タロウトップへ戻る
やさしい怪獣お父さん!
データ
脚本は石堂淑朗。
監督は筧正典。
ストーリー
健一とさおりは健一の旧友六郎親子とともに、箱根方面にドライブに来ていた。
オープンカーに乗った若者たちに馬鹿にされても制限速度を守って走る六郎の父親にいらつく六郎の母親。
母親に馬鹿にされ、母親の言いなりになる父親を恥ずかしく思う六郎。
ドライブを続ける六郎たちの前にさっきの若者たちが助けを求めてやってきた。
若者たちは怪獣に車を溶かされたという。
どうせからかってるんだと取り合わない母親。
若者たちの言ったことが気になる様子の父親。
六郎たちはドライブを続けるが、突然黒い竜巻のようなものに巻きこまれた。
溶け出す車。
健一、さおり、六郎はすぐに車から脱出するが、六郎の母親は動転して車から出ようとしない。
一緒に車の中にいる父親。
すると車だけが溶けてしまい、2人は助かる。
まだ月賦が残ってるのにと肩を落とす母親。
皆が無事で良かったという父親に対し、母親は父親が間抜けな運転してるから悪いと怒る。
それを見て悲しげな六郎。
さらに後続の車も解かされ健一たちはZATに連絡する。
出動するZAT。
しかし、その後も被害が続発する。
レーダーで怪獣の存在を捉えるZAT。
しかし、車を溶かされた被害者がいて攻撃できない。
被害者たちに避難するよう、勧告するZAT。
しかし、溶かされた車の損害を取り返せないかと考えた母親は、被害者たちに怪獣を生け捕りにするよう呼びかける。
金属だけを溶かす怪獣を捕まえてお金儲けをしないかと母親。
父親はたしなめようとするが、母親は言うことを聞かない。
「お父さん、お母さんを止めてよ。お父さんが弱いからいけないんだよ」と六郎。
結局、被害者たちに押し切られ、攻撃できないZAT。
遂に地上に姿を現す怪獣。
ZATはハリネズミ作戦を決行する。
怪獣の体に銛を打ち込み攻撃するZAT。
しかし怪獣には通用しない。
今度はレーザーで攻撃する。
「勿体無いわね。原子力だって平和利用できるというのに」と母親。
避難する六郎たち。
ZATはホエールを溶かされ脱出を余儀なくされる。
塩酸と硝酸の混合液を放水する放水銃を持って駆けつける森山。
放水銃での攻撃を志願する北島。
しかし放水銃でも怪獣を溶かすことは出来ない。
何とか生贄にできないかとZATの攻撃を邪魔する母親。
そうこうするうちに、ウルフも放水銃もZATガンも溶かされてしまう。
怪獣を説得すると母親。
しかし、母親は怪獣に捕まってしまう。
「お父さんが悪いんだ。お父さんが弱いからお母さんが勝手なことばかりするんだ」と六郎。
それを聞いた父親は、竹に捕まりその反動を利用して怪獣の上に飛び乗る。
母親に手を差し伸べた父親。
2人は怪獣の鼻の上に乗る。
さらにそれに続く光太郎。
光太郎は竹を切って槍を作り、怪獣の鼻の上に飛び乗り怪獣の目を突く。
暴れる怪獣に振り落とされる3人。
光太郎はタロウに変身し、落下する2人を助ける。
脚から光線を出し、ロードラをバラバラにするタロウ。
しかし、バラバラになった顔と手の攻撃を受け苦戦する。
さらにロードラの出す溶解液を浴び苦しむタロウ。
跳び蹴りでロードラの鼻をへし折るタロウ。
ストリウム光線はロードラの光線に跳ね返されたものの、最後はタロウスパートでロードラを巻き込み粉々にする。
粉々になったロードラは辺りにミニカーを撒き散らす。
拾い集めて喜ぶ健一たち。
泣きながら父親に謝る母親。
「私、生意気なことばかり言って。本当にごめんなさい」。
「六ちゃんのお父さんは、本当は凄く勇気のある強い人だったんだ。本当に強い人は普段はとても優しいんだ。六郎君も大きくなったらお父さんのような優しい、しかも強い人間になるんだ」と光太郎。
頷く六郎。
解説(建前)
ロードラは何物か。
そもそも金属だけ溶かす溶解液というのが凄すぎる。
最後はバラバラになってミニカーになったり、やはり普通の地球の怪獣ではないだろう。
したがって、私はロードラは宇宙から来た怪獣だと解釈する。
ここからは完全に想像だが、ロードラは元々宇宙人が作った生物だったのではないか。
いらない金属の処理に困った宇宙人が金属を食料とする微生物を作り出した。
その微生物が隕石か何かにくっついて地球にやってきたのであろう。
最初は小さな生物に過ぎなかったロードラが、時代を経るに従い食料である金属が増え徐々に巨大化した。
最初は鉄くずや廃車などを食料にしていたのが、遂には動いてる車まで食べられるようになったのであろう。
ただ、ロードラが怪獣化したのはやはり突然変異だったと思われる。
地球の環境がロードラを通常以上に巨大化させたのであろう。
最後ロードラがミニカーになったのは何故か。
これは難しいが、ロードラは溶かした金属を自分の体に取り込むことができるので、あえて自分の見た車の形にしてそれを貯蔵したのであろう。
普通の生物にそんなことができるとはとても思えないので、おそらく宇宙人がそのようにプログラムしてロードラを作ったのではないか。
ロードラはタロウにバラバラにされても手や顔だけで攻撃をすることができた。
これはやはりロードラが純粋な有機物ではなく、金属の性質も持つ無機物の性質も持つことの証左であろう。
マグネドンや初代マンに出てきたブルトン、ギャンゴの系列に数えられる怪獣ではないか。
感想(本音)
なかなか解釈が難しい話。
解説でも書いたが、バラバラになるオカルト性からは同じ石堂氏のマグネドンに似ている。
石堂氏もロードラを無生物と考えて話を作ったのであろう。
ただ、ロードラにはやはり車社会に対する批判めいたものが背景にある。
そういう意味ではエンマーゴやナマハゲの系列に属しようか。
ただ、今回の話の中心はやはり身勝手な六郎の母親だろう。
石堂氏は教育ママをよくテーマに取り上げるが、形こそ違うがこの母親もそのタイプに近い。
この辺りは石堂氏の女性観によるものだろう。
ただ、今回は今まであまり取り上げなかった父親の強さも取り上げている。
最近こそ父性の復権はよく叫ばれるが、当時から既にその兆しはあったのだろうか。
しかし、六郎の母親はなかなか弁護するのが難しいくらい身勝手なキャラだ。
いくらなんでも怪獣の所有権を主張して怪獣で金儲けしようというのは滅茶苦茶だろう。
ただし、原子力でも平和利用できるのにという主張は悪くない。
この辺りは、何でも怪獣を倒すことに対する批判めいたものもあるのかもしれない。
まあ、逆に考えると原子力を平和利用することに対する批判とも考えうるが。
一方、六郎の父親は蜃気楼の話をしてくれたり、結構インテリで優しい人物。
ただ、奥さんに頭が上がらないのは、当時のよくいる父親像であろう。
それは万年係長という言葉に象徴されている。
出世こそ男の尺度。
モーレツの時代は古いかもしれないが、男は外で稼いで何ぼという時代を感じさせ面白い。
まあ、この旦那さんはゴミ出しや洗い物くらいはやってくれそうだし、今なら逆にイクメンとかで評判いいかもしれないけど。
とは言え、奥さんを助けるために怪獣に飛び乗るのはかっこよすぎる。
初期の光太郎のようにそのままZATにスカウトされそうなレベルである。
この辺りの行動はやはり奥さんに対する愛のなせる業なのだろう。
とすると、普段から奥さんの尻に敷かれているのも愛ゆえではなかろうか。
とにかく、優しくて強いお父さんという、美味しすぎる役柄なのは確かである。
六郎を演じたのはAで知らない間にフェードアウトしてたダンこと梅津昭典くん。
六郎というのは当然、ウルトラ6番目の弟に因んでいるだろう。
ただ、役柄は完全に普通の少年。
名前以外はダンを連想させるものはない。
別に彼が六郎である必然性はなく、丘隊員役の桂木氏や美川隊員役の西さん同様、ただのゲスト出演といったところか。
健一君との新旧レギュラー子役共演ではあるが、ダンはエース初期には出てなかったのでこれも特に意味はない。
今回は六郎の両親もさることながら、光太郎もかなり無茶をしていた。
この辺りはもはや完全にギャグであろう。
変身モロバレなのもご愛嬌か。
しかし、竹槍で特攻隊はちょっと物騒な話。
今なら抗議が来るのは間違いないであろう。
この辺りはやはり時代背景の違いであろうか。
個人的には特攻隊で亡くなった方のことを考えると、あまり使って欲しくない表現である。
愛国心は大事だとは思いますけどね。
新さおりさんも、初登場以来大分経つので、かなり馴染んできた。
最初は違和感あったが、今の髪型で今のキャラは健一の元気なお姉さんらしくていい。
ただ、その分光太郎との関係が希薄にはなっているが。
健一については相変わらずしっかりしたところと、子どもらしいところ、両面が見られる。
健一も父親が普段いないせいか、基本はしっかりものだ。
最後ミニカーで遊ぶ姿も子どもらしくていい。
怪獣ロードラに関しては、結構言われてるように常識では考えづらい怪獣。
最後ミニカーになるのも賛否両論といった感じだ。
ただ、無理やり解釈はしたものの、基本的にはよくわからないところが魅力の怪獣。
石堂氏らしいが、こういう破天荒な怪獣はタロウの魅力であろう。
名前のロードラはそのまま、ロード(道)から来てるであろう。
今回の話は母親の身勝手さ、及び光太郎たちの無茶が目立って突っ込みどころ満載であるが、最後は母親も改心して爽やかな幕切れになっている。
そういう意味では視聴後感はいい話。
思うに、あの母親も根っからの悪人じゃない。
おそらく優しすぎる夫が物足りなかったのだろう。
夫が奥さんの言いなりなのは純粋に優しさからだろうが、それが気を使いすぎる結果になり奥さんに不満が溜まった。
多分、車買ったりドライブに行くのも全部奥さんの発案なのであろう。
夫としては言いなりになる方が楽かもしれないが、奥さんは逆に自分で何でもしないといけないと神経質になってしまった。
一度始めてしまった暴走はなかなか止められないものである。
奥さんは怪獣に捕まり、そして夫に助けられやっと暴走を止めることができた。
もうそれくらいじゃないと、止まらない状態だったのである。
奥さんは車が溶けるとき、パニックになり非常に情けなかった。
逆に夫は冷静に子どもたちを避難させ、妻を助けようとした。
実はこの場面で既に最後の結末とパラレルな状況が描かれていたのである。
まさに優しい怪獣お父さん。
怪獣のように強いというわけじゃないだろうが、優しいお父さんは本当は強い。
ちょっと綺麗過ぎる気もするが、優しさはエース最終回でも述べられた2期ウルトラのテーマでもあるので、たまにはこういう綺麗な話もいいのではなかろうか。
タロウ第22話
タロウ全話リストへ
タロウ第24話