津波怪獣の恐怖 東京大ピンチ!


データ

脚本は上原正三。
監督は富田義治。

ストーリー

マグロ漁船海神丸は世界宝石展に出品する宝石の原石を積んで、日本への帰還の洋上にいた。
甲板で帰国の宴を催す船員たち。
船長の高村は南洋に住むという伝説の怪獣シーモンスの歌を仲間に聞かせていた。
その歌声をテープに録音する船員。
宴の席から操舵室に戻った船長は操舵士と交代し、自ら船の舵を取る。
しかし交代して間もなく何かがぶつかるような衝撃が船を襲った。
あっという間に浸水する船。
船長は船の前に巨大な怪獣の姿を目撃し、シーモンスと呟く。
あっという間に転覆する船。
10日後、アローでパトロール中の郷と上野はボートで漂流する高村ら3人を発見する。
救助された高村は船が宝石とともに沈没したことにつき責任を問われる。
娘の陽子は記憶を失った高村が呟き続けるシーモンスという名前について、シーモンスは西イリアンに住む怪獣だと皆に説明する。
しかし船長以外見た者はなく、誰も信じてくれない。
マスコミにシーモンスについて聞かれた郷も「聞いたことがない」とそれを否定する。
病室を出た郷と上野は船員から、船で録音した高村のシーモンスの歌を聞かされる。
本部に持ち帰り言語分析機で歌詞を分析するMAT。
歌詞には「シーモンスは島の守り神。シーモンスが海を渡るときは気をつけよ。恐ろしいことが起こる」と歌われていた。
その夜、シーモンスらしい怪獣が八丈島で目撃される。
高村を連れて現場に来た郷は高村にシーモンスのことを聞くが正気を失った高村は何も答えない。
すると娘の陽子が自分で確かめに行くといって、時化の八丈島へ向かいボートを走らせた。
陽子を止めようと急いでボートを追う郷。
絶望のあまり「死んでもいい」という陽子を郷は平手打ちする。
父の潔白を証明したいという陽子の協力でシーモンスの歌の続きを分析するMAT。
「シーモンスをいじめると角光る。シーゴラスも怒り、海も天も地も怒る」。
その時東京湾近辺に怪獣出現の報が入る。
出動し攻撃するMAT。
しかしシーモンスは東京に上陸する。
角が光ったことから怪獣がシーモンスと確信する郷。
歌のことが気になった郷は攻撃を中止するよう進言。
MATは様子を見るため地上に待機する。
しかし近くの工場の場長は「工場を操業できず大損害だ。もうMATはあてにしない」と自衛隊に攻撃を依頼する。
MATは反対するが自衛隊はシーモンスを爆薬で爆破する。
炎に包まれるシーモンス。
その泣き叫ぶような咆哮に夫怪獣であるシーゴラスが応えた。
伊豆沖に出現し大津波を起こすシーゴラス。
「シーゴラスを東京湾に入れてはいけない」。
攻撃に向かうMAT。
その時陽子が1人で、シーモンスを確かめに近くに行ったという知らせが入る。
陽子を探しに怪獣に近付く郷。
「角が光った。やっぱりシーモンスだわ」と陽子。
しかし陽子の間近には大津波が迫っていた。
助けに向かう郷。
その時郷の体は光に包まれた。
ウルトラマンに変身する郷。
迫り来る大津波の前に立ちはだかるウルトラマン。
果たしてウルトラマンにどんな作戦があるのだろうか。

解説(建前)

シーモンスは伝説の怪獣という。
これは西イリアンでも誰も実際に見た人がいないということなのだろう。
おそらく何百年に一度かの割合で子供を産むために上陸するものと思われる。
しかしシーモンス、シーゴラスに子供がいる気配はない。
これは卵を産んでもなかなか孵らないということなのか。
シーモンスは卵の殻を作るため、かなりの宝石を摂取しなければいけないようだ。
あるいは前回は殻の強度が足りず、孵化する前に壊れてしまったのかもしれない。

しかし何故今回東京までシーモンスはやってきたのだろうか。
これはおそらく本能的に海神丸に宝石が積まれてることを感知し、その後をつけて来たのではないか。
そしてそのまま海を渡り続けて東京にたどり着いたものと思われる。
シーゴラスもその匂いか何かを辿って東京まで来たのだろう。

あの工場長は何故自衛隊をあごで使っていたのか。
これはおそらくあの工場長の知り合いに有力な政治家がいるのだろう。
所謂賄賂みたいなものでも渡していたのかもしれない。
今回自衛隊はMATや防衛軍とは別系統の組織みたいだが、その関係は一体どうなってるのだろうか。
地球防衛軍は国際的な組織。
自衛隊は国の軍隊。
そういうことなのだろうか。
とすると自衛隊が怪獣退治に出動するのは異例なことで、やはりあの工場長は相当な人脈を政界に持っているのだと思われる。

今回郷は自らピンチに陥ったわけではなく変身している。
これはウルトラマンの意思による変身なのだろう。
大津波を抑えないと被害がドンドン拡大してしまう。
怪獣相手ではなく津波相手に変身するというのは今回が異例な事態であることを物語るだろう。
火災を消火するために変身した初代マンと相通ずるところか。

感想(本音)

凄い作品。
まさに大スペクタル。
ウルトラ史上に残る前後編であろう。
個人的にも記憶に残ってる最初のウルトラの話なので、今見ても感慨深いものがある。
どんな子供でもいきなりこのエピソードを見たらウルトラ好きになりますよ。
しかも「帰ってきたウルトラマン」はここから急激に面白くなっていきますし。

では本題に。
まず今回の監督はグドン・ツインテール編を手がけた富田義治氏。
手堅い演出で物語を上手く盛り上げてると思う。
そして高村船長役がウルトラマンのキャップでお馴染み小林昭二氏。
誰が作曲したのか(冬木氏かな?)印象深い名曲シーモンスの歌を渋い歌声で聞かせてくれました。
そしてこの話で忘れてはならないのは陽子の存在。
西山恵子さんというよく知らない女優さんでしたが、なかなか真に迫った演技で美しい歌声とともにとても印象に残りました。
何処となく南国を思わせる容姿もこの物語にマッチしてたと思います。

ストーリーはシーモンスの歌と謎解きを重ねて、怪獣を中心に進んでいきます。
この辺りがMATや郷を中心に話が進んだグドンツインテール編と違うところでしょう。
シーモンス・シーゴラスはこれぞ怪獣というデザインで、怪獣ものの王道を行くような話。
圧巻の大津波の特撮といい、これがとても子供向けに毎週テレビで放映されてたとは思えませんね。

マスコミに責任を追及される高村。
そりゃ乗組員のほとんどが死亡し、高価な宝石が水没したのだから世間でも大注目でしょう。
しかし郷の「シーモンスなんて初めて聞いたもんで。信じられないなあ」は無慈悲。
「歌だけでは確証がない」と動けないMAT。
当然と言えば当然なんですが、妙にリアルな話でした。
この辺りが帰りマンらしさでしょうね。

言語分析機という凄い機械を備えてるMAT。
まあ科学特捜隊は宇宙語も分析してたので、西イリアンの言葉くらい造作ないのでしょうか。
怪獣を爆破して大津波の原因を作る自衛隊。
後編でも竜巻を起こすし、よっぽど上原氏は自衛隊が嫌いなんでしょうね。
陽子を追いかけるシーン。
確かに言われて見ると撮影スタッフのボートの波が画面に入ってますが、そんなの大全を読むまで気付きませんでした。
ちょっとツッコミが細かすぎるのでは。
そんなこと言い出したら、着ぐるみのチャックや空気穴まで気になってしょうがないですよ。
そういうのはお約束として気にしてはいけないのが特撮を見るときのルールです。

今回言葉のカットが気になりました。
シーモンスは××の怪獣。
四足ですか?
これってまずいのでしょうか。
南国の(土人)はさすがにまずいのはわかりますが。
しかし今変換したら土人は出ませんでしたね。
ドラえもんでも「人食い土人」が「海賊」か何かに変えられてるようですし、言葉ってのは難しいものですね。

「帰ってきたウルトラマン」の中でも屈指のスケールを誇る本エピソード。
ドラマとしては父娘のドラマはありますが、それほどの深みはありません。
しかし怪獣の設定そのものにドラマというかロマンが感じられます。
ここまでドラマ重視で来て、ここでこういうスペクタクルものを入れる。
視聴率の伸び悩みに苦しんでた時期だけに、起死回生を狙うスタッフの意気込みが伝わってきますね。
第2クールへの橋渡しとして文句ない出来の前後編だと思います。
私の記憶に残る最初のウルトラマンは怪獣じゃなく津波と格闘してました。
それ以前にもウルトラを見てるはずなので、この話はよっぽど印象が深かったのでしょうね。

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