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暗黒怪獣星を吐け!
データ
脚本は石堂淑朗。
監督は山際永三。
ストーリー
ある日食の日。
基地内では丘隊員がガラスにすすをつけその鑑賞の準備をしていた。
外に出て皆既日食を鑑賞する郷と丘。
辺りが暗くなり日食が始まると背後に一人の女が現れる。
「大変なことが起きそうだ」と娘。
その娘によると北極星の周りから北斗七星が無くなっているという。
しかし日食が終わるとその娘も姿を消していた。
郷が坂田家に立ち寄ると、次郎が財布から500円を抜いたとアキに叱られていた。
そこへ入ってきた坂田は「表で星が無いと騒いでいる人がいる」と郷に言う。
外へ出て確かめる郷だが確かに星は見えない。
その時山の方に流れ星が落下した。
翌日、星が見えなくなったのと関係があるかもしれないと調査に向かう郷。
天文研究所によると昨日から急に星が見えなくなったという。
郷が現場に着くとそこには既に金儲け目当てに3人組が隕石を探しに来ていた。
そこへ怪獣が出現。
郷の報告により直ちにMATは出動する。
怪獣を攻撃するMAT。
しかしアローは攻撃を受けバランスを崩してしまう。
怪獣に接触するアロー。
その衝撃で怪獣の手がもげてしまう。
一旦引き上げるMAT。
一方丘隊員は謎の女を捜しに街へ。
丘は通りすがりの男(純子の父)から娘の部屋を聞き出すと、南條純子という表札のある部屋に入った。
部屋では女が花びらを一つ一つ千切っていた。
「北斗七星は飲み込まれてしまった。今はかに座の星が飲まれかかっている。かに座は私の星なのだ。苦しい、頭が割れるー」と錯乱する娘。
怪獣の手を分析し怪獣が地球外から来たことを突き止めるMAT。
娘の言葉と怪獣がカニそっくりなことから怪獣はかに座から来たと推測する。
そして伊吹はさらに星を飲む別の大怪獣がいると推測。
伊吹の推測は当たっていた。
バキューモンという大怪獣が星を一つ一つ飲み込んでいたのであった。
北斗七星を10日掛けて飲み込んだ怪獣は次はかに座に掛かっていた。
かに座から逃れてきた怪獣は星を1つ飲まれるたびに体が痛んでいくのであった。
暴れるザニカに仕方なく出動するMAT。
天文研究所によるとかに座で二番目に明るい星が消えたという。
苦しむ怪獣。
例の娘に付き添う丘。
「真っ黒い奴が地球にやって来る」。
暴れる純子。
純子の言葉を聞き天文研究所に向かう丘と郷。
その頃天文研究所では巨大な暗黒を観測していた。
「地球最後の日かもしれん」と所長。
所長の説明によると途方もない大きな引力を持った物体が猛スピードで地球に迫っており後12時間もしないうちに地球は破壊されるという。
「同じ滅亡するなら、誰も何も知らない方が幸せだというものだ」。
怪獣は最後の力を振り絞り暴れ始めた。
やむを得ず攻撃するMAT。
しかし怪獣に反撃されアローは墜落。
地上攻撃に切り替えるMAT。
一方郷と丘はジャイロで現場にやって来た。
単独で怪獣を攻撃する郷。
怪獣に追い詰められた郷はウルトラマンに変身した。
ザニカと戦い何とかブレスレットでザニカの両手を切断するウルトラマン。
その時ウルトラマンは気づいた。
問題はこの怪獣ではない。
宇宙へ飛んでいくウルトラマン。
「ウルトラマンは地球に向かっている暗黒怪獣に向かったのよ」と丘。
怪獣の体内には地球も角砂糖1個にするくらいの圧力が掛かっていた。
苦闘するウルトラマン。
ブレスレットをスティック状にし、内部から穴を開け脱出する。
苦しみ出したバキューモンは星を吐き、最後は爆発する。
正気に戻る純子。
「ウルトラマンの力は本当に素晴しい」と伊吹。
地球に帰ってきたウルトラマンはザニカを見逃しザニカは星に帰って行った。
「黒い影は完全に消えたぞ、地球はもう大丈夫だ」と所長。
天体観測する坂田一家。
そこへ現れる郷。
星の戻った夜空を見上げる郷とアキであった。
解説(建前)
地球を角砂糖1つの大きさにする圧力に何故ウルトラマンは耐えられたか。
これは難しいが仮説の1つとしてウルトラマンの光エネルギーが挙げられるだろう。
すなわちウルトラマンの内側は光のエネルギーで満たされておりこれがバキューモンの圧力に反発した。
あまり長時間要るとエネルギーそのものが切れてしまうが、短時間なので耐えられたものと思われる。
その他自分の周りにバリアーを張りそれで凌いだとも考えられるが、いずれにせよ長時間は耐えられなかったものと解される。
ではバキューモンに飲まれた星が元の位置に戻ったのは何故か。
これは厳密に言うと元の位置には戻ってなかったのかもしれない。
すなわち宇宙は広いのでおよその方角が同じならば地球から見える位置も変わらないのではないか。
ただ北斗七星は以前より地球に近づいたので前より明るくなった可能性は高い。
とは言え、星が圧力により縮んでいれば逆に前より暗くなることもありえよう。
バキューモンはかに座から後12時間で地球に来ると言う。
これはいかなる速度なのか。
この点、ウルトラ世界の宇宙と現実の宇宙を同じに捉える必要性はないであろう。
すなわちウルトラ世界での宇宙は現実より狭い。
ウルトラマン自身光を超えるかのような速さで星間を移動しており、現実と縮尺は違うのだろう。
またバキューモン自体も成長し速度を速めてるのかもしれない。
バキューモンに意思がないとすれば、所長の観測通り地球にやって来る可能性は高い。
感想(本音)
荒唐無稽という言葉ははこの話のためにあるようなもの。
石堂ほら吹き話でも頂点に位置する出鱈目さだろう。
しかしこの話にはそういう出鱈目さもどうでもよくなるくらい、面白さが充満している。
子供の頃はあまりその荒唐無稽さは気にならなかったのも事実。
ウルトラマンは子供向けなのだから、あまり科学考証に拘るより面白さを追求するのがある意味誠実な態度ともいえるだろう。
冴える山際演出も相俟って私もお気に入りのエピソードである。
今回は変なキャラのオンパレードだった。
まず南條純子。
いきなり花を渡す演出はその後のつながりを考えたものであろうが意味不明。
前衛風な味付けだろうが、花びらを千切って「苦しい~」は怖すぎ。
その後の狂乱ぶりといい子供が引きそうな演出である。
「星占いの娘さんが変です」。
そりゃ、そうだろ。
正気になってもどこか怖い純子。
次に隕石を商売にする男3人組。
この辺は石堂さん得意の卑しい庶民の姿なのか、はたまた山際監督の演出なのか。
物語的にあまり意味は無いので、やはり石堂さんの趣味という気もする。
そしてこれは変なキャラではないのだが、やけに存在感のある天本さんの研究所長。
この人が地球最後の日と言うと凄い説得力とともに胡散臭さが漂う。
しかし「どうせ滅亡するなら誰も知らない方がいい」という台詞は深い。
バキューモンは怪獣なのかブラックホールなのか意味不明。
まあよくこんな話思いついたと言うか、スケールがでかいにも程があろう。
しかし地球を角砂糖1個くらいにする圧力。
もう無茶苦茶。
ウルトラマンが耐えられるわけないだろ。
一方「あの怪獣もかにそっくりだった」という理由でかに座の怪獣と断定されるザニカ。
こっちも別の意味で出鱈目と言えるだろう。
まあ案外かに座と言うのはそこにいる怪獣がカニそっくりだったから名付けられたのかもしれないが(んなアホな)。
今回は場面の移り変わりが激しい。
丘隊員がいつの間にか私服に着替えて南條純子の部屋にいるのもご愛嬌だろう。
また坂田一家が天体観測するシーンもまとめ撮りである。
今回アキも丘もそれなりに見せ場はあった。
純子も目立ってたし、女性陣が頑張っていた印象が強い。
その分岸田や上野、南の出番は少なかった。
一方伊吹隊長は「ウルトラマンの力は本当に素晴らしい」など少しづつウルトラマンの凄さを認識し出したようである。
またバキューモンの存在を推測するなどその推理力はさすが歴戦の勇士。
ザニカを食い止めるため山に火を放つMAT。
非常事態とは言え自然破壊もいいとこである。
郷の変身の仕方はかなり間抜け。
バキューモンが悪いことになかなか気がつかないウルトラマン。
戦いに血が熱くなったか。
怪獣のもげた手は知らない間に再生していた。
カニ座の怪獣ということでカニのようにハサミが再生するのだろう。
バキューモン内部でウルトラマンが使ったスティックは教壇で先生が使うような奴だ。
今回の話は突っ込み出すと切りが無いくらい破綻している。
しかしそもそもウルトラマンという話は設定自体荒唐無稽なので、あまりその点ばかり非難するのも本質を見誤るだろう。
要は荒唐無稽なウルトラ世界で筋が通っていればいいのである。
子供の頃この話を見て話の流れに違和感を持ったことはない。
子供は一々そんな細かいところは気にしないのである。
今回のテーマは目の前の敵が本当の敵ではないというもの。
その荒唐無稽さに隠れがちだが、意外にもこのテーマはあまり取り上げられてなかった。
ギエロン星獣の場合は人間が悪いというテーマなので少し違う。
このテーマは後に石堂氏自ら「怪獣よ故郷に帰れ」で再び取り上げるが、実社会を投影したリアルなテーマだと思う。
本話は今まで地味だった丘隊員を主役にした点、またザニカを倒さずに故郷に返した点、帰ってきたウルトラマンの世界を広げるのに貢献した好エピソードと言えるだろう。
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