ウルトラの母は太陽のように


データ

脚本は田口成光。
監督は山際永三。

ストーリー

世界中を旅行していた青年東光太郎。
ここにウルトラ6番目の兄弟の物語が始まる。
光太郎は白鳥船長運転のタンカー船から海に飛び込んだ。
光太郎は船長の船への就職の話を断り、日本でボクシングをしたいという。
上陸した光太郎は海外から持ち帰ったチグリスフラワーの球根を空き地に植えていた。
チグリスフラワーは砂漠の中100年に1度しか咲かない伝説の花だという。
そこへ超獣オイルドリンカーが現れた。
防衛組織ZATが出撃するも、石油コンビナートがあるため迂闊に攻撃できない。
光太郎はクレーンを操作し、超獣の首にチェーンを掛ける。
「頭がいいだけでない、勇敢な男だ」と朝比奈隊長。
しかし超獣はチェーンを千切って地中に逃げてしまった。
船長に礼を言われる光太郎。
忘れ物として渡された写真には光太郎の母の姿が写っていた。
空き地に戻った光太郎はチグリスフラワーが咲いているのを目撃する。
大喜ぶする光太郎。
その夜パトロール中のラビットパンダに乗った西田隊員は怪しい蔓の攻撃を受ける。
電撃を浴びせ蔓を追い払う西田。
調査に来たZATはチグリスフラワーを焼却することにした。
燃え上がるフラワー。
その時そこで寝袋で寝ていた光太郎は火に包まれ飛び起きる。
花を燃やされ逆上した光太郎は北村西田に殴りかかった。
その動きを頼もしげに見つめる朝比奈。
その時海から再び超獣が出現した。
更に地中から怪獣も現れる。
その怪獣を見て呆然とする光太郎。
その怪獣はチグリスフラワーから生まれたものだった。
超獣と格闘する怪獣アストロモンス。
何とアストロモンスは腹の花びらから超獣を飲み込んでしまった。
自分自身の手で怪獣を倒すという光太郎は怪獣の足に飛び移る。
その時怪獣は空に浮上。
足にナイフを刺して怪獣を攻撃する光太郎。
しかし痛がった怪獣に振り落とされてしまう。
光太郎は運良くフェンスの上にワンクッションおいて、地面に落下した。
そのまま気を失う光太郎。
翌朝通りかかった少年と娘に助けられる光太郎。
ハンカチを包帯代わりに傷の手当てをする娘。
そこへ緑のおばさんがやってきた。
緑のおばさんを見て驚く光太郎。
傷の手当てをするおばさん。
母ソックリのおばさんに思わず「お母さん」と呟く光太郎。
「死んだお母さんに似てるんです」と光太郎。
「あなたも私の息子によく似ているわ」とおばさん。
さらにおばさんは、「いいものあげる。これお守りなの。大切に持っていて頂戴」と光太郎にバッジを手渡した。
「やりかけたことは最後までやりなさいよ。途中でやめては駄目よ」とおばさん。
数日後、光太郎は朝比奈のスカウトによりZATに入隊する。
自己紹介を終えたその時、再び怪獣が出現した。
出動する隊員たち。
街を破壊し暴れまわる怪獣。
怪獣の吐く溶解液はビルを溶かすくらい強力であった。
電気ショック作戦を開始するZAT。
ロープを使って怪獣に放電するも、怪獣に振り回されロープを切って脱出する。
さらに怪獣は街の中心に聳えるZAT本部へ向かって進撃してきた。
辛くも飛び去り難を逃れるZAT基地。
責任感から果敢に怪獣に攻撃する光太郎。
しかし怪獣の攻撃により墜落してしまった。
炎に包まれる光太郎。
その時光太郎の体は新しい世界へと誘われる。
ウルトラの兄弟たち、そしてウルトラの母が現れた。
「ウルトラの兄弟たちよ。ウルトラ6番目のウルトラマンタロウが今誕生する姿を見るが良い」。
「お前たち兄弟は皆こうして生まれたのです」。
「見よウルトラの命の誕生を」。
光太郎が新しい生命に包まれて転生する。
炎の中からウルトラマンタロウが現れた。
アストロモンスと格闘するタロウ。
溶解液を浴びるタロウ。
さらに鞭攻撃により苦戦する。
カラータイマーが鳴り始めた。
「ストリウム光線」。
タロウが気を集中し、アストロモンスに光線を浴びせると怪獣は木っ端微塵に吹き飛んだ。
無事生還する光太郎。
隊長の縁故に下宿先を紹介される光太郎。
そこには光太郎を助けた少年が。
さらにその家は光太郎がお世話になった白鳥船長の家であった。
そしてその家の娘さおり。
さおりは光太郎の手当てをしてくれた娘であった。
それを見て「考えさせてください」と光太郎。
光太郎は川原に走って行き、夕陽を見上げる。
腕にはウルトラの母から送られたバッジが。
夕陽にスカーフを翳す光太郎。
そこにはウルトラの母の姿があった。
「光太郎さん。今日からあなたは一人で生きていくのです。寂しいことなんてありません。あなたの頭の上にはいつも太陽が輝いていることを忘れないでね」。

解説(建前)

ウルトラマンタロウはどうやって生まれたか。
ウルトラの母によると、ウルトラ兄弟たちは皆このようにして生まれたのだという。
とすると、タロウは生まれたばかりの0歳児なのだろうか。
しかしいきなりあれだけの格闘が出来る0歳児はさすがのウルトラ一族でもいないだろう。

これはやはり生まれ変わりと考えるのが妥当である。
すなわち、タロウは既に生まれていた。
しかしそれは戦士ウルトラマンタロウではなく、一般のウルトラ一族タロウだったのである。
ウルトラ一族は人間と一体化する能力を持っている。
真のウルトラ戦士になるためには他の星の人間と合体する必要があった。
ウルトラ兄弟の誕生とは、戦士ウルトラマンの誕生を意味していたのである。

それでは光太郎は死んでしまったのであろうか。
しかし光太郎は最終回でタロウと分離するはずである。
これはおそらく死の寸前でウルトラの母に助けられたと考えるのが妥当であろう。
結局光太郎との融合によりタロウは戦士として覚醒したのであり、光太郎はある意味そのきっかけを与えたに過ぎないのであろう。

緑のオバサンが光太郎の母親ソックリだったのはなぜか。
これは単に光太郎にそう見えただけで、実際は緑のおばさんにウルトラの母が乗り移っただけであろう。
光太郎以外誰も緑のオバサンが光太郎の母とそっくりだとは言っていないことからも、そう解釈するのが素直である。
ウルトラの母はタロウを覚醒させるための人材を探しに地球に来ており、オイルドリンカーやアストロモンスとの戦いを見て光太郎を抜擢したのであろう。
融合する個体が優れていればいるだけ良いのは当然の理である。

超獣と怪獣の区別はどうなっているのか。
これは単なる呼称の問題だと思われる。
すなわちオイルドリンカーは既に何回か出現していた。
その時超獣に分類されたのであろう。
一方アストロモンスはこの時初めて現れた。
そこで怪獣に分類されたのであろう。
これはヤプール人の存在が徐々に感じられなくなってきたことから、呼称を従来の怪獣に戻す合意があったものと思われる。

感想(本音)

まずタロウ誕生メカニズムの解釈に悩む。
無理やり上記のようにこじつけたが、これは色々考えることが可能であろう。
制作側としては、ウルトラファミリーにウルトラの母。
その路線に沿ってウルトラ兄弟の誕生を描写して見せたのだと思われる。
また、怪獣と超獣の呼称についても混乱が生じる。
素直に両者とも怪獣にすれば良かったのだが、超獣より強い怪獣の設定上、やむを得なかったのであろう。
このように設定が強引であるが、新しいウルトラを生み出そうとする意欲は買っておきたい。

ウルトラマンタロウ一番の特色はその音楽であろう。
セブン以降の昭和ウルトラでは唯一冬木氏以外がBGMを担当している。
小暮氏のポップなBGMはタロウの作風ともマッチし、明るいムードを作っている。
また主題歌。
OPの映像が影絵からZAT基地内の映像に変わり、曲も阿久悠、川口真コンビと歌謡曲ばり。
こちらもそのポップさで強く印象付けている。

いきなりの超獣出現に光太郎の格闘。
このスピーディな出だしは無駄がなくいきなり話に引き込まれる。
そしてアストロモンスの登場にウルトラの母との出会い。
Aパートでこれだけ詰め込んでおり、その中身の濃さは特筆物である。
そしてBパートでは光太郎のZAT入隊。
しかしこれはやや唐突。
ただし30分の子ども向け番組ではこれくらいはお約束として許容範囲であろう。
また、いきなり光太郎が実戦の飛行に出るのは無理があるが、これは海外で戦闘機のパイロット見習いでもしたことがあったと脳内補完しておこう。

続いてタロウ誕生シーン。
これは解釈が色々わかれるが、今までの単純な融合シーンとは一線を画する。
ウルトラ兄弟総出演も視聴者へのファンサービスとして十分である。
そして格闘シーン
光を集めてストリウム光線を発射するシーンがやはりかっこいい。
「ストリウム光線」と技名を叫ぶのも目新しくて良いだろう。

ストーリーには突っ込み所が多いが、チグリスフラワーを持ち込んで勝手に植えてしまったのはやはりまずい。
検疫を通さずしかも怪獣まで作ってしまったのでは、弁解の余地なしである。
ただすんなりZATに入隊していることから、その辺りはお咎めなしのようである。
案外朝比奈が裏で動いてもみ消した引き換えに入隊したのかもしれない。
密入国に関しては、あの後帰国の審査を受ければ問題ないのではなかろうか。

さおりさん役のあさかまゆみさんは今とはかなり雰囲気が違うが、なかなかかわいいルックスである。
出来れば最後まで出演して恋愛物の要素を残して欲しかった。
健一君は帰りマン、エースとゲスト出演して念願のレギュラー獲得。
途中で声変わりするなど、なかなかインパクトがあった。
とにかく健一君はシリーズでも一番普通の男の子だったように思う。
ウルトラの母役は根上淳氏の奥さんでもあるペギー葉山さん。
夫婦でウルトラ出演は珍しい。

ウルトラマンタロウを見て思うのは、細かい理屈よりも子ども向けの面白さを追求しているという点である。
確かに深みに欠ける嫌いはあるが、子どもの頃面白く見てたのは間違いないし、映像や演出、役者のレベルなど水準以上のものがあるので、決して子ども騙しではないのは分かる人には自明である。
考えてみると、子ども番組にこれだけの予算を使って面白いものを作るというのは何と贅沢なことか。
私はライダーより完全にウルトラ派だが、それはやはりこの円谷の本格志向を子ども心に理解していたからであろう。
もちろんライダーもライダーの面白みがあり、私自身楽しく見てたのだが、やはりクオリティという面においてはウルトラに軍配が上がる。

ウルトラマンタロウを碌に見もせず馬鹿にする人もいるが、子どもを集めて今の特撮作品と比べてアンケートを取っても案外上位に行くのではなかろうか。
時代背景も違って今の作品と単純に比べることは出来ないが、これだけ贅沢な子ども向け作品は今の時代にないであろう。
作りがしっかりしているので、今見ても全然古さを感じない。
この第一話も息をつかせぬスピーディな展開で見るものを引き込んでいく。
確かに突っ込みどころは多々あるのだが、そういう粗探しばかりしてる人にはこの面白さは決して理解できないであろう。

タロウ全話リストへ タロウ第2話