悪魔の星くずを集める少女


データ

脚本は若槻文三。
監督は東条昭平。

ストーリー

「ウルトラマンレオ。今に見ろ。ブラックテリナの恐ろしさを思い知らせてやる」。
「ブラックテリナ、発進せよ」。
無数の貝を地球に撒き散らしながら飛来するブラックテリナ。
それを拾う少年少女たち。
その貝はブラックスターから呪いを込めてウルトラマンレオに送られた美しいプレゼント、テリナQであった。
川に浮かんでいるテリナQを拾おうとしてテリナQに襲われる漁師。
またテリナQに名前を彫ろうとした若い女性もテリナQに襲われた。
テリナQは被害者の目に食い込み重傷を負わせるのだ。
被害女性の知り合いのマリコは落ちているテリナQを拾おうとして女性が倒れているのを発見する。
助けを呼ぶマリコ。
学校からの帰り道、車道でテリナQを拾おうとするマリコに出会うトオルとあゆみ。
「マリコちゃん、危ないわよ」とあゆみ。
「見て、また見つけたの」。
拾ったテリナQを見せるマリコ。
「綺麗ねえ。本当の桜貝みたいね」とあゆみ。
「こんなものどうするの?」とトオル。
「これを集めると幸せになれるの」とマリコ。
「まさか」。
笑い飛ばすトオル。
「本当よ」とマリコ。
「私も欲しいなあ」と言うあゆみに、
「嫌よ。私一生懸命探して集めたんだから」とマリコ。
そのまま立ち去るマリコ。
マリコは廃墟となったビルの一室に入る。
そこはマリコの秘密の隠れ場所でマリコの宝物が隠されていた。
拾ってきたテリナQを箱に入れるマリコ。
「2+3=5」。
壁に書いて数を確認するマリコ。
その夜、家に帰ったマリコは母親が残業で遅くなるという張り紙を見る。
夕食を食べる美山家にマリコから電話が入った。
マリコによると母親が工場で怪我をして、咲子の病院へ運ばれたという。
マリコは母一人子一人の家庭であった。
ゲンが病院へ行くと、母親の手術の成功を祈るマリコがいた。
マリコと話をするゲン。
ゲンはマリコが拾い集めてるという貝のことを聞く。
「これを沢山集めると幸せになれるの」とマリコ。
手術が終わって出てくる咲子。
「2週間も入院したらお家に帰れるわ」と咲子。
「ありがとう。おばさん」とマリコ。
咲子に連れられ母親の病室に入るマリコ。
話しかけるが母親はまだ麻酔が効いていて目を覚まさない。
「朝になったら笑って返事してくださるわ」と咲子。
「みんなが幸せになりますように」。
次の日、隠れ場所で貝に祈りを捧げるマリコ。
マリコは目を覚ました母親に貝をあげる。
また、咲子にも貝を渡すマリコ。
さらにマリコはあゆみにも貝を与えた。
みんなに貝を配るマリコ。
一方テリナQは他の多くの人々にも拾われていた。
その夜、上空2000mに静止していたブラックテリナが光り始めると、それに反応してテリナQも光り始めた。
雨の夜の街を歩いていたゲンは突如刃物を持った男性に襲われる。
応戦するゲン。
そこへ近づく4人の女性たち。
しかしブラックテリナの光が消えたとき、テリナQの光も消える。
去っていく女性たち。
「何をするんだ」。
正気に戻る男性。
「冗談じゃないですよ。あんたはね、このメスで僕を刺そうとしたんだ」とゲン。
「本当ですか」と男性。
近くに落ちていたテリナQを拾いあげるゲン。
男性は医者で、テリナQを手術をした患者の娘からもらったという。
ゲンは光るテリナQを身につけた者がブラックテリナによってロボットのように操られていることをまだしらなかった。
翌日ゲンは光るテリナQを身につけた女性に襲われる。
ビルの上からゲン目掛けてブロックを落とす女性。
何とか交わすゲン。
女性を捕まえようとビルに入るゲン。
しかしゲンがエレベーターから出ると女性が待ち伏せをしていて襲いかかってきた。
揉み合いながらテリナQを剥ぎ取るゲン。
「あんた、誰よ」。
正気に戻って叫び声をあげる女性。
「やっぱりこれが原因だ」。
テリナQが原因だと突き止めたゲンだったが、突然テリナQが目に引っ付いて食い込んできた。
それを見て助けを求める女性。
何とか剥ぎ取ったゲンは警察にそのことを知らせてテリナQの回収を依頼する。
美山家に戻ったゲンはあゆみの居場所をトオルから聞く。
マリコの隠れ場所へ向かうゲン。
そこにはあゆみとマリコがいた。
ゲンの声を聞いて逃げ出すあゆみ。
ゲンはマリコに桜貝の石を身につけると大変なことになるという。
そこへブラックテリナが飛来してきた。
レオに変身するゲン。
ブラックテリナを投げ飛ばすレオ。
一方あゆみの身につけたテリナQは光りだし、あゆみはブラックテリナのコントロール下に置かれる。
それを見たマリコは自分のテリナQも光っているのか確かめる。
テリナQを身につけてコントロールされるマリコ。
ブラックテリナに苦戦するレオ。
触手に巻き付かれたレオはそのままブラックテリナに持ち上げられ地面に叩き落とされる。
何とかブラックテリナを捕まえ反撃するレオ。
ブラックテリナの内臓から青い液体が飛び散る。
光球を投げつけダメージを与えるレオ。
さらに止めの光球を浴びせブラックテリナを破壊した。
正気に戻ったあゆみとマリコは怖くて泣き出す。
ゲンは2人に本物の桜貝をプレゼントした。
母親の分までもらったマリコは大喜びする。
またもブラック指令の野望を打ち砕くゲン。
しかしブラック指令も諦めてはいない。
「私は予言する。ウルトラマンレオの死を。日本列島の最後を。
発進せよ。サタンモア」。
飛来する大怪鳥円盤。

解説(建前)

テリナQに操られた人がゲンを襲ったのはなぜか。
ブラック指令は実はこの時点でもレオの正体を知らない。
ただ、今までの経過からレオがこの町に住んでいるのだけはわかっていたのだろう。
従って、とりあえず新しい円盤はこの町まで呼び出すことにしていた。
レオの特定に関しては円盤生物に任せていたのだろう。

では、ブラックテリナはどうやってゲンがレオだと突き止めたか。
これに関しては難しいが、やはり円盤生物には宇宙人を見抜く特殊能力あると解釈するしかないだろう。
後に出てくるブニョなんかもゲンがレオだと見抜いたし、以前に出てきたデモスもそうだった。
宇宙人がレオとブラック指令しかいないのなら、ブラック指令じゃない方がレオということになるので、そこからゲンがレオであると見抜いたのだろう。
後は人間を操ってゲンを襲わせる。
この辺りはデモスと同じ手口である。

感想(本音)

円盤生物だけがゲンの正体を知っていて、ブラック指令が知らないという展開は不自然であるが、ブラック指令に宇宙人を見抜く能力がないのなら致し方あるまい。
解釈がやや苦しくなるが、一応筋は通っているだろう。
そもそもブラック指令と円盤生物、ブラックスターとの関係もはっきりしないので、この辺りはあまり細かく考えてはいけない。
今の時代なら設定を煮詰めないと問題は多いが、当時はその辺りは緩かったのであまり気にせず、娯楽に徹して見るのが正解であろう。

と、いきなり言い訳から始まってしまったが、円盤生物シリーズならではの切ない話。
最後はハッピーエンドであったが、母子家庭の寂しい少女が美しい悪魔の貝殻を集めて、それをお礼に皆に配るという切ない展開ではあった。
ただ、この少女自身、悪意がないところがバサラのカナエよりは救いがあるか。
マリコの母親やあゆみに直接の危害はなかったし、ギリギリで踏みとどまった感のある話である。

マリコは倒れてる女性に気づかずにテリナQを拾ったり、車道に飛び出してまでテリナQを拾ったり、テリナQを盲目的に拾い集めている。
テリナQを集めると幸せになると自ら願掛けをしていたためだが、この辺りは母子家庭でお母さんが常に家にいない寂しさであろう。
相変わらず母子家庭、父子家庭が多いウルトラだが、当時こういう家庭はそんなに多かったのだろうか?
戦後まもなくなら理解できるが、この辺りは不幸な子供のテンプレートに従っただけと考えるのが妥当であろう。

ブラックテリナはただの貝のようでいて、テリナQで人を操りゲンを襲わせたり結構高度な作戦を取る。
本話の脚本はデモス編と同じ若槻氏。
若槻氏の描く円盤生物は結構主体性があるようだ。
しかしブラックテリナは結局何がしたかったのだろうか?
生身のゲンを刺したところでレオは倒せないような気がするのだが。
まあ、人間体が怪我をした場合その怪我が変身後に影響を与える事例もあるので、その辺りが狙いであろう。
あとは精神面への影響か。

ブラックテリナの作戦の妥当性はさておき、こと視聴者へのインパクトという点ではこういう展開は怖い。
等身大ヒーローでありがちな展開であるが、こういう展開が描けるのが防衛隊を廃した利点であろうか。
この辺りはレオの孤独さがよく描けていていい。
また、操られた女性は完全にホラー。
しかし最初は4人で集結してたのになぜ襲ったとき一人だったのだろう?
あの4人が医者に加わって襲ってきたらどうしようと思ったのは私だけではあるまい。

今回は話が話だけにトオルよりもあゆみが中心だった。
トオルは貝殻の話を馬鹿にする役。
まあ、男子はそういうものだろうな。
あゆみはマリコと一緒になって貝殻に熱中するが、最後はテリナQに操られてしまった。
ただレオは既に巨大化して戦ってるので、あまり意味はなかったような。
マリコとあゆみがゲンに襲いかかる展開というのも面白かったかもしれない。

本話の中心は母子家庭の少女マリコ。
少女が中心ということでブリザード編と少し被るが、マリコはマユコと違ってトオルのトラウマを引き出す役割ではなくただの少し気の毒な少女。
最後ハッピーエンドで締めれたのはその辺りの差であろう。
つまり、マリコはマリコで幻ではなかった。
あくまでゲストの少女に過ぎないということであろう。
本話は一応テーマ的には母子家庭の少女の孤独ということになるであろうが、あまりその辺りには拘泥せずホラー風味に仕上げたのが正解だったと思う。

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