ウルトラのクリスマスツリー


データ

脚本は田口成光。
監督は筧正典。

クリスマスが近づくある日。
街はクリスマスプレゼントを買う買い物客で溢れていた。
その中を犬を抱えた少女が一人歩いている。
少女の名はひとみ。
ひとみは道端に座り込み、親にプレゼントを買ってもらった子供たちを羨ましげに眺めていた。
一方ZAT基地でも隊員たちがクリスマスの飾りつけに勤しんでいた。
大きなマッチを見て物思いにふける森山。
「ばかに深刻ですねえ。何かお悩みですか?」と北島。
「何を考えてたの」と南原。
「私はマッチ売りの少女になったつもりでいたのに」と森山。
「少女というには年を取り過ぎてないか」と荒垣。
「失礼ね」と森山。
「みんなで森山隊員一人をいじめちゃかわいそうですよ」と光太郎。
「マッチ売りの少女はね、この炎の中に自分の一番見たかったものを見たのよ」。
マッチに火をつける森山。
炎の中には教会で光太郎と結婚式を挙げる森山の姿が。
「ねえねえ、どんな夢見たの」と光太郎。
「何でもないわ」と森山。
次は荒垣、北島、南原が3人一緒にマッチを付ける。
3人乗りの自転車を楽しげにこぐ3人。
しかしバランスを崩して倒れてしまう。
白鳥家に帰った光太郎は健一たちにその話をしていた。
「光太郎さんはどんな夢見たの」とさおり。
光太郎がライターを付けるとウルトラの母の姿が。
「お母さん」と光太郎。
「光太郎さんて、お母さんのこといつも思ってるのね」とさおり。
「そういうわけじゃないけど、僕にとっては大事な人だからね」。
次に健一がライターを付けると、タロウと格闘する健一の姿が。
さおりがライターを付けると、教会で結婚式を挙げるさおりと光太郎。
しかし腕を組んで歩いていると光太郎の隣に森山が。
光太郎の腕をつねるさおり。
「光太郎さんたら酷い」。
「ちょっと待ってくれよ。僕がいったい何をしたって言うんだよ」。
「それは…。とにかく酷いわよ」とさおり。
白鳥家の庭から3人を見つめるひとみ。
「どこのお家にもクリスマスツリーがあるのにね」。
犬に語りかけるひとみ。
「あたしにだって去年のクリスマスはツリーだって、お父さんだって、お母さんだってあったのに」。
夕暮れの川辺で一人座ってビー玉を眺めるひとみ。
そのビー玉の中には両親とクリスマスを過ごすひとみの姿が。
「あんなことさえなければねえ」。
犬を抱きしめるひとみ。
ある日光太郎が空き地の近くを歩いていると、どこかからビー玉が飛んできた。
それは空き地でボール遊びをするひとみが落としたものだった。
ビー玉を拾い上げる光太郎。
するとひとみが走ってきて、「おじさんのビー玉を返して」という。
光太郎が綺麗なビー玉だねというと、ひとみはミラクル星人のおじさんがくれたビー玉だという。
嘘つきと一緒にいた子供たち。
「ひとみちゃんは、このビー玉を宇宙人に貰ったんだというんだ。お星さまにかざすと何でも好きなものが見えるんだってさ」。
一緒に遊んでいた健一。
「私たちが見ても何も見えなかったわ」と一緒にいた少女。
「宇宙人がくれたなんて、へっお笑いだよ」と少年。
「お父さんとお母さんが死んでおばさん家に行ってからひとみちゃんは夢ばかり見てるのよ」と少女。
「夢なんかじゃないわ。ちゃんとおじさんのビー玉に映ってるのよ」とひとみ。
「まあ、いいさ。俺たちはあっちでウルトラマンタロウごっこやろうぜ」。
健一を連れて去っていく子供たち。
「タロウよりずっといい宇宙人だっているのよ」とひとみ。
「僕にそのビー玉を覗かせてくれないかな」と光太郎。
「お兄ちゃんは私の言ったこと信じる」とひとみ。
「そういうことがあるかもしれない。しかし…」。
「ほら。疑ってるじゃない」。
「でもタロウよりいい宇宙人てどんな人かなあ」。
「じゃあ見せてあげる」とひとみ。
光太郎がビー玉を覗き込むとキングトータスと格闘するタロウの姿が。
崩壊していく団地。
ひとみの父親は部屋の本棚の下敷きになり、母親も崩れてきた瓦礫の下敷きになった。
母親を助けようとするひとみだが、それを見たひとりの男性がひとみを連れて逃げる。
直後に炎に包まれる団地。
「そうか。キングトータスとの戦いの時だったのか」。
「お兄ちゃんにも見えたのね」とひとみ。
「ミラクル星人が助けてくれなかったら、私もペロも死んでたのよ」とひとみ。
ミラクル星人は地球のことを勉強にきていたとひとみ。
星人の星は地球そっくりだが文化は遅れてるという。
「将来自分の星がどうなるか見たかったのよ。それで地球へ来たの。でも、もう行ってしまったわ。寂しかった私と毎日遊んでくれたの」。
ひとみがビー玉を覗くとミラクル星人と一緒に遊ぶひとみの姿が。
国へ帰らないといけないとひとみに告げるミラクル星人。
「いや、おじさん。私はまた一人になってしまうわ」とひとみ。
「ひとみちゃんが一人でも寂しくなくなるまで見ていてあげよう」とミラクル星人。
「このビー玉をあげよう。これを覗くとね、ひとみちゃんの見たいものは何でも見えるんだ。もちろんおじさんに会いたいと思えばおじさんにも会える」。
「じゃ、お別れだ。元気でね」。
歩き去るミラクル星人。
星人は人間の姿から元のミラクル星人の姿に戻る。
驚くひとみ。
「さようなら」と星人。
「さようなら、おじさん。さようなら」とひとみ。
ひとみがビー玉を見ているとそこにテロリスト星人に襲われるミラクル星人の姿が映る。
「私見たくない。おじさんが殺されるわ」。
ひとみからビー玉を奪って映像を見る光太郎。
テロリスト星人の目的は地球侵略のためにミラクル星人の集めた資料を奪うことだった。
テロリスト星人に殺されるミラクル星人。
テロリスト星人は自分たちの好物であるガスを目当てに地球を狙っていた。
「そうだったのか」と光太郎。
「おじさんは死んでしまったの。今に地球へテロリスト星人が来るわ。私きっとおじさんの仇を取ってやるわ」。
テロリスト星人が地球へ迫っていることをキャッチするZAT。
ZATは星人を迎え撃つべく出撃する。
「とんだクリスマスプレゼントだな」と北島。
テロリスト星人は光太郎たちのいる空き地の近くのガスタンクを狙って出現した。
逃げるんだという光太郎にひとみはおじさんの仇を討つと逃げようとしない。
星人の爆撃を避けるため土手に隠れる光太郎、健一、ひとみ。
しかしひとみは星人の方へ向かっていこうとする。
「行かせてよ。私はどうしてもあの星人をやっつけるの」。
「そんな。君、死んでしまうぞ。命は惜しくないのか」と光太郎。
「私、命なんて惜しくない。パパもママもおじさんも死んでしまったのよ。クリスマスになってもプレゼントくれる人もいないのよ。命なんて。命なんて」。
「たとえ君が死んだってあの星人は生きているんだ。星人をやっつけるのは僕らに任せてくれ」。
「光太郎さんの言うとおりだよ。クリスマスプレゼントは僕があげるよ」と健一。
「僕の言うことを聞いて逃げてくれ。そうしないとZATは攻撃できないんだ。おじさんの仇は必ず僕が取ってやる」。
「うん」。
頷くひとみ。
ひとみを健一に任せてテロリスト星人に向かっていく光太郎。
光太郎はタロウに変身する。
「ガスタンクが爆発するとえらいことになるぞ」と北島。
ガスタンクを庇いながら戦うタロウ。
しかし星人の振り回す刀で負傷してしまう。
ガスタンクを破壊しようとする星人を止めようとするタロウとZAT。
しかしタロウは負傷しているため苦戦。
その時ひとみのビー玉が光った。
「おじさん」。
それを見て微笑むひとみ。
するとひとみは星人に向かってそれを投げつける。
ビー玉は星人の背中に直撃し星人は炎上。
爆破した星人はすぐ氷漬けになってしまう。
それを持ち上げて宙に投げるタロウ。
タロウが光線で星人の体を爆破すると辺り一面に雪が舞った。
飛び去るタロウ。
タロウは特殊な技で東京タワーをクリスマスツリーに飾り付ける。
その夜白鳥家のクリスマスパーティに招待されたひとみは健一からかわいい人形をもらう。
「ありがとう」。
「ひとみちゃん。おじさんのビー玉がなくなって寂しくないかい」と光太郎。
「うんうん。今度私信州のおじいちゃん家に行くことになったの」とひとみ。
「そこはね、大きなモミの木が林の中にあるんだって」。
雪が降る東京の街。
銀世界に輝くウルトラのクリスマスツリー

解説(建前)

ひとみは何故おばさんからクリスマスプレゼントを貰えないのか。
まずひとみの被災後の生活から考察してみよう。
ひとみは被災により両親を失ったので、その財産を相続する。
生命保険についても怪獣災害に適用される種類のものなら受け取ることができるだろう。
ただし、怪獣災害は被害が甚大であることから掛け金も高いと思われるので、入っていない可能性も高い。

肝心の相続額であるが、ひとみの両親はまだ若いし団地暮らしという点からも、せいぜいひとみが成人するまでの養育費程度ではなかろうか。
ひとみを引き取ったおばさんもそれを取り崩して養育費を捻出しているものと思われる。
ただ、それならそこからクリスマスプレゼントを買うくらいは問題ないはず。
やはりこれは金銭的な問題ではないのであろう。

そもそもおばさんが独身なのか、結婚してるのか、子供がいるのか、それがわからないから何とも言えないが一番スタンダードなのは結婚して子供がいるパターン。
他に子供がいるのにひとみにだけプレゼントをあげないとしたらかなり嫌なおばさんだが、そういうおばさんがひとみを引き取るとは思えないのでそれはないだろう。
もちろん養育費目当てというのも考えられるが、それなら逆にひとみの気を引いて家に留まるように努めるはず。
とすると、自分の実の子供たちにもプレゼントをあげない単なる教育方針と考えるのが素直であろう。

おそらくおばさんは金銭的な余裕がなく自分の子供たちにクリスマスプレゼントを与えることができない。
それで仕方なくひとみにもプレゼントを与えないのであろう。
ただ、ひとみにとってはそういう事情は関係ない。
本当の両親が生きていたら当然いつものようにプレゼントを貰えるはず。
自分の置かれている立場は頭ではわかっているだろうが、そこはやはりまだ幼い子供。
我慢できないのも仕方ないであろう。

ひとみが結局祖父母の下へ引っ越したのはなぜか。
そもそもなぜ最初からそうしなかったかだが、やはり両親を失って学校まで変わってしまうとひとみが寂しいだろうと周りは思ったのであろう。
祖父母の家はかなり田舎にあるようだし、都会暮らしに慣れたひとみが馴染めるか不安もある。
やはり友達のいる同じ学校に通い続けるのがいいと考えたのであろう。

ただ、友達の少女が「夢ばかり見ている」というように、ひとみはちょっと周りから浮いた存在になっていた。
おそらくおばさんの家でも家族に馴染めず気を使う存在になっていたのであろう。
結局、祖父母の家に行きたいと言い出したのはひとみ自身ではないか。
ひとみは前からおばさん家からは出たいと思ってたがそれを言い出す勇気を持てなかった。
ミラクル星人から自立することにより、漸く前を向いて歩いていく決心がついたのである。

なぜビー玉でテロリスト星人は倒されたのか。
その前にビー玉に映る映像がひとみと光太郎にしか見えなかった点についてだが、これはビー玉自身が見る人を選別していると解釈するのが妥当であろう。
すなわち、ビー玉には人工知能のようなものが搭載されており、相手に合わせた映像を映すようになっていた。
おそらく相手の脳内に直接働きかけて映像を見せていたのであろう。
そしてその映像も基本的に相手の記憶の中から収集したものと考えられる。

では、ひとみが見たことのないミラクル星人の映像が映ったのはなぜか。
これはミラクル星人の言うように自分の映像がビー玉に映るように設定していたと解釈するのが妥当であろう。
ミラクル星人は発信機のようなものを肌身離さず持っており、それから発信された映像がビー玉に映る仕組みになっていた。
そのため自分が殺される映像までビー玉に映ったのである。
ただし、光太郎が見たのはあくまで過去の映像でそれはひとみの記憶の中にあったものという可能性はあるだろう。

話が逸れたが本題に戻ろう。
前述のようにビー玉には人工知能が入っており、ビー玉がひとみに自分を投げるように暗示を送ったのであろう。
もちろんビー玉はひとみにとっては宝物である。
それを投げることはミラクル星人や自分の父母との別れも意味する。
今までのひとみならそれはできなかったであろう。
しかし、テロリスト星人と必死に戦うタロウを見て、ひとみは自分も戦わないといけないと思った。
それがミラクル星人の思いでもあると気づいたひとみはビー玉を敵に投げつけたのである。

ビー玉の内部には精巧な爆弾が入っていたと思われる。
ただしそれは火薬の類ではなく、何らかの化学物質であろう。
爆発とともに非常に強力な冷却作用も伴う。
或いは強烈な気化熱で相手の体温を奪って凍らせる性質のものかもしれないが、いずれにせよミラクル星人にとってビー玉は護身用の武器でもあったのであろう。
もちろん爆発物は人工知能が管理しているので、ひとみに危険が及ぶという危険性はないだろう。

感想(本音)

タロウで最も泣ける話。
親のいない子供というのは2期ウルトラでは定番なのだが、タロウの戦闘中に親を亡くしたというのは超ヘビーな設定である。
しかも相手はトータス親子で、当の怪獣たちはタロウとセブンの手によって蘇生して幸せに暮らしている。
なぜわざわざトータス戦で両親が亡くなったことにしたのかはわからないが、その辺りの対比まで考えてたのだとしたらご丁寧なことである。
悪徳興行師の被害者であるトータス親子。
そしてそれと戦うタロウ。
両者に非はない。
しかしその陰で亡くなる人々も厳然として存在している皮肉。

本話が泣けるのはひとみ役の天野美保子に負うところも大きいだろう。
天野美保子は見ての通りの美少女で、当時はそれなりにドラマに出ていたようである。
何とも無垢で儚げで薄幸な感じがよく出ていた。
冒頭の映像はある意味ひとみのPVみたいだったし、スタッフも薄幸の美少女ひとみを意識して撮影していたものと思われる。
レオのブリザード編の池田恭子も同様に薄幸の美少女という感じであったが、こういう話になるとやはり子役のルックスというのは作品成功の大きな要素になるであろう。

何かロリコンみたいなので子役の話はそれくらいにして(笑)本話に戻ると、やはりひとみの境遇というのはよく掴めなかった。
解釈が異常に長くなったのでわかるように、ちょっと話的に無理があったように思う。
ここは素直におばさん家ではなく孤児にでもしてた方がよかったのではないか。
ただ、実際身寄りがない子供ってのはそうそうないので、設定的には親戚に引き取られるのが普通ではある。
しかしあれではおばさん家が人でなしみたいに見えてしまう。
普通はいくら親戚の子供でもプレゼントくらいは渡すであろう。
その辺りちょっと強引な気がしないでもなかった。

本話はマッチ売りの少女をベースにしているのは明らかであるが、序盤のZATの会話でそれがわかるようにできているのは上手い。
しかもこのコント部分はなかなか笑える。
最後さおりにつねられる光太郎というベタなオチも良かった。
しかし森山もさおりもやっぱり最後は結婚が夢であり、この辺りは時代を感じさせる。
男女雇用機会均等法などなかった時代。
そんな時代に、男に負けないくらい勇ましく怪獣と戦う森山隊員て結構凄かったんだなと改めて思う(笑)。

本話では2人の宇宙人が出てくるが、ミラクル星人みたいにひたすら善玉な星人は珍しいだろう。
しかも劇中で「タロウよりいい宇宙人」と言われてるし。
またミラクル星人の仙人みたいな風貌はイメージに合っており良かった。
一方テロリスト星人もその名の通り凶暴なルックスが嵌っていたと思う。
しかし、テロリストにも一分の理があるとも言われるのに、テロリスト星人はどっちかというとただのギャングとか山賊の類と変わらないぞ(笑)。
この辺りも当時の民衆の支持を失った活動家たちのイメージが反映されていたのであろう。
見た目的には中東系という感じだが、いずれにしてもこんな星人よく出せたなという驚きはある(笑)。

ただ、このテロリスト星人、間抜けな見た目に反して妙に強い。
ガスタンクを守りながらの戦いとはいえ、タロウはほぼ負けかけてたし。
しかしひとみはビー玉を投げたはいいが、ガスタンクの近くで星人を爆破して大惨事になったらどうするつもりだったのか。
まあ、すぐに凍りついたから問題はないのかもしれないが、この辺りの整合性は少し気になった。
しかし星人を爆破した後に舞う雪を見て嬉しいものなのだろうか?
そもそも宇宙生物を地球上でバラバラにするのは危険なのでは。
まあ、その辺りはお約束なのでつっこむのは野暮だろう。

その他気になった点。
ひとみの友達の子役はいくらなんでも芝居が下手過ぎる。
エキストラなのだろうか?
しかし孤独なはずのひとみが大勢の友達とボール遊びをするのはやや違和感。
実は既に立ち直っていた?
ミラクル星人の人間体はあまりいい人そうに見えない。
今なら公園でひとみに声掛けした時点で事案扱いであろう。
ミラクル星人は団地に住んでいたようなので、日本国籍を取得して普通に働いていたのではないか。
ウルトラの世界では地球に住み着いてる宇宙人がかなりいるので、そういう密入星を助けるブローカーみたいなのがいるのかもしれない。

本話の脚本は田口成光。
ウルトラマンが殺した怪獣に詫びる話は既に初代の「怪獣墓場」などがあったが、自らの戦闘で犠牲になった人間に贖罪する話は初めてであろう。
こういった題材を思い切って取り上げることができたのは、やはりメインライターという立場があったからではないか。
怪獣が暴れたら被害者が出ない方がおかしい。
いわばウルトラシリーズのタブーに切り込んだシリーズきっての問題作とも言えよう。

ただ、タロウは謝罪はしていない。
せいぜい罪滅ぼしにクリスマスツリーを贈っただけである。
この辺り、安易にタロウに謝罪をさせなかった点、評価できる。
タロウが怪獣を倒さなければ犠牲者はもっと増えた。
ひとみは決してタロウを恨んだりしていない。
その辺りがガメラ3との決定的な違いなのである。

確かに「タロウよりいい宇宙人がいる」というひとみのセリフを聞くと、タロウを恨んでるようにも取れる。
でも、あくまでひとみにとってはミラクル星人はタロウよりいい宇宙人というだけで、タロウもいい宇宙人には間違いないのだ。
ウルトラマンタロウという作品上タロウを批判することはできないというのがあるにせよ、この辺りは見てて腑に落ちるところがあった。
そして、「あんなことがなければねえ」とあくまで両親の死を自分の運命と受け止めるひとみ。
そういうひとみだからこそ、余計に泣けるのである。

ただ、本話にも弱点がある。
これは演出上のものであろうが、結局ひとみの孤独はプレゼントを貰えるか否かに解消されてしまった。
あくまで大事なのはプレゼントをくれるはずの人がいないことだったのに、健一からプレゼントを貰ったことで救われたかのようになってしまった。
ビー玉を投げるのもやや唐突であったし、この辺りを丁寧に描けていたら間違いなく傑作と称されていたであろう。
とは言え、子供向けの話としては妥当なラストであるし、何より本家のマッチ売りの少女と違い前向きなラストになったのは好感が持てる。
少々の弱点を割り引いても、名作と称するに十分な作品なのは間違いないであろう。

タロウ第37話 タロウ全話リストへ タロウ第39話