戦うレオ兄弟!円盤生物の最後!


データ

脚本は田口成光。
監督は東条昭平。

ストーリー

「ブラックスター7番機ハングラー。地球侵略を開始せよ」。
地球へ飛来した円盤生物ハングラー。
ハングラーは地中に身を隠す。
ある日渋滞に巻き込まれたゲンは、苛立つ運転手たちを一括するトラック運転手純平に出会う。
一方、トオルのクラスメート純次は鉄棒ができないことから、皆にいじめられていた。
そこへ怒鳴り込む純平。
純平は純次の兄で鉄棒ができない弟に見本を見せようとする。
しかし純平も鉄棒ができず、一緒にクラスメートに馬鹿にされる羽目に。
それを見て微笑むトオルとあゆみ。
その夜、トラックで一緒に家に帰る純平兄弟。
見慣れない信号を見つけ停車する純平。
「トンネルだ」と純次。
しかしトンネルに見えたものは実は怪獣だった。
怪獣が巻き起こす竜巻に巻き込まれる2人。
必死で純次を車から突き落とす純平。
純平は宙に浮いたトラックから転落し大怪我をする。
一方トラックはハングラーの口の中で爆発した。
入院した純平は警官からスピード違反の事故ではないかと言われる。
怪獣が出たと主張する二人だったが、警官は聞いてくれない。
「兄ちゃん。きっと大人は怪獣なんか興味ないんだよ」と純次。
純次はクラスメートに怪獣が出たと説明するが、クラスメートは疑って信じてくれない。
「お前の兄さん、いつも乱暴じゃないか」。
「でもお兄さん、プロの運転手だから無理しないんじゃない」。
擁護するあゆみ。
「うん。兄ちゃん、いつも安全運転してるんだ」と純次。
しかし「いけねえな。兄弟揃って嘘付いたりしちゃあ」と信じてもらえない。
そこへ地主の大友がやってきた。
「お前だなあ。わしの土地にケチをつけたのは。今売り出し中の大事なわしの土地に怪獣が出たなんてことぬかしよって、気味悪がって予約を取り消した奴もいるんだぞ」。
「だって、本当に怪獣が」。
「黙れ」。
去っていく大友。
「嘘ついた罰だぞ」。
「早く行って謝ったほうがいいぞ」とクラスメート。
「俺は嘘なんてついてない」と純次。
「のろまの純次、嘘つき純次」。
去っていくクラスメートたち。
ヤギの散歩をする純次。
そこへゲンたちがやってくる。
「君たち昨夜、怪獣に襲われたんだって?」とゲン。
「いいんだよもう、その話は」と純次。
「僕にその時の話を詳しく話してくれないかな」とゲン。
どうせ信じてくれないんだという純次に、
「おゝとりさんはそんな人じゃないよ」とトオル。
「何度も円盤生物や怪獣から人を助けたことがあるのよ」とあゆみ。
それを聞いて純平のところへ3人を連れて行く純次。
しかし「帰ってくれよ。今更余計なことはせんでくれよ」と純平は突き放す。
「俺の言うことが本当だとして、一体あんたに何ができる」。
「純平さん。僕はあんたたちをほっとけないんだ」とゲン。
「そういうのをおせっかいと言うんだよ」と純平。
「違います。僕も何度もひどい目にあってるんです。死にそうになったこともあります」とゲン。
「あんたが一人信じてくれたところでどうにもなるもんじゃねえ。あんたが傷つくだけだ」と純平。
「さっき電話があって、俺、会社首になった。交通事故を起こすような奴は雇っちゃおけねえってよ。俺、世の中で嘘つきと弱いものいじめだけはしちゃいけねえと信じてきた。それがこのとおり、ざまあねえや」。
「俺を狙ってきた円盤生物のために、この兄弟はすっかり人を信用しなくなり、会社までなくしてしまった。くそう。どんなことをしても円盤生物を倒して、兄弟の無実を晴らしてやるんだ」。
心に誓うゲン。
純次と一緒に現場へいくゲン。
何度も確かめるゲンに対し、
「おゝとりさん、どうしてそんなに何度も同じこと聞くの?やっぱり僕たちのこと信用してないんだね」と純次。
涙ぐむ純次。
そこへ地主がやってきた。
「すまんが根も葉もない噂を信じて土地を荒らされちゃあたまらん。その噂はな、その子の兄貴が気まぐれに言い出したことだ」と地主。
「ちきしょう。みんな、みんな僕たちのこと馬鹿にしてるんだな。ちきしょう」と純次。
無断侵入で訴えるぞとゲンを追い出す地主。
その時地面が揺れ地中から怪獣が姿を現す。
美山家に帰ったゲンは咲子に頼んで兄弟のおにぎりを作ってもらっていた。
「見ず知らずの家に食事まで持ってくなんて、行きすぎじゃないかしら」といずみ。
「それはいずみさんの考え方。僕の考え方と君とは違うの。わかる?」とゲン。
むっとするいずみ。
トオルたちにからかわれて声を荒げるいずみ。
「なんですか、あなたは。何も手伝わないで、口ばかり達者で」と咲子。
「あなた、お父さんのこと世界で一番尊敬する人って言ってたでしょ。お父さんの口癖はね『汝の隣人を愛せよ』だったのよ」。
渋々手伝ういずみ。
純次の家におにぎりを持っていくゲン。
「僕を信用できない気持ちもわかるけど、僕の話も聞いてくれよ」とゲン。
「僕にも、君の兄さんのように厳しいけど、とっても優しい兄さんのような人がいたんだ。でもその人は円盤生物に襲われて死んでしまった。だから、僕はどうしても円盤生物をこの手でやっつけたい」。
「機嫌が直ったらおにぎり食べろよ。君の悲しそうな顔を見てると僕まで悲しくなるよ」とゲン。
「ごめんなさい」。
おにぎりを食べる純次。
その時大きな地震が起こった。
円盤生物ハングラーが暴れだしたのだ。
高速道路を破壊するハングラー。
渋滞の車が爆発し、大惨事になる。
次々と車を吸い込んでいくハングラー。
「あいつだ、あいつが兄ちゃんを」と純次。
「ちきしょう、あいつが僕たち兄弟を滅茶苦茶にしたんだ」。
怪獣の方へ向かっていく純次。
追いかけて止めようとするゲン。
純次を助けて腕を負傷するゲン。
ゲンはアドバルーンを引いて、ハングラーにぶつけた。
破裂したアドバルーンが顔にまとわりついて暴れまわるハングラー。
そのままハングラーは飛び去っていった。
「大変だ、おゝとりさんが僕のために片腕になってしまう、大変だ」。
助けを呼びに行く純次。
次に団地に現れたハングラーは、周辺の車を次々と吸い込んでいた。
団地を破壊するハングラー。
治療を終えたゲンはハングラーの下へ急ぐ。
一方一足先に現場に駆けつけた純平は弟を残して、一人タンクローリーでハングラーに特攻していた。
それを止めようとするゲン。
しかしタンクローリーはハングラーの口に挟まり大炎上。
爆風とともに火だるまになって飛ばされる純平。
必死で火を消すゲン。
レオに変身するゲン。
しかし腕を負傷しているレオは力が出ない。
ハングラーの猛攻に苦戦するレオ。
負傷してる腕をハングラーに噛み付かれるレオ。
腕を責められ苦しむレオ。
そこへ空から赤い球が飛来した。
中からアストラが現れる。
アストラはレオを助け、最後は小型化してハングラーの体内へ。
大破するハングラー。
負傷したレオに肩を貸すアストラ。
それを見て「まるで俺たちみたいだな」と純平。
飛び去るレオ兄弟に手を振る純平兄弟。
「レオー、アストラーありがとう」。
「レオめ。今度こそお前の息の根を止めてやる。ブラックスター8番機。ブラックテリナ、来い!」

解説(建前)

ハングラーはなぜ車を襲うのか。
ブラック指令の命令で暴れているだけとも考えられるが、純平のトラックを襲ったときは他に被害がなかったことから、やはりお腹が減って勝手に行動したのであろう。
とすると、ハングラーは車若しくは鉄が好物だと思われる。
鉄を食べる生物というのは聞いたことがないが、円盤生物というのは円盤の強度を持った生物ということなので、鉄で組成されていても不思議はない。

感想(本音)

ちょっと強引に兄弟の物語にしてアストラを出したかったイベント編。
その割にアストラの出番はあっさりだったが、あっさり強豪と思われるハングラーを倒したのはなにげに凄い。
普通宇宙から飛んできた場合なかなか力を発揮できない兄弟も多いのだが、アストラは別なのか。
個人的にはアストラは地球に潜んでると思ってるが、これに関しては何も証拠がないので憶測の域は出ない。

本話はやはりゲスト出演の平泉征改め平泉成氏の溌剌とした演技が注目であろう。
ウルトラは蟹江敬三氏や坂口良子氏など後の大物のゲスト出演が見れる楽しみもあるが、この頃の平泉氏は今の落ち着いた感じと違って血気盛んなところが新鮮。
やっぱり上手い人は何やらせてもうまいなあと思った。
また、弟の純次役の子も泣きの演技がなかなかよかった。
微笑ましい兄弟の関係がよく描けていたと思う。

本話のテーマは誰が見ても兄弟愛。
見たところ2人には親がなく、兄の収入で弟を養ってる感じである。
ウルトラではよくある設定だが、この辺りは当時の世相もあるのだろうか?
ただ、やはり2人の行動の強引さは気になる。

最初の事故で純平がトラックから落ちて大怪我をするのはまだ理解できるのだが、最後タンクローリーで突っ込んで生きてるのはもはやコントとしか。
遠く離れたゲンが爆風をよけるために身をかがめてたのに、当の本人が火がちょっとついただけで飛ばされて大した怪我じゃないというのはさすがに無理がありすぎる。
一方の純次もゲンの制止を聞かずに何度も怪獣に特攻。
この辺りはウルトラの定番の根性論ではあるのだが、1期、特にセブンファンには受けの悪いところであろう。

対してゲンはなかなか理に適った対処をしている。
アドバルーンを怪獣にぶつけて怪獣を追い返すというのは、警備隊の不在をうまく補っているといえるだろう。
ただ、やはり警備隊がいないと絵面的な地味さは否めない。
それがレオの良さでもあるのだが。

とはいえ爆破場面の派手さはオイルショックの影響を感じさせない派手なものである。
しかし、あれだけ派手に高速道路が破壊されては相当の死傷者が出たはず。
これは怪獣の目撃談を信じなかった警察の落ち度であるが、そもそも警察は怪獣を相手にした組織ではないので、やはりMACが潰れたのが大きいだろう。
MACがいれば怪獣の調査をして被害を最小限に食い止めたのではないか。
まあ、MACはあまり力なさそうなので、交通封鎖とかできそうもないからあまり変わらない気もするが。

本話では初めてゲンの口からダンが死んだことが言及されている。
この時点でのダンの生死についてはおそらくスタッフもあまり考えてなかったと思われるが、作品的には死んだとして続けていくしかないであろう。
もちろん結果的には生きていたというのが公式設定であるが、作中ではそれに触れていない以上現状では死んだと解釈するしかない。
その辺りはまた最終回に検討することにしよう。

今回は美山家のやり取りも結構面白かった。
出番がない咲子やいずみに無理やり出番を作ったのだろうが、いずみが孤立してちょっと気の毒ではあった。
咲子はトオルを引き取ったり「汝、隣人を愛せよ」を実践する看護婦だが、いずみはごく普通の女子大生という感じ。
理系の大学に通ってるように、割とリアリスト。
皆が皆善人ばかりじゃ面白くないので、いずみの存在はいいスパイスとして機能している。
もちろんいずみはいい人なんだけどね。

今回のゲストではエースのダン少年でお馴染みの梅津くんも注目。
エースでは知らない間にフェイドアウトしていたが、これでタロウ、レオと連続出演。
なかなか売れっ子である。
ただ、今回の役柄はいじめっ子のリーダー的存在。
あまり扱いがいいとは言えない。

今回の一番の被害者とも言えるのが、ハングラーが出た土地の地主さん。
あんな大惨事じゃあ、土地の買い手は皆キャンセルであろう。
もちろん純平兄弟の責任にするわけにもいかないし、流石に責任を負うことはないだろうが造成に投資した資金は無駄になった。
嫌な奴みたいに描かれていたが、警察が怪獣なんていなかったと言ってるんだから地主は別に悪くはないであろう。
ちょっと気の毒ではある。

ハングラーの造形はなかなか愛嬌があっていい。
ただ、あの足はちょっとという気もするが。
しかし愛嬌のある見かけと違ってやってることはかなりエグい。
結果アストラにあっさり倒されたので強いのか弱いのかよくわからなかったが、それなりの存在感はあった。
破壊活動は派手だったし。

本話で一番気になったのは、ゲンが負傷して泣きながら純次が走ってるシーンから場面が飛ぶところ。
シルバーブルーメ編でも気になったが、ハングラーの再来は本来ならワンクッション置いてからであったのだろう。
この辺りはドラマ部分に尺を裂きすぎた結果であろうか。
最後唐突に純平が特攻するシーンに違和感を覚えた人も多いと思う。
おゝとりさんが片腕になるってのはなんだったのか?

本話の脚本はメインライターの田口氏。
一応イベント編ということか、娯楽に徹した作りになっている。
ただ、内容的にはあまり掘り下げはなく、テーマも取って付けた感は否めないだろう。
相変わらず目撃談を信じてくれない流れなどテンプレ通りという感じ。
とはいえ、両親のいない兄弟に冷たく当たる社会というところは平泉氏の演技もあり、それなりに共感できた。
特に傑出した部分はないが、無難にまとまったイベント編としては評価できるだろう。

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