散歩する惑星


データ

原案は虎見邦男。
脚本は山田正弘・上原正三。
監督は野長瀬三摩地。

V2から緊急連絡が入った。
アステロイドベルトから外れた小惑星が地球に接近しているという。
ホーク1号でパトロールに出るフルハシ、アマギ、ダンの3人。
すると前方から島が飛んできた。
本部に連絡するフルハシ。
「島が?バカなこと言うな」とキリヤマ。
「いや、確かに島です。いえ、島に見えます。本当なんです隊長」。
3人の乗ったホーク1号は島から放たれた光線に引き寄せられる。
通信が途絶えるホーク1号。
「もしや例の惑星では」。
ホーク3号で捜索に出るキリヤマとソガ。
しかし空飛ぶ島の影すら発見できなかった。
一方、空飛ぶ島に着陸した3人は島を探索。
ダンは本部に連絡するが妨害電波により連絡できない。
敵基地らしき建物を発見する3人。
「ここは地球じゃないんじゃないのか」とアマギ。
「いや地球らしいぞ」とフルハシ。
「それも日本ですよ」。
富士山を指さすダン。
「なんだ地球防衛軍のすぐ傍じゃないか」。
安堵する3人。
落ちていた石を拾うダン。
「これは地球のものじゃありませんよ。恐らくV2から連絡してきた小惑星ですよ」。
「じゃあ、アステロイドベルトから来たってわけか」とフルハシ。
「ええ、散歩する惑星です」とダン。
「冗談言ってる場合じゃないぞ。侵略基地だったらどうする」とアマギ。
敵基地らしき建物に接近する3人。
中を伺うが、中には誰もいない。
3人は力づくで扉を開けようとするが扉が重くて開かない。
すると不意に扉が勝手に開き始めた。
中へ入る3人。
建物は無人基地になっており電波により機材が操縦されていた。
「相当強力な電磁波が発信されているな」とアマギ。
島をコントロールしていると思われる装置を動かそうとするアマギ。
その時扉が勝手に閉まり、3人は閉じ込められてしまった。
その頃小惑星から発せられる強力な怪電磁波により通信網が大混乱。
防衛軍ではレーダーやホークが使用不能になっていた。
キリヤマは3隊員が小惑星により消息を絶ったと断定し、ソガ、アンヌと3人で調査に赴く。
小惑星らしきものを発見するアンヌ。
ポインターで近づくキリヤマたち。
しかしポインターは見えない壁に阻まれてしまう。
ポインターを浮上させるキリヤマ。
しかし再び壁に遮られてしまった。
キリヤマが石を投げると石は跳ね返されてしまう。
「電磁バリヤーだ」とキリヤマ。
ポインターからレーザー光線を発射するも弾かれてしまう。
双眼鏡でホーク1号を捉えるアンヌ。
連絡を試みるソガ。
しかし妨害電波により通信できない。
移動し始める惑星。
どうやら地球防衛軍基地へと向かっているらしい。
基地に帰りマナベに報告するキリヤマ。
「危険だ。妨害電波でミサイルも使えないとなると残りは」。
「新兵器キリー」とキリヤマ。
しかし惑星にはダンたちがいる。
「現在この基地は麻痺状態にある。あの怪電波のためだ。いつまでもほっておくわけにはいかん」とマナベ。
アンヌが移動速度から後53分で小惑星が基地に到着すると計算。
あと20分待とうとマナベ。
「畜生。ホークさえ飛べたらなあ」とソガ。
マナベの命令によりキリーの発射準備が進められる。
そのころ惑星ではアマギがコントロール装置と格闘していた。
「さっきからずっとこの島は移動し続けてますよ。もしかすると、この惑星自体が時限爆弾になってるのかもしれない」とダン。
「なぜ時限爆弾だと思うんだ」とフルハシ。
「地球防衛基地に接近しているからですよ。侵略目的がなければ、無人基地を送り込む必要もありませんしね」。
「そのことは本部でも気が付いてるだろうな」。
「もちろんですよ。直径1キロもあるんです。どっからでも見えますよ」。
「とすると、なぜ攻撃してこないんだ」。
「恐らく我々のことを気づかってるんでしょう」。
アマギが漸く基地の扉を開けるのに成功する。
脱出してホークに戻る3人。
しかし強力な電磁波によりホークは動かない。
すると地面から振動が。
「地下に動力室でもあるみたいですね」とダン。
「あの強力な電磁波を止める必要がある」とアマギ。
1人で電磁波を止めに行くとダン。
もしダメなら時限爆弾で基地を破壊するといいダンは敵基地へ向かう。
するとダンの目の前に怪獣が現れた。
すかさずウルトラアイを装着するダン。
しかしセブンに変身できない。
「強力な電磁波のためだ」とダン。
フルハシ、アマギはホークから降り機関銃で怪獣を攻撃。
ホークを弾き飛ばし破壊する怪獣。
2人のピンチを見たダンはカプセル怪獣のアギラを投入する。
リッガーと格闘するアギラ。
基地に侵入したダンだが、電磁波の解除が不可能と悟り爆弾で基地ごと爆破する。
一方防衛基地ではキリー発射の制限時間が来ていた。
発射を決断するキリヤマ。
しかしその時妨害電波が解除され基地の機能が復旧した。
モニターには格闘する怪獣の姿が映し出される。
フルハシに連絡を取るキリヤマ。
「なぜ早く脱出せん」。
「ホークをやられました」。
「早くこの惑星を攻撃してください。この惑星自体が時限爆弾になっています。それに怪獣は滅法強い。早く粉砕しないと防衛基地が危ないです。隊長、我々に構わず早くミサイルを」。
マナベの命令によりキリーが惑星に照準を合わせる。
その時、爆風により気を失っていたダンが意識を取り戻した。
ダンはリッガーにやられたアギラを回収しセブンに変身する。
リッガーと格闘するセブン。
モニターでそれを見たマナベはキリーの発射を停止する。
その間にキリヤマたちはホーク3号でフルハシらの救出に向かう。
リッガーに腕をかまれるセブン。
何とか振りほどきリッガーにパンチを浴びせるセブン。
そこへキリヤマたちがホーク3号で小惑星に到着する。
「ダンは?」
合流したフルハシ、アマギに尋ねるキリヤマ。
「爆破に行ったまま戻りません」。
手分けしてダンを探す隊員たち。
一方セブンはリッガーの首をアイスラッガーで切断。
リッガーの首が誘導装置になっていると気が付いたセブンは首を持って空へ飛ぶ。
誘導される小惑星。
一方ダンが見つからないまま小惑星を脱出しようとするキリヤマたち。
「でもダンが」とアンヌ。
「時間がないんだ」とキリヤマ。
急いでホークを発進させるキリヤマ。
小惑星はセブンに誘導され空中で爆発。
飛び去るセブン。

解説(建前)

ダンがセブンに変身できなかったのはなぜか。
以前も説明したようにウルトラアイは着火装置のようなもので、ウルトラアイのスパークによりダンの体内に溜め込まれた太陽エネルギーが物質に転化してセブンになるものと推測される。
今回の場合は電磁波でそのウルトラアイが着火しなかった。
そのためセブンに変身できなかったのであろう。

リッガーの頭部が誘導装置になっていたのはなぜか。
リッガーは惑星の上にいるのだから、その惑星を誘導するというのはおかしな話である。
地球防衛軍の基地を破壊する目的なら最初から基地に向かって惑星を飛ばせばいいだけなので、これはやはり惑星が方向を間違えた時のための安全装置なのであろう。
惑星が基地の方向がわからなくなった場合、リッガーを基地に向かわせその後を惑星に追わせる。
結果的にセブンにそれを利用されてしまうが、敵にとってセブンの存在は想定外だったのであろう。

時限爆弾であるはずの惑星に基地らしきものがあったのはなぜか。
これは単にメンテナンス用の小屋だったのではないか。
ダンたち3人が閉じ込められたのも単なるオートロックだった可能性が高い。
普段は車のキーのようなもので遠隔的に開閉してたのであろう。
アマギが簡単にドアを開けられたことから、そもそも人を監禁する用途で作られた部屋ではなさそうだ。

感想(本音)

ダンたち3人がいわば人質になり防衛軍基地に時限爆弾が迫る。
なかなかスリリングな内容なのだが、全体的なプロットが甘いためやや消化不良になっている。
セブンにはこの手の話が多いが詰めが甘いため凡作になっている場合が多い。
残念ながら本話もそのうちの一つであろう。
私自身、子供の頃本話を見たはずであるが、ほとんど記憶がない。
セブンにはそういう話が結構多い。

敢えて解釈しなかったが、本話は謎の多い話である。
まず敵の正体がわからなかった。
ただセブンの世界では侵略宇宙人は当たり前のように地球にやってくるので、そこはさほど重要ではないであろう。
そもそも毎週のように侵略宇宙人がセブンに返り討ちにあっているのに、地球に来るというのが不可解なので(笑)。
今回の宇宙人は作戦そのものは失敗としても本人たちは倒されてないのだから、ある意味クレバーとも言える。

ダンはどうやって生還できたことになったのか。
これももはや定番なので解釈の必要はないであろう。
セブンに助けてもらった。
ある意味それが事実でもあるので(ダン自身がセブンではあるが)、それ以外答えようがないであろう。
まだ宇宙に行ってないだけマシである。
スタッフにとってもお約束なのか最後はセブンが飛び立つシーンで終わった。
ある意味その潔さには感服する(笑)。

本話の注目ポイントはやはり第三のカプセル怪獣アギラ。
成田デザインのウィンダム、ミクラスとは違い池谷デザインなので、より恐竜ぽい外見。
リッガーが4つ足の怪獣なので、同タイプのアギラを投入したのであろう。
ただ体格差は如何ともしがたく、なんとか時間稼ぎしてる程度。
因みに子供の頃読んだ小学館のウルトラ本などではアギラは歴戦の勇士と紹介されていた記憶があるが、実際に活躍したシーンなどはほぼなさそうである。

ダンたち3人がいる島を爆破するという非情の決断をするキリヤマ。
「北へ還れ」のフルハシといい「ひとりぼっちの地球人」のソガといい、とにかく警備隊員はよく捕まる。
ダンも結局見殺しだし、セブンがいなければどれだけ殉職者が出たかわからないであろう。
しかしいい加減隊員たちもダンとセブンは怪しい(変な意味じゃないよw)って思ってるのではないか。
ダン本人がセブンであるかはともかく、ダンとセブンは同時期に警備隊員の前に現れたし、何らかの関係があると考えるのが素直である。
一応ダンを心配したアンヌであるが、結局助かるのはわかってるのですぐ切り替えていた(笑)。

いつも思うのだが、警備隊員たちはカプセル怪獣のことをどう考えているのであろうか。
我々視聴者はダンが送り込んでることは当然知っているが、劇中では誰もそのことを知らない。
二匹の怪獣が戦ってるとして、どっちがいいものか、あるいは両方とも悪者か判断つかないであろう。
数を重ねていれば、いつも悪い怪獣と戦ってくれる怪獣という認識に至ることも可能かもしれないが、今回のように初見だと単に二匹の怪獣が暴れているだけにしか見えない。
まあ普段から倒された怪獣の分析とかしてる感じはないので、特に害を及ぼさなければ基本スルーなのであろう。

リッガーはキングザウルス三世系の4つ足でなかなか巨体な怪獣。
赤い目が印象的だが、メカニズム怪獣という別名があるようにサイボーグに近い怪獣であろう。
恐竜戦車の改造とのことだが、戦ってるセブンが小柄に見える。
顔面に蹴りやパンチを浴びせるがあまり効いてる感じがしない。
結局アイスラッガーで首切断だったが、その前の戦いって正直無駄。
まあ、お約束なので気にしてはいけないであろう(笑)。

本話は山田正弘、上原正三の共同脚本とのことだが、原案は虎見邦男とのこと。
虎見氏はウルトラQのバルンガの脚本を書いたことで知られるが、37歳の若さで亡くなった。
その遺構となったプロットを脚本化したのが虎見氏の学生時代からの友人、山田氏とのことである。
前述したように本話は詰めの甘い凡作という評価になってしまったが、島が空を飛ぶプロット、正体不明の敵、電磁波による基地の無力化などSF色の強い作品となっている。
セブン中盤はドラマ重視のストーリーが多かったが、本話は久々にセブンらしいハードSFと言えるであろう。

ただドラマをあまり描かない場合はSF要素をしっかり描かないとインパクトが弱い作品になる。
その出来不出来がダイレクトに話の完成度に関わるからだ。
ウルトラシリーズは2期以降はドラマ重視に移行する。
ドラマ重視だと多少の粗は誤魔化せるので、結果的には正解だったであろう。
その点、本話は筋立て勝負なので粗が目立ちやすい。
ただ、SF要素の強い話はセブンと相性がいいので、虎見氏がもう少し参加していれば傑作が生み出された可能性もあっただろう。
いずれにせよ、亡き友人のために本話の脚本を完成させた山田氏、それに協力した上原氏には敬意を表したい。

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