男と男の誓い


データ

脚本は田口成光。
監督は深沢清澄。

ストーリー

星人の前に敗れ去るレオ。
なおも暴れる星人に戦いを挑むダン。
ダンはマッキーを自在に操り星人を高圧電線の近くへと誘導する。
手刀が電線に触れ感電する星人。
星人は宇宙へと撤退する。
海辺を捜索するトオルやMAC隊員たち。
ゲンの安否を心配するダン。
トオル、カオル、百子、武の4人は夜遅くまでゲンを探し続けていた。
僕の周りの人がいなくなるのは嫌だとトオル。
4人はもう一度ゲンを探すことにする。
ダンは自分の手足となって戦ってくれたゲンのことを思うと堪らなかった。
「今度奴が現れたら私が死ぬ番だ」とダン。
その時基地にゲンが救出されたと報告が入る。
急いでゲンの下へ向かうダン。
ゲンは重症で安静が必要であった。
看病する百子たち。
その時ゲンの耳にダンの杖の音が聞こえた。
「隊長だ」とゲン。
対面する2人。
「ゲン、私と一緒に来るんだ」とダン。
「隊長さん、おおとりさんはまだ無理です」と百子。
「ゲンの体のことは私が一番わかっています」とダン。
「稽古着を持ってくるんだ」。
ダンと一緒に部屋を出るゲン。
「なぜ変身したと聞いてるんだ」。
「MACが全滅しそうだったんですよ」。
「MACには私がいるんだ、なぜ私の命令を聞かない」。
「もうすぐ星人が戻ってくる。今度は電気ショックなど通用しないだろう。この貴重な時間をお前は無駄に過ごしてしまったんだ」。
「何かというとウルトラマンレオに変身するお前の心が許せない」。
「変身する前に必要なことをお前は忘れている」。
「技の完成だ。この滝の水を斬れ」とダン。
「やるんだ、お前なら出来る。この水を奴の手刀だと思え」。
そこへ星人出現の報が入る。
「技を覚えるまで来るな」とダン。
ビルを真っ二つにする星人。
街を破壊する星人。
逃げ惑う住民たち。
マッキーの攻撃も通用しない。
住民の避難を誘導する隊員たち。
ツルク星人は電気ショックの電流を体内に溜め込んでいた。
それを放出することにより、ビルの鉄筋も溶かす。
星人への憎しみから星人に向かっていくトオル。
トオルと武のピンチを見たダンはウルトラ念力を使う。
星人の動きを封じるダン。
星人は退散した。
薄れゆく意識の中ゲンの技の完成を祈るダン。
しかしゲンは技を完成できない。
「出来ない。俺には出来ない、畜生」。
そこへダンが現れる。
「その顔は何だ、その目は何だ。その涙は何だ」。
戦闘のダメージからその場へ倒れ掛かるダン。
「隊長、しっかりしてください。またウルトラ念力を」。
「あれを使うと命が縮むんでしょ。やめてください」とゲン。
「馬鹿やろう」。
ゲンを殴るダン。
「お前がやらずに誰がやる、お前の涙で奴が倒せるか。地球が救えるか」。
「皆必死に生きてるのに挫ける自分が恥ずかしいと思わないか」。
「もう一度やるんだ」とダン。
そこへ星人出現の報が入る。
「川の流れは耐えることなく終わりがないものだ。いいか、流れに目標を見つけるんだ」とダン。
「それまで私が星人を食い止めておく」。
ダンの言葉を胸に特訓を続けるゲン。
一方ダンは地上から星人を攻撃するも、星人に追い詰められてしまう。
その頃ゲンは滝の中の花びらを見つけ、それを目標に水を斬ることに成功していた。
レオに変身して星人に挑むレオ。
星人の動きを見切ったレオは星人の手刀攻撃を防御する。
最後は星人の腕を切断し、その手刀でとどめを刺した。
トオルとカオルは百子の下に引き取られることになった。
「お前が彼らに喜びを与えたんだ」とダン。

解説(建前)

トオルとカオルは何故百子に引き取られることになったのか。
トオルとカオルには実はおばさんや従兄弟がおり、身寄りが全くないわけではない。
しかもその親せきは同じ東京に住んでいる。
普通に考えれば2人は親せきに世話になるのが筋である。
しかし2人は結局百子と一緒に住むようになった。
これはなぜか。

まず考えられるのは2人とおばさんが仲が悪いということ。
しかし第33話を見る限り、2人はおばさんとも従兄弟とも特に仲が悪いという印象はなかった。
とすると、これはやはり場所の問題だと思われる。
いとこの家は団地にあり、2人が一緒に住む余裕はなかった。
引っ越すにしても家族で引っ越すとなるとなかなか大変である。
そういう事情があって、百子が自ら名乗り出たのであろう。
百子と3人なら賃貸マンションを借りるのも難しくあるまい。

ただこの場合金銭の問題が発生する。
百子がいくら収入があるといっても、女手一つで2人を養うのは困難なはずである。
また、そもそも百子に2人を養育する義務はない。
かと言って、おばの側にも養育費を払う余裕はないであろう。
それではトオルの父親に遺産が結構あったのだろうか。
これも男手一つで2人の子どもを育てており、あまり期待できない。
犯罪被害者給付金にしても相手が星人では何処まで適用されるか疑問がある。

金銭の問題は、結局生命保険以外考えられないであろう。
2人の父親がどういう仕事をしてたのかわからないが、父親は自分にもしものことがあった場合を前もって考えていた。
そこで偶々生命保険に加入していたものと思われる。
百子はその中から2人の養育費を貰っていたのだろう。
そしてお金の管理は親せきがしていた。
長くなったが、一応以上のように考えることにする。

滝を斬る特訓の意味するところは?
滝の流れは漠然と眺めているだけでは、その切れ目がわからない。
その流れを見切るには、視点を何かに固定する必要がある。
同様に星人の3段攻撃についても、漠然と手刀の動きを見てるだけでは見切れない。
そこでダンは星人の動きを見切るためにゲンにこのような特訓を課したのであろう。
結果ゲンは見事滝を斬るのに成功し、レオもツルク星人の攻撃をかわして攻撃することが出来た。

感想(本音)

ゲン役の真夏氏が最も辛かったという滝を斬る特訓。
正直意味がわからない特訓であるが、その気迫みたいなものだけは伝わってきた。
それは特にダンのセリフによく表れている。
「何かというとウルトラマンレオに変身するお前の心が許せない」。
「その顔は何だ、その目は何だ。その涙は何だ」。

表向きはゲンへの叱咤激励であるが、その実は視聴者である子ども達に向けられていたのは明らかである。
ただこの手の押し付けがましいメッセージはともすると子どもたちから敬遠されてしまう虞もある。
私はリアルタイムで視聴した世代ではないのでわからないが、結果を見る限り、この路線はあまり受け入れられなかったようだ。
このセリフの重みがわかるのは、むしろ初心を忘れた大人になってからであろう。

今回ダンは巧みな操縦テクニックで見事星人を撃退している。
前回も杖一本で星人を撃退しており、倒すことは出来ないものの、さすが歴戦の勇士である。
そしてダンの活躍とともに流れるセブンのメロディー。
同じ冬木氏が劇伴を担当してるからこそなせる業だが、この辺りシリーズの一体性を感じさせて良い。
ただ巨大化した星人に杖一本で挑むのは無謀だぞ。
普通に考えれば切り裂かれてもおかしくないのだが、その辺りは過剰な演出ということでスルーすることにする。

今回も星人はよくわからず暴れていた。
この辺りレオの弱みで、星人若しくは怪獣が暴れることに必然性が感じられない。
星人という割にセリフはないし、やはり物語先にありきという感じはする。
好意的に解釈すれば通り魔殺人をテーマにしたともいえそうだが、ストーリーを見る限り、星人の行動に主体性があまり見られない。
結局巨大化して暴れていることから、単に暴れることが目的であると解釈するしかなさそうである。

一方、父親を殺されたトオル、カオル兄妹もあっさり立直っている。
もう少し2人の心の葛藤を描いても良かったと思うが、この辺り苦難が矢継ぎ早に襲ってきていることから、その余裕がなかったのであろう。
トオルの心の葛藤は次回以降に度々描かれるので、今回は仇討ちに主眼を置いたものと思われる。
ただトオルの、「いいぞ。死んでしまえ。父さんの仇だ」というセリフは今の基準では微妙なだけに少しドキッとさせられた。
こうストレートに「死んでしまえ」というのは、いじめが社会問題となってる御時世、難しいのではなかろうか。
あるいはトオルの心の屈折を描いたのかもしれないが、いずれにせよ今までの子役の中で最も影のあるトオルらしいセリフではある。

重症のゲンを無理やり連れ出して特訓するダンは怖い。
しかも自分が一番ゲンの体のことはわかってるって…。
ただ実際ゲンはすぐ特訓が出来るくらい回復しており、この辺りは普通の人間とはかなり違うのであろう。
ただあれだけ重症の割に病院へ行かなかったのは不思議である。
もしかして、ゲンが自分が人間でないことがばれるのを恐れて病院へ行くことを拒んだのかもしれない。
しかし何故ゲンはなかなか見つからなかったのであろうか。
そもそもゲンが海辺にいると思った根拠は?
まあ、その辺りお約束なので突っ込むのはこれくらいにしよう。

トオル、カオル兄妹は結局百子にお世話になることになった。
これは物語の都合上仕方ないが、やや強引ではある。
ただ百子も怪獣の襲撃により故郷を失っている。
同じ被害者同士、共鳴する部分があったのも確かであろう。
とは言え、百子、カオルの運命を知っている身としては不憫さは否めない。

本話は敗北、特訓、再戦というレオ初期のフォーマットに忠実に則っており、ドラマ的な深みは今ひとつである。
序盤だけに仕方ないところではあるが、流れが2話とほぼ同じというのはさすがに視聴者に飽きられる危険性もあり頂けない。
その点1話の設定を受け、自らの世界を大きく広げて見せたタロウ2,3話に比べると物足りなさは否めないだろう。
話自体の出来は悪くないものの、シリーズ構成としてこれで良かったのか。
1,2話で一応掴みはオッケーだっただけに、少しやり過ぎた感を感じる3,4話である。

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