700キロを突っ走れ!


データ

監督は満田かずほ。
脚本は上原正三。

映画館でデートをするダンとアンヌ。
ダンは大きな煎餅を食べながらスクリーンに映し出されるカーレースに熱中していた。
遊園地でティーカップに乗る2人。
「走りたいなあ。アフリカ大陸横断」。
「ラリー?」
「地平線の果てまで突っ走るんだ」。
無邪気にはしゃぐダン。
ニトログリセリンの数百倍の威力があるという高性能火薬スパイナー。
地球防衛軍の実験場に運ぶ途中何者かに襲撃されたため、警備隊にスパイナー運搬の特別命令がくだった。
空路は危険と判断されたため潜水艦で運ぶことになるが、問題は陸路をどうするか。
「いい手はないのかね」とマナベ。
「あります。グッドアイディアです」とダン。
ダンの発案でラリーに紛れ込んでスパイナーを運搬することになった。
ドライバーにはダンとアマギが選ばれる。
ラリー参加者の情報を事前に確認するダンとアマギ。
いよいよダンとアマギにとって恐怖のレースは始まった。
順調に走行する2人。
そこへ一台のオートバイが車めがけて突っ込んできた。
急ハンドルで交わすダン。
すかさずオートバイを狙撃して爆破する。
「人間爆弾ですよ」とダン。
青ざめるアマギ。
「どうしたんですか?」とダン。
ドライバーをアマギに交代して走っていると、横を猛スピードで追い抜いていく車が。
暫くして見えなくなったかと思うと大きな爆発音が鳴り響いた。
音のした方へ向かう2人。
そこには大破した車と投げ出されたドライバーが。
ダンたちを追い抜いたため、2人を狙った地雷を踏んだのだ。
さらにマシンガンの銃弾が2人を襲う。
洞穴に隠れる2人。
ダンはヘルメットをカムフラージュのために洞穴に残し、敵の背後に回って銃撃。
銃弾を受けた敵は消滅してしまった。
それを見て走り去る1号車。
ダンが戻るとアマギは脚を負傷していた。
「傷は大丈夫だ」とアマギ。
「怖いんだ。怖いんだよ。小学校のころな、近くの花火工場が爆発して家も人間もバラバラだった。それ以後ダメさ。足がすくむんだ。隊長はそれを知ってる。それなのにわざと俺を選んだんだ」とアマギ。
「そんなことありません。爆発物を運ぶんです。僕だって怖い。しかしこれは任務なんです。ウルトラ警備隊の任務なんですよ、アマギ隊員」。
車に戻るダンとアマギ。
その夜、乗り捨てられた1号車を発見した2人は銃を持って辺りを探索。
怪しい男を追って藪の中に入る2人。
するとどこからかマンドリンの音色が。
音の方へ進むと焚火を囲むキリヤマたちがいた。
事情を話すダンとアマギ。
するとキリヤマは「ばか、なぜ車を離れた」と一喝する。
急いで車に戻るダンとアマギ。
ダンに促されたソガは大木に向ってマンドリン型の銃を乱射。
するとその陰に隠れていた1号車のドライバーが倒れて消える。
「隊長。交代させてください。これ以上の走行はとても耐えられません」とアマギ。
すると車のトランクの中から時計の音が聞こえてきた。
敵が時限爆弾を仕掛けたのだ。
アマギに爆弾の解除を命令するキリヤマ。
できませんというアマギを平手打ちにするキリヤマ。
「時間がない。早くやれ」と言い残し、ソガたちとその場を去る。
「ダメだ」。
弱音を吐くアマギ。
アマギの顔を見て励ますダン。
解除に成功するアマギ。
「成功したんですよ、アマギ隊員」。
喜ぶダン。
翌朝、実験場まで100キロの地点に到着するダンとアマギ。
アマギはキリヤマからフルハシと交代するよう命じられるが、自信を取り戻したアマギはそれを断る。
走行を続ける2人の頭上に2機のヘリコプターが飛んできた。
強力な磁石を車の上に落とすヘリコプター。
磁石の中から気球が膨らみ車は宙に浮いてしまう。
アマギがいてはセブンに変身できないダン。
アマギは車からレーザーを発射し、敵のヘリコプターを1機撃墜する。
キリヤマの命令でソガが気球を狙撃。
落下する車。
地上に激突する寸前に風を噴射し車は無事着地する。
「任務、無事完了しました」。
迎えに来たマナベに報告するキリヤマ。
「よくやった」。
ダンとアマギはマナベと固い握手を交わす。
2人がスパイナーを取り出そうとすると、実験場の作業員がキリヤマたちの乗っていたジープの方へ向かっていく。
荷台からスパイナーを下す作業員。
本物のスパイナーはキリヤマたちが運搬していたのだ。
「敵を欺く前にまず」とキリヤマ。
「それじゃ隊長。僕の臆病を」。
礼を言うアマギ。
早速スパイナーを山に仕掛け実験を開始する警備隊。
すると山の中からスパイナーを咥えた恐竜が現れた。
目から光線を出す恐竜。
恐竜は戦車の上に乗って接近してくる。
逃げ遅れた隊員を助けるため出ていくダン。
しかしダンは恐竜が破壊して崩れた土砂の下敷きになる。
ダンと通信が取れなくなり、ソガたちも外へ出ていく。
そこへセブンが現れた。
セブンは戦車で向かってくる恐竜を食い止め、作業員を救出。
作業員はアマギたちが無事基地内に収容する。
スパイナーを咥えた恐竜を迂闊に攻撃できないセブン。
戦車からは大砲も発射される。
恐竜の背後に馬乗りになり恐竜の頭を叩くセブン。
咥えていたスパイナーを地面に落とす恐竜。
恐竜がスパイナーの上に来たタイミングで手から光線を放つセブン。
すると恐竜は戦車もろとも吹っ飛んでしまった。
土中に埋まったダンを救出する隊員たち。
アマギの顔を見て笑顔になるダン。
ダンはそのまま担架で運ばれていく。
「ウルトラ警備隊の任務は厳しい。大きな勇気と弛まぬ努力が必要だ。アマギ隊員も立派に任務を遂行した。これからも恐ろしい敵は次々と現れるだろう。だが我々がウルトラ警備隊魂を持ち続ける限り、地球の平和は守られるに違いない」。

解説(建前)

敵はなぜラリーの車にスパイナーが運搬されていることを知っていたのか。
スパイナーの運搬は防衛軍にとっては最重要機密のはず。
ただ飛行機での運搬が失敗していたように、敵はスパイナーの存在およびその運搬について既に情報を掴んでいた可能性が高い。
やはり防衛軍に内通者がいたか盗聴等の手段で情報は筒抜けだったのであろう。
しかし今回は実際にスパイナーを運んだのはキリヤマたちであった。
これは今までの失敗からごく一部の人間のみ本当のことを知らせてダンたちを囮に使った。
作業場の人間もスパイナー到着後に本当のことを知らされたのであろう。

感想(本音)

娯楽作としては及第の出来だが、粗も多い話。
ただ娯楽作は細かい粗など気にせず見るものであるから、あまり気にしていては作品を純粋に楽しめないであろう。
この話を見て真っ先に思い出したのが「恐怖の報酬」という映画。
なかなかスリリングな映画でお気に入りの映画だが、本話はアマギの物語も取り入れることによりドラマ面も強化されている。
個人的には比較的好きなエピソードである。

とは言うものの正直敵の行動には疑問符がつきまとう。
人間爆弾や地雷でダンたちの車を爆破しようとしたかと思うと、ヘリコプターまで出して今度は車ごと持ち去ろうとした。
空から攻撃できるのならミサイル撃った方が早いのでは?
一応無理やり解釈するなら、ヘリにはミサイルが搭載されていなかった、若しくは急きょ作戦を変更したと解釈するしかないであろう。
あまりにも情けない解釈なので、解説ではスルーした(泣)。

敵も敵なら味方も意味不明。
実はキリヤマたちが運んでいたというオチ自体は秀逸なのだが、道中焚火をするシーンが意味不明。
車を離れたダンたちを一喝していたキリヤマ自身が車から離れていたというのはもはや笑い話。
焚火そのものはカムフラージュのためなのかもしれないが、度々ダンたちと落ち合っていては、カムフラージュも意味をなさないであろう。

極めつけは時限爆弾の下り。
スパイナーを積んでいないとしても爆弾の解除に失敗したらダンとアマギという貴重な隊員を2人失うことになる。
いくらアマギの臆病を治すためとはいえ、「命令だ」では司令官としては失格であろう。
もし本物のスパイナーを運搬してたとしても、果たして命がけで守るほどのことであろうか?
人命は地球より重いのではなかったか?
あまりにもな展開なので、解説で実はキリヤマたちが仕掛けた偽の爆弾説も考えたが(笑)、敵がいたのは間違いないのでさすがにそれはないとした。
むしろそうあってほしいくらいのものである。

アマギのトラウマにしてもドラマ的には良かったのかもしれないが、爆弾に怯えていては普段ホークに乗って敵と銃撃戦なんてとても出来ないであろう。
高所恐怖症もそうであったが素人がいきなり採用されたのではないんだから、ウルトラ警備隊員という超エリートがそんなことでは困る。
アマギの頭脳が買われたのなら、それに相応しい部署があるはずだ。
ウルトラ警備隊員も普通の人間であるというテーマ自体はいいのかもしれないが、爆弾を怖がっていては適性がないと言われても仕方ないであろう。

ただ他の隊員を見る限り、超エリートというほどの人間は実は見当たらない。
考えてもみればダンは風来坊である。
意外となり手が少ないのかもしれない。
医者のアンヌがホークで爆撃するのも変な話なので、この辺りは本話ではなくセブンの設定そのものの問題であろう。

その他、そもそもキル星人(この呼称そのものは本編では出てこないが)が何をやりたかったのかなど、ツッコミどころはあるがこれくらいにして、本話の楽しめるポイントについて述べるとしよう。
まず何と言っても冒頭のダンとアンヌのデートシーン。
満田監督らしい演出だが、ちゃんとラリーに話を繋げるのが上手い。
しかし映画館であんな大きな煎餅売っているのだろうか?
持ち込んでたとしたら迷惑この上ない(笑)。
またティーカップでは2人で綿菓子を食べたりダンがラリーの真似事をしたり、いい歳した大人とは思えないほどのはしゃぎっぷり。
子供っぽいダンの姿が見られるのも満田演出の特徴か。

「グッドアイディアです」とダン。
趣味と仕事を両立するまさにグッドアイディアである。
しかし、そんな危険な車にこっそりラリーに参加される主催者側は大迷惑。
3号車とか完全にとばっちりで爆死してるし、ちょっと人道上の問題を感じる。
おまけに1号車は1号車で簡単にレースに参加。
ダンとアマギももちろん身分隠してるだろうし、そもそもそういう脛に傷のある系の人間が参加するラリーだったのかもしれない。
実験場がゴール付近にあるという都合のいいラリーはなかなかないだろうので、このラリー自体は大したものではないのであろう。
因みにダンたちが7号車なのはお約束をきっちり押さえていて好感が持てる。

本話で一番のインパクトはやはり恐竜戦車だろう。
ダンたちが一目見て恐竜だというのは謎だが、そもそも恐竜と怪獣の定義がよくわからない。
これは超獣と宇宙大怪獣の違いにも言えるが、考え出すとキリがないのでとりあえずスルーしよう。
しかしいくら何でも目から光線出したら恐竜とは言えないような。
宇宙恐竜の類だったのかもしれない。

それは置いておいて、恐竜が戦車に乗るという発想がぶっ飛んでて意味不明。
恐竜を作ったら無個性になったので急きょ戦車を付け足したとか。
いや、急きょ付け足しても戦車という発想にはならないだろうので、やはり最初からのデザインなのであろう。
強いんだか弱いんだかよくわからない怪獣(ウルトラの世界では怪獣が一番広義だと思われる)だが、最後はスパイナーで大爆発。
そもそもスパイナーの爆破実験って何だったのだろうか?
威力を試すのなら結果オーライであろうが。

本話はかように粗の多い娯楽編。
そもそも敵の星人が出てこないので敵の目的すらわからない。
キツイ言い方をすれば、先に場面場面のシナリオがあって、後で帳尻を合わせてる感じ。
いや、帳尻すら合わせてないであろう(笑)。
ただ逆にそういう作りだからこそ、それぞれのシーンは見応えのあるものになっている。
突っ込んでくるバイク、追い抜いて地雷を踏む他車、時限爆弾、ヘリ。
また時限爆弾を解除して自分のトラウマを克服するアマギ。
恐竜戦車のユニークなデザイン。
そしてダンとアンヌのデート。
場面場面が非常に充実している。
筋書的にはとても誉められたものではないが、偶にこういう話があってもいいであろう。

本話の脚本は上原正三。
プロットの整合性に問題はあるものの、ドラマ部分はしっかり描けている。
侵略SFが基本のウルトラセブンで相手の姿はおろか、侵略目的も明かされないという異色の作品であるが、これは予算の都合もあったのであろう。
市川、上原脚本はこういう話が多い。
監督は満田かずほ。
最終回へ向けての伏線となるダンとアンヌのデートシーンなど、シリーズ全体を考えた構成はさすがメイン監督。
ダンとアマギの友情も最終回へと繋がっており、単なる娯楽編に留まらないところも本話の魅力であろう。
二期ウルトラは隊員同士の横の繋がりより隊長との縦の繋がりの方が強い。
その点、セブンは横の繋がりの方が強い。
意外と見落とされがちであるが、最終回までその辺りもしっかり見ていきたいと思う。

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