泣くな!お前は男の子


データ

脚本は阿井文瓶。
監督は東条昭平。

ストーリー

バスに乗りピクニックに向かうスポーツセンターのメンバーたち。
父親を失ったばかりのトオルは、公園で他の家族が仲良くする様子を羨ましそうに見ていた。
カオルが声を掛けてもトオルは答えない。
その様子を見ていたゲンと百子。
「私はカオルちゃんのお母さんよ」と百子。
「僕はトオル君のお父さんだ」とゲン。
「僕だけのお父さん」とトオル。
「そうだよ」とゲン。
その言葉を聞き機嫌を直すトオルであったが、そこにMACから連絡が入る。
帰還命令に従うゲン。
トオルは「おゝとりさんはMACの隊員。ボクの父さんなんかじゃない」と言う。
その頃MACは怪獣カネドラスと戦っていた。
カネドラスの角は空を切り、マッキーを襲う。
歯が立たないMAC。
幸いカネドラスは休息のために月の裏に去ったが、再び攻撃してくるのは確実であった。
ゲンは合流が遅れたことをダンに咎められる。
「お前の気持ちはわかる。しかしお前が遅れたことで何百万人ものトオルが出来たかもしれないんだ」とダン。
ダンはゲンにカネドラス攻略のための特訓を命令する。
カネドラスの角を模したマシンで特訓に励むゲン。
ゲンは徹夜で特訓を続ける。
翌日、無気力に跳び箱を跳ぶトオルの姿を見かけるゲン。
ゲンはトオルに何か声を掛けようとするが、そこにダンが現れた。
「隊長、こんなことをして何になるんですか」とゲン。
「この美しい第二の故郷地球を守って見せると言った男の言葉がそれか」と激するダン。
「ぼくが言うのは、たった一人のみなしごに対して何もしてやれないのに、地球だの人類だの言う、虚しさのことなんです」とゲン。
そこへ怪獣が月を出発したとの連絡が入る。
ダンはマシンの攻略を命じて本部に戻る。
ダンの言葉を聞いて避難するセンターの子どもたち。
しかしトオルは跳び箱の練習を止めようとしない。
2人を避難させようと説得する大村。
しかし2人は大村の言うことを聞かずに練習を続けた。
その時ゲンの蹴り折ったマシンの腕の部分が大村を襲う。
真剣白羽取りでそれをキャッチする大村。
それにヒントを得るゲン。
怪獣がセンターの目前に襲来した。
トオルを心配してセンターに戻ってくるカオル。
避難するようトオルに言うゲン。
ゲンは言うことを聞かないトオルを平手で打つ。
大村からカオルが戻ってきたと聞いてセンターを飛び出すトオル。
トオルはカオルを助けようと走り寄る。
怪獣の火炎放射により火に包まれる2人。
2人は車の中に逃げ込むが、遂に怪獣に捕まってしまう。
レオに変身するゲン。
レオは2人の乗る車を庇いながらカネドラスと戦う。
背中に角攻撃を受け苦悶するレオ。
「トオルはお父さんの子だろ」。
トオルに話しかける亡き父の声。
「うん」とトオル。
さらに父の声が続ける。
「ただそれだけかな。カオルのお兄さんじゃなかったのかな。甘えたり拗ねたりする前にカオルのお兄さんということを思い出してみるんだ」。
それを聞いたトオルは「もう心配しなくていいよ。お兄ちゃんがついてるからね」とカオルに言う。
「ウルトラマンレオ、頑張れ」とトオル。
反撃に出るレオ。
レオはカネドラスの投げた角を真剣白刃取りでキャッチし、それを投げ返した。
カネドラスの目に命中する角。
最後はハンドスライサーでとどめを刺す。
元気を取り戻したトオルはカオルやゲンと一緒に跳び箱の練習をしていた。
足を引きずりながらも何回もチャレンジするトオル。
「お兄ちゃん、捨て身でやれば何でも出来るってレオに教えてもらったって。だから張り切りすぎてるの」とカオル。
それを見守る大村とダン。

解説(建前)

カネドラスは何者か。
カネドラスは月と地球を自在に往来出来ることから地球怪獣ではなさそうだ。
やはり地球を破壊するために送り込まれた宇宙怪獣であろう。
おそらく背後に何者かの陰謀があるに違いない。
さらにカネドラスは頭の角をブーメランのように自在に操る。
このことからカネドラスがサイボーグ怪獣の類である可能性も否定できないであろう。
いずれにせよ、カネドラス自体の意志というものはあまり感じられない。

感想(本音)

当サイト初登場の阿井氏による脚本。
阿井氏のウルトラデビューはタロウなのだが、更新順の関係で本話が初登場となった。
本話は前回消化不良だったトオルとカオルの父を失った悲しみをしっかり描いている。
少々強引なストーリーではあるが、トオルが父親の声を聞いて立直るシーンは良質な児童文学を思わせ心地よい。
脚本としては十分及第の出来であろう。

有名子役が多く登場することで知られるレオであるが、今回公園でお父さんに花を贈る少年は宮崎アニメでもお馴染の松田洋治氏。
氏と言ってもまだ5,6歳だろうが、短いシーンでも存在感は発揮していた。
そしてそれを見つめるトオル。
この辺りはアップも多用されて意欲的な構図が多く見られる。
それに応える新井氏の演技力もさすがだ。

今回カオルは父を殺されたトラウマをあまり感じさせなかった。
これはカオルはトオルに比べて小さいことからあまり人の死を実感できないこと及び、トオルと比べて父と過ごした時間が短かったことによるのであろう。
またゲンや百子、何よりトオルの存在が、カオルに父の死をあまり感じさせなかった要因ではないか。
一方トオルは頼るべき父親を失った。
この年頃の少年に妹を支えるお兄ちゃんになれというのは酷である。
それでも普通なら自分を誤魔化して気丈に振舞うものだが、身近にゲンと百子がいたのでつい甘えてしまったのであろう。
我が身を犠牲にするレオの姿を見て、トオルも自分が守らなければならない存在に気付くことができた。

今回ゲンはMACに合流するのが遅れたことにより、「何百万人ものトオルが出来たかもしれない」と責められている。
しかしこれはちょっと疑問。
というのもゲンはMACから連絡を受けると、すぐにトオルを振り切って駆けつけたからだ。
ピクニックに行くこと自体は契約で認められてるはずだし、正直これは気の毒。
ただダンの言わんとするところはわかる。
結局この辺りのやり取りは、一人の身内の少年の心を守るか、地球を守るかというヒーローのあり方に関するものなのだろう。

では本話においてその答えは出たのだろうか。
実はここに本話というか、レオの最大の問題点がある。
それは怪獣及び宇宙人が、レオやトオルに試練を与えることだけを目的として行動してるように見える点だ(そもそもそれが設定なのだが)。
本話においても結局怪獣はトオル兄妹に襲い掛かり、レオは身を呈してそれを防いだ。
レオは地球を救うと同時に見事に個人を助けることに成功したのである。

この辺り裏設定を考えて、そもそも怪獣宇宙人は何者かによって、レオを苦しめるためだけに送り込まれていると解釈することも可能である。
しかしそう考えるとやはりウルトラの基本を逸脱してしまう危険があるであろう。
ウルトラマンは地球を守るために戦っているのが前提である。
それをレオのせいで地球が危機に陥ってるなんて、本末転倒もいいとこだ。
それではヒーローどころか疫病神である。
この辺り、ドラマ主義に偏るあまりバランスを失している感は否めない。
あるいはこの矛盾が、シリーズ終焉の引き鉄になったと考えることも可能であろう。

ちょっと厳しくなってしまったが、ウルトラシリーズとしてやはり怪獣がドラマの駒にされてるのには違和感を感じる。
レオ前半にそれは特に顕著だが、登場する怪獣宇宙人についての説明が本編でなされないというのはやはり問題であろう。
地球怪獣なら「怪獣がそこにいるから暴れている」と言えなくもないが、宇宙から来るからにはやはり何らかの目的を有すると考えるのが妥当だからである。

かように問題のある本話であるが、それでも話の出来自体は悪くない。
それはドラマ部分がしっかりしているからである。
父を失ったことからなかなか立直れないトオル。
そして戦いとトオルへの思いの間で葛藤するゲン。
遂にトオルは亡き父の声を聞いて立直る。
そしてそれはレオであるゲンの自己犠牲の精神の賜物でもあるのだ。

ただ、こういう楽しみ方は万人が出来るとは限らない。
人によっては怪獣をあまりに軽視する脚本や子ども向けの教訓が強く出すぎた脚本に嫌悪感を持つ人もいるであろう。
もちろんそのこと自体に何も問題はない。
作品の見方に人それぞれ志向がある以上、至極当然だからである。
結局1期、2期問わず楽しむことが出来るのは、作品に対するスタンスを自在に変えられる人ということになるであろう。
かく言う私もその評価基準を作品ごとに変えている。
これも第3期世代特有の感性がなせる業なのかもしれない。

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