怪しい隣人


データ

脚本は若槻文三
監督は鈴木俊継

ストーリー

脚を怪我して部屋にこもりっきりの少年アキラ。
アキラは不審そうに隣の家を覗き込む。
「あの男何をしてるんだろう?あそこに座ったままもう24時間になる」。
隣人は食事や睡眠を取った様子もなく一日中、何かを作り続けている。
双眼鏡で隣の家を覗き込むアキラ。
そこへ、姉のりつ子がアンヌを伴って部屋に入ってきた。
「ダメじゃないの。あれほど言ったのに」と姉。
「だって姉さん。変なんだよ、隣の様子」とアキラ。
アキラに挨拶するアンヌ。
「脚まだ駄目なのよ。お医者様はもうとっくに治ってるだずだって」とりつ子。
りつ子たちはアキラの脚を治すため別荘に来ていた。
アンヌは偶然りつ子と知り合ったという。
「防衛基地に勤めてらっしゃると聞いて、びっくりしたわ」とりつ子。
その時アキラは隣人の頭から不思議な光が発せられるのを目撃する。
驚くアキラ。
「姉さん、やっぱりおかしいよ」。
基地に帰ったアンヌはダンにその少年の話をする。
「その子きっとノイローゼだよ。ひょっとしたら車にはねられた時のショックが原因かもしれない」とダン。
「一緒に行かない」とダンを誘うアンヌ。
「その隣の人というのはどんな人なんだい?」とダン。
「2か月ほど前に隣の別荘を買って引っ越してきたんですって」とアンヌ。
2か月前というのに引っかかるダン。
一方防衛隊のレーダーは別荘の方角に怪しい反応を捉えていた。
「参謀、2か月ほど前にもこの地点で同じ反応がありました」とキリヤマ。
しかしその反応はすぐに消えてしまった。
その頃別荘のアキラとりつ子は窓の外から変な音がするのを聞いていた。
窓の外を見るりつ子たち。
すると飛んでいる鳥が静止していた。
防衛基地に連絡をしようとするりつ子。
そこへダンとアンヌが入ってきた。
「死んだ鳥が空間でじっとしてるんだって」とダン。
外を見るダン。
特殊能力で鳥を見るダン。
すると鳥が消えてしまった。
すぐキリヤマに連絡を取るダン。
「ここで何か大変なことが起こってます。はっきりしたことはわかりませんが」。
「ようし、調べてみろ」とキリヤマ。
いきなり窓から飛び降りるダン。
ダンは鳥がいた付近で消えてしまう。
「キリヤマ隊長。ダンが大変です」。
連絡を取るアンヌ。
四次元空間を彷徨うダン。
そこへ隣の男が現れる。
「来たな。馬鹿な奴だ」。
「誰だ。何をしているんだ。それは何だ」とダン。
「お前は誰だ。返事をしろ」。
「第17惑星から来た、イカルス星人だ」。
「我々は美しい星地球を我々のものにする、絶対に」と星人。
「そんなことができるもんか」とダン。
「できる。我々はこの世界から地球を攻撃する。地球人はこの世界を攻撃はおろか見ることすらできない」。
「どうしてできないんだ」。
「ここは四次元の世界だ。お前たちのいた三次元の世界を飛び越えた未知の世界だ」と星人。
「我々の科学は四次元の世界と三次元の世界とを連結するコントロールマシンを作った」。
それを聞いて驚くダン。
「住むには苦しい世界だが、戦うにはこれほど安全な基地はあるまい」と星人。
「お前はどうやら特別な能力を持った男らしいな。だがこの四次元からは二度と脱出はできない」。
それを聞いてセブンに変身しようとするダン。
しかしウルトラアイを装着してもセブンに変身できなかった。
さらにカプセル怪獣を投げつけるダン。
しかし何も起きなかった。
「無駄だ。ここでは何も起こらない。次元の違う世界だと言っただろ」。
殴りかかろうとするも思うように動けず、そのまま気を失うダン。
それを見て、姿を消す星人。
一方地上では円盤による攻撃でコンビナートが火の海となっていた。
出動するウルトラ警備隊。
フルハシとアマギはホーク1号に乗り現場に向かう。
基地ではマナベ参謀とキリヤマが状況を確認していた。
そこへ東京湾でタンカーが爆発したとの知らせが入る。
一方四次元空間で気を失っていたダンは意識を取り戻しコントロールマシンを見るが、仕組みはわからなかった。
円盤を発見した警備隊はホーク1号に円盤を追跡させる。
しかし円盤は忽然と四次元の世界に姿を消した。
その衝撃で飛ばされるダン。
するとその音がアンヌのいるアキラの部屋に聞こえる。
「誰?誰なの」とアンヌ。
すると部屋の何処からかダンの声が聞こえてきた。
しかしお互いの姿は見えない。
「もしかしたら僕も同じところにいるのかもしれない」とダン。
「さっきの衝撃でどっかに新しい亀裂ができたんだ」。
ダンはアンヌにイカルス星人が地球を侵略しようとしていることをキリヤマに伝えるよう頼む。
「アーッ!アンヌー!アンヌー!」。
「どうしたのダーン!」。
「アンヌ~!返事をしてくれ~!」。
「ダン、大丈夫」。
「だんだん体の自由が利かなくなってきたよ」とダン。
四次元と地球を結び付けてるコントロールマシンを破壊すれば戻れるかもしれないとダン。
「ダメよダン。そんなことをすれば二度とその世界から脱出できなくなるかもしれないのよ」とアンヌ。
「しかし。しかし。やるよ僕」とダン。
ウルトラガンでコントロールマシンを破壊するダン。
するとダンは星人とともに元の世界に戻っていた。
「私はお前を見くびっていたようだ。お前は誰だ」。
そう言って巨大化する星人。
変身するダン。
星人の攻撃を交わすセブン。
すると空から円盤が攻撃してきた。
山の間に隠れて身を守るセブン。
星人も体全身から光線を放つ。
それを交わしアイスラッガーを放つセブン。
爆破する星人。
アンヌたちの下へ戻ってくるダン。
無事を喜ぶアンヌたち。
四次元空間に戻れなくなった円盤はイカルス星へと逃げていく。
それを追うウルトラホーク1号と2号。
ホーク2号の光線が当たり大破する円盤。
アキラの別荘へ向かうダンとアンヌ。
「イカルス星人はあの円盤で地球へ来たってわけね。そして四次元空間に前衛基地を作ろうとしたのね」とアンヌ。
「そうだよ。その基地へドンドンイカルス星人を送り込み、地球を攻撃するつもりだったんだ」とダン。
「もし、アキラくんが怪しい隣人に気がつかなかったらどうなっていたと思う?アキラくんの功績大だわ」とアンヌ。
「だからこうやってたくさんのプレゼントを持っていくんじゃないか」とダン。
ポインターに乗り込む2人。

解説(建前)

鳥が空中で静止していたのはなぜか。
これはその後鳥が姿を消したように、四次元と三次元の亀裂に挟まっていたのであろう。
警備隊は直前にレーダーで異常をキャッチしている。
レーダーがキャッチしたのはおそらく後続のイカルス星人の円盤であろう。
円盤が四次元に入ると反応も消えた。
しかしその衝撃で亀裂が生じたのである。
そして鳥は偶然その亀裂に挟まった。
それを見てダンはそこへ飛び込んだのである。

星人が三次元と四次元を自由に行き来できるのはなぜか。
星人の部屋にあった機械は四次元コントロールマシンのリモコンの類ではないか。
おそらく星人は24時間、あるいはそれ以上の時間作業を続けることによりそのリモコンの小型化に成功したのであろう。
それを携帯することにより自在に三次元と四次元を行き来できるようになった。
リモコンでマシンを操り、出入り口を作っていたのである。

コントロールマシンを壊したら三次元に戻れたのはなぜか。
その前に四次元空間でなぜウルトラガンが使えたのかだが、四次元とはいえコントロールマシンは動いてるわけだし、機械の類にはあまり影響がないのであろう。
セブンへの変身やカプセル怪獣のような超科学的な現象は四次元では起こらない。
この辺りはウルトラマンエースに変身できた異次元空間とは別のようである。

さて、本題に戻るが、コントロールマシンが三次元と四次元を繋げるものなら、それを破壊すればダンは四次元空間に取り残されるのが道理である。
したがってここは考え方を変えるしかあるまい。
おそらくコントロールマシンは四次元空間を作る装置なのであろう。
いや、正確に言うと、元来三次元空間の中にある四次元を三次元化する装置とでも言おうか。
つまり四次元というものはどうやっても人間が入れる代物ではない。
入るにはそれを三次元化する必要があるが、マシンが壊されたことにより元の四次元に戻り異物を吐き出すようにダンも元の三次元に戻された。
人間が四次元に入れない以上、当然の帰結といえるであろう。

感想(本音)

解釈が何か禅問答的になったが(笑)、やはり四次元空間とか持ち出されると解釈も不能になる。
SF的な設定に挑戦した意欲は買うが、所詮30分弱の子供向けヒーローものでは、敵怪人を倒したら元の世界に戻る的なお約束で片付けるしか仕方ないであろう。
ツッコミどころ満載ではあるが、あまり厳密に考える必要もあるまい。
本話は所謂子供お手柄もの(そんな言葉があるのかしらないが笑)。
実際はそれほど活躍してないのだが、セブンでは珍しいタイプの話といえようか。

本話の主役のアキラ少年。
いくら暇だからって隣の家を一日中監視するのはやり過ぎ。
ところで脚の怪我は結局何だったんだろう。
医者は治ったと言ってるのだから、やはり精神的なものか。
ただ、本話では最後まで別荘にいたことから、結局脚は治らなかったようだ。
普通は精神的なものなら事件が解決して一緒に脚も治るはず。
まあ安易ではあるのだが、それでも治らないよりはいいだろう。
このラストでは正直アキラくんの行く末が心配。
その辺りドラマ的にはどうかと思う。

なぜかりつ子と知り合いのアンヌ。
こんな別荘地のどこでりつ子と知り合ったのだろう(笑)。
近くに防衛軍の医療施設でもあって研修にでも来ていたのだろうか。
まあお約束に突っ込むのも野暮だが、ちょっと強引過ぎて思わず笑ってしまう。
ただ、アンヌがりつ子と知り合いという時点で実はアキラくんの手柄ってのはほぼなくなってしまう。
せいぜいアンヌがダンを連れてくるネタになった程度か。
鳥が止まってるのを発見したってのはあるが、あれくらいりつ子でも見つけそうだし、そもそも隣の住民は関係ない。
事件後も誰もいなくなった隣の家を監視してるようだし、正直アキラ少年の行く末は心配としか。

鳥が静止してるのを見て、そこへ飛び込むダン。
無謀にもほどがある。
「キリヤマ隊長。ダンが大変です」とアンヌ。
そりゃ大変だろう(笑)。
結果的にはコントロールマシンを破壊して敵の侵略計画を阻止するのに貢献したが、セブンに変身できなかったのは大誤算だったと思われる。
ダンは変身型ってのもあるが、1期ウルトラのダンもハヤタも割とあっさりウルトラマンに変身する傾向があった。
この辺りは新マンで打ち出された人間ウルトラとの違いであろう。

イカルス星人は凄い科学力を持った星人だが、意外とダンがセブンであることを知らなかった。
今までの宇宙人のほぼ半分はセブンの正体を知っていたというのに(笑)。
四次元から攻撃するというコンセプトはいいが、仲間が一杯いるようで実質的にはあの男一人で全て取り仕切ってるようだったので、結局あの男一人だけが天才だったのかもしれない。
マッドサイエンティストの類であろうか。
巨大化して戦う能力も他の星人にはなく、円盤にこもったきりだった。
まあそもそも男が巨大化する意味が全くないのだが、この辺りはセブンらしさで、どれだけSF的に話を進めても最後は怪獣プロレスというお約束であろう。
怪獣プロレスがないとウルトラじゃないしね。

今回もウルトラホークは敵の円盤を破壊するなど大活躍。
しかもあっさり宇宙まで飛んで行ってしまった(笑)。
玩具の販促もあるのだろうが、ここまで活躍する戦闘機も希であろう。
二期になると、爆破脱出が定番であるし。
ただ、あんな円盤一つ、セブンのエメリウム光線で瞬殺のはずである。
結局お目こぼしを撃破したに過ぎず、「小さな英雄」におけるイデの悩みが解消したとは言い難いであろう。

よくわからない四次元空間は上述の解釈でお茶を濁すとして、本話で注目はやはりやたらと「ダーン!」「アンヌー!」のセリフが多かったことに尽きよう。
ダンも不安なのはわかるが、正義のヒーローがピンチに女の名前を連呼するのはさすがにどうかと。
この辺りはヒロインとしてのアンヌという役割を重視したのだろうが、本話の主役であるはずのアキラ少年はこの時点で既に空気。
ドラマ的にはやや消化不良と言えなくもないだろう。
最後は誰もいない家を監視するなど、実は怪しい隣人てのはアキラくんのことでは(笑)。

本話の監督は鈴木俊継氏。
特に奇抜な演出もなく手堅い作りと言えようか。
気になったのは前述のダンとアンヌがやたら名前を叫んでいたことくらい。
脚本は若槻文三氏。
こちらも手堅いというか、若槻氏らしいSF的な話である。
子供が事件を発見してという展開は、子供向け特撮では定番。
ウルトラQ以来の伝統とも言えよう。
ただ正直隣の男が隣家から丸見えの状態で作業を続けていたのは、あまり意味があるようには感じなかった。
この辺りはやはり無理やり子供を活躍させた感が否めないだろう。

本話の出来に関しては、可もなく不可もなくと言ったところ。
この設定では仕方ないが、やや大風呂敷を畳むのに失敗したという感じ。
そしてセブンにありがちなのだが、唐突に始まる怪獣プロレスには違和感を禁じ得ない。
ただ、イカルス星人自体は愛嬌もあって人気のあるキャラ。
ダンのピンチもしっかり描かれてるし、最後の円盤爆破へのカタルシスは子供向けとしては上々と言えるであろう。
私の子供の頃もそれなりに満足して見てた記憶がある。
子供向け特撮としてはバランスのいい仕上がりではないだろうか。

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