怪獣は宇宙の流れ星


データ

脚本は石堂淑郎。
監督は筧正典。

ストーリー

熊沢渓谷で旅客機の墜落事故が頻発していた。
機体に異常はなく強力な力により地面に叩きつけられたという。
機体の破片を持って宇宙研究部に向かう郷。
研究員によると太陽の黒点に変化は見られず、磁気嵐は考えられないという。
しかしその時地球磁気の大移動が発生した。
原因不明の強力無比な磁力が熊沢ダム一体で観測される。
その頃ダムでは怪しい咆哮とともに怪獣が出現。
北極の地中深くに眠っていたマグネドンがダム建設で弱った地殻を狙って現れたのだ。
アンチマグネット装置を搭載し怪獣に挑むMAT。
しかし怪獣の持つ磁力はアンチマグネット装置で対抗できる遙か上を行っていた。
着陸し作戦を練るMAT。
郷は固い物質ほど爆弾で壊れやすいと通常爆弾での攻撃を提案する。
早速通常爆弾を投下するMAT。
爆弾はマグネドンの磁力に吸い寄せられマグネドンは爆発の衝撃でバラバラになった。
勝利を喜ぶMAT。
しかしその夜怪獣は雷を受け、再び合体して復活する。
責任を感じた郷はレーザー銃を持って怪獣に接近するが、逆に怪獣の攻撃を受け負傷。
入院を余儀なくされる。
その頃MATでは作戦の失敗について責任を問われていた。
次の作戦が失敗すれば、MATは即解散、ダムも放棄だという。
地球磁気の及ばない宇宙に運べないかと上野。
全身打撲の郷を見舞うアキと次郎。
そこへ隊長が入って来た。
ダムの電力でマグマの中の鉄分を溶かしてはどうかと郷。
早速作戦の準備に向かう加藤。
加藤の様子からその決意を読み取った郷は怪我を押して仲間の下へ行こうとする。
引き止めるアキ。
「仲間達は解散になるなら死んだ方がいいと思ってるはず」と郷。
「こんなに私が止めても」
「こういう時女子供は足手まとい。僕なら行かせてあげるよ」と次郎。
涙を浮かべ見送るアキ。
MATは電極板をマグネドンに取り付け電流を流す秒読みに入っていた。
「4・3・2・1・0、スイッチ」と加藤。
電流が流れ真っ赤になり体中から火を吹くマグネドン。
しかしマグネドンの容量が上回り、電極板の方が焼き切れてしまった。
暴れる怪獣に決壊するダム。
絶体絶命のピンチに郷はウルトラマンに変身する。
ブレスレットで決壊したダムの水を止めるウルトラマン。
「こいつの始末をつけるには地球を離れて戦うしか方法がない」。
怪獣を宇宙に運ぶウルトラマン。
月面で怪獣と戦い最後はブレスレットで粉砕する。
MAT基地に原因不明の爆発について連絡が入ってきた。
流れ星を見上げるアキたち。
そこへ郷が現れた。
アキの肩を抱く郷。
流れ星がマグネドンの破片であることを知っているのは郷1人だけであった。

解説(建前)

郷がマグネドンに弾き飛ばされても変身しなかったのは何故か。
これはおそらくMATの隊員たちの眼前であったためだろう。
ウルトラマンの正体を他人に知られてはならない。
ただ全身打撲だけですんだのは、ウルトラマンの何らかの保護があったからかもしれない。

怪獣が雷を受け復活したのは何故か。
これは直接電力の問題ではなく、ただ眠っているマグネドンを目覚めさせただけのことだろう。
マグネドンは地球にいる限り地球磁気により何度でも復活する。
例えマグマを溶かしたとしてもその中心となる鉄分がある限り、何度でも再生するのである。

決壊したダムについて。
一度ブレスレットで堰きとめたものの、その後ブレスレットを回収したので結局水は流れ続けたと考えられる。
しかし決壊した部分が上の方だけだったので、一定量流出した所で止まったのではなかろうか。
もしくは怪獣がいなくなったことから、MATが何とかしたとも考えられる。

感想(本音)

ドラマよりも対怪獣作戦を重視した話。
石堂氏初参戦の本話は非常にウルトラシリーズらしい話になったといえるだろう。
その点それまでのフォーマットを裏切り、掟破りな参戦を果たした市川氏と対照的である。
とは言え本話には後のウルトラシリーズのカラーを決定付ける石堂色の片鱗が見られる。
以下その辺りに触れつつ本話を見ていくことにしよう。

まず挙げられるのはやたらとスケールがでかい話であるということ。
相手が地球磁気というもはや怪獣を通り越したものとなっている。
これは後のバキューモンにもつながるが、地球では倒せず宇宙で戦うという展開は斬新だった。
ただその戦闘そのものはウルトラマンが1人で踊ってるだけのようなシュールなものとなってしまったが。
またどこかわからない星のセットがやけにちゃちかった。

次に挙げられるのはマグネドンがバラバラになるという猟奇色及び首が動くというホラー色である。
これは本人の言うアニミズム的なものから来てるのかもしれないが、ガメラに代表されるように当時の特撮は徐々に残酷描写が増えていたのでその流れとも考えられる。
子どもはこういう怖い話を好む傾向があるので、石堂氏はある程度意識的にこういう脚本を書いていた可能性は高いだろう。
またマグネドンの出現によりダムが開発前の静けさを取り戻す件は石堂氏の主張が出ているものと考えられる。
マグネドンに関してはもはや生物か鉱物かわからないが、無生物に魂が乗り移るというのが石堂氏の専売特許なのでこの際気にしないことにする。

今回もMATは解散の危機に瀕している。
しかしMATを解散させて後はどうするつもりなのだろうか。
どうせ怪獣を倒せないならそういう組織はなくしてウルトラマンに任せた方がいいということなのだろうか。
まるでMACだが、実際MATはほとんど活躍してないのでそのような扱いもやむを得ないだろう。
しかし熊沢ダムで5機も墜落する前に迂回路を取るように指示を出せなかったのだろうか。

アンチマグネット装置は何気に凄い物だが、よくそんな物が都合よくあったもんだ。
どういう事態を想定して作ったのか非常に興味のあるところである。
加藤がダムの電流を流す時のカウントダウンはあまり意味がない。
あの状況ではカウントよりも自分の目でタイミングを測るべきであり、出来るだけ素早く作戦を実行した方がいい。
雰囲気を出したかったのだろうが、その点やや頂けない結果となった。
しかし作戦が失敗した後の「よしっ」「退避」は拍子抜けしたぞ。

今回も郷は自らの意思で変身している。
この変身シーンはなかなかかっこよく個人的に気に入っている。
元々ウルトラマンは郷が人事を尽くした時に力を貸していた。
それは郷の奢りを戒めるという理由からだったが、この頃にはそういう心配は要らなくなっていたのだろう。
怪獣を宇宙に連れて行くことを発案するのも郷の声だし、お互いの信頼関係の深まりを感じさせる。

今回は何と言ってもアキが久しぶりに存在感を発揮していた。
話の本筋的にはさして重要ではないが、ヒロインとしてしっかり見せ場を作るのも石堂氏の手腕なのだろう。
その分やや古典的なヒロイン像ではあるのだが。
一方次郎も磁石の性質を説明したり上手く話に組み込まれていた。
アキに対する少しませたセリフも初期の次郎のキャラを踏襲するもので、石堂氏が各キャラをしっかり把握しているのがわかる。
ウルトラマンの大きささえ知らない氏であるから「ウルトラマン」を見ていたとは思えないが、各種資料により登場人物についてはしっかり把握していたのだろう。
当時ウルトラシリーズは氏にとってかなり稼ぎになったとのことだから、手抜きなく誠実に取り組んでいたことが窺われる。

石堂氏初参戦の本話。
18話の市川氏に続き、以後のシリーズの流れを変える重要な脚本家である。
ただ石堂氏は市川氏に比べファンの間では評判が悪い。
それは氏の突飛な作風による所が大きいだろうが、基本的に子どもを意識したドラマ作りを心掛けてるのもその一因だろう。
確かに市川氏の脚本は大人も子供も楽しめる素晴らしいものが多い。
しかしそういう良質な脚本もある程度余裕があるから出来る芸当なのだろう。
現にエースではメインライターであるにもかかわらず、序盤から3人でのローテとなっている。
石堂氏の良さは量をこなしながらも破綻なくシナリオをまとめてくること。
そもそも最初の発想段階で破綻してるものも多いのだが、ことストーリーの運びになるとさすがと思わせるほどスムーズに運ぶものがほとんどである。
エース終盤や80終盤の言わば敗戦処理的なものもしっかりこなす石堂氏は、以後のシリーズを主となり従となって支え続けた名脇役だと言えるであろう。

新マン第19話 新マン全話リストへ 新マン第21話