必殺の0.1秒


データ

脚本は山浦弘靖
監督は野長瀬三摩地

射撃大会に参加するソガ。
999点をマークしたソガは同じく999点をマークしたヒロタと同点決勝を行う。
先行のヒロタはクレー射撃を成功させるが後攻のソガは足を滑らせ失敗に終わる。
「ここ一番でミスるなんてお前らしくないじゃないか」とフルハシ。
「なぜミスったか自分でもわからないんだ」とソガ。
慰める隊員たち。
そこへ優勝カップを持ったヒロタが現れる。
「すまんなソガ。勝ちを譲ってもらって」。
「いやあ、あれが俺の実力さ。優勝おめでとう」とソガ。
「ありがとう。この優勝カップになりかわって礼を言うよ。おかげでウルトラ警備隊のような殺風景なところに行かずに済んだからな」。
去っていくヒロタ。
「嫌な感じ。いくら参謀本部のエリートだからって。人間的にも最低よ」とアンヌ。
「あれでも根はいい奴なんだ。ただ、俺たちの友情を邪魔しているのはこれさ」。
銃を見つめるソガ。
自室に戻って銃を見つめるヒロタ。
そこへ何者かがテレパシーで話しかける。
「優勝おめでとう、ヒロタくん」。
「お前はゆうべの」。
「君の望み通り勝たせてあげたよ」。
「俺の勝ったのはお前が」。
「そう、ゆうべ君は優勝できるなら、友達を裏切っても魂を悪魔に売ってもいいと言った」。
「俺はそう言った。それでお前は俺の何が欲しいのだ」。
「それは今夜。ではまた」。
ソガ、ヒロタ、ミナミ、スズキ、射撃大会の上位4名が司令室に呼び出される。
マナベ参謀によると世界的宇宙ロケット研究家であるゼムラー教授がベルリン空港で何者かに射殺されたという。
地球防衛軍は秘密裏に人工太陽の研究をしており、殺された教授らは皆この計画に従事していた。
来週、その最高責任者であるリヒター博士が来日することから、ソガらに博士の警護を命令する。
数日後、秘密裏にリヒター博士が来日。
空港からソガ、ヒロタら4人が博士を車に乗せて基地に向かう。
崖の上で車を待ち伏せる怪しい男たち。
男たちは突如2台のトラックで博士たちの乗った車の進路を塞ぎ銃撃してきた。
車を降りて応戦するソガとスズキ。
しかしスズキは銃弾に倒れてしまう。
一方、ソガは銃弾を交わして銃撃してきた男の1人を射殺する。
博士の乗った車へ向かうソガ。
しかし既にミナミ隊員と博士は射殺されていた。
ヒロタを探すソガ。
しかしソガはトラックの陰から何者かに狙撃される。
薄れる意識の中、走り去る男を目撃するソガ。
メディカルセンターで意識を取り戻すソガ。
「気分はどう?」とアンヌ。
「お前って奴は、本当に運のいい奴だな。手当が遅かったらあの世行きだったぞ」とアマギ。
「俺の命が何だ。俺は任務に失敗したんだ。博士を死なせてしまったんだ」。
悲嘆に暮れるソガ。
「ところで、ヒロタは」。
「参謀室で緊急対策会議中です」とダン。
「じゃあ、奴は無事だったのか」。
「スパイのミナミ隊員と相討ちだったそうですが、幸い軽傷です」。
「ミナミ隊員がスパイ?」とソガ。
起き上がり司令室に向かうソガ。
「ミナミ隊員がスパイだったという証拠は見つかったんですか?」とソガ。
「今のところ、ヒロタ君の証言が唯一の手掛かりなんだが」とキリヤマ。
「ヒロタ、本当に間違いないんだな」とソガ。
「残念ながら事実だ。奴は俺がトラックと応戦中に博士を。いや、博士だけじゃない。この俺まで殺そうとしたんだ」とヒロタ。
「しかし、俺が現場に戻った時には、お前の姿はみえなかったが」。
「もう一人の犯人を追っていたんだ。だが、途中で見失ってしまってね」。
ヒロタの頬の傷を訝し気に眺めるソガ。
「殺されたリヒター博士は実は変装した情報部員だったそうだ」とフルハシ。
驚くソガ。
本物のリヒター博士は明日到着するという。
「ウルトラ警備隊も全力を挙げて博士を守る」とキリヤマ。
自室に戻ったヒロタを訪ねるソガ。
「お前、俺に何か隠していることがあるんじゃないのか?」とソガ。
「貴様に話すことなど何もない。さあ、出てってくれ」。
白を切るヒロタ。
「仕方がない。じゃあ、俺の方から言おう。あの時俺を撃ったのはお前だろう。いや、俺だけじゃない。お前はあの男たちとグルになって、ミナミ、スズキの両隊員も殺したんだ」。
「悪い冗談はよせよ。何を証拠にそんな言いがかりをつけるんだ」とヒロタ。
「証拠はその顔の傷だ。その傷は俺に撃たれてできたものだ」。
銃を構えるヒロタ。
しかしそれより早くソガの銃がヒロタの腹に押し当てられた。
ヒロタに銃を捨てさせ、受話器を取って警備隊に連絡しようとするソガ。
しかし受話器から超音波が流れてソガは気を失ってしまう。
ソガをペガ星人の円盤へと連れて行くヒロタ。
意識を取り戻すソガ。
しかし全身を拘束されており動けない。
そこへペガ星人が現れる。
「貴様何者だ」。
「アルファケンタウリ第13惑星に住むペガ星人だ」。
「ペガ星人。それが地球に何の用だ」。
「もちろん、人工太陽開発計画を妨害するためだ」と星人。
一連の事件はペガ星人に命令された地球人がやったことで、ヒロタも特殊催眠術によりペガ星人の命令通りに働くという。
「なぜ地球人を利用するんだ」とソガ。
「残念ながら我々は地球の気圧に耐えられない。君が今何を考えているかわかっている。しかし、私はこの円盤の中から外へは出ない」。
催眠装置でソガを洗脳しようとする星人。
抵抗するソガ。
翌日、本物のリヒター博士が到着した。
博士はヒロタが運転するベンツに乗り、ダンの運転するポインターがベンツを先導する。
ポインターには他にソガ、アマギが乗っていた。
「今日のソガ隊員はまるで別人みたいですよ」。
助手席のソガに話しかけるダン。
しかしソガは答えない。
「おい、ソガ」とアマギ。
「うるさいな。少し黙っててくれ」。
取り合わないソガ。
山に入ると突如ヒロタの運転するベンツが加速してポインターを追い越した。
「おい、ヒロタ、どうしたんだ」とフルハシ。
するとヒロタは突然フルハシに発砲。
フルハシは肩を負傷する。
白煙を上げながらトンネルに入るベンツ。
追うポインター。
しかしトンネルを出てもベンツの姿はなかった。
「奴らシークレットロードを作っていたんですね。戻りましょう」とダン。
「よせ。手を放すんだ」。
ダンの邪魔をするソガ。
「人工太陽はペガ星人の円盤が地球に侵入するコースを塞いでしまう。ペガ星人のために人工太陽計画を潰してしまうんだ」。
ダンからハンドルを奪おうと襲い掛かるソガ。
アマギは背後からソガを殴り気絶させる。
トンネルを引き返すと、ポインターは超音波探知機でシークレットロードを発見する。
シークレットロードを抜けベンツを追うポインター。
ヒロタは手榴弾を投げ、ポインターを妨害する。
爆発の衝撃で崖にぶつかるポインター。
気を失うダンとアマギ。
一方ソガはその衝撃で正気に戻った。
ヒロタがペガ星人の円盤の方角へ向かっていると察知したソガは、ポインターを浮上させ先回りする。
待ち構えていたソガは遅れてやってきたベンツのタイヤを狙撃しベンツを止める。
ヒロタはリヒター博士を連れてベンツを降りる。
「動くなソガ。博士の命はないぞ」。
博士を人質にするヒロタ。
「ヒロタ。お前はペガ星人の催眠術にかかっているんだ。目を覚ませ」とソガ。
拳銃を捨てるようヒロタを説得するソガ。
しかしヒロタは聞き入れない。
「どうしても博士を助けるつもりなら俺と勝負しろ。今から5つ数える。数え終わったら撃つ。いいな」。
カウントを始めるヒロタ。
「5つ」。
ヒロタの掛け声とともに2人の銃口から煙が上がる。
崩れ落ちるヒロタ。
ソガが駆け寄るもヒロタは既に絶命していた。
そこへペガ星人の円盤が攻撃を仕掛ける。
博士を連れて逃げるソガ。
爆音で意識を取り戻したダンはセブンに変身。
爆撃を交わし等身大になったセブンは円盤に侵入。
「ペガ星人。お前の星に帰れ」とセブン。
「地球は我々の太陽系侵略基地になるのだ。帰ることはできない」。
セブンの警告を無視して襲い掛かる星人。
星人は機械を操り電流のようなものをセブンに浴びせるも、最後はエメリウム光線を浴び倒れ膨張する。
円盤を脱出したセブンはワイドショットで円盤を破壊。
ダンが戻るとソガはヒロタの亡骸の傍にいた。
2人の銃をヒロタの胸の上に重ねて弔うソガ。
それは2人の友情の証でもあったのだ。

解説(建前)

ペガ星人はなぜ地球防衛軍が秘密裏に進めていた人工太陽計画を知っていたのか。
これはやはり既にペガ星人に洗脳されたスパイが侵入していたからであろう。
ゼムラー教授たちを射殺したのもその一味と思われる。
では、スパイたちはその後も野放しのままなのか。
これについてはペガ星人の陰謀を知ったソガたちが各国支部に連絡してスパイを捕らえ洗脳を解いたと考えるのが妥当であろう。
計画がばれたペガ星人は自分たちが地球の気圧下で行動できない以上、そのまま逃げ帰るしかない。

ヒロタはいつ星人に洗脳されたのか。
少なくとも射撃大会で優勝した後星人に話しかけられた段階では洗脳されていなかった。
その後すぐリヒター博士の警護を命じられていることから、星人のセリフ通りその夜に星人に会いにいって洗脳されたと考えるのが妥当であろう。
洗脳されたヒロタは襲撃したギャングと戦うミナミ隊員を射殺。
そしてミナミ隊員の銃を使って博士(の替え玉)を殺した。
ギャングはミナミ隊員が殺したのであろう。
ソガはスズキ隊員についてもヒロタが殺したかのように言ってるが、これはギャングとグルになってと言っていることから、映像でも明らかなようにスズキ隊員を殺したのはギャングである。

ヒロタはさらにソガを殺そうとして失敗。
逆にソガに顔を撃たれて逃げだしている。
ここで一つの疑問。
なぜヒロタはソガに止めを刺さなかったか。
ソガを殺さない限り自分が犯人だと確実にバレてしまう。
これはやはりソガに撃たれたショックで正気に返ったと考えるしかあるまい。
つまりその後のヒロタは自らの意志でソガをペガ星人の下に連れて行き洗脳させた。
そしてリヒター博士を再度狙ったのである。

こう考えると1回目と異なりヒロタがリヒター博士を殺そうとしなかった点も辻褄が合う。
ヒロタは1回目の襲撃でソガを狙撃した時、相討ちになってしまった。
つまり射撃大会についで再びソガに勝てなかったのである。
プライドの高いヒロタはソガと真剣勝負がしたかった。
そのため博士をすぐに殺さず人質にとった。
ヒロタは最初から博士を人質にしてソガと戦うつもりだったのであろう。
シークレットロードを使ってペガ星人の円盤のある場所へ行ったのも、そこならソガを呼び出すのに都合がいいと考えたからである。

なぜペガ星人は気圧の合わない地球を前線基地にしようとしたのか。
太陽系侵略基地にすると言っているが、そもそも太陽系に地球以外に侵略対象となる星はあるのか。
情報が少ないので想像するしかないが、まず地球に関してはペガ星人は自ら住む意志はなかったのであろう。
前線基地と言っていることから、地球人を兵隊として調達するつもりだったのではないか。
若しくは後からペガ星人以外の地球の気圧に耐性のある星人を送り込むつもりだったのであろう。
すなわちペガ星人自身は長居するつもりはなかったのである。

では太陽系以外の侵略対象となる星であるが、これは地球も含めて複数あったのであろう。
あるいはペガ星人は地球を侵略して他の宇宙人に売り渡すつもりだったのかもしれない。
また、太陽系惑星の資源を狙っていた可能性もあるだろう。
例のごとくペガ星人と言っても星人の中の一部の輩にしか見えないので、そういうビジネス目的を持った星人だった可能性も考えられる。

感想(本音)

ペガ星人の侵略目的に関する解説は適当に流していただければ幸いだが(笑)、ヒロタの心情については上記の解釈で概ね外れてはいないと思う。
すなわち本話のテーマはヒロタのソガに対するライバル心、プライド等にあるのは明らかだからである。
そこがわかりやすかったので、個人的に本話は素直に楽しめた。
ペガ星人の毛皮ファッションのような風貌や円盤から出られない設定など、まずまずインパクトのある話である。

セブンのゲストはここまで見ててもわかるように異常にプライドの高い人間が多い。
「ひとりぼっちの地球人」の一の宮、「栄光は誰れのために」の青木、本話のヒロタ。
ミリタリー色の強いセブンだから仕方ないが、その辺りはちょっと偏り過ぎと感じる。
本話のヒロタが一の宮、青木と違うのは最後まで改心しなかった点。
この辺りは当時のハードボイルドな刑事ドラマを踏襲したのであろう。

ソガとヒロタは銃の腕を競い合うあまりに悲劇的な結末を迎えた。
ソガ自身は銃が自分たちの友情を邪魔していると言っているように、今でもヒロタを友人と思っているのであろう。
一方ヒロタはソガをライバルとしか見ていなかった。
本話で明言はされていないが、今までの大会はほとんどソガが優勝していたのであろう。
でないと、悪魔に魂を売ってまで勝ちたいとは思わないはずだ。
それを星人がどうやって知ったかは謎だが、星人は既に電話に細工をしていたので、別のスパイが盗聴器等を仕掛けていたのかもしれない。
いつの間にかシークレットロードを作っていたり、星人の協力者は案外沢山いるようである。

個人的にいつも疑問に思うのは、銃で撃ちあった時に片側だけが倒れる演出。
両者発砲してるのだから相討ちでもいい気がするのだが、それは先に撃たれた方の照準が微妙に狂ったと解釈するしかないであろう。
早撃ちでの勝負を望んだヒロタ。
命よりもプライドが大事ということか。
そして冷徹にそれに応じたソガ。
これもまた警備隊員としての矜持といえるであろう。

本話はほぼヒロタとソガの物語なので、主役のダンはあまり目立たない。
出番もフルハシやアマギと同程度である。
またキリヤマとアンヌにいたっては完全にチョイ役。
アンヌはともかくキリヤマがこれだけ出てこない回も珍しいであろう。
フルハシのセリフで気になったのは、リヒター博士の替え玉を情報部員と言ったところ。
別に情報部員でもいいのだが、やはり普通は諜報部員ではなかろうか?
役者の勘違いであろうか?

それはともかくなぜ替え玉を使ったかというのは、やはり防衛軍にスパイが入り込んでる可能性を考慮したからであろう。
しかしミナミ隊員をスパイということにしていたが、ヒロタも同程度に怪しいのでリヒター博士を拉致されたのは警備隊の失態。
ヒロタの車にフルハシだけじゃなく、もう一人乗せておくべきだった(ソガじゃ意味ないけど)。

ペガ星人については正直外に出たら死ぬような星を前線基地にするのは理解できない。
本話の脚本を書いた山浦弘靖氏によると、「警察ドラマや犯罪ドラマの定石である組織内の確執やアクションを持ち込んだのがこの作品です」(ウルトラセブン研究読本より)とのことなので、ペガ星人が外に出られないという設定は完全に脚本の都合であろう。
脚本段階ではセブンとの絡みもほとんどなかったということなので、ペガ星人のキャラには興味なかったと思われる。
ただ、映像作品ではペガ星人のキャラは妙に立っていた。
これは死に方も含めたインパクトのある見た目だけでなく、演じる辻村氏の独特のセリフ回しも大きいであろう。
個人的には「私はこの円盤の中から外へは出ない」の言い方が嫌味があってなかなかよかった。

最後にソガが息絶えたヒロタの胸に銃を置いたシーンであるが、この時のソガはヒロタの真意に気付いていたのか。
これは完全に私の主観になるが、やはりソガはヒロタが自らの意志で自分と決着をつけようとしたことに気付いていたと解釈するのが妥当であろう。
ソガはヒロタの性格をよく知っている。
冷静にヒロタの行動を思い返せば、ヒロタの目的がリヒター博士を殺すことやソガを殺すことになかったことに思い当たるのは容易であろう。

本話の脚本は「人間牧場」以来、2度目の参加である山浦弘靖。
インタビューにもあったように組織内の確執を描いたとのことなので、氏の意図としてはやはりヒロタは自らの意志で行動したということになるであろう。
ただ、それだとペガ星人が完全におまけになるので完成作品ではその辺はやや曖昧にした。
一応子供番組なので、その辺りは少しぼかしたのであろう。

監督は野長瀬三摩地。
セブンへの参加は本話がラスト。
「湖のひみつ」もそうであったが本話もロケ中心の話ながらテンポよくまとまっており、その手腕の確かさが伺われる。
ウルトラシリーズへの参加はウルトラマン80までないとのことであるが、初期ウルトラシリーズを支えた功績は称えられるべきであろう。

本話の弱点はやはり作品のイメージが「栄光は誰れのために」と被るところ。
またヒロタの真意についても子供が理解するのはおそらく難しい。
私自身も子供の頃、ヒロタの感情は理解できなかった。
やはり子供目線では単に星人に操られた怖い人にしか見えないであろう。
逆に言うと脚本家がもはや子供向けと思って書いてないとも言えるが、これ以後視聴率はほとんど20%以下に伸び悩むことになる。
次回など典型的だが、話のクオリティは高いのに視聴率は低迷。
本話もそういうジレンマがよく出た作品といえるであろう。

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