サイボーグ作戦


データ

脚本は藤川桂介
監督は鈴木俊継

ある夜、謎の火の玉が朝日沼に落下する。
翌日、婚約者の早苗を連れて沼の畔にドライブに来ていた通信隊員の野川。
野川はソガの後輩でこの後婚約者の早苗を紹介することになっていた。
「あちらは栄光あるウルトラ警備隊員」と早苗。
「こちらはただの通信隊員だからな。はじめっから頭が上がらないんだ」と野川。
2人が車を走らせていると突然車がコントロールを失い後退し始めた。
車から振り落とされる早苗。
一方野川は沼から浮上した円盤に車ごと攫われてしまった。
倒れている早苗を通りがかったハイカーが発見して警備隊に通報。
連絡を受けたダンはソガとともにパトロールに出ようとするが、ソガはこの後友人とその婚約者と会う予定になっていた。
代わってやるというアマギを制止するソガ。
現場に到着したダンとソガは倒れている女性が「野川さん」とうわ言を言うのを聞き、隊員の野川ではないかと疑う。
気を失った女性を基地に連れて行くため抱き上げるダン。
ソガは現場に残って野川を捜索する。
地面に落ちているオイルの痕を辿るソガ。
オイルの痕は沼に入るところで消えていた。
心配するソガ。
そこへ連絡を受けたフルハシとアマギが到着する。
車が沼に入ったとしか思えないとソガ。
「防衛隊員としてあるまじき行為だな」とフルハシ。
無謀運転に呆れる3人。
ゴムボートで沼に出る3人。
潜水服に身を包んだフルハシが沼に潜って暫く捜索したものの、何の手がかりもなかった。
また、朝日沼近辺にはそれ以外何の異常も見られなかった。
「明朝を期して、朝日沼を中心にB地区の捜索を開始する」とキリヤマ。
「ソガ隊員。何か手掛かりがつかめるかもしれませんよ」と励ますダン。
その夜、円盤内に拉致された野川はボーグ星人によってサイボーグ化の施術を受けていた。
「お前は今新しい生命を得た。その生命を我々のために使ってもらう」。
頷く野川。
「お前は地球防衛軍の一員である資格をフルに使って我々のために働いてもらわねばならない」と星人。
野川に武器を持たせて解放する星人。
その夜、早苗の部屋へ野川が戻ってきた。
「早苗さん。僕です。心配かけちゃって悪かったね」。
「野川さん、どこで何を?」と早苗。
「それは言えない。秘密を要する仕事ができたんだ」と野川。
「もう済んだの?」
「いや、これから始まるんだ。それでしばらくのお別れに来たんだ」。
自分がここに来たことを言わないよう口止めして去っていく野川。
部屋を出る野川を追う早苗。
しかし野川の姿は既に消えていた。
警備隊基地に戻る野川。
喜ぶソガたち。
しかしダンは野川の異常に気付く。
野川の後をつけるダン。
すると野川は入った部屋で警備員たちを伸して姿を消した。
それを見て非常ボタンを押すダン。
隊員たちは手分けして野川を探す。
通路で野川を発見するダン。
しかし野川は壁を通り抜けて姿を消してしまった。
ダンは透視を試みるも壁が厚すぎて透視できない。
付近を捜索するキリヤマたち。
すると地下の大型コンピュータに何かを仕掛ける野川の姿が。
ダンが確かめに行くと、野川は
「午前6時、この基地が勤務交代の隊員で一杯になるときが地球防衛基地の最後なのだ。地球はあと数時間で我々ボーグ星人のものになるのだ」と告げる。
掴みかかるダンを返り討ちに合わせる野川。
ソガにショックガンで野川を撃つよう命じるキリヤマ。
ショックガンで気を失う野川。
落ちていた容器から基地にプレート弾が仕掛けられたことが判明する。
フルハシ、ソガを中心に基地内に仕掛けられたプレート弾の探索が行われた。
メディカルセンターに運び込まれたダンと野川。
レントゲンの結果、野川がサイボーグ化されていたことが判明する。
「野川隊員はもう元の人間に帰れないのでしょうか?」とアンヌ。
「いやあ、何とかなるでしょう」と医師。
すぐに手術の準備をする医師とアンヌ。
すると野川が「朝日」とうわ言を言う。
「朝日沼か」とキリヤマ。
キリヤマはアンヌと共に朝日沼に向かう。
朝日沼に向かって熱ミサイルを投下するホーク。
すると朝日沼は蒸発して中からボーグ星人の円盤が現れた。
攻撃するホーク。
星人は円盤を放棄して脱出する。
直後、円盤はマグネチック7により破壊された。
一方基地内に仕掛けられたプレート弾のうち、最後の一個がどうしても見つからない。
メディカルセンター内で焦るソガとフルハシ。
そこへボーグ星人が入ってきた。
星人はソガ、フルハシ、医師らを怪光線で眠らせる。
「残された1個の爆弾でも基地は爆破できる。しかしお前は裏切った」。
野川を殺そうとする星人。
そこへ目を覚ましていたダンがウルトラガンを発射する。
基地の外へ逃げ出す星人。
セブンに変身したダンはボーグ星人を追跡。
残りの1個のプレート弾の場所を尋ねるセブン。
笑って答えない星人。
ボーグ星人に攻撃を交わされ山の下に転落するセブン。
「残りの一つはお前に付けてあったのだ」と星人。
ブーツに付けられた爆弾を外して投げつけるセブン。
ボーグ星人と格闘するセブン。
ボーグ星人に組み伏せられたセブンだが、最後は星人の光線を避けアイスラッガーで星人の首を斬り落とした。
首から泡が噴き出す倒れる星人。
数週間後、手術により元に戻った野川は教会で早苗と結婚式を挙げる。
紙吹雪で2人を祝福する隊員たち。
2人は空き缶のついた車を走らせ新婚旅行へと旅立っていった。

解説(建前)

何故女性が倒れているという通報が警備隊に入ったか。
こういう場合発見者の1人が近くの公衆電話を探して110番するのが普通。
しかし現場に警官はいなかった。
何故か?
やはり早苗がうわ言で何かを言っていたのであろうか?
そしてソガから聞いていた作戦室の電話番号のメモをハイカーたちに渡した。
ダンたちが野川と聞いて通信隊員の野川ではとすぐに疑ったのも、被害者が地球防衛軍の一員という前提がわかっていた可能性が高い。
いくら警備隊でも女性が行き倒れてるだけでパトロールに行くほど暇ではないので、もう少し具体的な通報が入っていた可能性は高いであろう。

ボーグ星人に改造された野川はなぜ早苗に会いに来たか。
ボーグ星人の作戦に早苗は全く関係がない。
まして野川が早苗に会えば野川が洗脳されていることがバレてしまう。
これはやはり野川の意思であろう。
野川は早苗を巻き添えにしたくなかった。
だから自分の無事を早苗に知らせることにより、警備隊基地に近づかないようにした。
この時点で既に野川はボーグ星人を裏切っていたのである。
サイボーグになってもやはり愛は強かったということであろうか。

野川は壁をどうやって通過したのか?
体の一部を改造されたに過ぎないサイボーグの野川にそんな超能力が使えるとは思えない。
しかもその壁はダンの超能力をもってしても透視できなかった。
これはやはり単なる目くらましであろう。
何らかのトリックで壁を抜けたように見せかけ、野川はどこかの部屋へ逃げ込んだ。
ボーグ星人から光を曲げる装置でも渡されていたのかもしれない。
そしてダンとアンヌを欺いて時間を稼いだ野川は基地内にプレート弾を仕掛けた。
ダンはまんまと一杯食わされたのであろう。

感想(本音)

可もなく不可もないという話。
重めの話が続いたので偶にはこういう話もいいだろう。
とはいえ、本話も明るい話ではなく全体的なトーンは暗い。
娯楽作が娯楽作にならないのがセブンらしさか(笑)。
ところで敵が防衛軍関係者に化けて侵入するという話は何回目であろうか?
ワイアール星人、ビラ星人、ペダン星人等々。
相手が宇宙人なので地球人に化けるというのが定番化するのは仕方ないが、ウルトラアイが盗まれるのと偽物が侵入するのはもはや双璧と言っていい。
今回は純粋な偽物ではなく改造された野川という点が今までとの違いか。

解説ではスルーしたが、野川がボーグ星人に利用されたのは偶然であろうか?
そもそも朝日沼に来たのが偶然と思われるので、野川を狙い撃ちした可能性は低い。
偶々会話を聞いた星人が野川を利用した。
そんなところであろう。
ところでボーグ星人は人間の女性の姿に化けていたが、これもやはりピット星人辺りからの情報であろうか?
地球の男はかわいい子に弱いそうなので。
まあ、あまり生かせてなかったが(笑)。

明らかに様子のおかしい野川に口止めされても黙ってた早苗。
普通心配してソガたちに知らせそうなものだが、これも愛ゆえか。
最終的には野川も元の人間に戻ってハッピーエンドでよかった。
しかし、怪しい宇宙人にサイボーグに改造され脳にまで何か埋め込まれた野川を「いやあ、何とかなるでしょう」と手術して元に戻す医師が何気に凄い。
というか、かなり深刻な状況なのにあまりにも軽く言うもんで笑ってしまった。
因みに早苗役は特撮ヒロインでお馴染み宮内恵子こと牧れい。
アンドロイドゼロワン役が内定していたくらいなので、やはりなかなかの美人。
ただ、カメラワークがおかしかったり、画面が暗かったりでイマイチ顔がはっきり見えなかったのが残念だった。
せめて最後の花嫁衣装はアップぐらい撮らないと勿体ない(笑)。

ゴムボートからダイビングするフルハシ。
後ろ向きで飛び込むなどなかなか本格的なので経験者かと思いきや、研究読本のインタビューでは素人とか。
しかも背負ってたボンベは実は消火器を塗り替えただけのもの。
時代とは言え、なかなか無茶な話。
結局ボーグ星人の円盤は見つからなかったが、さすがにあの沼をフルハシ一人では無理だろう。
かと言って沼の水を全部蒸発させるのはやり過ぎ。
池の水を全部抜きましたどころではない。
さすがキリヤマ隊長(笑)。
あの後朝日沼がどうなったのか気になる。

ボーグ星人の円盤が野川の車を吸い込むシーンは結構好きなシーン。
セブンは車が飛ぶシーンが多いが、ミニチュアワークはなかなか凝ってると思う。
今回はボーグ星人との対決が妙に長尺だった。
時間が余ったのであろうか?
しかしボーグ星人の笑い方はなかなか癖がある。
あの女優が吹き替えているのであろうか?
地球侵略のために防衛軍基地を破壊しようとしたボーグ星人。
ポール星人に真っ先に狙われたのも防衛軍基地だし、宇宙人の間では結構評価は高いようだ。
しかしボーグ星人の最後は結構グロい。

解説でも書いたが、直接作戦室に通報電話が入るのは不自然。
セブンに限らずウルトラシリーズではこういうシーンちょくちょくあるが、刑事ドラマの影響であろうか?
怪獣や円盤を目撃したというならいざ知らず、若い女性が倒れていただけで通報されては迷惑千万。
これじゃ簡単にいたずら電話できると思う。
まあ、TACとかだと子供の電話は基本無視するけど(笑)。
偽物に簡単に基地に侵入されるセキュリティの甘さは問題だが、宇宙人も普通にメディカルセンターに侵入する。
まあ、宇宙人を警備隊員に雇ってるくらいだから、実際セキュリティは甘々なのであろう。
最終回までダンの正体がバレないのもそういういい加減さにあるのかもしれない。

本話の脚本は藤川桂介。
研究読本のインタビューによると本格怪獣ものを書いてもいつも没になるらしい。
本人も「セブン暗殺計画」以外はあまり印象にないとのことで、本話もかなり地味な話。
ただ予算不足で怪獣・宇宙人が登場しない話に比べると、特撮パートは結構力入っていたと思う。
監督は前回に続いて鈴木俊継。
こちらも特に奇をてらった演出はしていない。
前作と違って娯楽作なので、息抜き的な部分もあったのではないか。
その分人間ドラマはやや掘り下げ不足ではあるが、目立った粗も少ない話。
ツッコミどころは多いがテンポもいいのでそれなりに楽しめる話にはなってると思う。

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