冬の怪奇シリーズ
まぼろしの雪女


データ

脚本は石堂淑朗。
監督は筧正典。

ストーリー

ルミ子と冬山登山に向かう準備をする次郎。
郷も誘われていたが、仕事が忙しく一緒に行くことはできなかった。
その頃MATは警察から妙な失踪事件について連絡を受けていた。
それらはアベックの失踪事件で、現場の状況から地球から消えたとしか思えないとのことであった。
一方次郎とルミ子は山小屋へ向かう1組のカップルと合流する。
山小屋へ着くと宿泊客たちは意気投合し、皆でしりとりをして盛り上がっていた。
そこへ老齢の管理人が娘と一緒に現れる。
管理人は新婚さんはいないかと尋ね、新婚の2人は管理人に案内され別の小屋に泊まることになった。
夜、寒くて眠れない次郎はストーブに当たりに一階に降りる。
外の様子を見に行く次郎。
外へ出て見ると、管理人の娘が一人佇んでいた。
雪女のようなその姿に怯える次郎。
一方、山小屋のカップルは暖房の近くで身を寄せ合って震えていた。
そのとき小屋の扉が開き、何者かが入ってくる。
翌朝新婚さんの小屋へ向かう次郎とルミ子。
しかし、そこには人影がなかった。
2人は暗いうちに出発したと管理人。
一方MATは引き続き男女の失踪事件について調査していた。
事件にはいずれも老齢の管理人と若い娘が関係しているという。
大菩薩峠で事件が起きたと聞いた郷は、その辺りで未確認飛行物体が目撃されたことを思い出す。
宇宙人の仕業ではないかと郷。
目撃者が現れたと連絡を受けた郷はすぐに大菩薩峠に向かった。
青年の話によると、山小屋で氷漬けになった男女のカップルを目撃し、そこへ現れた老人と娘が2人を運び去ったとのことである。
ルミ子邸を訪れた郷は次郎から山小屋のアベックの話を聞き、MATに宇宙人が出たと報告する。
一方基地でもレーダーが異常物体を捕捉。
アローでロケットらしきものを追跡したMATはそのロケットを撃ち落すことに成功する。
墜落したロケットの中には氷漬けになったカップルが。
2人は特殊な冷却法で生きたまま凍らされていた。
宇宙人の仕業であると確信する伊吹。
ルミ子と次郎に確認してもらい、2人が例のカップルであることが判明する。
山小屋を取り囲むMAT。
しかしそこに現れた老人は例の管理人とは別人だった。
急いでもう一つの山小屋に向かうMAT。
そこへ現れる宇宙人。
「わしは土星から来たブラック星人だ」。
正体を現す星人。
土星では奴隷が不足しており男女1000組のカップルを地球から誘拐し、子どもを産ませて奴隷にする計画だという。
娘の吐く冷凍ガスに凍らされる隊員たち。
郷は星人と娘を追うが、冷凍ガスを浴び凍らされてしまう。
巨大化し、怪獣スノーゴンに変身する娘。
一方力尽きた郷もウルトラマンに変身した。
「ウルトラマンをカチンカチンにしてしまえ」。
ブラック星人の命令により冷凍ガスを浴びせるスノーゴン。
ウルトラマンはカチンカチンに凍らされしまった。
マウントポジションでたこ殴りにされるウルトラマン。
するとスノーゴンはそのままウルトラマンの体をポキポキと折り、体をバラバラにしてしまった。
「ハハハ。やったあ」。
喜ぶブラック星人。
しかしその時ウルトラマンのブレスレットが光る。
するとバラバラになったパーツが集まり、ウルトラマンの体は元通り復元された。
再び冷凍ガスを浴びせるスノーゴン。
しかし今度はブレスレットを変形させ盾にし、それを跳ね返す。
逆に凍らされるスノーゴン。
そのまま持ち上げ地面に叩きつけると、スノーゴンは大破し最期を遂げた。
さらに光線で星人を倒すウルトラマン。
元に戻った隊員たちは郷を探しに山を歩く。
例の老人と娘に出会う隊員たち。
しかし2人は星人たちとは別人だった。
2人は八ヶ岳で宇宙人に捕まり乗り移られていたという。
「雪女か。宇宙人も色々考えてくるな」と伊吹。
晴れ晴れと山を下りるMAT隊員たちであった。

解説(建前)

ウルトラマンは何故バラバラにされた後復元したか。
前提としてウルトラマンが死亡していたのか否か検討することにする。
そもそもウルトラ族にとっての死とは何なのか。
難しい問題だが、どれだけピンチになっても生き返るところを見ると、完全に消滅する以外死ぬことは無いようにも思われる。
死んでも命さえ与えれば生き返るように、原則不死身と考えてもよいだろう。
ただ、人間であるハヤタも命を与えられることにより生き返っており、これを死と解釈すると、やはりウルトラマンも死んでいると考えるべきことになる。
結局ウルトラマンの死にも様々なパターンがあり、エネルギー切れから物理的損傷によるもの、カラータイマーの破壊によるものなど、それぞれのケースに合わせて考えるしかないだろう。

では、今回のケースはどうか?
まずバラバラにされたことにより完全に死んだと解釈すると、ブレスレットの力で蘇ったことになる。
しかしいくらブレスレットの力が偉大だからといって死人を蘇らせるのは不可能だろう。
とすると、ここはウルトラマンは完全には死んでいないと解釈するのが妥当である。

ただしウルトラマンがバラバラにされても死なないと解釈すると無敵ということになり、今までの戦いが全否定される恐れがある。
これはこう解釈しよう。
つまり今回はスノーゴンにより凍らされたのが幸いしたと。
スノーゴンの冷凍ガスは相手を生きたまま凍らせるほどの威力がある。
そこで生きたまま凍らされたウルトラマンは、バラバラにされても各パーツが生きたままの状態を保ったのである。
仮に凍らされていなかったら、少なくとも容易には再生できない状態にはなったであろう。
結果、ブレスレットが体を繋ぎ合わせ、エネルギーを与えて復活させた。
以上よりウルトラマンは完全には死んでおらず、また冷凍により容易に蘇生できる状態でバラバラにされたものと考える。

MAT隊員たちが容易に解凍されたのは何故か。
まず考えられるのが、スノーゴンの爆発による熱風。
しかし、冷凍されたカップルの様子からはそう容易く解凍されるとは考えづらい。
やはりこれはスノーゴンが倒されたことによると考えるのが妥当であろう。
すなわち、スノーゴンには冷凍を解凍する特殊な電磁波等を発生させる装置が備え付けられていた。
そしてスノーゴンが破壊されたことによりその装置から電磁波等が発せられ、それを受けた隊員たちが解凍されたということである。
山中で発見された老人と娘も同様の原理で解凍されたのであろう。

土星にさらわれたアベックはどうなったか。
これはウルトラマンから連絡を受けた兄弟たちの手により救出されたと考えておこう。
ウルトラ兄弟がこのような鬼畜な星人を放置するとは考えられない。
MATには土星に行くまでの能力はないであろうし。

感想(本音)

正直石堂氏の脚本は解釈に苦労する。
その分面白いともいえるが、今回は我ながらなかなか苦しいものになってしまった。
まあ、基本的に細かいことは考えずに見るのが吉であろう。

今回は石堂氏のカラーがよく出た怪奇物の話。
ストーリーとしても上手く流れており、なかなかよく出来たエピソードである。
ウルトラマンがバラバラにされるのはアレだが、子供心にはすぐ復活したことにより特にトラウマにはなっていない。
最後も明るく締められており、ツボはしっかり押えられている。

郷を登山に誘い、行けないと聞くと止めようかしらとルミ子。
結局次郎と2人で行くが、これはやはり当てが外れたのか。
しかし話のためとは言え2人で冬山登山に行くというのはやや強引な気がするぞ。
まあ、登山というほどのものでもなかったのだが。
別の山小屋で泊まった新婚カップル。
部屋が寒いからと「抱いて暖めて」はやや子供向けを逸脱していた。
ドラキュラスの話といい、石堂氏はさり気に微妙なところを突いてくる(?)。

今回は何と言ってもブラック星人の侵略目的の凄さに尽きるだろう。
と言うか、もはや侵略すら企図していない。
1000組のアベックを連れて奴隷を生ませ育てるなんて、まさに人間牧場の発想だ。
さすがにこれくらい鬼畜だと光線で撃破される星人に何の憐れみも感じないのだが、ただ考えようによってはきっちりカップルを連れて行くところは律儀と言えば律儀である。
案外話せばわかる奴なのかもしれない(んなアホな)。

今回ウルトラマンは凍らされバラバラにされ、完全敗北と言っていい。
それを見た星人が勝利を確信するのも至極当然だろう(やけに人間臭いリアクションであるが)。
しかしブレスレットもここまで来るともはや何でもありである。
星を丸ごと破壊したり、バラバラのウルトラマンを再生したり、冷凍ガスを跳ね返す盾になったり。
その割りにとどめは投げただけだったが、あれはスノーゴンの冷凍ガスが爆発したとか何とか解釈すれば問題ないであろう。
個人的にはウルトラマンが勝利して次郎君が「バンザーイ」というのが基本を押えていて好感が持てた。

今回もMATは凍らされ、肝心のところで役に立たなかった。
とは言えアベックを乗せたロケットは撃墜しており、少しは役に立っているようである。
ただあの墜落でアベックが無事だったのは、やはりブラック星の科学のおかげか?
あれで中の人が死んでたら洒落にならないぞ。
あの後アベックの確認のために次郎君とルミ子さんを呼び話に絡めるのは強引だが上手い展開。

とにかく、インパクトのある話。
ウルトラマンがバラバラにされるのはやり過ぎとも言えるが、話を難しくし過ぎるよりは、映像的なインパクトで視聴者に訴えるというのも娯楽作品としては当然のアプローチであろう。
以後、映像的な残酷さはエース、タロウでも多々見られることになる。
そしてそれらはこどもたちの心を大いに刺激した。
確かにそのことによる功罪もあろう。
しかしシリーズのマンネリ化を避け特撮ドラマ全盛期の中でチャンピオンたる地位を保てたのも、そのようなチャレンジあればこそなのである。
怖いもの見たさではないが、子どもは元来こういう残酷描写を好むもの。
本エピソードは今後のウルトラシリーズの新しい方向を示した点、重要なエピソードといえるであろう。

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