二大怪獣東京を襲撃


データ

脚本は上原正三。
監督は富田義治。

ストーリー

次郎らは工事現場でアンモン貝の化石の着いた岩石を発見。
怪獣の卵かもしれないと次郎はMATに連絡した。
駆けつけた郷と岸田は岩石を調査するが、岸田はそれをただの石と判断し、MATシュートでそれを焼くだけで処理を済ませた。
岩石の中から心拍音らしきものを聞いた郷は「もっと慎重な配慮をすべきだった。科学的調査をすべきだった」と岸田に意見する。
「たかが石ころ1つをあっちこっち持って回れと言うのか」。
激昂する岸田。
「我々の仕事は即断即決。臨機応変に対処すべき局面が多い。その場合隊員1人1人の判断を信じるしかない。岸田はその岩石を無害な物と判断した。私は岸田の判断を信じる」と隊長。
その時、第2砕石場で異常な微振動が観測された。
調査に行った南と上野は怪獣グドンを発見する。
すぐさま郷と岸田がMN爆弾を搭載したアローで到着した。
MN爆弾を発射すべく指示を待つ郷。
しかしその時郷は採石場の近くに蝶を追いかける少女の姿を目撃する。
岸田の指示に従わず爆弾を発射しない郷。
しかし少女の姿はもうそこにはなかった。
基地に帰った岸田は自分に対する反発から郷は爆弾を撃たなかったと糾弾する。
「俺は郷を信じる。一瞬子供が危ないと思った。郷の取った処置も正しいと思います」と上野。
郷は「俺は懲罰されても構いません。しかしパトロール中の岸田隊員の判断は甘かったと思うし、今でもこどもを見たという確信があります」と言う。
「君は今日、岸田の命令に背き怪獣を撃ち損じた」と加藤は郷に3日間の自宅謹慎を命じる。
今度は第5農場で大地震が発生。
しかしその他の地域では地震は観測されておらず、地震は限られた地域のものであった。
一方例の岩石が気になった郷はショッピングセンターに向かうが、岩石は既に土の中に埋まっていた。
坂田家に戻った郷は坂田に「少女を見たのならどこまでも見たと押し通すべきだ。3日や4日の謹慎喰らったって胸を張ってればいいよ」と言われる。
アキは郷の服を買いに友達と地下ショッピングセンターに行く。
しかしアキらが地下ショッピングセンターにいる時、突如地震が発生。
逃げ遅れたアキらは地下街に閉じ込められてしまう。
一方怪獣の卵が出たと聞いた郷は急いでショッピングセンターへ。
郷が地下へ行くとそこには逃げ遅れた人たちが閉じ込められていた。
その中には郷への買い物を抱きしめるアキもいた。
一方MAT基地では岸田隊員のおじである岸田長官が来ていた。
岸田隊員の報告によると、怪獣の卵はツインテールの卵でグドンはツインテールを食いに街に来るという。
MN爆弾で卵を爆破するよう指示を出す長官。
しかし郷はその下に人がいると反論する。
少々の犠牲はやむなしという長官の態度に腹を立てた郷はMATのバッジを外し基地を出ようとする。
「あんな長官の下で働けるか」と言う郷に対し上野は、
「気に食わないことがあったらすぐやめるのか。お前何のためにMATに入った。MATに入って何をした。帰るところがあるからってこれじゃ無責任すぎるじゃないか」と引き止める。
長官は「なに、いざという時は必ずウルトラマンが来てくれるよ」と言う。
「長官の言うとおり直ちに出動しましょう」と言う岸田に対し隊長は、
「5人の救出を優先する。私はMATの隊長だ。MATの犯した不始末はMATのやり方で収拾をつける」と言う。
アキを救出しようとする郷を手伝いに来る上野。
「俺はMATに命を掛けている。一緒にMATに戻ろう」。
しかしその時地上のツインテールの卵が割れた。
街を破壊するツインテール。
郷は外に飛び出し、ウルトラマンに変身する。
しかしウルトラマンはツインテールの触手に苦戦。
さらにツインテールを追ってグドンも地下から出現した。
2大怪獣の挟撃を受けたウルトラマンは勝てるのだろうか。

解説(建前)

ツインテールの卵はMATシュートで焼いてもびくともしなかった。
これは卵が優れた耐熱性を持っていることによるのだろうが、これによって中の卵自体に何か変化があった可能性がある。
と言うのは岸田がMATシュートを使った直後に郷は怪獣の心拍音を聞いたからだ。
またツインテールはグドンに常食にされていたとは思えないほど巨大で強い。
これもMATシュートがもたらした副作用だとすると、岸田のミスは重大と言わざるを得ないだろう。

しかしグドンはどうやってツインテールの卵の存在を知ったのだろうか。
ツインテールが何か特殊な超音波でも発していてそれを感知する能力がグドンには備わっているのだろうか。
ツインテールの卵が掘り起こされたのは完全に偶然なのだから、グドンがそれによって目覚めたとは解釈しにくい。
これはグドンが既に地下で目覚めていて地下に潜むツインテールの幼虫を食べていた可能性を示唆するのではないか。
とすると本来のツインテールは最初の岩石大のまま生まれるとも考えられる。
やはりあのツインテールはMATシュートによって最初から異常に成長した状態で生まれたと考えるのが素直であろう。

感想(本音)

帰りマンを代表するエピソードの前編。
人間ドラマ、特に防衛チームの人間関係において全シリーズ中トップの濃密度を誇るエピソードである。
子供の頃はあまりよくわからなかったが、話の重厚さだけは感覚的に理解できた記憶がある。
とても子供向けとは思えないが、しかし子供を無視してるわけではないバランス感覚は見事としか言いようがないだろう。
上原氏渾身の脚本を富田監督が職人らしくきっちり仕上げた、今さら私が言うまでもない名作である。

まず本作の肝とも言うべき郷の見た少女について。
結局作品中ではその答えは出て来ないことから、本作においてそれがどちらであるかに意味はないとも考えられるが、一応私なりの解釈を提示することにする。
まず郷が見間違えたという説が考えられるが、郷の目はウルトラマンと合体することにより超人的な動体視力を誇っているのでその可能性は低いであろう。
映像的にもはっきりと描写されているので、ほぼその可能性はないと考えられる。
では実際にいたかとなると、これも可能性が低い。
すなわち郷はMN爆弾を撃ち損じた後少女を見失っており、本当に少女がいたならあの後付近を捜査すれば見つかるのが普通である。
またあの状況で怪獣に気付かず蝶を採る少女というのも考えにくい。

では結局あの少女は何者なのか。
実際にいたわけでもなく見間違いでもない。
少々非科学的だがこれは郷が少女の亡霊を見たと解釈するしかないだろう。
そうだとするとすぐ少女が消えた理由も説明できるし、郷にだけ見えた理由も説明できる。
また少女が怪獣に気付かず虫取りをしていた説明もつく。
郷はウルトラマンの超人的な力で少女の亡霊を見てしまった。
ウルトラマンの超能力は時には人間にとってマイナスに作用する。
今回はそれが誤作動して本来なら目に見えないものまで郷に見せたのであろう。
あの子は戦争中に虫取りをしていて爆撃にあい、命を落とした少女なのかもしれない。

加藤隊長の郷に対する処分は岸田に対するものと比べると厳しすぎるように思える。
確かに郷は自分の意見に固執してチームの和を乱した。
また命令違反という重大なミスも犯している。
しかし郷が少女を見てMN爆弾発射を取りやめたなら臨機応変な判断ともいえるし、ことさら個人攻撃する岸田もチームの和を乱している点同罪だ。
ではこの決裁を下した隊長の意図は何なのか。
これはおそらく自分の非を素直に認めなかった点、重く見たのだろう。

つまり郷は少女を見たと主張し続けてはいるが、それは後の調査で何も立証されなかった。
客観的に見れば少女はいなかったと考えるのが普通だ。
郷があくまで少女がいたと言い続けるにはそれを自ら証明しなければならない。
しかし郷は自分の意見を曲げようともせず何の反省もしていない。
客観的には郷の見間違いなのだから、郷はその点は反省すべきだ。
岸田の場合はあくまで判断が甘かっただけでミスとは言えない。
結果はともかく、MATシュートで焼いているのだからその時点で最低限のことはしているだろう。
隊長は郷が岸田に反発して指示を無視した点を重視したのではない。
郷の責任の取り方を問題視したのだろう。
そう考えると、隊長の決裁もあながち不当とは言えないと思う。

今回上野は妙に郷側についた発言をしている。
これは上野が郷に対し理解を深めてきたというのもあるだろうが、上野自身、岸田のエリート然とした態度に反感を抱いているのもあったのだろう。
理よりも情で動く上野だけに、郷の方に共感を持つのはごく自然なことに思える。
しかし今回の岸田は相当嫌な奴に描かれている。
それが後編で活きてくるのだが、さすがにこれはきつ過ぎないか。
しかし「MATの犯した不始末」と隊長。
結果的には岸田の処理は不始末ということになったようだ。

以下細かい点を。
いきなり次郎君の隣にエレドーダスの少年が。
あの少年とはそっくりさんなのだろうか(高野君はレギュラーなのだが)。
アキの友人の女の子はもしやレオの白川隊員の人では。
クレジットがないからわかりませんが、ウルトラシリーズでは後のレギュラーがゲスト出演することが多いのでその可能性は高いと思います。
次郎君は怪獣の卵に出会ったり、怪獣の中に入ったり普通の少年とは思えないほど怪獣に遭遇しますが、これってウルトラQそのものではないでしょうか。
以降、初代マンとセブンで否定した一般人が偶然怪獣に出会う不思議が復活するのが2期の特質でしょうかね。

岸田長官を演じるのはセブンでもお馴染み藤田進氏。
しかし「いざとなったらウルトラマンが」とか、「この際5人のことは忘れよう」とかちょっと酷すぎ。
前作ではまともだったのに、何かあったとしか思えない変貌振りを見せている(別人だから当たり前か)。
しかし国全体を考えると、5人の犠牲はある程度仕方ないんですけどね。
ただしMN爆弾を使用しても地下の人たちは殺せてもツインテールには効かないのがいつものパターンなんですが。
郷の買い物に行き事件に巻き込まれるアキ。
悲劇のヒロインの予兆が既に感じられる。

第3話で築かれたかに見えたチームの結束。
しかし岸田と郷の間にはまだわだかまりが残っていた。
それが噴出するのが本エピソードの前半である。
そして相変わらず自らの特殊能力のため苦境に陥る郷。
いつもなら坂田のアドバイスで立ち直り事なきを得るのだが、今回はそうは行かなかった。
怪獣の卵が巨大化しアキまで巻き込まれてしまう。
一方MATも長官と対立し苦境に立たされてしまう。
自らのミスを取り戻すべく焦る岸田に対し、あくまで人命救助を優先させる加藤。
郷を仲間と認め叱咤する上野。
それぞれの人間模様が壮大に展開され後編に続いていく。
2大怪獣に挟撃されるウルトラマン。
シリーズ屈指のスケールとドラマ。
次の「決戦!怪獣対MAT」で「帰ってきたウルトラマン」は早くも1つの高みに達するのである。

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