魔の山へ飛べ


データ

脚本は金城哲夫
監督は満田かずほ

ストーリー

嵐を告げる稲妻に乗って巨大な竜が地球に侵入。
地球防衛軍のレーダーもそれを捉えることはできなかった。
竜が姿を隠した山をドライブする若者たち。
5人が記念撮影をしようとしたその時、岩陰から銃のような機械を使って何者かが若者たちの命を盗み取ってしまう。
ここ岩見山では26名の若者が命を落としていた。
いずれも死因は不明。
調査の依頼を受けた警備隊は、ダンとソガ両名を岩見山に予備調査に向かわせる。
ホーク3号で現地に飛ぶ2人。
「ソガ隊員。何を黙り込んでんですか?」とダン。
「どうもね。嫌な予感がするんだよ。ダン、今日はどういう日か知ってるか?」とソガ。
「さあ」とダン。
「13日の金曜日。何か一大事が起こりそうな気がするんだよ」とソガ。
笑い飛ばすダン。
岩見山で地質調査をする2人。
ダンは岩陰から何者かが自分を狙ってる気配に気づき、銃を持って警戒する。
しかしダンは命を盗まれてしまった。
倒れ込むダン。
何者かが馬に乗って走り去るのを目撃するソガ。
音のした方へ向かうソガ。
ソガが拍車を拾ったその先にダンが倒れていた。
ダンの心臓音を確かめるソガ。
しかしダンの心臓は既に止まっていた。
基地に戻り警備隊の医師に診察してもらうが、やはりダンは既に死んでいた。
白い布を被せられるダン。
泣き悲しむ隊員たち。
地球防衛隊軍の隊員たちの士気に影響するので、事件解決までダンの死は内密にしておこうとキリヤマ。
ダンの死を無駄にしないためにも必ず敵を倒すんだとキリヤマ。
「これはダンの弔い合戦だ」。
岩見山へ来たキリヤマたちは牧童たちにソガの拾った拍車を見せて確認する。
「雪村のじゃないのかな」と牧童。
雪村は1週間前に出て行ったきり戻ってこないとのことだった。
「よくあることですから、探しもしませんがねえ」と牧場長。
そこへ本部のアマギから連絡が入った。
群馬県警から連絡があり、大至急3合目付近の洞窟に行ってほしいとのことだった。
洞窟の中からは不気味な音が聞こえる。
警官と一緒に洞窟の中へ入るキリヤマたち。
すると警官の一人が機械で命を盗まれた。
さらに命を盗もうと機械を構える敵。
キリヤマたちは辛うじてそれを交わすが、別の警官の命が盗まれてしまった。
敵のいる岩陰に一斉に銃撃するキリヤマたち。
一瞬敵は姿を現すが、すぐに姿を消す。
敵の姿が消えたところへ行くと、敵の機械が落ちていた。
そして、その近くに雪村らしき牧童の死体が。
牧場の人間に雪村の死体を見せて確かめるキリヤマたち。
「敵は宇宙人ですよ。彼を殺して人間に化けてたんだ」とフルハシ。
敵が落としていった機械を調べるため、キリヤマとフルハシはソガを残して基地に戻る。
アマギたち科学班が機械を分析した結果、それは命を盗むカメラであった。
隊員たちの目の前でモルモットの命を盗んで見せるアマギ。
その機械は人間の目には見えない赤外線のような光線を発して、生命だけをフィルムに吸い取るものだった。
「肉体は確かに死んでます。しかし生命体はフィルムに定着されて生きているんです」とアマギ。
アマギがフィルムを映像化すると、命を盗まれた人たちの影が映っていた。
そこにはダンの姿も。
被害者たちの生命はフィルムの中の二次元空間で生きているとアマギ。
フィルムの生命体を元の肉体に戻すのは非常に困難とアマギ。
「ダンを助けてくれ。助けてくれ。頼む」とフルハシ。
頷くアマギ。
洞窟を探索するソガの目の前に敵が現れる。
敵はワイルド星に住むワイルド星人で、地球の侵略は意図していないという。
その代り人類の若い生命が欲しいと星人。
「我々の民族は皆老衰し、滅び去ろうとしている。どうしても若い命が欲しいのだ」。
「そんな勝手な」とソガ。
「わかっている。だが地球人に頼んでも我々の気持ちは分かってもらえないだろう」。
「だから、人間の命を奪ったというのか」。
「わかってくれ。我々には若い新鮮な生命が必要なのだ。あのフィルムを返してくれ」。
「たとえ一人であろうと、勝手に人間の命を売り渡すようなことはできん」。
「返してくれ。私の星で皆が待っているのだ」と星人。
「お断りだね」とソガ。
それを聞いた星人は頭の触角からソガに向かって光線を放つ。
倒れ込むソガ。
一方アマギは研究員が星人のカメラで偶然モルモットの体を写し取ったことから、ダンたちの命を戻す方法の手がかりを掴む。
するとソガから基地へ連絡が入った。
フィルムを洞窟まで持ってくるよう頼むソガ。
ソガの様子がおかしいことに気が付くフルハシ。
アマギからフィルムを受け取ったキリヤマはフルハシとともに山に向かう。
洞窟でソガを探す2人。
そこへ星人が現れた。
「仲間の命が欲しかったらフィルムを寄越すのだ」。
「これを渡したらソガ隊員を返してくれるか」とキリヤマ。
止めようとするフルハシだが、ソガの命には代えられんとフィルムを星人に渡すキリヤマ。
すばやくソガを助け出すフルハシ。
フィルムの中身が空だと気づいた星人は「ナース」と叫ぶ。
急いで洞窟の外へ逃げる2人。
すると噴火とともに竜のような怪獣ナースが出現した。
その頃基地ではダンを元に戻すべく実験をしていた。
生命カメラでダンの体を吸収するアマギ。
研究員にすぐ現像するよう頼むアマギ。
一方キリヤマたちはホークでナースと戦っていた。
ホークの攻撃で墜落するナース。
それを見て地上に降りるキリヤマたち。
しかし墜落したナースはその長い体を渦巻き状に巻きつけて円盤となって襲ってきた。
円盤に乗り込もうと走ってくる星人を見つけたソガは、ダンの仇と星人を銃で爆殺する。
一方基地ではダンの生命と肉体を融合させる作業をしていた。
生命と肉体が融合した瞬間、フィルムから飛び出すダン。
一方円盤の攻撃で窮地に陥るキリヤマたち。
そこへセブンが現れた。
ナースの長い体に巻きつかれて苦戦するも、最後はそれを力づくで千切り捨てるセブン。
四散するナースの体。
「敵を倒してもダンの奴は戻ってこない」とソガ。
悲しみに暮れる3人。
しかしそこに馬の蹄の音が聞こえてきた。
「ダン、ダンじゃないか。助かったのかダン」とソガ。
馬に乗るダンの所へ走っていく3人。
「無事でよかった」とキリヤマ。
そこへアマギから連絡が入る。
「被害者は全員、無事フィルムの中から救出しました」。
「こちらダン。おかげで命を取り留めることができました。アマギ隊員、まさに命の恩人です。ありがとう」。
アマギに礼を言うダン。
笑顔で頷くアマギ。
「隊長。一度死んだらますます命が惜しくなりましたよ」とダン。
「それでいいんだ。命は自分だけの一度きりの物だ。そう容易く宇宙人なんかにやってたまるか」とキリヤマ。
果てしない宇宙のどこかで、老いた民族が若々しい命を求めて今日も彷徨っている。
そして彼らはいつまた地球にやってくるかもしれないのだ。

解説(建前)

ワイルド星人は吸い取った生命をどうするつもりだったか。
まずそもそも肉体と生命の分離が可能か否かだが、ゾフィが初代マンとハヤタの命を2つ持ってきたように宇宙の高度なテクノロジーの下では可能なのであろう。
ただ、ウルトラマンとハヤタがそうだったように、命を与えられても見た目や肉体には何ら変化はなかった。
ある意味ゾフィの言う命は蘇生術に近いものではないか。
肉体があって初めて命を与えることが可能になるのである。

しかしそれではワイルド星人がいくら若い命を奪っても無駄ということになってしまう。
やはり肉体の老いについても何らかの方法で止める必要があるだろう。
恐らくワイルド星人は肉体の老いについては既に止める方法を見つけていたのであろう。
それが臓器移植の類なのか遺伝子テクノロジーの類なのかはわからないが、とにかく肉体は不老長寿に近くなった。
ただ、実際に肉体の老いを止めたところで、肝心の生命がなくなってしまっては意味がない。
そこで別に生命も調達する必要が生じたのであろう。

生命に関してはいくら技術が発達しても作り出すことはできない。
ゾフィが持ってきた命も脳死患者から臓器を取り出すがごとく、滅んだ肉体から取り出してストックしていたものであろう。
星人は盗んだ生命を肉体に融合させることにより真の不老不死を可能にした。
星人が地球人を狙ったのは、生命にも臓器移植のように適合性の問題があり、他の動物や宇宙人では適合しないからであろう。
ただ、このようなやり方が許されるわけはない。
やはり老いる者は滅んでいく宿命にあるのだ。

ダンは医師の診断により死亡が確認されていたが、その際宇宙人であることがばれなかったのだろうか?
後に明らかになるが、ダンはレントゲンを撮られると正体がばれてしまう。
おそらく普段はウルトラ念力でばれないようにレントゲン映像を念写でもしていたのであろう。
ただ、ある程度は自らのモデルとなった薩摩次郎の内臓等も擬態できていたと思われ、よほど詳細に調べない限りはばれなかったと思われる。

しかし今回はダンが死んでいるので、そのような小細工はできない。
とすると、防衛隊の医師たちがそこまで精密に調べなかったと考えるしかないであろう。
医師たちは脈や心電図等明らかに生死がわかる項目しか調べなかった。
死因は後に解剖等して調べる予定であったろうが、とりあえずはダンの死は内密にしないといけないのでそこまで調べなかったのであろう。
一方他の被害者たちであるが、遺体がどれくらいの状態で保存されていたかは疑問が残るが、幸いにして焼却等されずに冷凍保存されていた。
そのため他の被害者も生き返ることができたのであろう。

感想(本音)

セブンらしいSF的な話。
解釈については実質的に不可能なので上記でご勘弁願う(笑)。
自分たちが老いで滅びるからと地球に若い生命を盗みに来る宇宙人。
SFの定番的な設定であろう(似たような話がどこかにあったような?笑)。
種の存続のためなので同情の余地はあるが、だからと言って他の惑星の住民の生命を奪っていいわけがない。
結局星人の言い分が身勝手すぎるので、テーマ的な深みはそれほどない。

子供の頃本話を見て何より驚いたのはダンが死んでしまうところ。
後で復活するのは想像できるとはいえ主人公が死ぬというのは子供にとってショックであった。
しかもカメラで命を吸い取る描写はビジュアル的にインパクト大。
実際は荒唐無稽な話なのだが、子供のレベルではリアリティがあり、それほど無理には感じなかった。
正直ダンの肉体と生命が融合するところなんか理解できなかったのだが、子供の頃は特に疑問に思わず受け入れていたと思う。
今見ると大したストーリーではないのだがワイルド星人のことはよく覚えており、やはりそれだけ印象に残る話であったのであろう。

本話と言えば、最も話題に上るのはアンヌが出てない件。
その理由については各自調べていただければすぐわかると思うが、個人的にはアンヌが出なかったのはドラマ的には正解だったと思う。
すなわち、イカルス星人編でも明らかだったように、アンヌが出るとどうしても焦点がダンとアンヌに偏ってしまう。
それだと演出も視聴者もどうしてもアンヌ中心に物語を見てしまうだろう。

しかし本話のドラマの中心はダンと警備隊員たちとの友情にある。
一緒に行動しダンを救えなかったソガ、ダンを助けてくれと必死に頼むフルハシ、ダンを助けるために懸命にカメラを分析するアマギ、ダンの弔い合戦というキリヤマ。
これで十分ドラマは成立しているのである。
これにアンヌが加わってしまうと、他の隊員たちの気持ちがどうしても弱くなってしまう。
もちろんアンヌ中心に話を進めてもまた違う意味でいい話になったとは思うが、序盤でアンヌをそこまで特別扱いするのも如何なところもあるし、本話はこれで正解であろう。

本話で注目はやはりナース。
ワイルド星人が「ナース」と叫ぶと看護婦でも呼んでるのかと思うが(笑)、名前の由来は何なのだろう?
それはともかく、ナースの造形は円谷伝統の竜や蛇タイプであり、マンダを思い出させる。
しかし決定的な違いはナースは金属でできていること。
おまけにとぐろを巻くと円盤になってしまう。
初代マンでは侵略者が連れてくるのはいずれも怪獣や宇宙恐竜であった。
キングジョーの陰に隠れてはいるが、ナースはウルトラ史上初の敵ロボットである(ガラモンは見た目は怪獣だし)。

今回はゲストに円谷文芸部の上原、金城、赤井の3氏が医師役で出演。
マスクはしていたが3氏の顔がアップでよくわかる。
上原氏はなかなかのイケメン。
また金城氏の顔はどことなく三谷幸喜氏に似ている。
セブン役の上西氏は死体役で出演。
他のスーツアクターも牧童役等で出演していた。
これは馬に乗れる役者が必要だったかららしい。
本話は西部劇のイメージで作られているが、これは満田氏の拘りであろうか。

本話の脚本は金城哲夫。
SF的なテーマより友情のドラマを重視した結果、爽やかなエピソードになった。
またどこまで意識したかはわからないが、結果的に本話は最終回と対になるエピソードとなっている。
因みにアンヌの出番は脚本段階から既になかったらしい。
これは満田監督の注文だとか。
アンヌが出ていればどんな話になったのか。
それはそれで興味深いところではある。

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