栄光は誰れのために


データ

脚本は藤川桂介。
監督は鈴木俊継。

星ヶ原に着陸する謎の宇宙戦車。
地球防衛軍は翌朝星ヶ原で野戦訓練を予定していた。
「目標になる戦車隊はマグマライザーでリモートコントロールされることになっている。たとえ訓練ではあっても気持ちを引き締め、実戦のつもりで行動するように」とキリヤマ。
キリヤマに呼び出されるダン。
他の隊員たちは久々の野戦訓練に張り切っていた。
アマギとフルハシは銃の訓練のため射撃場に向かう。
「だけどどうして思い出したように野戦訓練なんかするのかしら」とアンヌ。
「そうだなあ。きっと防衛軍のチームワークを固めるためだろう」とソガ。
アマギとフルハシが銃を撃ってると突然見知らぬ若者が現れた。
「そんな撃ち方で敵が倒せるんですか?」と2人を挑発する若者。
アマギからライフルを借りた若者は飛んでる鳥を撃ち落とす。
「青木です。よろしく」と言い残し去っていく若者。
基地に戻ったアマギとフルハシはマナベから青木を紹介される。
「先ほどは失礼しました」と青木。
青木はウルトラ警備隊の候補生だという。
苦々しい表情のフルハシとアマギ。
そこへ国籍不明機が侵入したとの報が入る。
青木はマナベに出動を願い出る。
フルハシと一緒に出動することを許可するマナベ。
しかし国籍不明機は実はダンとキリヤマの訓練機で青木の腕を試すためのものであった。
「実力もさることながら、大変な自信家だそうだ。遠慮しないで揉んでやれ」とキリヤマ。
訓練機用の吹き流しを見てそれを理解するフルハシ。
「吹き流しをつけた敵機は初めてだな青木。相手はダンだ。気楽にやれ」とフルハシ。
『俺を試そうとする気か』と青木。
しかしあくまで出動を命じられた青木は実弾でダンとキリヤマの訓練機を攻撃する。
「無茶をするな」。
声を荒げるフルハシ。
しかし青木は言うことを聞かない。
「あれは敵機です。撃ち落としても当然じゃありませんか」。
「貴様にはあの吹き流しが見えなかったのか」。
「手心を加えろと言うんですか。私たちは敵機の侵入を告げられて出てきたんですよ。そんな馴れ合いの訓練でお茶を濁して何になるんです」と青木。
青木に引き返すよう命じるフルハシ。
マナベに呼ばれた青木はダンとキリヤマを紹介される。
ダンと握手する青木。
「なかなかやるじゃないか」とダン。
「よろしくお願いいたします」と青木。
「危うく殺されるところだったぞ」とキリヤマ。
「本当はウルトラ警備隊の欠員が二名できるところでした」と青木。
ムッとするダン。
注意するマナベ。
「こういう張り切り男だ。頼んだぞ」。
ダンに青木のことを頼むマナベ。
しかし青木は内心ダンに異常にライバル心を燃やす。
星ヶ原一帯に異常をキャッチした警備隊。
ダンは青木とともに調査に向かう。
ポインターのレーダー探知機が近づいてくる物体をキャッチ。
「ちょっと待っててくれ」。
ポインターを降りるダン。
「今だ。ダンより早く事件をキャッチできる」。
ポインターを走らせる青木。
ポインターを追うダン。
レーダーを見て物体が止まったのを確認する青木。
青木はポインターを降りて付近の砂山を調査する。
地底から敵の宇宙戦車が現れるのを見てポインターに戻る青木。
青木はミサイルを発射する。
「青木、何をしている」とダン。
「あの辺が怪しいんです」。
「何か見たのか?」
「いえ、別に」。
「バカ!相手がいるともいないともわからないのに攻撃して何になるんだ」とダン。
銃を持って戦車を目撃した地点に戻る青木。
戦車から攻撃を受ける青木。
青木を制止するため背後から抑え込むダン。
基地に戻るとダンは星ヶ原に不穏な動きがあると報告する。
野戦計画は中止した方がいいのではないかとアマギ。
しかし参謀会議の結果、翌日の野戦計画は実行されることとなった。
ただし砂山付近の調査活動と併せ実戦準備もすることになる。
砂山付近の調査を命じられたダンはもう一度青木を連れて行くという。
一方青木は整備中のマグマライザーの中に入り乗員に話しかける。
整備員が出て行くと青木はマグマライザーに敵を誘き寄せるための発信装置を取り付ける。
翌日先発隊として砂山の調査に向かうダンと青木。
一方発信機のついたマグマライザーは敵戦車に襲われ奪われてしまう。
現場に到着した2人は宇宙人により硬直状態にされたマグマライザーの乗員を発見。
敵に乗っ取られたマグマライザーは戦車隊を誘導して隊員たちに実弾攻撃を仕掛ける。
ダンと青木は作戦を変更して隊員たちを後退させるようキリヤマに進言。
そこへソガとアンヌもやってきて、戦車が実弾攻撃してると報告する。
実戦態勢へ切り替えるキリヤマ。
またアマギからも所属不明の戦車が攻撃を仕掛けてきたとの報告を受ける。
マグマライザー率いる戦車隊と敵戦車に挟撃される隊員たち。
マグマライザーを奪還するよう進言するダン。
「隊長。私にやらせてください。侵略者が誰であろうと必ず倒して見せます」と青木。
青木の志願を認めマグマライザー奪還を命じるキリヤマ。
キリヤマはダンも一緒に行くよう指示する。
マグマライザーと戦車隊の前でポインターを止めるダン。
「青木、気を付けるんだぞ」とダン。
「俺一人犠牲になったってやっつけてやりますよ」と青木。
血気に逸る青木を諫めるため車を降りるダン。
しかしそこへ砲弾が飛んできて、ダンは気を失う。
それを見て『今だ』と青木。
青木は手榴弾を戦車隊に投げつける。
『ダンに勝てた。栄光は俺が掴んだんだ』。
しかしその直後敵の砲弾を受けて重傷を負ってしまう。
一方意識を取り戻したダンは手榴弾で戦車を破壊しマグマライザーに向かう。
ダンに栄光を奪われ悔しがる青木。
マグマライザーの中に入ったダンはそこに現れたプラチク星人に襲われる。
星人に殴られ倒れこむダン。
星人が逃げるのを見てダンはセブンに変身する。
巨大化した星人と戦うセブン。
しかし星人はあっさり降参のポーズをとる。
それを見て飛び立とうとするセブン。
しかし背後から光線を浴びたセブンは硬直してしまった。
姿を消す星人。
セブンがやられたとソガ。
しかし間もなくセブンは硬直状態を脱する。
ダンと青木の心配をするアンヌ。
「アンヌはマグマへ行け。俺たちは青木とダンを探す」とソガ。
セブンはプラチク星人の乗っている戦車をエメリウム光線で爆破。
すると再び巨大化した星人が現れた。
お互い疲れ果てて倒れる星人とセブン。
這いつくばって格闘する両者。
星人を投げ捨てたセブンは星人にエメリウム光線を浴びせる。
炎上して骨だけになる星人。
ダンは負傷している青木を助けに向かう。
「私のための栄光が欲しかった。ダンさん。私はあの時林の中で見たんです。そのことさえ報告しとけば」と青木。
「貴様。なぜそれを早く言わなかったんだ。そのために何十人という隊員が。バカ野郎」。
青木を殴り飛ばすダン。
「許してください」。
「青木。だったら生き抜いてその償いをするんだ」とダン。
その時ダンの背後から物音が。
骨だけになったプラチク星人が襲ってきたのだ。
星人を狙撃する青木。
骨だけの星人は崩れ去った。
「ダンさん。これがあなたへの償いです」。
そう言い残し、事切れる青木。
「バカだな、貴様」とダン。
『青木。ウルトラ警備隊の栄光は必ず守るぞ』。
合流したフルハシ、ソガと黙とうするダン。

解説(建前)

プラチク星人はなぜ防衛軍の野戦訓練のことを知っていたのか?
しかもマグマライザーが他の戦車をリモートコントロールすることまで知っていた。
これは偶然ではありえないであろう。
スパイナー運搬の時も防衛軍の情報は駄々洩れであった。
またプロテ星人も容易に防衛軍の秘密基地の資料を盗み出した。
そもそも宇宙人である風来坊のダンを雇うような組織。
当時(一応設定は近未来だが)は現在のような情報社会ではない。
情報セキュリティについては今ほど高い意識は持っていなかったのであろう。
恐らくスパイか盗聴の類だと思われる。

ダンは青木と一緒に敵戦車の攻撃を受けたはずなのに、不穏な動きがあるとしか報告しなかったのは何故か?
仮に敵戦車の姿を見ていなかったとしても爆撃は見ている。
そもそもウルトラセブンであるダンは普通人より感覚は鋭い。
青木が見たものを見落とすとは考え難いであろう。
結論としてダンは、現地に敵らしきものが潜んでいるのはわかっていたが、敵の正体がわからなかったため言葉を濁した。
とするとダンも青木と同罪ということになりそうである。

ただ、ひとつ気になるのは青木は「林の中で見た」と言っている点。
実はその場面はカットされていたのではないか。
本来映像化されていないものを根拠に解釈するのは禁じ手であるが、青木がダンと一緒に見たのは砂山から敵戦車が現れるところ。
どう見ても林の中ではない。
もしかすると野戦当日に先発隊として調査した際に青木だけ敵戦車を目撃していたのではないか?
でも青木は元々マグマライザーを敵に乗っ取らせるつもりだったので報告を怠った。
かなり無理のある解釈であるが、青木のセリフからはこちらの方が意味は通るであろう。
一応可能な解釈として提示しておく。

感想(本音)

解釈で躓いたように(笑)、かなり強引なストーリー。
とにかく青木が滅茶苦茶過ぎて、よくここまで出世してこれたなと驚くばかり。
そして明らかに不穏なのに野戦を強行する防衛軍。
ここ最近のストーリーは防衛軍が脇が甘いために敵に狙われる話が多い。
女の人が倒れてるだけでハイカーから電話も入ってくるし、厳格な軍隊なのか、10-4・10-10のような民間組織なのかよくわからない状態だ(笑)。

本話はとにかく青木中心。
青木とダンの物語だ。
今までゲストは数多く出たが、ここまでダンと絡んだゲストは他にいないだろう。
一応野戦訓練を敵に狙われて大ピンチという話であるが、ストーリー的にはプラチク星人は完全にオマケ。
状況をドンドン悪くする青木。
自作自演でまだ敵も倒していないのに栄光を掴んだと自分に酔う青木。
本話の真の敵は青木と言っていいほど(笑)。

一応最後にとってつけたようにダンを助けるが、あんなものいつものダンなら自分で回避できたであろう。
そもそもダンが不意をつかれたのは瀕死の青木と喋っていたから。
結局最後までダンの足を引っ張ったのは青木である。
よく言えば熱血漢であるが、これじゃZAT入隊前の光太郎より酷い。
何とか青木をフォローしようと思ったが、見れば見るほどフォローしようがなかった(笑)。

結局戦死する青木。
というか、よく今まで生きて来れたなというくらい無謀。
マグマライザーの乗員は半分青木が殺したようなものだし、ダンのホークは撃墜しようとするし、よく今まで誰も殺さずに来れたとも言えようか(笑)。
青木を演じたのは後にライダーマン結城丈二を演じる山口暁。
演じる本人は青木についてどう思ったのだろう?
一方レオのモロボシ隊長を思わせる厳しい態度で青木を叱責するダン。
いつもは和気あいあいとしている警備隊も今回に限っては縦型体育会系組織。
それだけ青木は異質な存在だったのであろう。

解説でも書いたが、本話の最大の問題はダンも敵の攻撃を受けながらきちんと報告しなかったこと。
撮影ミスかとも思うが、編集段階でわかりそうなものなので何とかして欲しかった。
でないと、青木のせいで大きな被害が出たという本話の肝の部分がおかしくなる。
まあ、そもそもピンポイントで野戦訓練中に襲われる防衛軍も問題あるのだが。

前述のようにどうでもいい存在だったプラチク星人であるが、意外と強かったというか、何なのか。
謝った振りして油断させてという悪役らしい攻撃もするが、いくら謝っても許しちゃいかんだろセブン。
そのまま放置して飛び去ってどうするのかと(笑)。
無駄に長く戦っていたし、最後は白骨化して襲ってくるし、結局何がやりたいのかよくわからなかった。

本話の脚本は藤川桂介。
偶然であろうが前話の一の宮に続いて癖の強いゲスト。
自信過剰で独善的なところが2人の共通点。
ただ、星人に騙されていた一の宮に対して青木は全て自覚して行動してる分、筋金入りと言えるだろう。
子供の頃本話を見た感想は正直あまり記憶にない。
子供置いてけぼり(大人でもついていける人少なそうだが)の如何にもセブンらしい話といったところか。

本話にテーマらしきものがあるのなら、仕事に対する誇りということになろうか。
どんな仕事でも誇りをもって取り組むのは素晴らしいことである。
それが地球の平和ならなおさら。
ただ、誇りというのは個人が褒められることではない。
全員で目標を達成してこそ得られるのだということ。
そこをはき違えてはいけない。
青木は死の間際に漸くそのことを悟るのだが、時既に遅し。
正直行動とか思考とか全く共感できなかった人物だったが、それだけが救いであろうか。

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