夜を蹴ちらせ


データ

脚本は石堂淑朗。
監督は筧正典。

ストーリー

ある別荘地で女をつける郷と岸田。
その女からは怪電波が検出されていた。
車で女を追う2人だったが、女に感づかれ巻かれてしまう。
女は鈴村みどりの妹を名乗り、ある別荘へ訪問する。
鈴村みどりは半年前に病気で亡くなっていた。
みどりの友人だというその女性は女に家に泊まるよう勧める。
暗闇に怪しく光る女の目。
その夜、別荘の娘は血を吸われた状態で、家人に発見された。
窓の外には飛んでいく何者かの姿が。
MATは警察の要請を受け、吸血鬼の調査に乗り出す。
坂田家に立ち寄る郷。
坂田家では次郎が吸血鬼に備え、にんにくを括りつけていた。
吸血鬼は金持ちの家ばかり狙うから、大丈夫だという坂田。
次郎は郷に宇宙人の仕業ではないかという。
噂によると半年ほど前に空飛ぶ円盤が高級別荘地の空に消えたらしい。
MATは吸血鬼が死者の体を借りて、血を吸っていると判断。
郷、岸田、丘の3人は例の別荘地へ向かう。
別荘地で半年ほど前に亡くなった、若い女性は1人しかいなかった。
その家に訪問し、娘の父親に話を聞く3人。
父親によると娘は心臓麻痺でなくなったという。
亡くなったときの顔は綺麗なままではないかと丘。
すると父親は、特殊な防腐剤を施して娘を美しいまま保存したと告白する。
娘の父親に案内されその場所へ向かう3人
森の中の洞窟を行くとその中に棺おけが。
しかし父親が棺おけを開くと中は空っぽだった。
その時丘の悲鳴が。
父親はその娘の顔を見て「みどり」と言う。
吸血鬼の少女はそのまま空へ飛び去り、それをアローで追うMAT。
しかし少女を見失ってしまった。
地上に下りた郷、岸田。
するとそこに巨大な宇宙船があるのを発見する。
夜になり、隊長らと合流する2人。
その時郷の耳に宇宙人の声が。
「ウルトラマン。我々は人類を滅ぼしたいのだ。そしてそのために若い女を狙う。女さえいなくなれば人類は自ずと滅びるのだからな。裏切り者のウルトラマン、お前は元々人間ではない。それなのにどうして人間の味方をする。宇宙人の味方を何故しない」。
「黙れ!」と取り乱す郷。
その時宇宙船が飛び出した。
飛び上がった宇宙船を攻撃するMAT。
宇宙船はMATの攻撃を受け不時着する。
しかし倒したと思ったのも束の間、中から怪獣が出現した。
その怪獣を見た父親は自分の娘みどりの幻覚を見る。
怪獣に近づこうとする父親。
郷はウルトラマンに変身し、怪獣に立ち向かう。
空中で怪獣と組み合うウルトラマン。
優勢になるもガスを吹きかけられ劣勢に。
さらに噛み付かれ、エネルギーを吸われてしまうウルトラマン。
何とか立ち直ったウルトラマンは、ブレスレットを投げ上げそれをスパークさせ、昼間の明かりを作り出した。
苦しむドラキュラス。
最後はウルトラクロスで怪獣を突き刺し止めを刺す。
ドラキュラスの消滅とともにみどりの亡骸も分離された。
みどりの死体を抱きかかえる郷。
みどりに謝る父親。
みどりの胸には十字架が架かっていた。
騒ぎが収まった坂田工場では次郎が必要のなくなったにんにくを全部食べてしまった。
強烈な匂いを周囲にばら撒く次郎。
逃げる郷であった。

解説(建前)

ドラキュラスの目的は何か。
本人は人類の滅亡と言っているが、それにしては方法が迂遠過ぎる。
これはやはり若い女性の血を吸うという行為にも意味があると考えるべきではないか。
ウルトラマンに対しても噛み付いていたように、ドラキュラスの嗜好として吸血及び吸エネルギーというのもあるように見える。
したがって単なる人類の滅亡だけが目的ではないだろう。
もしかすると後続のドラキュラスが無数にスタンバイしてたのかもしれないが、常識的に考えるとウルトラマンに対する言い訳のように聞こえなくもない。

ドラキュラスは同じ女性の体を借りていたと思われるが、何故別荘地で噂にならなかったのか。
これはこう解釈するしかあるまい。
つまり目撃者がいなかった。
ドラキュラスは相手が一人で回りに誰もいないのを確かめてから、若しくは偶々相手が一人だったので今まで正体を知られることなく来れた。
MATが電波を探知したのは偶然だし、それまでは神出鬼没の作戦が成功していたのだろう。
ドラキュラスがみどりの知り合いを知っていたのは、みどりの記憶の一部を利用しているためと考えられる。

感想(本音)

粗が多い話。
その点かなり解釈に困る。
しかし吸血鬼をモチーフにした雰囲気作りはなかなか上手く行っており、それなりに楽しめる出来にはなっている。
少なくとも子供が見る分にはさほど問題ないであろう。
私の子供の頃の実際の印象もそんなに悪くない。

では内容について見ていこう。
まず思ったのが前半の雰囲気が何となくセブンぽいということ。
BGMが多用されていたのが大きいが、下町の泥臭さが持ち味の新マンにしては、西洋的な雰囲気が良く出ていた。
相手も宇宙人だし、郷が宇宙人と人類との間で葛藤するというモチーフも何処となくセブン的である(浅いが)。

一方石堂ワールドもかなり感じられた。
強引な脚本はともかく、丘が狙われたり、ウルトラマンが怪獣に噛み付かれたり。
石堂脚本はこれから本格化するように、やたらウルトラマンを陵虐する傾向がある。
これもその一環と考えればかなり納得が行くだろう。
今回問題のシーンはそれだけでない。
吸血鬼の女と別荘の娘のシーンはかなり同性愛的雰囲気を漂わせていた。
少々脚本は破綻しても自分の趣味嗜好を折り込んでくるところはまさに「石堂氏恐るべし」と言ったところか。

ドラキュラスについてはやはりその目的の無茶さが目につく。
一人一人の女性を殺していって人類を滅亡させるのに一体どれだけ掛かる?
仮面ライダーでも毎夜人間をサボテンに変えて人類を絶滅させるという計画があったが、こんな計画は早目に阻止された方が敵にとってもありがたい様に思える。
とにかくこれで納得しろと言われてもさすがに納得できまい。
ところで郷はドラキュラスの言い分に納得できたのか。
いくらなんでもそんな計画で仲間になれとか無茶すぎるぞ。

ドラキュラスの最期はウルトラクロスで十字架を使ったもの。
正直ドラキュラスが太陽に弱かったり、十字架に弱い必要はないと思うのだが、実は彼ら自身が伝説のドラキュラの正体ならそれも不思議ではない。
劇中では触れられていないが、実は昔から偶に地球にやって来て血を吸って帰っていたのかもしれない。
いずれにせよ、彼らが人間の血を喜んで吸ってるのは間違いなさそうである。

今回みどりの父親があっさり娘を防腐処理していると白状するシーンはやはり強引だった。
まあ、あそこにみどりがいたのは普段昼の間は棺おけに入っており、夜だけ活動するということだろうが、ドラキュラスが何故彼女の体を借りなければならないのかはよくわからない。
普通に闇に紛れて女性を襲ったほうが早いと思うのだが。
まあ、そういう迂遠なやり方はヒーロー物ではよくあることなので、あまり考えないようにしよう。

全体的に今一つの本エピソードだが、宇宙人編の流れを汲んでウルトラマンに語りかけるシーンはなかなか良い。
もちろんその会話に本話のテーマらしい重要性はあまり感じられないが、ややセブンぽい問題意識は郷のウルトラマンとの一体化がかなり進んだことを示唆しているとも受け取れる。
石堂氏は結構子供向けのいい加減なエピソードを書くことも多いが、最低限一応のテーマらしさというか、引っかかりは残すようには意識しているのだろう。
宇宙人としてのウルトラマン及び郷秀樹。
それを意識させたという点が、このエピソードのあるいは肝なのかもしれない。

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