子連れ怪獣の怒り!


データ

脚本は大原清。
監督は筧正典。

ストーリー

軽井沢の教会で結婚式を挙げる藤波夫妻。
そこに白いタキシードを着た光太郎がお祝いに駆けつける。
光太郎は伊香保でさおりたちと待ち合わせており、そのついでに教会に来たという。
お祝いの花束を渡して伊香保のホテルに戻る光太郎。
軽井沢の教会で結婚式を挙げる2人を羨ましがるさおり。
藤波はいい奴だけど、狩りの趣味は理解できないと光太郎。
新妻の優子は藤波の別荘で動物の剥製を見て気味悪がる。
アフリカでライオン狩りをするのが夢だと藤波。
翌日優子と狩りに出る藤波。
しかし怪獣が出現し、優子は崖から落ちてしまう。
光太郎に電話する藤波。
電話口で藤波は泣いていた。
藤波の話によると、崖下を探しても優子の姿はなく、そこには帽子だけが落ちていたという。
また警察を呼んで捜索したが手がかりはなかった。
「優子は怪獣に食われたんだ」と藤波。
「優子さんが死んだっていう証拠はないんだ」。
藤波を励まして怪獣を探す光太郎。
また捜索には藤波のハンター仲間も協力した。
硫黄地帯に入った光太郎はカンガルー怪獣と遭遇する。
撃とうとする光太郎。
と、その時優子が現れた。
「撃たないで。この怪獣はおとなしいの、何もしなければ乱暴はしないわ」。 優子によると、怪獣は怪我をした優子の手当てをして介抱してくれたという。
パンドラにはチンペという子どもがいた。
チンペはいたずらっ子でいつもパンドラを困らせてるという。
藤波が心配してると光太郎。
足の怪我が酷くて下山を躊躇う優子だったが、光太郎の助けで山を降りることを決意する。
パンドラにお礼を言おうとする優子。 しかしパンドラは餌である木の葉を食べに森のほうへ行っていた。
そこで藤波たちと遭遇するパンドラ。
怪獣が優子を殺したものと誤解していた藤波たちは仇を打とうとパンドラに銃撃する。
尾を撃たれて命からがら逃げ帰るパンドラ。
ハンターたちはパンドラの血痕を追って巣に向かう。
酷い傷を負って巣に帰ったパンドラ。
それを見た光太郎は尾に埋まった弾丸を抜いてやる。
治療を終えた光太郎は優子に一緒に帰るように言う。
しかし優子は負傷したパンドラを置いてはいけないとその場に残った。
藤波たちのところに行って事情を説明する光太郎。
しかし、藤波はおとなしい怪獣がいるもんかと言うことを聞かない。
挙句に光太郎を木に縛り付ける藤波。
怪獣の住処に向かうハンターたち。
怪獣を見つけた藤波たちは罠を仕掛けパンドラの子どものチンペを捕まえる。
さらに岩石を落としてパンドラの動きを封じる藤波たち。
「怪獣め、愛する者を奪われた悲しみをお前も味わえ」と藤波。
藤波はチンペを射殺する。
悲しむパンドラ。
そこにパンドラの餌を採りに行っていた優子が戻ってくる。
「あなたってむごい人ね」。
藤波を詰る優子。
チンペを殺され怒り狂うパンドラ。
炎を浴び絶命するハンターたち。
「俺が悪かった。許してくれ」。
パンドラに謝る藤波。
「お願い、この人だけは見逃して」と優子。
しかし怒り狂ったパンドラには届かない。
そこに光太郎が助けに来る。
パンドラに目潰しをする光太郎。
人間に復讐しようと麓の方に降りていくパンドラ。
ZATに連絡する光太郎。
パンドラの動きを止めようと地上から攻撃するZAT。
森山隊員もスカイホエールで攻撃する。
しかし、怒り狂ったパンドラの動きは止められない。
光太郎はタロウに変身する。
パンドラを巣のほうに投げ飛ばすタロウ。 その時「パンドラはいい怪獣なのよ、お願い殺さないで」と優子の声がした。
攻撃を止め、死んだチンペを蘇らせるタロウ。
さらにホエールの爆撃により2匹を洞窟の中に閉じ込める。
パンドラとチンペは地底の怪獣の世界に帰っていった。
もう二度と人間の世界に現れることはないだろう。
罪を反省した藤波は優子にもう二度と怪獣や動物を殺さないと誓う。
銃を湖の中に投げ捨てる藤波。
湖を見下ろす隊員たち。
「お前にはとんだ夏休みだったな」と荒垣。
「どうしてるのかな、あの親子」と光太郎。

解説(建前)

パンドラはかなりの量の木の葉を餌として食べていた。
あのペースで食べて餌はなくならないのであろうか。
この疑問については最後のナレーションが全てを語っているように思う。
すなわち、パンドラ、チンペは常に地上にはいないのであろう。
ナレーションの言うように基本的に2匹は地底の怪獣の世界にいるものと思われる。
ただ、それでは食料が不足するので、たまに地上に出て冬眠前のクマなどのようにまとめて餌を食べるのであろう。
今回もかなりの量を食べていたので、とりあえずの量は確保できたのではないか。
ただ、いつまでも地底の世界にいれるか疑問はあるので、地底から木の根っこくらいは食べられるのかもしれない。

何故チンペは生き返ったか。
これはタロウの超能力なのは確かだが、いくら何でも死んだ動物まで生き返らせることが出来るというのは凄すぎる。
これはやはりチンペはまだ絶命しておらず、虫の息ではあったが生きていたと解釈するのが穏当であろう。
ウルトラの母ほどではないにしろ、小動物を治療するくらいの超能力は持っているものと思われる。

感想(本音)

大人の視点から見ると割り切れない感情が残る作品。
タロウ全体からは前々回に続いての親子怪獣路線で、怪獣に罪はないというパターンを踏襲している。
脚本はタロウではお馴染み、大原清氏。
クレジットは大原清となっているが、当然これは大原清秀氏のことである。
大原氏は木戸愛楽のペンネームも使っており、なぜか3種類のペンネームで執筆している。

さおり達と待ち合わせて伊香保に来た光太郎。
しかしこの3人は一年でどれだけ旅行してるんだ。
さすが親が船長だけに金持ち?
しかし結婚式がそのついでってのもなあ。
光太郎は藤波を絶賛してたが、正直そんなに仲のいい親友ではないのだろう。
じゃなきゃ、木に縛られたりはしない。
光太郎のキャラからは広く浅く友達づきあいするタイプなのであろう。

今回、さおりと健一は実は出番がほとんどない。
特に健一の存在感は薄かった。
一方のさおりであるが、教会で結婚式をうらやましがったり、狩りを嫌悪したり。
新しいさおりさんは表情豊かで演技力があるから、そういう面では安心して見てられる。
最初から小野恵子さんのさおりさんも見てみたかったなあと、今では思う。
当時はやっぱり初代のほうがかわいいと思ってたが。

今回、優子を演じたのは橋田ドラマで今ではお馴染み中田喜子。
我々世代では連想ゲームの方がしっくりくるだろうか。
この頃の中田さんは仮面ライダーとか特撮によく出ていたが、その美貌は後に人気女優になるだけあって流石。
怪獣と夫の間で揺れる女心もうまく演じていたと思う。
ただ、正直この辺りの優子の態度は微妙。
藤波は軽井沢に別荘を持って、狩りを趣味にするくらいの金持ちっぽいのでちょっと勘繰ってしまう。

その藤波。
光太郎によると凄くいい奴らしいが、この話からはそういう面はあまり感じられなかった。
好意的に解釈すると優子を愛するあまりということになろうが、そもそも動物や生き物に対する敬意は感じられず、あまりいい奴には見えない。
光太郎を縛り付けたり、ちょっと狂気的な行動が目立った。
ただ、最後は反省しており根はいい奴なのかなとちょっとは思わせたりもしたが。
まあ、光太郎も怪獣狩りが趣味といえなくもないので、当時の価値観では普通の態度なのかもしれないが。

今回何と言っても不憫なのは藤波のハンター仲間。
正直彼らは単に藤波の巻き添えで死んだだけ。
しかもそれほど悪い人間には見えなかったし。
この話の問題点でもあるが、チンペを助けるならこのハンターたちも助けて欲しかった。
それかせめて負傷程度にして、ラストに少し出演させるとか。
自然を怒らせた罰ということであろうが、それなら一番責任あるのは藤波なので藤波だけ幸せになる結末はさすがに無情すぎる。
最後一緒に猟銃を捨てるなり、そうした方がよりテーマにも即せたと思う。
ここはやはりこの話の最大の問題点として看過できないであろう。

本話はテーマこそいいものを持ってるが、話の作りとしては上述したようにあまり感心できるものではない。
それはパンドラたちを地下に封じて良しとするラストもしかり。
バサラ編などここまでしっかりした脚本を書いてた大原氏にしては、かなり不満の残る内容だ。
大原氏は後にスクールウォーズなどの大映テレビのドラマの脚本を多く手がけるが。こういう子供向けに徹した話は案外苦手なのかもしれない。
まあ、優子の藤波を詰りながらも命乞いする態度はある意味大人向けでリアルともいえるが。
そこまで狙って書いてるとしたら凄すぎるが、いずれにせよもう少し練りこんで欲しかったというのが正直なところである。

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