怪鳥テロチルス 東京大空爆


データ

脚本は上原正三。
監督は山際永三。

ストーリー

テロチルスと空中戦を展開するウルトラマン。
しかしスペシウム光線も弾かれ、ウルトラマンは海へ突き落とされてしまう。
そのまま飛び去るテロチルス。
「鳥を相手に空で戦ったのがまずかった」と隊長。
MATの資料から、怪鳥はテロチルスという白亜紀の凶暴な肉食翼竜であることが判明する。
悪島火山の現況を調べたMATはテロチルスが噴火する悪島から新たな巣を東京に築こうとしていると推測。
東京は毎年の温度上昇で悪島火山と環境が似ているという。
バイクで逃走する三郎は由紀子のいる病院に向かう。
病院の前で張り込んでいた警官に止められる三郎。
しかし三郎は体に巻きつけたダイナマイトを爆破すると脅し、由紀子の病室までたどり着く。
三郎が部屋に入ると由紀子は「郷さん?」と呼びかける。
しかし入ってきたのが三郎と分かり、怯える由紀子。
三郎は嫌がる由紀子をバイクの後ろに乗せ、横川のいる別荘に向かう。
「これ以上罪を重ねないで」と懇願する由紀子。
しかし警察に追われ追い詰められた三郎はテロチルスの巣の張ったビルに逃げ込む。
ビルの前では熱線砲により巣を溶かそうとするMATがスタンバイしていた。
必死で説得するMAT。
しかし三郎はバイクのアクセルを吹かし、赤い煙を周囲に撒き散らす。
説得は諦め、様子を見るMAT。
日が暮れ、待機するMATの下にテロチルス出現の報が。
自衛隊はテロチルスを攻撃するが、テロチルスの体当たりを受け撃墜される。
東京に向かうテロチルス。
三郎を説得する加藤。
しかし三郎は「そんな、脅しに乗るか」と相手にしない。
そこへテロチルスがやってきた。
ビルを巣にし休息するテロチルス。
三郎の無実を証言すると言う由紀子だが、自分が信じられるのはダイナマイトだけだと取り合わない。
「ここが1番安全かもしれないな」と三郎。
テロチルスは夜行性であることから翌朝攻撃することにし、付近の住民を避難させるMAT。
坂田家に戻った郷はアキに「この前ぶったことまだ怒ってるのかい」と謝る。
「郷さん。由紀子さんを必ず助け出しててね」とアキ。
その頃ビルでは横川が犯人を射殺してでも由紀子を助けるよう警察に迫っていた。
そこへ三郎は横川が由紀子を引き取りに来るよう要求。
刑事は横川に一緒にビルに入ろうと勧めるが、横川は三郎が自分を殺す気だと逃げ出してしまう。
「逃げていったぜ。あいつはそういう男なんだよ」と三郎。
「夏になれば~」。
童謡を歌いだす由紀子。
由紀子は小さい頃三郎と一緒に体験したナマハゲについて話し始める。
「あん時は怖かったな。だけどお前は泣きもしなかったな」と三郎。
「私、臆病なくせに、いざとなると怖くないの。ずうずうしいのかな」と由紀子。
「行けよ。帰んな」と三郎。
「私もここにいる」と由紀子。
「これから大変なことになる」と三郎。
しかし由紀子は「サブちゃんの側にいたいの。自分でそう決めたの」と言う。
「死んでもいいのかよ」と三郎。
抱きしめあう2人。
「サブちゃんの顔が見たい」と包帯を取る由紀子。
その目にはうっすらと三郎の姿が。
「俺、自首するよ。お前を死なせたくないもんな」と三郎。
しかし三郎がベランダに出てそのことを話そうとすると、警察が三郎目掛けて発砲した。
負傷する三郎。
その時テロチルスが暴れだす。
ダイナマイトを投げつける三郎。
しかしテロチルスはさらに暴れだし、ビルはドンドン破壊される。
由紀子を救出するためビルの中に入る郷。
しかし郷は瓦礫の下敷きになってしまう。
その時光に包まれ郷はウルトラマンに変身。
空を飛ぶテロチルスの足を掴むウルトラマン。
テロチルスはバランスを崩し、きりもみ状に地面に激突した。
担架で運ばれる三郎。
「由紀ちゃん、好きだよ」。
そう言い残して三郎は息を引き取った。
熱線砲で巣を溶かすMAT。
数日後、郷とアキは由紀子とともに三郎の墓参りに来る。
「初めからやり直しよ。サブちゃんの分まで頑張るわ」と由紀子。
去って行く由紀子を見送る郷とアキ。
「私も初めからやり直すわ」とアキ。
「何を?」と郷。
「何もかもよ」。
仲良く並んで歩く2人であった。

解説(建前)

三郎はどうやって由紀子の居場所を突き止めたのか。
またダイナマイトはどこから持ち出したのか。
まずダイナマイトについては警察にも知られてない隠し場所があったと解するのが妥当であろう。
それでは由紀子の居場所についてはどうか。
由紀子が目を傷めて入院したことが新聞やテレビに出ているとは考えづらい。
また、仲間がいることを匂わせるような描写もない。
したがって三郎自らが何らかの手段で情報を入手したものと考えられる。
おそらく三郎は警察の無線を傍受できるような装置を持っていたのではないか。
直接由紀子の情報を得なくても病院を警備していることがわかれば、そこに由紀子がいると推測することは容易である。
後は偽名を使って病院に電話を入れるなどして確認すれば間違いはない。
その他、三郎が裏の情報屋などから話を聞いたとも考えられるが、何れにせよ由紀子の居場所を知るのは不可能ではないだろう。

感想(本音)

後編はややテロチルスは置いてきぼり感が強い。
由紀子の心変わりの唐突さに驚かされるが、これは30分番組ゆえ仕方ないであろう。
そんなのを掘り下げてたらウルトラマンではなくなる。
山際監督の話によると、視聴率的にイマイチでこの路線は諦めたという。
確かにこの路線は子供たちになかなか受け入れられないのではないか。
大人向けと子ども向け、どっちつかずな印象もあり、我々大きい子どもにしかついていけないかもしれない。

怪鳥テロチルス。
まず名前が凄い。
テロですから。
人質を取って立てこもるシチュエーションが浅間山荘事件と似ていることから、もしかしてこの話をヒントにしたのかも。
何てことも考えてしまうほど、世相をよく反映した話だったと思う。
しかしテロチルスは古代の恐竜そのもので、ある意味何の捻りもないデザインがとてもかっこいい。

ヒドラといい、鳥系の怪獣はなかなか手ごわいが、自分と同じサイズの鳥と戦うというのは考えるだけでも恐ろしいですね。
それを言ったらクワガタでも芋虫でも怖いんですが、鳥の怖さはやはりあの嘴。
テロチルスも嘴で攻撃してましたが、あれが炸裂するとバードン状態だったかもしれません。
あと、空中戦になるとウルトラマンでも苦しいですね。
最後は脚を取って墜落させることにより倒しましたが、これは敵の体重を利用したシンプルながら効果的な作戦でした。
やや呆気なくて物足りなさは残りましたが。
しかしスペシウム光線を弾くテロチルスはなかなか頑丈です。

三郎についてはよく描けていたと思う。
最終的に由紀子の気持ちを取り戻せた三郎は、自ら自首しようとする。
三郎にとっては由紀子の気持ちを取り戻せればそれでいい。
それが出来なければ殺す。
由紀子は三郎にとって母親代わりの存在だった。
その由紀子がいなくなると、三郎は何も出来なくなる。
それは「ざまあみろ。俺にだってやれるんだ」というセリフからも窺える。
三郎も由紀子と同じように自分の境遇から抜け出したいと思っていた。
しかしそれを実行する勇気はなかった。
「好きだよ。由紀ちゃん」。
三郎は結局最後まで由紀子に依存していたのであろうか。

一方由紀子は自分を助け出してくれる存在であったはずの横川に見放され、結局自分を変えるしか道がないと悟った 。
それは三郎とともに力をあわせて生きていくこと。
しかしそれは三郎の死により永遠に実現できないものになってしまう。
「三郎の分まで頑張る」。
由紀子は漸く自分の力で幸せを勝ち取ろうと決心する。
今までの由紀子なら次は郷に依存しようと考えたであろう。
郷とアキに別れを告げるその顔にはもはや迷いは何もなかった。

今回も自衛隊はあっさり撃墜されたり、警察は三郎に発砲してテロチルスを怒らせたり相変わらず国家権力の無能振りが目立つ。
そもそも三郎に発砲するのはダイナマイトを巻きつけてる犯人相手に危険すぎると思うが。
また、横川に話があるという犯人の所に横川を連れて行こうとする刑事。
犯人の目的が横川を殺すことにあるのに無茶をする。
あの状況で犯人の所に行ける男はどれほどいるのだろうか。
あれで責められる横川は正直気の毒だと思う。

今回最重要なのは、やはり郷とアキの関係だろう。
郷はアキに殴ったことを謝り、2人は和解する。
そして最後は2人仲良く歩いている。
今まで2人はこのような本格的喧嘩をしたことがなかったのだろう。
それは郷がアキを殴った時の坂田の笑顔からもわかる。
喧嘩をすることにより、お互いの距離が縮まった。
雨降って地固まる。
今回の件を通じて郷もアキをただの妹的存在以上に思い出したのかもしれない。

本エピソードは第2クールの初めでまだその方向性を模索している時期である。
そして初期の問題をほぼ解決して残されたテーマは郷とアキの恋愛。
この時期このテーマを取り上げるのは至極まっとうであろう。
しかし本話はあまりにも生々しくそれを描いたために子ども向けを逸脱してしまった。
以後このような作品を描かなかったのは結果的には正解だったと思う。
もちろんそれは榊原るみのスケジュールに主因があったのであるが。

帰ってきたウルトラマンは次回から市川氏、石堂氏によりかなり路線が変わって行くことになる。
長い1年のシリーズ。
1人の作家だけではネタが続かない。
また、マンネリに陥る恐れもある。
番組のカラーがやや不鮮明になっているこの時期。
新規ライターの参戦は大正解であった。
上原氏が初期に仕掛けたテーマはこれで一応の完成を見る。
そういう意味で本話は帰ってきたウルトラマン前半の節目になるエピソードと位置づけられるであろう。

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