その時ウルトラの母は


データ

脚本は田口成光。
監督は山際永三。

ストーリー

ボクシングジムでスパーリングする光太郎。
ボディーブローを喰らってダウンした光太郎を励ますジムのオーナー。
「君の根性には感心したよ。基礎をしっかり身に付けるんだね。チャンピオンは一日にして成らずだ」。
光太郎の体を心配する健一に、絶対勝って見せると約束したからには必ず約束を守ると光太郎。
ある夜、山中の工事現場が怪獣コスモリキッドに襲われて壊滅した。
翌朝ランニングする光太郎は健一とその友達に出会う。
2人は不思議な穴を発見したと言う。
その時呼び出しを受け本部に戻る光太郎。
隊長命令で光太郎は南原とともに工事現場に調査に行く。
霧の中に怪獣を目撃する光太郎。
しかしロケット砲を撃ち込むもその姿は消えていた。
霧に映った自分たちの影ではないかと南原。
白鳥家に戻った光太郎は健一の様子がおかしいとさおりに聞き、様子を窺いにいく。
すると健一は釣りをしていた人が怪獣に殺されたと言う。
その怪獣は光太郎が見たものと同じであった。
健一によると、多摩川の堤防を自転車で走っている時にその怪獣を見たという。
その怪獣は釣り人を飲み込んだ後姿を消したという。
健一が拾ってきたロケットを見て自分が撃ったものだと光太郎。
本部にそのことを報告し、多摩川を調査するZAT。
ZATは放電作戦により怪獣をおびき出すことにする。
付近の住民を避難させ、作戦を開始するZAT。
放電を始めると川面が盛り上がり怪獣が出現した。
電気を浴び苦しむ怪獣。
しかし電圧が上がりすぎて放電が止まってしまう。
ZATは怪獣に向かって一斉攻撃を始めた。
怪獣はもろともせず、北島を追い詰める。
北島は逃げ登った木ごと舌で絡め取られた。
北島を助けに行った西田も窮地に陥る。
その時光太郎の腕のバッジが光った。
ウルトラマンタロウに変身する光太郎。
2人を救出したタロウはコスモリキッドと格闘。
コスモリキッドは例の穴に嵌まって動きが取れなくなってしまう。
ZATと連携してコスモリキッドを攻撃するタロウ。
ブレスレットランサーで止めを刺すと、怪獣は液体になり穴に吸い込まれてしまった。
翌朝光太郎は健一とのランニング中に例の穴に嵌まったポチを助けようとして穴に落ちてしまう。
その時地面が揺れ怪獣ライブキングが現れた。
穴は怪獣の口だった。
出動したZATはX線レーダーで怪獣の胃の中に光太郎がいることを確認する。
無線で連絡を取るZAT。
ライブキングはコスモリキッドを飲み込んだことにより消化不良を起こしていた。
奇妙な笑い声を上げて苦しむライブキング。
ZATはライブキングの胃に穴を開け、胃の内容物を管を通して排出しようとする。
しかし光太郎が排出される前にライブキングはお腹の管を抜いてしまった。
すると排出された液体はコスモリキッドとして再生した。
戦い始める二大怪獣。
健一は光太郎を助けようとラジコン飛行機を飛ばすが、飛行機はライブキングの鼻の穴に入ってしまう。
大きなくしゃみをするライブキング。
ライブキングのお腹の中の光太郎の運命は。
ウルトラの母が地球へ向かう。

解説(建前)

コスモリキッドは何者か。
コスモリキッドは自由自在に固体から液体、液体から固体に変化できるようである。
これは一つ一つの細胞に意思があると考えるのが妥当であろう。
しかもそれぞれの細胞は体のどんな部分にも変化できる。
だからライブキングの体から全ての液体が排出されなくても元の姿に再生できたのであろう。

感想(本音)

タロウの面白さが凝縮された話。
コミカルな怪獣にコミカルな作戦。
舌で作業員を絡めとるコスモリキッドの不気味さ。
怪獣が固体から液体化する奇抜さ。
2大怪獣のバトルにタロウの多彩な技。
今見てもなかなか楽しめる。

まず作業員がコスモリキッドに食われるシーンはなかなかに不気味だ。
ほのぼの路線のタロウだが、意外とこういう残酷シーンは多い。
当時の風潮もあるだろうが、ここまで人や動物が犠牲になるシーンを描く特撮は最近少ないであろう。
ゲキレンジャーなんか見てても、相当人が死んでるはずだがそれを思わせる描写はほとんど見られない。
どちらがいいとはいえないが、個人的にはあまりにもそういう描写を避けるのもどうかという気がする。

健一君はコスモリキッドを目撃するも信用してもらえなかった。
健一君は以後も怪獣を目撃しまくることになるが、この辺りは特撮のお約束としてスルーするしかないだろう。
そもそも東京ばかりに怪獣が出るのが不自然なので、特定の人物が目撃するのを非難してもあまり意味がないと思う。
ただ光太郎が撃ち込んだロケットを持ち帰ったり、さすがに都合よすぎる面はある。

隊長は調査へ行くメンバーを選ぶのに、夕べカレーを食べたかどうかで決めていた。
これはZATを象徴するシーンとして有名であるが、これをもって緊張感がないだの、ふざけてるだの言うのは筋が悪い。
まだ怪獣が発見されたかどうか分からない状況で誰が調査しても能力的に大差ないのだから、こういう選び方をしても特に問題はないはずである。
普段からピリピリしてる組織より、こういう組織の方が案外有事にもしっかり対応できるのではなかろうか。

この時期は光太郎がボクサーになるという設定が随所に強調されている。
結局この設定は使いにくく、なし崩しに消えてしまうが、スタッフはこの設定をどう決着するつもりだったのだろう。
日本チャンピオン、世界チャンピオンを狙うまでになったのであろうか。
いずれにせよ、初代さおりさん降板とともにこういう青春ドラマ要素が薄れたのは残念である。
せめてもう1クールくらいはあさかさんに出て欲しかったと思う。

ZATの放電作戦は密かに成功しており、実は作戦の成功率は高かったりする片鱗は見せていた。
ただし、怪獣に登った木ごと投げ飛ばされたり、コスモリキッドが飲み込まれた穴をろくに調査しなかったり、抜けてるところも多い。
また隊長も慌ててお茶と言ったり水と言ったり、演じる名古屋氏のコミカルなキャラも出ていた。
こういう隊長は珍しく、味があっていいと思う。
いざという時には頼りになるし。

コスモリキッドは怪獣らしい、なかなかかっこいいデザイン。
一方ライブキングは怪獣と言うには抵抗のあるユニークなデザインである。
造形に関しては特に1期ファンから色々言われるが、この時期はデザインこそ奇抜だが、造形そのものはそんなに悪くはない。
ライブキングなんかも見てると個性的で味があるし、同じような恐竜タイプの怪獣ばかり出すよりよほどいいだろう。
少なくとも私はタロウ怪獣のデザインは結構好きである。

基本設定を消化して、早速タロウらしいコミカルな話。
しかも二大怪獣はなかなか強い。
加えて胃の中に閉じ込められた光太郎のピンチ。
光太郎を助けるため地球に向かう母。
否が応でも次が楽しみになるいい引きだと思う。

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