レオが危い!暗殺者は円盤生物


データ

脚本は阿井文瓶。
監督は前田勲。

ストーリー

「ブラックスターの地球侵略三番手、アブソーバよ来い~」。
円盤生物アブソーバを呼び寄せるブラック指令。
夕食の準備をする美山家を襲う大きな地震。
ゲンはそれが円盤生物の襲来だと気がつく。
「あいつらはレオを殺すために何度でも襲ってくるんだ」とトオル。
「あいつらは僕たちの仇なんだ。レオに協力してあいつらをやっつけるんだ」。
外に出ようとするトオル。
それを制止するゲン。
すると揺れが収まった。
「今夜は様子をみよう」とゲン。
翌日、ゲンとトオルは円盤生物が落ちたらしき山へ探索に行く。
そこで数人の子どもたちにいじめられてる少年ヒデユキと出会う。
「大勢で一人をやっつけるなんて卑怯だぞ」とトオル。
するといじめていた少年たちは、ヒデユキが自分たちが撃ち落とした雀を横取りしたと言う。
いじめていた子どもたちにチューインガムを渡して雀を譲ってくれるように頼むゲン。
ガムをもらって去っていく少年たち。
ヒデユキは助けられた礼も言わずに自分の小屋へ戻っていく。
しかしゲンはその小屋から異常を感じた。
ヒデユキを追いかけるゲン。
しかしヒデユキは
「付いてきちゃダメ」と2人を制止する。
トオルを突き飛ばして棒で地面に線を引くヒデユキ。
「ここからこっちは僕の国だから、入っちゃいけない。力が強いからといって弱い者を平気で殺す奴は入れない国なんだ」とヒデユキ。
「わかったよヒデユキくん。でもあの小屋には何がいるんだい」とゲン。
「あれは僕の国で病院さ」とヒデユキ。
人間に傷つけられた生物を治す病院だとヒデユキ。
ゲンたちは宇宙生物みたいなものはいないのかとヒデユキに聞く。
「ブラックスターから飛んできた円盤生物さ」とトオル。
「そんなでっかいものがあの小屋に入るはずないじゃないか」とヒデユキ。
「形は小さいかもしれないんだ」とゲン。
しかしヒデユキは「いないったらいないよ」と強く否定する。
2人を追い返すヒデユキ。
トオルを宥めて帰ることにするゲン。
それを高台から眺めるブラック指令。
小屋に戻ったヒデユキ。
小屋の中はヤギや鶏、犬、家鴨などの怪我をした動物たちで溢れていた。
「あ、そうそう」。
小型化した円盤生物を手に取るヒデユキ。
「お前は宇宙生物かな。でも心配しなくていいよ。何もしやしないからな」。
その光景を水晶で透視するブラック指令。
するとアブソーバは触手を伸ばし、少年を眠らせてしまった。
小屋の中を飛び回る円盤。
暴れる動物たち。
アブソーバはガラスを突き破って外に出る。
「アブソーバよ行け」。
ブラック指令が命令すると巨大化したアブソーバが街を破壊し始めた。
逃げ惑う市民たち。
さらに自衛隊が出動して攻撃するも、逆にアブソーバにやられてしまう。
「畜生」。
悔しげにそれを眺めるゲン。
アブソーバは石油タンクを襲い、エネルギーを吸い取っていく。
タンクを破壊するアブソーバ。
部屋に戻ったゲンとトオルはアブソーバの出現ポイントからヒデユキの小屋が潜伏先と確信する。
出かけようとする二人。
しかしいずみは暗いから危険だと二人を止める。
「せめて明日の朝にして」といずみ。
その間に円盤生物が出たらというトオルに対していずみは
「暗くなってから円盤生物が出たというニュースはなくなったわ。お願い。危険なことしないで」と言う。
翌朝ヒデユキの小屋へ向かう二人。
2人はヒデユキの張った仕掛けに足を引っ掛け、その音でヒデユキに気づかれてしまう。
「入っちゃいけないと言ってあるだろ」とヒデユキ。
「こんなに早くから」。
驚くトオルに対してヒデユキは、雀の具合が悪いから暗いうちから看病してると言う。
「ヒデユキくん。お兄ちゃんにこの辺を調べさせてくれないかな」とゲン。
しかしヒデユキはそれを拒否する。
「昨日現れた円盤は確かにこの辺に基地を持っているんだ」。
説得するゲン。
「そんなものいないよ」とヒデユキ。
「じゃあ、調べさせてもらってもいいじゃないか」とトオル。
あくまで拒絶するヒデユキ。
「もし円盤生物がいても、君たちには渡さないよ」。
「なんだって」とトオル。
「君たちは何でもすぐ殺しちゃうからね」とヒデユキ。
「怪しいぞ。君、小屋の中に何か隠してるんだろ」とトオル。
「いやしないよ。僕は雀の看病に忙しいんだ。早く帰れ」とヒデユキ。
怒ったトオルはヒデユキに掴みかかるが、ゲンはそれを止める。
潔く帰る振りをするゲンたち。
しかし二人は引き返してこっそり小屋の隙間から中を覗いた。
小屋の中で円盤を慈しむヒデユキ。
それを見た二人は中に入る。
円盤を隠すヒデユキ。
力づくで円盤を奪おうとして、取っ組み合うトオルとヒデユキ。
トオルに押さえ込まれるヒデユキ。
しかしヒデユキは
「僕は負けたんじゃないぞ。僕が暴れるとカエルが潰れちゃうから動かないんだ」と言う。
ヒデユキの下には冬眠中のカエルがいた。
「ヒデユキくん。今君はカエルが潰されちゃ困るから君は暴れないと言ったね?だったら怪獣や円盤生物だって同じじゃないかな。怪獣が暴れると、その下で人間やたくさんの生きものが潰されちゃうんだよ。それとも君の国の生き物じゃなくちゃ、潰されちゃっても構わないのかい?」とゲン。
首を振るヒデユキ。
「そうじゃないだろ。だったら調べてもいいかい?」とゲン。
渋るヒデユキ。
「頼むよ」とゲン。
「殺さない?」とヒデユキ。
殺さないと約束するゲン。
円盤生物の入ってる箱を開けるゲン。
しかし中からは青い煙が吹き出し、円盤が飛び出てきた。
棒で叩こうとするトオル。
しかしヒデユキはそれを止めようとする。
それを振り払うトオル。
トオルは棒で円盤を叩き落として執拗に殴り続ける。
ゲンの制止も聞かず叩き続けるトオル。
「殺さないと言ったじゃないか」。
トオルを止めるヒデユキ。
その隙に脱出した円盤は小屋の中で炎を吐き始める。
逃げ惑う動物たち。
それを見て激昂するヒデユキ。
必死で円盤にやめるように言うヒデユキ。
「みんな死んじゃうよ」。
必死に動物たちを逃がそうとするヒデユキ。
それを手伝うゲンとトオル。
しかしゲンはアブソーバの不審な様子から危険を察知して2人を小屋から連れ出した。
小屋から必死で離れる3人。
青い煙が充満する小屋。
ヒデユキは途中で落としてきた雀を助けようと小屋に近づく。
しかしゲンは必死でそれを止めた。
「伏せろ」。
爆発する小屋。
その中から巨大化したアブソーバが姿を現した。
爆発の炎に巻かれる雀を助けようとするヒデユキ。
しかしゲンに連れ戻されてしまう。
炎に巻かれる雀のかご。
それを見て涙を流すヒデユキ。
「畜生。僕の雀を」。
激昂したヒデユキはアブソーバに石を投げつける。
一緒になって石を投げるトオル。
「おおとりさん。あいつをやっつけて」とヒデユキ。
触手を伸ばして近づくアブソーバ。
2人に逃げるように言うゲン。
しかし2人はアブソーバに捕まってしまった。
それを見てレオに変身するゲン。
アブソーバの触手を叩き切って2人を助けるレオ。
触手を巻きつけてくるアブソーバ。
レオは首に絡みついた触手を叩き切って、さらにレオキックを浴びせる。
炎を吐いて攻撃するアブソーバ。
レオはアブソーバの触手に足を取られてピンチになる。
しかし最後はタイマーから光線を発射。
アブソーバは大破した。
ショックで元気をなくすヒデユキ。
いずみたちはヒデユキを励まそうとカナリアをあげると言うが、ヒデユキは拒否する。
「僕がやっつけてと言った。僕が殺したようなものだ」。
「違うよ、ヒデユキくん。君が悪いんじゃないよ」とゲン。
首を振って去ってゆくヒデユキ。
「おおとりさん。一人にしといてあげなさいよ。大丈夫よ。子供は誰でもね、あんな風にいくつもの障害を乗り越えて段々大人になっていくものなのよ」と咲子。
「ブラックスターよ、次だ!ウルトラマンレオを倒せる円盤生物、デモスよ!」
また一つ、ブラックスターからの暗殺者デモスが地球に向かった。
今やレオを助けてくれる者は誰もいない。

解説(建前)

ヒデユキはなぜあのような小屋を持っていたのか。
おそらくあの小屋はヒデユキの親若しくは祖父あたりが所有してるものだろう。
動物たちはヒデユキが拾ってきたり、知り合いから預かったりしたものだと思われる。
そして重症の動物が見当たらないことから、あの小屋は言わばリハビリ施設のようなものではないか。
とすると、ヒデユキの親族若しくは知り合いに獣医がいるという可能性は高いであろう。

感想(本音)

子供の頃見た記憶はあるのだが、今見るとかなり強烈な話。
何よりも動物の命を優先する少年がその動物を殺した相手に殺意を抱くという、なかなかに恐ろしい話である。
脚本は田口氏とともにレオを支えた阿井文瓶氏。
どこまで氏が意識したのかはわからないが、平和主義の欺瞞を暴くという内容はどちらかというと右翼的。
また、近年ますます過激になっている動物愛護運動に対するアンチテーゼともなっている点、再評価が必要なエピソードであろう。

前回とは打って変わって円盤を仇だと言うトオル。
これは前回の件で円盤が地球侵略の尖兵だと認識したからであろうが、レオを倒すためにやってくるとはいかなることであろうか。
レオ最終クールでは「ウルトラマンが怪獣を呼ぶのでは」というテーマが取り上げられるが、それを意識したのか単に地球侵略のためにレオを倒しにくるという意味なのか。
この時点でウルトラマンが怪獣を呼ぶというテーマが意識されていたのか否かはわからないが、シリーズ打ち切りによって怪獣や宇宙人が出なくなる=ウルトラマンがいるから怪獣が出るという逆説はある程度スタッフの共通認識になっていた可能性はあるだろう。
それがテーマとして結実していく過程としてのトオルのセリフだったのではなかろうか。

本話の中心は何と言ってもヒデユキ。
ちょっと滑舌が悪いのが残念だが、演技は結構できてた気がした。
動物好きで傷ついた雀を守るためにいじめっ子と戦う。
ちょっと孤立しがちで山小屋に一人でいることが多い。
子ども番組だとこういうキャラは基本的に善人に描かれるのだが、前述したようにヒデユキはそういう風には描かれていなかった。

そもそもいくら傷ついてるとは言え雀を横取りするのはあまり誉められた行為ではない。
ある意味自分は正しいから犯罪は許されるというのと根底は似ている。
またガムを渡して雀を取り返してくれたゲンにお礼も言わず帰ったり、自分の小屋とは言えトオルを突き飛ばして棒で線を引いたり、実は円盤が悪い奴だと薄々気づいていながら守ろうとしたり、悪気はないにしても好意的な描かれ方はしていなかった。
そんなヒデユキに対してゲンは「怪獣が暴れると、その下で人間やたくさんの生きものが潰されちゃうんだよ。それとも君の国の生き物じゃなくちゃ、潰されちゃっても構わないのかい?」と容赦なくその欺瞞を告発する。

この手の話でよくあるパターンだと少年は円盤やブラック指令に操られて彼らの味方をしてしまうのだが、ヒデユキに関しては眠らされるシーンはあるものの、基本的に自分の動物愛護精神で円盤を守っている。
もちろんそういう精神を利用している指令や円盤側が悪いのは確かなのだが、実は少年も変わった生物を手に入れた満足感に浸ってる節も見られ、そう単純には割り切れないであろう。
子どもってのは基本的に珍しいものを独り占めしたいという欲望を持っている。
ヒデユキが単純に善人に見えないのは、本話がその辺を意識的に描いているからだと思われる。
そして最終的に自らの欺瞞に気がつく少年。
話の内容は全く違うが、ちょっと「悪魔と天使の間に」で聾唖の少年を擁護する伊吹親子を思い出す。

遂に円盤はヒデユキの大事にしていた小屋を壊し、かわいがっていた雀まで殺してしまう。
それを見て激昂するヒデユキ。
ヒデユキは薄々街を破壊した円盤が自分の保護してる宇宙生物だと感じていた。
しかし、ヒデユキは宇宙生物がゲンたちに殺されないように守ってやろうとしていた。
おそらく自分がその生物を大事にすることで分かり合えると思っていたのであろう。
この辺りは博愛主義的な考えからであろうが、少々宗教的ともいえる。
ただし、所詮子供であるヒデユキはそこまで人間ができてはいなかった。
本当の博愛主義なら相手がどんな悪者でも許し受け入れるものだが、ヒデユキはあっさり寝返ったのである。
この辺りの心理は死刑反対を主張していながら身内が殺されたために、加害者に死刑を求める心理に似ている。

しかし、その心理は人としてはある意味当然なのである。
どんな相手でも許すなんてのは人間には不可能。
それこそ偽善に過ぎない。
実際自分が当事者になった時に博愛主義を貫ける人間なんて極少数であろう。
そして、それが健全とはとても思えないのだ。
また、ヒデユキは宇宙生物の味方になることにより、相手もわかってくれると考えていた。
しかし、これも甘い。
こっちが善意で接すれば相手も善意で返してくれる。
こんなのもまた、偽善に過ぎないのである。

怪獣とわかり合おうなんて無理。
怪獣は人間の命を脅かすものだから倒さねばならない。
これはある意味ウルトラの不文律であり、ウルトラの基本である。
しかし、この基本に疑問を抱き変化球を投げた作家たちがいた。
言わずと知れた実相寺、佐々木コンビ。
「故郷は地球」や「怪獣墓場」等ウルトラを代表する作品を世に送り出した二人だ。
ここでは両氏の作風については敢えて語らないが、本話はある意味その2人の路線に対する反革命的な話になっている。
ちょっと話を膨らませ過ぎたが(笑)ウルトラを見たことがないという阿井氏。
その阿井氏がおそらく無意識にこういう反革命的、反動的な話を書いたということ自体何とも面白いところだ。

話がシリーズ論に脱線してしまったので、レオの話へと戻そう。
本話の中心はやはりヒデユキの欺瞞の告発及びヒデユキの成長にある。
ヒデユキは自分のやってきたことが間違ってることに気がついた。
言い方は悪いが、世の中そんなに甘くないのである。
話せばわかるなら、アルジェリアの人質事件みたいな悲劇は起こらない。
現実社会には厳然として敵と味方、相容れない存在があるのだ。
この教訓はまさに子供を甘やかさないというレオのコンセプトに沿ったものだろう。
そして前話でも書いたが、今回も子供であるヒデユキが指導されるべき立場で指導する側がゲンであるというところに、円盤生物シリーズのテーマが伺われる。

咲子は言う。
「大丈夫よ。子供は誰でもね、あんな風にいくつもの障害を乗り越えて段々大人になっていくものなのよ」。
この偽善で終わらせない厳しさ。
これこそまさにレオなのである。
なかなかに強烈なメッセージ性のある本話。
レオの最終クールという知名度の低さからあまり取り上げられないエピソードだが、これが初代マンやセブンなら或いは名作と言われたかもしれない。
その辺りは仮定の話なので保留するが、少なくとも現状においても十分問題作であるのは間違いないであろう。

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