾフィは一人宇宙パトロールのため遅れていた。
光太郎が用意したバーベキューに舌鼓を打つ兄弟たち。
その頃東京では兄弟をおびき寄せるためにテンペラー星人が街を破壊していた。
「ウルトラ兄弟何処だよ~」と星人。
兄弟たちとバーベキューを食べていた光太郎の下に星人出現の連絡が入る。
「せっかく兄さんたちと食事してるっていうのに」と光太郎。
「何を言うんだ。それがお前の務めじゃないか」とハヤタ。
ハヤタに促されて出撃しようとする光太郎。
そこへゾフィが待ったをかけた。
ゾフィによると東京を襲っているのはテンペラー星人だという。
「前からウルトラの国を狙っていたあのテンペラー星人が」とダン。
「奴は俺たちがここにいることを知って、地球を攻撃し始めたんだ」と郷。
「兄さんたち。どうやらひと暴れしなきゃならないようですね」と北斗。
「待て、今俺たちが出ていけば東京は戦場になってしまうぞ」とハヤタ。
ダンは光太郎に星人をこの海岸へおびき出すように指示をする。
「俺一人でですか?」と光太郎。
お前ひとりでやるんだとハヤタとダンに諭され東京へ向かう光太郎。
「恨むならウルトラ兄弟を恨め」。
東京を火の海にする星人。
その頃ZATでは宇宙研究家として世界的権威である大谷博士を招いて、対策を考えていた。
「おそらくテンペラー星人ではないかと思われますが、もしそうだとすれば一大事です」と博士。
博士によると、テンペラー星人と言うのは今まで予測されてはいたが、実際に存在するかどうかは疑われていた凶悪類ない宇宙人だという。
基地に一緒に来ていた博士の息子の栄一は星人に会わせて欲しいと父親に頼むが、聞いてもらえない。
「私とここにいましょう」と森山。
そこへ光太郎も駆け付けた。
森山を残して出動する隊員たち。
「出てこい。ウルトラ兄弟」。
街を破壊し続ける星人。
一緒に出撃した博士が見たところ、やはり暴れているのはテンペラー星人に間違いないとのことだった。
ただし、弱点まではわからないと博士。
ZATの攻撃を受けてもびくともしない星人。
「引込め地球人。俺が探しているのはウルトラ兄弟だ」と星人。
ウルフで地上から攻撃する光太郎。
しかし星人の火炎攻撃でピンチに陥る。
タロウに変身する光太郎。
「待っていたぞ、ウルトラマンタロウ。ほかの兄弟たちは何処にいる」と星人。
少しずつ後ずさりをするタロウ。
星人が自分を追ってくるとわかったタロウは海岸の方へと走りだした。
一緒に走り出す星人。
それを見たZATはタロウを援護する。
しかし星人はタロウの作戦を見破ると、ウルトラ兄弟が出てこないと地球全体を灰にすると宣言する。
仕方なく兄弟を呼びに行くタロウ。
「悪いのはウルトラ兄弟だ。恨むなら奴らを恨め」。
破壊を続ける星人。
一方光太郎は兄弟のところにたどり着き、援護を求める。
出て行こうとする北斗。
しかしハヤタは自分たちが出ていくと東京が全滅してしまうと制止する。
「しかし、このままでも既に東京は」。
反論する郷。
「ただちに部署に帰るんだ」とダン。
「助けてくれないんですか、兄さん」と光太郎。
「甘ったれるんじゃないタロウ」とゾフィ。
「ゾフィ兄さんの言うとおりだ」とハヤタ。
タロウ一人で戦うよう説得する兄弟たち。
タロウが頑張らないとウルトラ兄弟とテンペラー星人の全面戦争が地球で行われることになるとダン。
「帰れ。タロウ。お前の任務の重さを考えるがいい」とゾフィ。
「タロウ、いつまで我々を頼りにするんだ」とダン。
ハヤタとダンに促されて東京へ戻るタロウ。
「タロウがかわいそうだよ」と郷。
「俺だけでも助けに行く」と北斗。
助けに行こうとする北斗と郷を止めるダン。
「今こそタロウが逞しいウルトラ兄弟の一人になれるかどうかという大切な時だ」。
「俺たちにただ見物してろというのか」と郷。
「我々には我々の任務がある。それは理由なく攻撃されている地球の人たちを助けることだ」とハヤタ。
「俺たちが出て行けば同じことになるじゃないか」と北斗。
たった一つ方法があるとゾフィ。
その頃街はテンペラー星人の破壊行為が続いていた。
栄一と健一は止めるさおりを振り切って星人と戦おうとする。
持っていたウルトラマンボールを投げつける栄一。
一緒にボールを投げる健一。
しかしボールはただの玩具で星人には通用しない。
星人の攻撃を受け操縦不能になるホエールとコンドル。
墜落しそうになったところをゾフィに助けられる。
気を失って海岸に横たわるZAT隊員たち。
隊員たちに乗り移るのがゾフィの言うたった一つの方法だとハヤタとダン。
「そんな面倒なことをしなくても、このままでいいじゃないか」と北斗。
しかしハヤタは自分たちの地球での姿は星人に知られているはずと反論する。
そうすればタロウの近くにいて、タロウに気づかれずに守ってやれると納得する郷。
兄弟たちは各々隊員たちに乗り移っていく。
早く行こうという上野エースに対し、荒垣初代マンは「我々がZATの隊員に変身してることはタロウには最後まで内緒だぞ」と兄弟に告げる。
「タロウを鍛えるんだ。どんなことがあってもタロウは助けない」と北島セブン。
「それじゃタロウがかわいそうですよ」と南原新マン。
大谷ゾフィは「今まで我々はタロウを庇い過ぎてきた。地球人の諺に獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすという言葉がある。わかるか。今こそ俺たちはライオンの気持ちでタロウを苦難に立ち向かわせるんだ。テンペラー星人に一人の力で勝ってこそ、タロウは名実ともにウルトラ兄弟の一人としてウルトラの国でも認められるだろう」と皆を説得する。
一方タロウはテンペラー星人相手に苦戦を強いられていた。
ストリウム光線も星人には通用しない。
手から光の鞭を出し、タロウを痛めつける星人。
「出てこい。ウルトラ兄弟。タロウが死んでもいいのか」。
「兄さん助けてくれ」。
助けを求めるタロウ。
力尽きて変身を解除するタロウ。
兄弟たちのいる海岸へ助けを求めに行く光太郎。
その頃ZAT基地では健一やさおりたちが隊員の葬式を挙げていた。
「パパは宇宙人と戦って死んだんだ。俺は悲しくなんかないぞ」と栄一。
「ZATの人たちだってみんな、地球のために死んだんだ」と健一。
泣くさおりたち。
そこへ光太郎が戻って来た。
隊員たちの遺影を見て落ち込む光太郎。
「許してくれ。俺が不甲斐ないために」。
「違うよ。光太郎さんだって、力いっぱい戦ったじゃないか」と健一。
「泣いてる暇があったらどうして戦わないんだ」と栄一。
「俺一人だってテンペラー星人を倒してやる」と栄一。
出て行く栄一を追う光太郎。
星人に向かってウルトラマンボールを投げつける栄一。
それを見て何を投げたのか尋ねる光太郎。
「ウルトラマンボールだよ。だけどあれじゃ奴と戦えないんだ」と栄一。
そこへ隊員たちが戻って来た。
「あっ、パパだ」と栄一。
「副隊長。無事だったんですか」と光太郎。
喜ぶ光太郎たち。
「奴らに勝つ方法はないのかよ」。
栄一が大谷ゾフィに尋ねるが、ZATの戦力では遥かに及ばないと大谷ゾフィ。
「ウルトラマンタロウが出てきてくれればなあ」と北島セブン。
「タロウなんてダメだよ。さっきだって目茶目茶にやられてしまったんだ」と栄一。
「ウルトラマンタロウはウルトラの国でも末っ子の甘えん坊だと言われてるそうだからなあ」と大谷ゾフィ。
「やはりウルトラマンやセブンにきてもらわないとダメだということなのかな」と荒垣初代マン。
そんなことありませんと光太郎。
「今なんと言った」と南原新マン。
「そんな宇宙の人を頼りにするよりは、副隊長。我々で戦いましょう」と光太郎。
「しかし奴は強い。強すぎるよ」と荒垣初代マン。
「わかりました。じゃあ、俺だけでやります」と光太郎。
一緒について行く栄一。
「本当にタロウ一人で大丈夫だと思いますか」と南原新マン。
「わからん。しかしやらせるしかない」と荒垣初代マン。
タロウを助けに行くという上野エースを止める大谷ゾフィ。
その頃タロウは3たび星人と戦っていたが一方的にやられていた。
「引込め末っ子。お前など我々の敵ではない。兄貴たちは何処へ行った」と星人。
「兄さん、助けてくれ」とタロウ。
助けに行こうとする上野エースと南原新マンを止める大谷ゾフィ。
心配そうに見守る兄弟たち。
「兄さんはタロウを見殺しにするのか」と南原新マン。
「違う。タロウを愛していればこそだ」と荒垣初代マン。
「だったら助けにいってやればいいじゃないか」と上野エース。
「馬鹿。助けることが本当にタロウのためかどうか考えてみろ」と北島セブン。
しかしタロウはとうとうノックアウトされてしまう。
「タロウはエネルギーがなくなって死んでしまったんだ」と南原新マン。
「もはやこれまでだ」と荒垣初代マン。
「タロウ、お前の敵は俺たちが必ず討つ」と大谷ゾフィ。
変身する兄弟たち。
「とうとう出たな。ウルトラ兄弟」と星人。
傷つき街を彷徨う光太郎。
倒れ込んだ光太郎は近くにウルトラボールが転がっているのを発見する。
「栄一くん。このボールを投げてくれ。君の闘志を信じるぞ」。
小さくなりボールの中に入る光太郎。
そこへ栄一が走ってきてボールを星人に投げつけた。
ボールに入ったまま星人に近づいたタロウは星人の目の前でいきなり変身。
巨大化せずそのまま星人の体の中に飛び込んだタロウは星人の体の中で自らの体を巨大化させた。
木端微塵に砕ける星人。
見事星人を倒したタロウを胴上げする兄弟たち。
しかし星人はもう一人いた。
「勝ったと思っているのか。ざまあみろ。とうとう6人とも姿を現したな。あれはお前たちをおびき出す貴重な犠牲者だ。ウルトラ兄弟。必ずこの地球上でお前たちの息の根を止めてみせる」とチンパンジー。

解説(建前)

チンパンジーは何者か。
チンパンジーは1人目の星人に「攻撃を中止せよ」と命令したり、「我々テンペラ―星人」と言ったり、1人目の星人が倒された後「貴重な犠牲者」と言ったり、かなり当事者的な発言をしている。
また2人目の星人が出てきてからは姿を消し、一緒に登場するシーンはない。
やはりチンパンジーこそ2人目の星人の仮の姿と考えるのが妥当であろう。
後編で星人はクモに化けてさおりに近づいた。
星人もウルトラ兄弟同様変身や小型化能力を身に着けているのであろう。
唯一問題は前編の最後に2人目の星人が船内にいるシーンであるが、この時も同画面には映っておらず、フラッシュバック的にチンパンジーと星人を同一人物に見せる演出ではなかろうか。
少し無理もあるが、このように解釈をすれば同一人物であることに支障はない。

ではなぜ星人は2人同時に暴れなかったのか。
これもチンパンジーが言うように兄弟が出てくるのを待っていたのであろう。
頃合いを見計らって2人目も参戦する予定であった。
ただ、タロウが意外な活躍をして1人目を倒してしまったので、参戦する機会を失ったものと思われる。
ウルトラ兄弟が地球にいる情報を探ったり、さおりに化けたり、2人目の星人は1人目よりも諜報的な活動が得意なようだ。
また特殊スペクトル光線やウルトラ兄弟必殺光線など、テンペラ―星の技術を集めた技を身に着けていた。
ただ身体能力については1人目もストリウム光線をはね返したり光の鞭を出していたので、あまり変わらないであろう。

大谷博士はなぜテンペラ―星人のことを知っていたのか。
存在が予測されるという言い方からは、直接存在を聞いたというよりは何らかの痕跡から存在が推測されたものと思われる。
おそらくこの世界では宇宙考古学的な学問が研究されているのであろう。
地球の科学はムルロア星を破壊するくらいの水準にある。
人間が乗っていくには限界はあろうが、無人の探査機ならかなり遠方の星まで飛べるのであろう。
遠方の星には人為的に滅ぼされたと思しき文明の遺跡があって、そこにテンペラ―星人の痕跡が残されていた。
そのモニュメント的なものに星人の姿が象られていて、それをもとに凶悪な星人の存在が予測されたのであろう。
その姿を知っていた博士は実物の星人を見て、テンペラ―星人と判断したものと思われる。

ゾフィは変身したままの姿でパトロールしていたが、エネルギーはどうしていたのか。
これはおそらく、地球と宇宙を往復することによりエネルギーを補てんしていたと考えるのが妥当であろう。
地球上ではウルトラ兄弟は極度にエネルギーを消耗する。
これは大気圏により太陽エネルギーが十全に届いていないからと考えられる。
そこでゾフィは地球と宇宙を往復することによりエネルギーを補てんしていたのであろう。
それでも地球上で3分程度しか活動できないのでは制約が大きすぎる。
ウルトラ兄弟は小型化するとエネルギー消費が少なくなるので、あるいは戦闘モードと飛行モード等の使い分けがなされていた可能性も高いであろう。

感想(本音)

イベント編というよりはイベントそのものと言った方がふさわしいお話。
普段とはかなり趣の違う話で兄弟総出演はこの歳になって見てもワクワクする。
ただし、話の内容自体はかなりグダグダ。
コミカルな演出もやり過ぎ感は否めず、余計悪ノリが目立つ。
本話の脚本は佐々木守氏。
1期ウルトラで曰くつきの話を多く書いた同氏だが、本サイトには初登場。
本話もある意味問題作ではあるが、監督が盟友実相寺氏ではなく真船氏ということでメッセージ性はそれほど高くない。
ストーリー自体は10周年記念作品ということでかなり注文がついていたのであろう。
前述したように本話はイベントなので、佐々木氏個人の創作による部分というのは案外少ないのではないかと思われる。
では、内容を見ていこう。

いきなりインパクトあるのが何と言ってもチンパンジーの人形。
これは誰の発案なのか。
単なる悪ふざけにしか見えないのだが、しかしチンパンジーの人形をアップで撮るとこんなに気味悪いとは思わなかった。
小さい子供がおもちゃ売り場でこの人形を見つけて泣き出さなければいいが(笑)。
演出的な面白さからはやっぱり真船監督の発案というのが妥当な気もする。
いずれにせよ、コミカルかつ不気味な演出で面白い。

宿敵テンペラ―星人は、宿敵というだけあってやたらと強い、強すぎる。
タロウがここまでワンサイドでやられる敵は今までいなかった。
バードンも2対1だったことを考えると、テンペラ―星人は最強と言っていいだろう。
ルックスはミステラー星人、ヒッポリト星人の系譜を引く海産物系。
しかし、なぜ星人はウルトラ兄弟を狙うのか。
星人は地球人はほとんど眼中にないようだった。
破壊活動もあくまで兄弟をおびき出すため。
もしかして星人は単に自分の強さを誇示したいだけじゃないのか。
自分が最強を名乗るためにウルトラ兄弟を葬り去る。
本話の面白いところは地球人が完全にウルトラ兄弟の巻き添えを食っているところであろう。

そのウルトラ兄弟は呑気に地球でバーベキュー。
日頃お世話になってるタロウの招待ということだが、完全に社員旅行というか慰安旅行といったノリだ(笑)。
まあ、実際本話はウルトラシリーズ10周年記念作品だからそういう意味合いもあるのだが、ファンにとっても兄弟の人間体勢揃いは圧巻でそれだけでも見る価値のある作品といえよう。
また各兄弟のキャラも持ち味が上手く出ている。
相変わらず直情的な北斗。
まあエースの後半でもう少し大人になったと思ったが、根っこのところは変わらないのだろう。
北斗よりは落ち着いているが根は熱血漢の郷。
ダンはレオにおけるスパルタ教師の片鱗がうかがえる。
ハヤタは年長者らしく大きな視点から物事を見れるタイプだ。
ハヤタたちの登場シーンは海岸のシーンだけなのだが、ZAT隊員に乗り移る設定により全編登場してる錯覚に陥るところもうまい。
普段とは違う隊員たちの演技も面白く、そういう視点からも楽しめる作品だ。

本話はゾフィの人間体が登場するところも注目ポイント。
本来なら朝比奈隊長のはずなのだが、名古屋氏はこのイベントにも参加できなかったのかゾフィは無理やり出てきた大谷博士に乗り移ってる。
しかしちょうどゾフィ兄さんのために大谷博士がいるってのはどうかと(笑)。
ただ結果的には大谷博士役の竜崎勝氏がかっこよく、名古屋氏じゃなかったのは良かったと思う。
因みに竜崎氏はアヤパンこと高島彩アナウンサーのお父様。
病気でアヤパンが5歳くらいの頃に亡くなられたそうだが、ダンディなルックスと渋いバリトンボイス。
岸田森氏とともに、もう少し長生きして欲しかった俳優さんである。
更に因みにゾフィのもう一人の人間体はメビウスのサコミズ隊長こと田中実氏。
こちらも若くして自殺されたが、竜崎氏と同じ年齢で亡くなられたらしい。
ゾフィ役の役者は早世する運命にあるのだろうか。

脱線しすぎたので戻す。
本話の中でファンにとってたまらないシーンは、やはり兄弟の変身融合シーンであろう。
名曲ウルトラ6兄弟に乗せて各自が変身してZAT隊員に融合。
格の順に乗り移る隊員が決まるのだろうが、小柄な上野にエース、大柄な南原に新マンと意外と合っていたりもした。
ただ、郷と南原の顔面の差は思わず吹き出してしまったが(笑)。
知的なセブンに北島というのもいい。
兄弟のサブリーダー格の初代マンは当然荒垣。
見た目はともかく、温かみと厳しさが上手く演じられておりさすがである。
そして変身シーンはないもののゾフィ役の大谷博士の威厳。
しかし森山隊員も博士が妙に大きな顔してるのに違和感なかったのだろうか。

イベント編といえば子役だが、本話もヒッポリトやバードン編でおなじみの西脇君がまたまた登場。
しかしこの子は何回出るんだろうな。
正直特別演技が上手いわけでもなく、ルックスがいいわけでもなく、声も甲高い(笑)。
コネでもあるのだろうか?
ただ、最初の頃よりは明らかに演技力は上達してるので、特に気になることはない。
しかし、いくら博士の子どもだからってフリーパスで基地に出入りできるのはさすがにまずくないのか?
また隊員たちの葬式であれだけ泣いて悲しんだのに隊員たちが戻ってくるとあっさり「パパだ」って(笑)。
この辺りは脚本の問題か演出の問題か。

唐突にZAT基地で葬式が行われていたシーンを見て怪獣墓場を思い出した人も多いはず。
あれくらいで葬式してたら毎回葬式だろってのは置いといて、まだ死体も見つかってないのに葬式するなよと(笑)。
この辺りは脚本なのか、演出なのか。
唐突に現れるさおりと健一など突っ込みどころ満載だが、この辺りは完全に悪ノリと言っていいだろう。
しかし本話はなぜ実相寺氏ではなく真船監督だったのだろうか。
実相寺氏の解釈も見てみたかった気もするが、氏だともっとウルトラ兄弟の巻き添えを食う市民とか描写しそうだから、個人的にはコミカルに割り切った真船演出で正解だったと思う。
真船演出というと、手持ちカメラで役者の周りをグルグル回る演出は健在。
あと隊員に乗り移った兄弟たちが、順番を数えるようにピョコピョコ顔を出す演出は面白かった。

かように本話は内容盛り沢山、突っ込みどころ満載で楽しめる作品なのだが、ことストーリーに関しては首を捻るところが多い。
よく言われるのはタロウが突然末っ子の甘えん坊の設定になってるところ。
ウルトラマンタロウという番組はウルトラファミリー総出演なので印象としてはタロウが過保護に見えるのだろうが、今までそういう場面はあまりなかった。
ムルロアにあっさり敗れてウルトラの国に帰った辺りは当てはまりそうではあるが、あれは地球が危機だったのだから仕方ないであろう。
またテンペラ―星人が暴れているのは放置でタロウを鍛えることを強調する兄弟たち。
一応地球が戦場にならないようにとか地球人を守るためとは言っているが、タロウがやられると最終的には全員揃って変身しており言行不一致もいいところ。
「タロウ、お前の敵は俺たちが必ず討つ」じゃないだろ(笑)。
この辺りはおそらくタロウをほとんど見たことがない佐々木氏が書いてるのが原因だと思われる。

前述したように、本話はおそらくテンペラ―星人の登場やウルトラ兄弟勢揃いなど先に設定が決まっていて、その線に沿って佐々木氏が仕上げた話であろう。
そしてタロウはテーマが必要だから、前編は過保護、後編は増長とチームワークというテーマが設定された。
これ自体は番組の特性上仕方ないであろう。
テンペラ―星人が特別の敵であることを強調しており、違和感はさほど感じられなかったし。
ただ、そのテーマが説得力を以て展開されたかというと、やはり疑問が残る。
これは名手佐々木氏にしては如何なところか。
しかし佐々木氏のテーマがそこにないとすると、逆に妙な説得力も出てくるだろう。
本話の表向きのテーマは子供を甘やかせてはいけないということだが、正直ストーリー的にはかなり無理が出ている。
佐々木氏が本当に言いたいのは、テーマばかりに拘ると関係ない人が巻き添えになり本末転倒だよということではないか。
ウルトラ兄弟の無責任な教育方針でますます犠牲が大きくなる街。
タロウを鍛えるということと地球を守るということのバランスのおかしさを見てると、そう勘ぐりたくもなるだろう。

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