侵略する死者たち


データ

脚本は上原正三。
監督は円谷一。

潜水艇に乗ったキリヤマ、マナベは地球防衛軍パリ本部から機密書類を極秘に日本へと運んでいた。
そこへパリ本部からテレタイプの通信が入る。
「セイロン島の北方30カイリで謎の爆発が4件あったそうです」とキリヤマ。
「我々も十分注意しよう」とマナベ。
キリヤマは護衛のハイドランジャーに警備状況を確認。
「異状ないようだな」とマナベ。
潜水艇は間もなく伊豆半島沖に到着し、そこからヘリコプターで基地に向かうことになっていた。
一方基地周辺では奇怪な交通事故が多発。
フルハシとアマギはポインターに飛び込んできた全身黒づくめの男を轢いてしまう。
男の体は濡れており、変な匂いもしていた。
男をメディカルセンターに担ぎ込むアマギとフルハシ。
「アンヌ、頼む」とフルハシ。
「また」とアンヌ。
そこには既に同様の事故により死亡した男の死体が横たわっていた。
「いきなり車の前に飛び込んできたんです」。
フルハシが隊員の報告を聞いていると、いきなり背後から気を失っていたはずの男が襲い掛かってきた。
すかさずショック銃で男を撃つアマギ。
「死んでるわ」とアンヌ。
「ショック銃で撃ったんだぜ。死ぬなんておかしいよ」とアマギ。
「9人目よもう」とアンヌ。
死体からホルマリンの匂いがすることに気が付くアマギ。
それをヒントに病院に調査に向かうフルハシ。
一方キリヤマたちはヘリで基地に到着。
マナベとキリヤマは護衛の隊員たちを伴い金庫室のドアを開錠する。
金庫を開け機密書類の入ったフィルムを中に収めるマナベ。
その頃基地内には何者かの侵入を警告するサイレンが響いていた。
全身黒づくめの男を発見した警備員は逃げる男を射殺する。
一方、第三病院に着いたフルハシは病院から解剖用の死体が10体盗まれたことを聞かされる。
「うちの死体槽から盗まれたものです。元々身元不明の人たちですから探しようもなくて」と医師。
報告を受けたキリヤマは死体の再調査を命じる。
「別に改造された痕もありませんね。今のところ普通の死体です」。
「しかし、一体誰が彼らを蘇生させて送り込んだんでしょうね」とダン。
「それだ。ただのいたずらとも思えん」とキリヤマ。
「こんなに厳重な警備網の中で何をしようというんだ。大体、地球防衛軍を甘く見てますよ」とソガ。
「とにかく彼らが何か目的を持って送り込まれたとすれば、今にきっと動き出す」。
ダンに死体を見張るよう命令するキリヤマ。
深夜一時、死体収容室で不気味な影が動き出す。
不穏な空気を察知するダン。
その頃作戦室やメディカルセンターのドアが人もいないのに開く。
アンヌは侵入してきた影に驚き悲鳴を上げる。
駆けつけるキリヤマとアマギ。
「自分の影でも見たんだろう」とアマギ。
「ドアが開いて影が入ってきたのよ」。
「作戦室のドアも開きましたね」とアマギ。
キリヤマはダンに死体の状況を確認する。
「死体は異状ありませんが、何かおかしいです」とダン。
「どうも様子がおかしいんだ。引き続き警戒を頼む」とキリヤマ。
人の気配を察知するキリヤマ。
「ホルマリンの匂いだ」とアマギ。
キリヤマは金庫室を警備するフルハシに警戒するよう連絡。
しかし影は金庫の中に入り込み、機密フィルムを盗み出す。
わざと警報機を鳴らす影。
警報音を聞いて集まるキリヤマたち。
マナベが金庫室のドアを開錠すると、入れ違いに影が出て行った。
金庫の中を確認するマナベ。
「ない」とマナベ。
「その辺を徹底的に探すんだ」とキリヤマ。
「盗まれたマイクロフィルムには世界の地球防衛軍秘密基地の所在地が明記されているんだ。侵略者の手に落ちれば、彼らはただちに攻撃を仕掛けてくる」とマナベ。
何としてもフィルムを取り換えすようキリヤマに命令するマナベ。
しかしダンは
「敵は影です。影の正体を突き止めない限り追っても無駄でしょう」という。
『そうだ。死体収容室で確かに影が動いた』と思い出すダン。
死体収容室に戻るダン。
『そうだ念力だ。誰かが念力で死体を操っているんだ』。
影に取り囲まれるダン。
ダンはセブンに変身するが、影たちが撒いた煙に巻かれ小さくされてしまう。
小さくなったセブンを逆さにしたコップの中に閉じ込める影たち。
影たちが部屋を出ると、セブンはエメリウム光線で火災を発生させる。
火災報知器の音を聞き監視室に向かうキリヤマたち。
そこへ影がすれ違い、通信員に煙を浴びせる。
苦しんで倒れる通信員たち。
影はマイクロフィルムを通信機にセットしてデータを電送する。
監視室では隊員たちが消火に当たる。
鎮火すると床にはダンが倒れていた。
「奴らに襲われました」とダン。
「奴ら?」とキリヤマ。
「死体の男たちです。念力で死者を操ってる者がいます。一種のテレキネシスで死者の霊を遠隔操作しているんです」とダン。
「そうだフィルムが電送される」。
作戦室に戻ると既にフィルムは電送された後だった。
通信員たちを介抱するアンヌたち。
テープを回して電送された周波数を確認するアマギ。
周波数を基にK地区が受信場所であると突き止めるダン。
ダンとアンヌを残してK地区へと向かうキリヤマたち。
そこには受信アンテナがあり、そこからさらに宇宙へと中継されていた。
「敵は空か」とキリヤマ。
「おそらく宇宙」とアマギ。
「今頃攻撃準備を」とフルハシ。
「うん。世界中の防衛基地が奴らの目標だ」とキリヤマ。
ダンに連絡して宇宙へ飛ぶよう指示するキリヤマ。
ホーク2号で宇宙へ飛び立つダン。
敵の宇宙ステーションを発見するダン。
しかし宇宙ステーションから受けた光線を受けたホークは方向転換し、暫くして爆発してしまう。
キリヤマたちの乗ったホーク1号はホーク2号の爆発音をキャッチする。
宇宙ステーションから飛び立つ戦闘機をワイドショットで爆破するセブン。
しかしセブンはステーションから出る光線を浴び固まってしまう。
そのまま敵機に捕まり両手、両足を拘束されるセブン。
さらにステーションからはミサイルが地球へ向けて発射される。
ミサイルを発見したホーク1号はこれを迎撃。
さらにセブンが捕まっているステーションと戦闘態勢に入る。
敵機を尽く爆破するホーク1号。
ホーク1号の攻撃により拘束から逃れるセブン。
さらに逃げるステーションをセブンとホークが追撃して破壊する。
無事帰還する隊員たち。
影に驚いて銃を構えるソガ。
「ソガ、自分の影だよ」とキリヤマ。
そこへダンが現れた。
「ダン、いつの間に」。
「こいつう。心配かけやがって」。
隊員たちにもみくちゃにされるダン。
机に倒れこんで受話器を取るダン。

解説(建前)

シャドウマンとは何者か。
まず病院から盗まれた死体の霊魂という説が考えられるが、単なる一般人の死体の霊魂が宇宙人に協力する理由はないので、この説は厳しい。
死体はあくまで死体。
ただの物体に過ぎないであろう。
アマギのショックガンで男が死んだような描写がされていたが、これは単なる誤解でこの男は車に轢かれる前から死んでいたのは病院の証言からも明らか。
死体は何者かが念力で動かしていたのは間違いあるまい。

では念力で死体を動かしていたのは何者か。
これはもうシャドウマン以外ありえないであろう。
つまり影こそが本体。
影こそが宇宙人が送り込んだ生命体と考えると全ての辻褄があう。
シャドウマンそのものは宇宙人が作り出した半生命体といったものであろう。

シャドウマンは自動ドアに反応するだけの物理性は有するが、自分の形を自在に変えられるので壁をすり突き抜けることもできる。
また念力で金庫を開けたり警報機を作動させたりセブンをコップに閉じ込めたり、相手を小型化するガスの噴出等の物理力も行使できるようだ。
シャドウマンは宇宙人の指令により動いていたため、最終的には宇宙ステーションの破壊により行動を止めたものと思われる。
そして元々安定した物質ではないため自然と崩壊したと考えるのが妥当であろう。

感想(本音)

子供の頃見てガッカリした話の筆頭格ともいえる話。
敵の宇宙人すら登場せず、相手は幽霊だか何だかわかんない奴ら。
そしてどう見ても普通の人間相手にコップに閉じ込められるセブン。
さらに敵宇宙船にはあっさり捕縛。
そしてなぜか無事帰還してコントのようなシーンで誤魔化すラスト。
およそ子供にとって脱力的な要素が満載と言っても過言ではないであろう。
ただ今回久々に見てみて、やっぱりガッカリ感は拭えなかったが、少なくともドラマ中盤までは楽しめた。
サスペンス調の雰囲気は「怪奇大作戦」ぽくて最後までしっかり作ればもう少しマシな話にはなったであろう。

と、辛口な評価になってしまったが、何より子供の頃見たトラウマが大きいのでご容赦願いたい(笑)。
本話の一番の問題点はやはり前述したダンがしれっと帰還しているところ。
今まで何度も繰り返されてきたのでもはや解釈すらしなかったが(笑)、無理やり解釈するとセブンに助けられたとでもいうしかないであろう。
ここまで来るとダンがセブンそのものかは別として、ダンとセブンが個人的に何か関係があるというのはわかりそうなものだが、皆気が付かない振りでもしてるのであろうか。
そして本話が脱力的なのはその点をおちゃらけで誤魔化したところ。
ここは完全に子供だましと言って差し支えないであろう。

それ以外は意外と破綻はない。
というか、シャドウマンが万能なのでもはや何でもあり。
あんな敵が大勢いたらもはや防ぎようもないであろう。
よくわからないけど、敵の基地そのものを爆破できたのはラッキーであった。
しかし地球侵略目的はわかるが、宇宙人の姿はおろか声もなくただ攻撃してくるだけというのはある意味不気味。
敵そのものも幽霊的であった。
あるいはあの宇宙基地も幽霊船のような類で霊魂的なものの意思だけで動いてたのかもしれない。
最初の設定ではユーリー星人だったようだし。

本話は意外と破綻はないとは言ったが、ツッコミどころは満載。
それを楽しむのも一興か。
シャドウマンに捕まったセブンが起こした火災。
ダンは上手いこと床に倒れて誤魔化したが、あの火事も当然シャドウマンの仕業ということで処理されたのだろうな(笑)。
そもそも警備隊基地にはほとんど監視カメラがない。
そんなものあるとダンがセブンに変身する証拠映像残りまくりで都合が悪いというのもあろうが、いくら何でも不用心過ぎないか。
フルハシたちに金庫室の警備をやらせる前にカメラつけろよ。
おまけに警報機だけあるからそれを悪用されるし(笑)。
まあこの辺はウルトラあるあるなので、これくらいにしておこう。

本話はパリ本部から運んできた機密ファイルを巡る攻防戦であるが、そもそもこのファイルを日本に輸送した意味がわからない。
日本の方がセキュリティがしっかりしてるからであろうか?
しかし日本は度々宇宙人に狙われておりどう考えても危険。
しかも輸送中は敵に狙われやすく、なぜこのファイルを日本に運んできたかの説明はなされていない。
これを日本で活用するならともかく金庫に入れるだけなら輸送する意味などないであろう。
相変わらずその情報がピンポイントで敵に漏れてるし、やはり防衛軍に内通者がいるのではないか?
今までも何回も敵の侵入を許してるし、ウルトラ警備隊ほどセキュリティの甘い組織はないであろう。
意外とゆるゆるの組織に見えてもZATって敵の侵入許してないよね。
ウルトラ兄弟は入り込んだけど(笑)。

本話は戦闘シーンはまあまあ気合が入っていた。
怪獣は出ないものの宇宙船とセブンや警備隊の戦いは火薬量多めで見応えもあった。
まず謎光線でコントロールされるホーク2号やセブン。
地球のシャドウマンを遠隔操作できるとあって、これくらいは朝飯前なのだろう。
何気に物凄いテクノロジーを持った敵である。
しかしこいつらの侵略目的は何だったんだろう。
こんな科学力あれば別に侵略などしなくてもいいような気もするが、やはり人口問題でもあったのであろうか?
まあ宇宙人の侵略目的については本話だけの話ではないのであまり気にしても仕方ないであろう。
結局全滅させられるので、リスクの割に合わない気もするが。

次に敵に捕縛されるセブン。
ちょっと「セブン暗殺計画」の先駆けという感じで、敵の強さが描かれている。
しかし今回のセブンはやたら弱い。
それだけ敵が強いというのもあるが、警備隊の援護がなければ負けていたであろう。
さっき警備隊のセキュリティは甘いと書いたが、攻撃力に関してはシリーズでも随一。
攻撃こそ最大の防御という組織哲学なのだろうか?
テープの電送された周波数からピンポイントで敵の中継アンテナを発見したり(!)、テクノロジーは何気に凄いのだがセコムレベルの警備は杜撰。
何ともアンバランスな組織である(笑)。

最後はホークとセブンで総攻撃であっという間に敵船団壊滅。
攻撃が凄まじすぎてピアノ線見えまくり(笑)。
しかし本当に警備隊の戦闘力は高い。
よくもまああれだけ的確に敵を迎撃できるものだ。
ペガッサシティをあっさり破壊するだけはある。
セブンは最後に親玉の宇宙ステーションを破壊するだけ。
これでは子供の頃見てもつまらなかったのは理解できる。

本話の脚本は上原正三。
上述したように途中まではまあまあ面白かったが、戦闘の段階になると尻すぼみ。
一番の問題のホーク2号の破壊は脚本段階にあったのであろうか?
普通にホーク内で変身して戦った後ホークに戻ればいいはずなのに、なんで「こいつぅ」というラストになったのか意味不明である(笑)。
単に細かいところは端折っただけなのか?
着ぐるみの節約という点では上手い脚本ではあったが、やはりこれで面白くしろというのは難しいのであろう。

監督は久々当番の円谷一。
場面転換のメリハリがあってサスペンス感はよく出ていた。
この辺のわかりやすい演出力はさすがである。
またこちらは特殊技術かもしれないが、シャドウマンの演出もなかなか不気味でよい。
死体が動いてしかもあの不気味な顔なのだから、気の弱い子供なら泣き出しそうな映像であった。
ただ、わかりやすいのもいいが、ラストだけはいただけない。
「ダン、いつの間に」と首根っこを掴んで投げ飛ばすキリヤマ。
これ中山昭二氏も演じづらかったんじゃないかな?
ポワーンという変な効果音で締めるのも、あるいは不気味な話なので明るく終わらせたかったのかもしれないが、結局まとまりのない話になってしまった。

本話の評価としてはここまで述べてきたようにやはり外れ回。
これも何度も書いたがドラマ抜きで敵との攻防だけで話を作るのは連続ものでは難しいのであろう。
どうしてもスパイもののお馴染み展開になってしまう。
本話はそのスパイを宇宙人ではなくシャドウマンとしたところに巧みさはあるが、結局支離滅裂になってしまった。
毎週色々なプロットを考える脚本家や監督の努力には頭が下がるが、セブン中盤になるとその苦しさが目につく。
それを逆手にとって名作を生み出すことにもなるが、内容もそれに伴い小難しくなりがちなので、この時期セブンの視聴率が低迷したのは仕方ないであろう。

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