大怪鳥円盤 日本列島を襲う!


データ

脚本は若槻文三。
監督は山本正孝。

ストーリー

不敵に笑うブラック指令。
「予言する。ウルトラマンレオの死を。レオが命懸けで守り続けた日本列島とともに」。
「来い!円盤。サタンモア」。
円盤サタンモアの地球到着は3月7日。
その日ブラック指令の予言通り、ウルトラマンレオは死ぬのか。
彼が愛した日本列島に住む全ての人たちと共に。
刻々とその瞬間は迫っている。
しかしまだ誰も知らないのだ。
もちろんゲンも。
「宏」。
偶然見かけた旧友に声を掛けるゲン。
「お前がいなくなってから三年、随分心配したんだぞ」とゲン。
ゲンと宏はかつてスポーツセンターで、お互い切磋琢磨しあう親友同士であった。
しかし、宏は段々と自分のことしか考えられない人間になってしまう。
宏を信じていた厚子を裏切ったことをどうしても許せなかったゲン。
宏は厚子を幸せにしなければならなかったのだ。
ゲンは宏を責めた。
殴り合うゲンと宏。
その後宏はカメラマンになるためスポーツセンターをやめた。
後を追うように厚子もスポーツセンターをやめてしまう。
ゲンに自分の写真展に来るように誘う宏。
写真展を開催しているビルの方へ行くゲン。
そのゲンの後ろ姿を不気味に見送るブラック指令。
宏の撮った写真を見ていると、中に昔の厚子を撮った写真があった。
それを見ていたゲンに女性が声を掛ける。
女性は赤ん坊を抱えている厚子であった。
厚子は宏と別れた後、すぐに結婚し子供を産んだという。
宏の写真展のポスターを見てやってきたと厚子。
「厚子さん、幸せそうだな」とゲン。
「幸せよ。とっても。でもあの頃も楽しかったわ」と厚子。
宏に会ったと言うゲンに「私も会いたかった」と厚子。
「私、あの写真が好きだわ。ほら、おゝとりさんさっきジッと見てらっしゃった写真」。
「あれはいい写真だ」とゲン。
「来て、よかったわ」と厚子。
再会を約束して別れる二人。
しかし、その瞬間も謎の円盤サタンモアは超高速で地球へ接近していた。
遂に九州上空へ侵入するサタンモア。
九州のミサイル基地から迎撃ミサイルが発射される。
しかしものともしないサタンモア。
東京へ接近するサタンモア。
東京では緊急警報が出されるが、偵察目的で危険はないと報じられる。
冷静に行動するよう呼びかける警察。
ビルの中の人が大勢避難するため混雑するエレベーター。
赤ん坊を抱えた厚子は混雑が解消されるのを待つしかなかった。
東京の防衛基地からも誘導ミサイルが発射される。
しかしサタンモアには通用しない。
激しく光を放ちながら飛行するサタンモア。
遂に都心に姿を現す。
サタンモアは自らの分身である小型のサタンモアを放って市民を襲わせる。
ビル街を滑空するサタンモア。
避難を誘導するゲン。
すると一人の少年がバイクにはねられるのを目撃する。
はねたのは宏であった。
少年を救護せずにそのまま走り去ろうとする宏を捕まえ殴り倒すゲン。
殴り合う二人。
ゲンにバイクのキーを奪われた宏は走って写真展のあるビルへ向かう。
宏の写真展の行われているビルを襲撃するサタンモア。
必死で階段を降りる厚子。
しかし厚子は倒れてきた壁の下敷きになってしまう。
通りがかりの人に必死で赤ん坊を託す厚子。
しかし赤ん坊を託された人も小型のサタンモアの急襲に、ビルの前に赤ん坊を置いて逃げてしまう。
ビルの前に到着したゲンと宏。
ゲンは道端に赤ん坊が放置されているのを発見する。
「宏、この子を頼む」とゲン。
「親が置いていった子供をどうして俺が守るんだ。お前だけ逃げるつもりか」と宏。
「馬鹿野郎」。
殴りつけるゲン。
「待て、ゲン。親友同士だった俺たちがどうして殴り合うんだ」と宏。
「三年前、俺はお前を許せなかった。女を殴ったり、子供を跳ね飛ばして平気でいられるお前にいい写真が撮れるか」とゲン。
「宏、人間の一番大切なものを取り戻してくれ」。
「ゲン」。
「この小さな命を救うことが、今、お前に一番必要なんだ」とゲン。
「頼むぞ、宏」。
言い残してビルへ向かうゲン。
宏の前でレオに変身するゲン。
「レオ。そうだったのか。奴がレオだったのか」と宏。
崩れるビルを支えるレオ。
しかしその背後からサタンモアが襲いかかる。
一方赤ん坊を庇うヒロシも小型のサタンモアの嘴で傷を負う。
崩れた壁から必死で抜け出す厚子。
防衛軍がサタンモアを攻撃するも、逆に撃墜されてしまう。
「頑張るんだ。今俺はお前を助けることができないんだ」。
負傷する宏を助けられないレオ。
レオが支える地上50数階のビルが倒壊すると地下街が押し潰され、何万もの避難者が犠牲になる大惨事になってしまう。
赤ん坊を抱え傷だらけになった宏はそのまま倒れ込んでしまう。
一方、レオはビルに人が取り残されていないことを確認すると、サタンモアをビルにぶつけてビルを破壊させる。
さらに光線を浴びせサタンモアに止めを刺すレオ。
サタンモアは墜落炎上する。
レオのおかげで何万人という人の命が救われた。
宏の行方を探すゲン。
全身傷だらけの宏を見つけるゲン。
宏はまさに事切れようとしていた。
「子供は」と宏。
「俺にも出来た」。
「ああ、できたとも。この子の命をな。宏、この子はな」。
「ゲン、ありがとう」と宏。
言い残して息を引き取る宏。
そこへ子供を探して厚子がやってきた。
「厚子さん、まさおちゃんは無事だ」とゲン。
傍らで倒れる宏を見つける厚子。
「こいつがこの子の命を命懸けで」とゲン。
「宏は、宏はね」。
号泣する厚子。
「宏、ありがとう」。
言い残すゲン。
恐ろしい危機は去った。
本当に平和は戻ったのか。
それとも。
「ブラックスターよ。次だ。レオよりも強く、地球を粉々にできるほど強い奴を送り出せ」。

解説(建前)

ゲンは宏と会うのは3年ぶりだと言っていた。
しかしゲンが地球へ来たのは第一話の時点の1ヶ月前だったはず。
これはどういうことであろうか。
まず考えられるのは、レオは実は日本の青年おゝとりゲンに憑依したという説。
第一話の時点のゲンは20歳だったので、現在21歳とすれば3年前は18歳。
ゲンは高校卒業後、何かの選手を目指しながらスポーツセンターで働いていたのではないか。
その後不慮の死を遂げ、レオが憑依したのであろう。

このように考えてしまえば、よくある友人同士の関係ということで至って問題なく理解できてしまう。
ただ、根本的に問題なのは、レオは作中憑依型と明言されていない点。
素直に考えると、やはりゲンはレオの変身した姿と解釈するのが妥当であろう。
となると、別の解釈が必要になる。
難しいが、思い切ってこう考えてはどうだろうか。

実はレオはまだL77星が滅ぼされていない頃、地球に修行に来ていたのではないか。
王子として経験を積むためにL77星に似た地球が選ばれた。
地球はウルトラ一族界隈では有名な星で、もちろん評判もいい。
また、将来ウルトラマンとして宇宙の平和を守るつもりなら、地球は打って付けの研修場所だろう。
ゲンはダンがセブンであることを知っていた。
今まで変身しなかったのは、ウルトラ兄弟がしっかり地球を守ってることを知っていたからだろう。

ゲンは宏との件で、一旦故郷へ帰ることにした。
しかしその後マグマ星人の襲来を受け、故郷が滅んだのである。
そして当然のように地球へ戻ってきたゲン。
ただ、宏たちと一緒だったスポーツセンターというのは城南センターとは別の可能性が高いであろう。
ゲンが勉強ができるのも日本である程度過ごしていたからとも解釈できる。

レオがサタンモアをビルに激突させたのはなぜか。
ビルが倒壊すれば数万人の被害者が出たはずであるが、結果的に皆助かったことから疑問となる。
結論から言うと、ビルは倒壊しなかったから皆無事だったということになろう。
つまりビルはアメリカの9.11テロのように全壊という事態は免れたのである。

レオは人がいないのを確かめてから上階をサタンモアに破壊させた。
その結果上階だけ分離して破壊。
下階は無事であった。
また、最後サタンモアがビルに激突して大破したときも、ビルの地下は崩れずに済んだ。
これはサタンモアが斜めにビルに突っ込んだため、地下の避難場所が崩れずに済んだのだと考えられる。
かようにして、レオは何万人もの命を救ったのである。

ただ、それなら最初からビルの上階部分だけを分離して地上に下ろせば良かったとも解釈できる。
しかしそれだと地下へ抜ける通路がなくなってしまうので、上階部分にいた人たちが避難できなくなってしまう。
レオは上階部分に取り残された人が下階部分に移り、エレベーターで地下へ行くのを確かめてからサタンモアをぶつけたのであろう。
本来なら上階の人たちの避難が完了してから上階部分を分離して地面に置けば良かったのだが、その余裕がなかったため、ああいう荒っぽいやり方になったのだと思われる。

感想(本音)

トオルやあゆみが出てこない大人向けのエピソード。
ちょっと三角関係ぽい感じが青春ドラマのノリそのものである。
ただ、意欲は買うが正直やや練りこみ不足なのも否めない。
やたらとゲンが宏を殴りつけるのもちょっと違和感だし、その辺りもう少し上手く描ければ名作と言われた可能性もあっただろう。
また、解釈を見ていただければわかるように設定にかなり無理がある点も惜しいところである。
と、厳しい書き出しではあるが、いい点も沢山あるので以下見ていくことにしよう。

まず個人的に気に入ったのはサタンモアの造形。
今まで色々鳥怪獣がいたが、ワンパターンにならずしっかりオリジナル性を保っている点が評価できる。
サタンモアはその名の通りモアがモデルであろうが、モアを実際見たことある人なんかいないのでその辺りは適当であろう。
サタンモアは鳥型の怪獣でありながら、円盤という名に相応しいメタリック感を持っている。
また、光を放つ演出なども相まって、円盤生物らしさを失ってはいなかった。
まあ円盤というより飛行機っぽいから、モデルはコンコルドという気もしないではないが。

しかし、サタンモアを偵察用と断定して危険はないという警察発表は異常。
福島の原発事故を思い出したが(笑)、あんなに堂々と現れる偵察用円盤とか普通では考えられないだろう。
やたら装甲厚いし、間違いなく東京に向かってるのだから避難勧告を出すのが当然である。
厚子さんたちの避難が遅れたのは行政の怠慢以外の何物でもないだろう。
しかし、ウルトラの世界観とは言え、九州にあんな物騒なミサイルが装備されているのには驚いた(笑)。
そりゃ、あれだけ怪獣や宇宙人が現れたら当然だろうが、MAC無き今、地上の防衛を強化するのは必然であろう。

サタンモアもよかったが、今回は全体的に特撮班が頑張っていた。
派手にビルを壊したり、最後は爆破。
光学合成もふんだんで、戦闘機やミサイルなどのシーンもよく撮れていた。
これが予算不足と言われたレオ末期とは思えない。
最終回間近で余った予算を注ぎ込んだのだろうか。
まあ、この辺りは腐っても円谷というところもあるだろう。
この頃はまだ良かったなあと。

本話の中心は何と言っても、ゲン、宏、厚子の織り成す青春ドラマ。
やたらゲンが宏を力任せに殴るのは違和感だが、この辺りも当時の流行りなのだろう。
ただ、時間の都合で3人の関係、特にゲンと宏の関係の描写不足が気になった。
宏がなぜ自分勝手な奴になっていったのか、なぜ厚子を裏切ったのか、なぜカメラマンになろうと思ったのか。
脚本段階ではあったのかもしれないが、この辺りが抜けていたためドラマ部分がやや薄っぺらくなってしまった。
この辺りは解釈で補うしかないであろう。

宏が変わった原因を素直に考えると、やはり厚子以外に女ができたと考えるのが妥当であろう。
その女の影響でカメラマンになろうと思ったとも考えられるし、それで厚子を捨てたとも考えられる。
もしかすると、たった三年で個展まで開けるようになったのはその女の力が大きいのではないか。
元々カメラマンになる夢を持っていた宏だったが、現実を見てスポーツセンターの指導員として手堅く生きようと思った。
もちろん、厚子とは結婚するつもりであり、親友のゲンもそれを歓迎していた。
しかし、あるとき金持ちの女と出会い、その女にカメラマンになることを勧められる。
結果、宏は厚子を捨てその女の下へ。

ゲンのセリフからは、宏は厚子に暴力まで振るったようである。
おそらく宏にも葛藤があったのだろう。
しかしやはり女性に暴力を振るうのはゲンには許せない。
そういうのが積もり積もって喧嘩別れしたのであろう。
ただ個人的にはゲンがあそこまで宏を殴りつけるのは理解できないところもある。
これはやはり、ゲンも実は厚子にほのかに恋心を抱いていたのではないか。
まあ、この辺りは私の妄想だが、単なる友情にしては殴りすぎなのでそういう可能性も考えられなくはないであろう。
とはいえ、避難誘導そっちのけで宏と殴り合うのはどうかと思うが(笑)。

一方厚子は宏とのことはいい思い出で、今では子供に恵まれ幸せに暮らしているという。
この辺り今でも宏を許せないゲンと対照的であるが、これが普通の感覚ではなかろうか。
結婚するつもりの男女が分かれるなんてのはよくある話。
正直ゲンにあそこまでボロクソに言われ殴られた挙句、最後は命を落としてしまう宏が気の毒に見えた。
しかしなぜ宏は最後、ゲンに感謝する言葉を言ったのであろう。
もちろん、自分の行いを反省し昔の自分を取り戻せたことによる感謝の気持ちというのも大きいだろうが、なぜそのような心境に至ったのか。

宏はゲンに散々殴られても納得できず、赤ん坊を救うように言われても「お前だけ逃げるつもりか」と改心するつもりはなかった。
しかしゲンの熱い思いを知った宏は自分の過ちに気がつく。
それはゲンのこのセリフが大きかった。
「女を殴ったり、子供を跳ね飛ばして平気でいられるお前にいい写真が撮れるか」。

宏は薄々自分の写真に心がないことに気づいていた。
ゲンは厚子にこうも言っている。
「あれはいい写真だ」。
ゲンのこのセリフからは言外にこれ以外の写真はあまりいい写真ではないという気持ちが込められている。
そして、ゲンが褒め、厚子が褒め、宏が自信を持って入口付近に飾った写真。
それはかつての厚子の写真。
この写真はおそらく宏と厚子が愛し合っていた頃に撮られた写真なのだろう。

もしかするとこの写真が評価され、宏は変心したのかもしれない。
宏が失った心。
その心を取り戻して再びいい写真を撮るためには、赤ん坊を助けるしかなかったのである。
自分の心を取り戻す決心をする宏。
そして宏はゲンこそが自分の身を犠牲にして侵略者と戦うウルトラマンレオだと知る。
必死に赤ん坊を助ける宏。
宏を助けたいが大勢の命を犠牲にできないレオ。

最後宏は死んでしまうが、人間の心を取り戻したことに満足する。
宏は助けた赤ん坊が厚子の子であることは知らないままだったが、宏にとってそのことはどうでもよかったのだ。
また、厚子にとってもかつての宏の振る舞いに対するわだかまりは解けたであろう。
おそらく資産家に嫁いで幸せに暮らしている厚子。
自分の子供の命を救ってくれた宏に感謝しながら、これからの人生幸せに生きていくと思われる。

本話で最も注目すべきはやはりレオが一般人に正体を明かした点であろう。
これは長いウルトラシリーズでも極めて異例。
今まで正体を明かす例はあったが、全て最終回であった。
例外的にカブトガニが子供にエースの正体を教える話はあったが、エース自ら正体を明かしたわけではないのでやはり初めてと言えよう。
しかしなぜゲンは宏に自分の正体を明かしたのだろうか。

宏を今でも親友だと思っていると宏に伝えたかったというのが一つだろうが、やはり自分の戦う姿を見せて、宏に改心して欲しいと思ったのは確かだろう。
レオの正体を知り驚く宏。
しかしウルトラの世界においては、ウルトラマンの正体を知るというのは死亡フラグなのである。
かくして絶命する宏。
しかし宏が生きていたらゲンはどうするつもりだったのだろうか?
自分の正体を知る仲間と戦うという展開は見てみたかったが、それは平成のメビウスまで待つことになる。

本話の優れている点は、ドラマと円盤生物の襲来が上手く融合されているところであろう。
ドラマ部分だけを見るとベタな青春ドラマで、やや練りこみ不足というか尺足らずな印象であるが、ドラマと交互に展開されるサタンモアの襲来、最後のビル倒壊をめぐるバトル等、上手くドラマと特撮が融合されている。
まあ、ビル大破は正直どうかと思うが、この辺りは予算もあるし派手にやろうぜという特撮班のノリでやったのだろう。
ナレーターが必死に市民の無事を強調したのは、やはりこのフォローという側面は否めない。

本話の脚本は若槻文三氏。
氏の本作最後の脚本はホラーやSFチックな話ではなく、王道バトルものとドラマの融合という骨太な話であった。
若槻氏はセブン以来の参加ということだが、諸事情があったのであろうか。
いずれにせよ、ウルトラ経験者が一人加わることにより話に厚みが出、他のライターの負担が軽くなったのは大きかったであろう。
基本的には脇になる話が多かったが、その分ゲストを上手く使った若槻氏。
本話も番外編的な話ではあるが、レオの世界の幅を広げたのは間違いないところである。

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