ウルトラの星光る時


データ

脚本は上原正三。
監督は富田義治。

ストーリー

行方不明になった郷の捜索をするMAT。
その時緊急通信が入り、宇宙ステーションV1が攻撃を受けているとの情報が入る。
すぐさま出動しようとするMAT。
しかし基地全体が電磁波に覆われ基地の機能が停止していた。
そこへナックル星人からのメッセージが入る。
「我々MATがいる限りお前たちの自由にはさせないぞ」と上野。
「いつもウルトラマンの力を借りているくせに」と星人。
「お前たちの守護神ウルトラマンは二度と現れない。我々は地球が平和的に栄えるのを好まない。サターンZは武器として使用するつもりだ」とMATに降伏を呼びかける星人。
星人は自らの力を見せ付けるべく、V1をあっけなく破壊して見せた。
宇宙船団を迎え撃つよう進言する南、上野。
しかし伊吹は敵のアジトが都内にあるとにらみ、サターンZの奪回を指示する。
偵察に出た南、上野は電磁波を逆探知し、宇宙電波研究所に向かう。
2人は研究所に乗り込み内部に時限爆弾を仕掛ける。
しかし2人が逃げようとした時、部屋のドアが封鎖された。
部屋内に白い煙が。
2人はそのまま固まってしまう。
一方ウルトラマンは宇宙船に曳航され宇宙を彷徨っていた。
基地に帰った2人は連絡をしなかったことを伊吹に咎められる。
すると南がそれに激昂。
南は伊吹に殴りかかり、上野も暴れだす。
何とか2人を取り押さえるMAT。
2人が宇宙電波研究所へ行ったことを知り、研究所へ向かう伊吹と岸田。
しかし2人も星人に捕まってしまった。
2人のデータを手に入れた星人は南と上野に丘を始末するよう指示する。
丘は辛くも2人の魔の手を逃れ、基地の外へ脱出した。
その頃ウルトラマンは星人の船団により八つ裂きにされようとしていた。
そこへ2人のウルトラ戦士が登場する。
初代マンとセブン。
ハヤタとダンの姿になった2人はウルトラの星作戦を計画する。
捕らわれた新マンを助けるべく宇宙船に向かうセブンと初代マン。
2人はクロスしながら新マンのエネルギーを補充していく。
エネルギーを回復し復活したウルトラマンは2人の兄に礼を言い、ナックル船団の攻撃に向かった。
スペシウム光線で壊滅する船団。
生還した郷は基地に戻るが、基地の様子がおかしい。
「郷、お前はわざと脱走したな。怪獣との戦いが恐ろしくなりそれで隠れてたんだろ。南。郷を即刻銃殺刑にしろ」と伊吹。
目隠しをされ連行される郷。
そこに外へ避難していた丘から、みんなが宇宙人に操られてると聞かされる。
格闘し隊長をのす郷。
すると隊長の耳の後ろにアンテナのようなものが付けられていた。
一人電波研究所に向かう郷。
ウルトラマンを待ち受ける星人とブラックキング。
郷はアキと坂田の弔い合戦のため変身する。
ウルトラマンはスペシウム光線で電波研究所のアンテナを破壊。
すると基地の機能は回復し、モニターに星人たちと戦うウルトラマンが映し出された。
MATはウルトラマンを援護するべく出動し、陸と空から攻撃する。
挟撃され再びピンチに陥るウルトラマン。
MATもブラックキングの崩した土砂の下敷きになる、
星人に投げられ倒れるウルトラマン。
カラータイマーも赤になった。
しかしウルトラマンは負けない。
初代ウルトラマンとセブンの友情が心の支えになっているからだ。
反撃するウルトラマン。
ブラックキングを宙に放り投げ、そのままブラックキングの首を手刀で叩き落した。
続いてナックルを宙に投げ、そのまま地面にたたき付ける。
しかし末期のナックルは東京中が大爆発すると言い残す。
それを聞き、電波研究所に向かうMAT。
しかし一足先に郷が時限爆弾を解除していた。
慎重にサターンZを運ぶ郷。
勝利の祝杯を挙げようと盛り上がるMATだったが、郷は一人先に帰る。
「今夜はクリスマスイブよ。忘れないで」と丘。
自宅に戻った郷だが、次郎は部屋にいなかった。
すると隣の家から次郎の歌声が。
部屋に入ると、次郎は隣の娘とクリスマスツリーを飾り付けていた。
元気を取り戻した次郎を見て、微笑む郷。

解説(建前)

ナックル星の宇宙船団は何故あっさり壊滅したか。
これは単純に、ナックル星人にはウルトラ一族のように巨大化して宇宙空間を飛ぶという特殊能力が備わっていないためだろう。
そのため、宇宙空間を移動するには宇宙船に乗るしかない。
おそらく先兵として送り込まれた星人がウルトラマン捕獲に成功したため、仲間を呼び寄せた。
その仲間は近くの星で待機していたのであろう。
地球に来ていたナックルがどういう身分の者かはわからないが、色々研究していたことからやはりナックル星の科学者といったところではなかろうか。
あの宇宙船団には多くのナックル星人が乗っており、移住先を求めていたのかもしれない。

ナックル星人は隊員たちを操るのに、何かよくわからないデータを採っていた。
これはおそらく、人の脳波の動きをデータ化したものか何かであろう。
そして人により違う波長の信号を送り、意のままに操っていた。
南、上野が正気に戻ったのは一時的に信号の送信を停止したためであろう。
同様の手口でナックル星人は研究所員を操っていた可能性もある。

感想(本音)

初代マンとセブンとの夢の共演。
これに尽きるといってもいいエピソードであろう。
私も子どもの頃この話を見てとても興奮した。
私の場合再放送だったが、本放送、再放送に関わりなく、当時の子どもたちの感動は計り知れない。
今では当たり前になってしまったヒーローの共演だが、ウルトラマン、セブン、新マンが一つのラインで繋がったこの話は、これから長く続くウルトラシリーズ(今年で40周年!)の大きな礎となったのは間違いないだろう。

ただしストーリーについては微妙なところが多い。
以下検証することにする。

まず、宇宙ステーションV1について。
このステーションがMATステーションの1つだとすると、転任した加藤隊長が乗っている可能性もある。
ただ、仮に加藤隊長が乗っていたとしても既に攻撃の時点では脱出していたのではないか。
なぜなら、あれだけの大船団相手では勝ち目はないし、あまりにも攻撃に無抵抗だったことからも基地は放棄されていた可能性が高いからだ。
緊急事態だったので、乗員の無事を伝える暇がなかったのであろう。

今回は星人に操られるMATが不甲斐ない。
ちょっとヤラレ役過ぎる気もするが、硬直する南。
丘隊員をいやらしい目で見る南。
郷の銃殺に暗い目で賛成する南。
南隊員ばかりになってしまったが、他の演者の洗脳演技もなかなか良く、なかなかコミカルなシーンに仕上がっている。
また丘隊員が画面の端で斜に構えていたり、悲しげに微笑んでいたり、よくわからないカットも多数見られた。

しかし極めつけはラストのルミ子だろう。
監督自身もインタビューで答えていたが、紗を掛けすぎて郷が心変わりしたみたいになってしまったとのこと。
あれは次郎を微笑ましく見ていたと解釈するのが穏当だろうが、やっぱりどうしても郷さんが…に見えてしまうのは仕方ないか。
ところで坂田家の葬式はどうなったのだろうか。
これはおそらく、彼らの遺体が司法解剖に回され通夜は次の日になったのだろう。
次郎君は2人の不幸が信じられず、クリスマスの雰囲気に流されてしまった。
現実逃避する気持ちからではないか。
また、郷も丘に「今日はクリスマスよ」と言われ、落ち込む次郎を慰めようとプレゼントを買ったのだろう。

今回は丘隊員の活躍が頼もしい。
丘は火の輪くぐりなどMATの厳しい練習にもついていけてたくらいなのでこれくらいは出来て当然なのだが、やはり屈強な男たちを投げ飛ばす女性隊員というのは珍しかった。
基本は通信員なのであまり目立たないが、おそらく昭和ウルトラシリーズでは80の城野エミに次ぐ、運動能力の持ち主だと思う。
郷を助けるシーンも良かった。
対照的に「グエーッ!!(そんなこと言ってないか)」と倒れる隊長はかなり情けない。
晩年のサスペンスに繋がる演技はさすが芸達者。

今回もナックル星人の憎憎しさは全開。
特に上野に「いつもウルトラマンの力を借りているくせに」というのは露骨だった。
しかし今回のメインはやはりセブンと初代マンが救出に来るシーンであろう。
それぞれの主題歌が順番に掛かり、新マンの主題歌に繋げる演出は完璧。
曲の終わりで船団を吹き飛ばしてアイキャッチに繋ぐのも神演出だった。
まあ、それだけ詰め込んだということだろうが、メリハリの効いた演出は良かった。
ただし、ハヤタとダンはややおっさん化が進んでおり、その点少し残念。

新マンが逆転するシーンはなんと友情パワーを原動力にしている。
これは筋肉マンの元祖と言ってもいいかもしれないが、精神主義的描写は例えばエース8話における逆転劇にも現れており、脚本家上原正三の一つの個性と言えよう。
一方精神主義を嫌う市川氏は「ウルトラセブン参上」において、セブンに新兵器を渡すという実利的な役割しか与えていない。
そこには精神主義、根性主義は一切排除されている。
それはエースキラー編でも同様である。
すなわちエースはスペースQというある意味新兵器を使うことにより、エースキラーを粉砕するのである。

もちろん、これはどちらが優れているかという優劣の問題ではない。
むしろ作家の個性の問題であろう。
同じようにウルトラのメインライターを務めた2人であるが、その脚本家としてのスタンスはやはり微妙に異なっている。
これはおそらく2人の世界観の違いによるものだろうが、こういうことを考えるのも、特撮ものを見ていく上での楽しみ方の一つだと思う。

その他面白かったシーン。
郷が隊長を伸して、宇宙電波研究所に向かうシーン。
丘に「何処に行くの?」と聞かれ「宇宙電波研究所だ」と答えるのだが、これがコントか何かだと郷も操られるのがオチなので思わず笑ってしまった。
しかしその後、しっかり坂田さんとアキの回想シーンを入れるのはさすが。
ナックル星人の印象的な声は怪人ナマハゲの沢りつお氏だろうか?
パラボラアンテナを破壊され怒りを露にするシーンもなかなか良い。

新マンがモニターに映った時、MATはくつろぎすぎ。
12時間以内に降伏を迫られてるんじゃなかったっけ?
しかし、そもそもMATに降伏の権限があるのだろうか。
ナックル星人は交渉相手を完全に間違えてると思う。
今回珍しく、MATの一般隊員であろう通信員が2人出演していた。
結局隊員たちに伸されてしまうのだが、そのうちの一人がどことなく郷に似ていたのが面白かった。
最後にネットでもとやかく言われる上野隊員の雄叫びだが、私のビデオでは「すったほんろー」としか聞こえません。

アキと坂田を失い、新たにウルトラ兄弟を得た郷。
ここに上原氏の企図したウルトラマンが一つの完結を見た。
これからシリーズは専らウルトラ兄弟を中心に話が進められることになる。
その点、本エピソードが大きな分岐点になったのは間違いないだろう。
以後、ウルトラ兄弟設定により人間ドラマとしての濃密さは失われることになる。

例えば防衛隊。
本エピソードでの扱いが象徴的であるが、もはやウルトラマンとの共闘は形だけのものになっている。
それは5,6話での彼らの奮闘と比べると明らかであろう。
これもウルトラ兄弟という仲間を得てしまったことが原因だと思われる。
また、ウルトラマンと人間との関係に一線が引かれたため、ウルトラマンが人間関係に悩むことがなくなってしまった。
この点、人間ドラマとしてのウルトラシリーズの可能性を狭めたことは否めまい。

ただ、それがマイナス要因であると私は考えない。
すなわち、路線というか作品ごとのカラーがあるのがシリーズとして当然だからである。
そもそも人間ドラマはこれまでのシリーズにない新しい試みであった。
同様にウルトラ兄弟でのドラマはこれ以降のシリーズにおける新しい試みである。
シリーズものが常に初代を踏襲しなければならないとすると、シリーズの発展そのものが難しくなる。
もちろん最低限のルールはあると思うが、その線引きは実際難しく、神ならぬ我々にそれを決めることは困難であろう。

しかし少なくとも私が知る限り、今までのシリーズで一線を越えたものは見当たらなかった(一番微妙なのは「ザ・ウルトラマン」。アニメだから)。
その辺り、ウルトラはウルトラとしてしっかり続いていると思う。
話を「帰ってきたウルトラマン」に戻すが、本話をもって上原氏の企図したウルトラマンは完結を見た。
しかし、番組自体は完結を見ていない。
すなわち失われたテーマもあれば、新たに生じたテーマもあるからだ。
今後、本番組は郷と次郎の交流を中心に描かれることになる。
そしてそれは何より、ヒーローとしての郷の成長を描くことにもなるのだ。
確かにウルトラ兄弟の登場は色々功罪があった。
しかし後のシリーズを見るにつけ、私は功の方が大きかったと確信している。

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