決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟


データ

脚本は若槻文三。
監督は東条昭平。

ストーリー

平和な、寒さも和らいだある冬の日の午後。
誰も知らないところで恐ろしいことが起きつつあった。
ウルトラの星のウルトラタワーに突如何者かのチェーンが。
突然の侵入者に出動するウルトラ兄弟たち。
しかし、タワーは破壊されてしまう。
「ウルトラタワーの炎が消えた」。
「暗黒宇宙の支配者、ババルウが来たのだ」。
その時ウルトラの星に異変が。
ウルトラの星を制御するウルトラキーが外されたのだ。
ウルトラキーを盗んだのはレオの弟アストラだった。
アストラからキーを取り戻そうとする初代マン。
しかし、初代マンは格闘の末、アストラを取り逃がしてしまう。
ババルウが犯人だと言う兄弟たちにアストラが犯人だと告げる初代マン。
キーを失ったウルトラの星は軌道を外れて宇宙を暴走し始める。
「ウルトラの兄弟たち。裏切り者アストラを倒しキーを取り戻すのだ」とエース。
ウルトラの星は太陽系へ向かっていく。
異常をキャッチするMAC。
するとレーダーがショートしてしまった。
宇宙監視署に問い合わせるゲン。
しかし応答がない。
モニターに移った文字を見つけるダン。
その文字を見たダンはゲンを別室に呼ぶ。
その文字はウルトラサインでサインによると、ウルトラの星のキーが盗まれコントロールを失い太陽系に進入してきたという。
そしてそのキーを盗んだのはアストラだという。
驚くゲン。
「嘘だ。どうしてアストラがそんなことを」とゲン。
「ウルトラの兄弟たちもアストラを追っている。兄であるお前が弟からウルトラキーを奪い返さねばならない。ウルトラの兄弟たちはお前を見張れと言ってきている」とダン。
「どうして僕を」。
「レオ兄弟に悪魔の心が乗り移った、と。レオ。アストラに会って疑いを晴らすんだ。俺はレオを信じている」とダン。
「しかし気をつけろ。アストラはウルトラキーを武器として使うだろう」。
ダンは子どもの頃、ウルトラの父が恐ろしい悪魔の星デモスをキーを使って破壊した話をゲンにする。
隊員に呼ばれてコンピュータ室へ入るダン。
コンピューターの計算によると、太陽系に侵入した星は地球に接近中で8分後には影響を受けるという。
キーを外されたウルトラの星は地球を狙う悪魔の星に変わったのだ。
同じ時、宇宙の彼方暗黒星雲の中に巨大な氷塊が漂う。
午後2時半、家を出ようとする百子。
その時突然部屋は揺れ始め、ガラスは割れ、物は散乱する。
異常気象が地球を襲う。
アストラを探すゲンは地球へ迫るウルトラの星を目視する。
175時間後に地球は消滅するとコンピューター。
世界の各地から被害報告が入る。
一方地球へ向かうアストラを追う兄弟たちはダンにアストラを捕まえるよう指示。
ゲンと合流したダンは力を合わせてアストラからキーを取り戻すように言う。
そこへアストラがやってきた。
ダンはウルトラ念力を使う間にキーを取り戻すようゲンに命令する。
ウルトラ念力でアストラの動きを封じるダン。
「ゲン、今だ、レオに変身しろ」。
そこへ到着するウルトラ兄弟たち。
「レオ兄さ~ん。苦しい。動けないんだ」。
「隊長。止めてください」。
助けを求めるアストラを見てダンの念力を止めさせるゲン。
「気でも狂ったか」とダン。
ダンと格闘するゲン。
一方ウルトラ兄弟もアストラと格闘する。
「レオ兄さん。苦しい」。
再びダンのウルトラ念力を受け、助けを求めるアストラ。
ゲンはダンを叩きのめし、レオに変身する。
アストラを助けるためウルトラ兄弟たちと格闘するレオ。
「やめろ、レオ」とダン。
倒れているアストラに手を差し伸べるレオ。
アストラを庇うレオ。
「待ってくれ」。
ウルトラ兄弟に頼むレオ。
「アストラ、ウルトラの火を消したのはお前か?ウルトラキーを盗んで、ウルトラの星を狂わせたのもお前か?そのウルトラキーは何だ?アストラ。どうして返事ができないんだ」とレオ。
「レオ。俺達はアストラを殺す」と初代マン。
「待ってくれ。時間をくれ」とレオ。
「駄目だ。時間がない」と兄弟たち。
ウルトラの星は刻一刻と地球へ接近していた。
揺れて陥没する地面。
兄弟たちはレオ兄弟に殴りかかる。
たたき伏せられるレオ。
アストラもエースの攻撃にピンチに。
それを見たレオはエースに対してレオキックを使う。
危うく交わすエース。
「やめろ、レオ。最後の警告だ」とゾフィ。
「俺は命に代えても、弟とアストラを守る」とレオ。
「よし。わかった」。
兄弟たちを集めるゾフィ。
「やめろ。やめろ」とレオ。
しかし兄弟たちは一斉に必殺光線を放った。
アストラの盾になり、モロにそれを浴びるレオ。
「レオ兄さ~ん」。
天変地異が続く地球。
悪魔の星となったウルトラの星が刻々と地球に接近する。
地球最後の日が迫る。
果たして、渦巻く暗雲の中の巨大な氷塊の正体は何か。

解説(建前)

キーを失ったウルトラの星は何故地球へ向かったのか。
これはやはりババルウがキーを持って地球へ向かったためと考えるのが素直であろう。
元々ウルトラの星はキーで制御されていた。
言わばキーは宇宙の中でウルトラの星が漂流しないためのイカリのような役割を担っていたのであろう。
ウルトラの星は見た感じかなり小さい星なので、或いはキーの力により重力が作られていた可能性もある。
いずれにせよ、キーはプラズマスパーク、ウルトラベルと並ぶウルトラの三大発明ともいえるであろう。

ババルウがアストラに化けてキーを奪ったのはなぜか。
これもやはりウルトラ兄弟とレオ兄弟を戦わせるためと考えるのが素直である。
ババルウはわざわざアストラに化けて地球へやってきた。
レオが自分を助けるために兄弟たちと戦うというのがわかっていたのであろう。
ウルトラの星を地球へ誘導したのも、兄弟たちを追い込んでレオ兄弟を抹殺させるのが狙いと思われる。

感想(本音)

子どもの頃見た記憶があまりなかったので、大人になって改めて見た感想。
やはりちょっとどぎつい。
レオ兄弟をウルトラ兄弟入りさせるという意図は理解できるのだが、それにしても「アストラを殺す」とかちょっと過激すぎる。
これでは往年のファンが不満に思うのも無理はない。
この先の展開を知っていればこの展開も受け入れられるのだが、当時の子どもたちはこの話のウルトラ兄弟たちを見てどう思ったのか。
私にリアルタイムの記憶がないので、一度聞いて見たいものだ。

それは置いておいて、大人の私の感想。
ウルトラの星って何か殺風景だなあ。
ただ、そもそもウルトラの星は太陽がなく人工太陽に頼っているので、これが正しい姿かもしれないが。
しかしババルウがチェーンで進入できるのはセキュリティ甘すぎだぞ。
ウルトラタワーもあっさり破壊されてるし。
この辺りはそもそもウルトラの星へ来る馬鹿がいないというのもあるだろうが、敢えて敢然とウルトラの星に挑戦するババルウというのはやはり只者ではないと思う。

ウルトラキーを奪われて暴走を始めるウルトラの星。
あっという間に地球へ接近する異常な速度には驚かされるが、これはワープでもしたのであろうか。
しかしこのシチュエーションはエースの妖星ゴランとよく似ている。
この後星を破壊するミサイルを撃ち込むという展開も同じ。
この辺りは過去のプロットを流用ということであろう。
ただ、その相手がウルトラの星というところにこの話のハードさがある。

レオ兄弟対ウルトラ兄弟。
単純な格闘技ではレオがやや優勢。
この辺りはレオが地球に常駐してるのに対し、兄弟たちが宇宙からやってきて地球の環境に慣れてなかったのもあろう。
ただ、やはり光線技を使えば強いのはウルトラ兄弟。
しかも4対1とか酷すぎる。
「レオ兄さ~ん」という何とも腹の立つアストラの声とともに光線を浴びるレオ。
ウルトラの星の接近で荒れ狂う地球。
何とも殺伐とした状況で次回へ続く。

今回はトオル、カオル兄妹の登場はなし。
その代わり、百子さんがヒロインとしての存在感を発揮していた。
ご存知百子さんは40話で降板することになるのだが、そもそもその必要はあったのだろうか。
疑問は残るが、その辺りも考慮した最後の見せ場なのだろう。
ゲンに尽くすその姿は健気そのもの。
子どもの頃は正直レオをあまり見てなかったので印象になかったのだが、改めて見返すと百子さんは歴代ヒロインでも一番目立ってるともいえる。
アンヌはヒロインというより視聴者のアイドルという側面が強かったし、アキちゃん、さおりさんはスケジュールの都合でヒロインとしては中途半端に終わってしまった。
本来の意味でのヒロインである夕子については周知のように不可解な形での降板。
百子さんも結局この後降板するとはいえ、一応ゲンとの恋愛は描ききったように思われる。
他の女優さんに比べると知名度が圧倒的に劣るので地味な存在だが、可憐なルックスといいもう少し見直されてもいい女優さんではなかろうか。

今回はダンとゲンの信頼関係にもヒビが入っている。
師弟関係よりやはり肉親ということだろうが、レオはアストラを信じておりそれは間違ってなかったので、ゲンの行為を一概に過ちとは責めきれないであろう。
一方ウルトラ兄弟はキーを奪った者を追跡して倒そうとしているだけなので、こちらも間違った行為とは言えない。
その板ばさみになるダン。
この辺りはかつて人間と宇宙人の間で葛藤していたダンを思わせるが、ダンは結局地球と運命をともにすることを選んでおり、その覚悟の程が窺われる。
この辺りは40話の伏線でもあるが、それはまたその時に。

今回の脚本はレオからウルトラシリーズに復帰した若槻氏。
この話自体はプロデューサーが考えてそれを脚本にしただけだと思われるが、セブンの中心作家の一人のイベント編という意味では興味深い。
ただ、あまりこの手の作品を手がけていなかった氏だけに、ちょっとこなれてない感じもした。
また、若槻氏本来の持ち味もあまり発揮したとはいえない。
田口氏の負担軽減のために起用されたのであろうが、もう少し自由に書かせてあげたかった気もする。

本話の監督は東條昭平氏。
「怪獣使いと少年」や後の戦隊モノで有名な東條氏だがウルトラではレオ以外ではあまり本編監督を任されてはいなかった。
もちろんイベント編は初めて。
助監督として特撮監督としてウルトラシリーズを支えた東條氏。
「怪獣使いと少年」で干されても妥協しないその演出に対する拘りが、或いはこの殺伐とした雰囲気を作り出したともいえそうである。

本話は前後編なので、エピソード全体のまとめは次回に譲るが、前半だけを見た感想はなかなかハードな展開。
謎の氷塊(まあ、読めますが)の存在など、これからどういう展開になるのかという掴みはよくできている。
ウルトラ兄弟にとっても地球にとってもかつてない危機。
この辺りは子どもにとっても次回が待ち遠しいであろう。
大人目線からは行き過ぎのところもあるが、イベント編としてはまずまずの内容。
ただ、同じウルトラ兄弟とレオ兄弟を対立させるにしても描き方というのがあると思うので、その辺りやや強引と言うか、ネタ切れな印象も否めないが。

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