帰ってきたひげ船長!


データ

脚本は若槻文三。
監督は山本正孝。

ストーリー

怪しい宇宙船をレーダーで捕捉するMAC。
しかし宇宙船は海中に潜りレーダーから姿を消してしまった。
マッキーで捜索するゲン。
その頃、海で釣りをしていたトオルとカオルは一人の中年男に出会う。
その男は漁船の船長で、パイプを咥えひげを生やしていた。
そのとき、浜辺の方で騒ぎが起こった。
緑の髪の毛の不思議な子どもを追い回す漁村の住民たち。
「魚が獲れなくなったのはこの野郎のせいだ」。
「化け物だ、殺してしまえ」。
「かわいそうだよ。化け物じゃないよ。星人かも知れないよ」と村の子ども。
「星人ならなおのこと、括るぜ」と漁民。
トオルたちと現場に駆けつけた船長は子どもを助け出す。
そしてお守りにしていた大きなバロック真珠を見せ、代わりに子どもを助けるように説得する。
子どもを助けだした船長。
一方、トオルは星人の子どもだとゲンに通報する。
子どもを連れて逃げる船長。
「海から来た星人の子か」と船長。
頷く子ども。
「お前、一人で逃げられるか」。
「捕まるんじゃないぞ。いいか、人間は怖いぞ」と船長。
海へ救援信号を送る星人の子ども。
その夜、パラダイ星人のこどもが船長の所へ戻ってくる。
子どもは船長に恩返しがしたいから岩場まで来て欲しいと言う。
そこへゲンとトオルがやってきた。
「あれは悪い星人じゃないよ。俺に恩返しをしてくれるそうだ」と船長。
「危険ですよ、それは」とゲン。
「危険?人間の方がよっぽど危険だと思うんだけどね。あんなかわいい星人の子を殺そうとしたんだからね」。
「船長さん」とトオル。
「俺はもう船長じゃないんだ。去年は不漁でね。船から降りろと言われてるんだ」。
「魚が獲れなかった。いや獲らなかったのかな。よその国の権利を侵してまで」。
「おおとりさんと言ったね。俺はあの星人の招待を受けるつもりだ」と船長。
「帰れなくなるかもしれませんよ」とゲン。
笑い飛ばす船長。
「しかし、俺がこの辺の漁師だったら、助けてやったかな」と自問する船長。
そこへ昼間の漁師が走ってきた。
漁師は大人の星人に追われて逃げてきたと言う。
「きっと、親の星人が怒って仕返しにきやがったんだ」と漁師。
トオルに船長とホテルに戻るようにと言い残して村へ向かうゲン。
一人岩場で星人の子を待つ船長。
そこへ宇宙船が現れ、船長を中に収容する。
不思議な部屋へ通される船長。
「ようこそ、船長さん」。
そのとき、壁の能面から星人の声が聞こえてきた。
「ここはどこだ」と船長。
「我々の潜水艇の貴賓室」と星人。
船長が差し出された椅子に座ると、椅子は宙に浮く。
「これは楽だ。雲の上に乗っているみたいだ」と船長。
さらにお守りの真珠を船長に返す星人。
翌朝、漁師の一人が船長から貰った真珠がないと仲間に言う。
「嘘付け、独り占めするつもりだな」。
仲間割れを始める漁師たち。
そこへ大人の星人が襲ってくる。
逃げる漁師たち。
助けを呼ぶ声を聞き、現場に駆けつけるゲンたち。
ゲンが銃を向けると星人は姿を消す。
「あんた、MACの隊員だろ。俺たち、助けてくれ」と漁師。
「おじさんたち、星人の子どもを殺そうとしただろ。だから仕返しに来たんだよ、きっと」とトオル。
助けてくれよと、懇願する漁師。
「夢じゃなかったんだなあ」。
夕べ、夜釣りの帰りに大きな亀のようなものを見たと漁師。
岩場に行くゲン。
ゲンは波間に昨日の船長のパイプを発見する。
一方、船長は星人の歓待を受けていた。
美味しい食事で船長をもてなす星人。
さらに船長がパイプを落としたというと、星人は黄金のパイプを船長に与える。
しかし星人はそのパイプでタバコは吸わないでくださいと船長に警告する。
「しかし、どうしてこんなに親切にしてくれるのですか」と船長。
「殺されそうになった私たちの子どもを助けてくれたからよ」と星人。
「地球の人間だったら誰でも助けるさ」と船長。
「しかし私たちの子どもを殺そうとした人間もいた。地球には心の中に悪魔の住んでいる人間もいる。我々は悪魔を憎む。見ているがいい」と星人。
再び漁師の前に姿を見せる星人の子ども。
それを殺そうとする漁師たち。
そこへ大人の星人が現れた。
星人に殴られ、気を失う漁師。
「女王様。地球の人間はやはり悪魔です。また僕を殺そうとしました」と星人の子ども。
「あの2人ですね。お前はすぐ帰りなさい」と女王。
「人間は危険です。悪魔が住んでいる村を襲いなさい」と女王。
「助けてくれ、誰か」と漁師。
星人に殴られ倒れこんだ漁師の話を聞くゲン。
「村が襲われる。俺の子どもが村にいる。俺の子どもは家に。頼む。助けてくれ」と漁師。
「あんた、星人の子どもを殺そうとしたんだぞ」とゲン。
「悪かった。何もかも俺たちが悪かったんだ」と漁師。
星人を追い詰めるゲン。
しかし、2人のパラダイ星人は合体して星獣キングパラダイに変身する。
MACの攻撃をものともしない星獣。
村を壊滅させるキングパラダイ。
それを見たゲンはレオに変身する。
尻尾を使って攻撃するキングパラダイ。
口から煙を吐き、さらに星型の耳から光線も出した。
苦戦するレオ。
何とか星獣の背後を取り、耳をもぎ取るレオ。
丸く身を固めたキングパラダイに耳を投げつけるレオ。
最後はエネルギーを溜め額からビームを出し、キングパラダイを退治する。
無事戻ってくる船長。
しかし船長の船には新しい船長が乗ったため、船長はもう二度と出航しなかった。
黄金のパイプでタバコを吸う船長。
すると、船長は白ひげの老人になってしまう。
ある日、街中で子どもたち相手に話をする老人に出会うゲンとトオル。
老人の顔に見覚えのあるゲン。
すると「おおとりさん、確かおおとりさんと言いましたね」とその老人が語りかける。
「あっ、船長」。
驚くゲン。
「しーっ」。
立ち去る船長。

解説(建前)

パラダイ星人は何のために地球に来たのか。
星人がキングパラダイになったのはあくまで村人へ復讐するため。
船長を歓待したことからも、地球人が話がわかる種族なら攻撃は仕掛けなかっただろう。
しかし、それでも子ども1人を見知らぬ村に送り込んだ理由はわからない。
偵察目的なら、大人の星人を派遣すべきだからである。
下手すれば子どもは村人たちに殺されていた。
偶々船長が助けてくれたから良かったものの、知らない星に来たにしては迂闊である。

今回の話にはもう一つ納得できないところがある。
大人のパラダイ星人が結局レオによって葬られた点である。
パラダイ星人が話してわかる種族なら、レオも光線で葬るようなことはしなかっただろう。
村を破壊し人的被害も出していることから仕方ないとはいえるが、それにしては気の毒である。

この点につき私は次のように考える。
すなわち、大人のパラダイ星人は実はアンドロイドか何かで子どもの親やおじさんではない。
そして、この2人は地球人と話し合えるほどの知能は持ち合わせていないと。
大人の2人は言わば、女王たちのボディーガード的な存在。
そして、子どもはおそらく女王の実の息子であろう。
つまり、この旅は実は親子2人による宇宙旅行だったのである。

2人の旅の目的はわからない。
ただ、女王とその息子だとしたら、考えられるのは亡命である。
2人は地球に亡命したかったのかもしれない。
もしかしたら地球がいい星だという情報は先祖から聞いていたのではないか。
その先祖が浦島太郎を歓待したかはともかく、地球人が温厚な優しい民族だと2人は聞いていたのだろう。
だから子どもを村に派遣した。
女王は船を守らないといけないし、2人の大人は交渉能力がない。
とすると少々危険でも子どもを派遣する以外なかったのである。

本話では結局、パラダイ星人の女王やその子どもがどうなったかは描かれていない。
おそらくダンやゲンと話し合って和解したものと思われるが、その後何処へ行ったかは謎である。
もしかしたら、今でも海底で暮らしてるのかもしれない。
2人の目的が亡命なら、海底で安全な生活が保障されるなら不満はないはずだからである。
その辺りは知る術はないが、少なくともレオやMACに退治されたという可能性はないであろう。

では、船長にわざわざ老化するパイプを渡したのは何故か。
正直これもよくわからない。
いくら吸ってはいけないと忠告したとはいえ、これは恩人に対する仕打ちとは考えられないからである。
難しいが、一応私は次のように考える。
すなわち、パラダイ星でもタバコは嗜好品として愛されている。
しかし同時に体にも害をもたらすのだと。
女王はあくまでタバコを吸うのは自己責任だと考えていたのだろう。
結果的に副作用が強すぎて白髪になってしまったが、船長はそれでもパイプを手放さなかったので、その件に関しては後悔はないようだ。

感想(本音)

解釈が難しい話だが、なるべく逃げずに解釈してみたつもりだ。
ただ、少々無理があるのは否めないだろう。
これは浦島太郎のストーリーに合わせるという制約のためだと思われる。
あくまで民話シリーズなので、あまり細かい設定を決めてしまうとその意味が薄れてしまう。
そういう事情もあって、こういう不思議な話になったのであろう。

本話の脚本はセブンでお馴染み、若槻文三氏。
レオへの参加はこれで4本目だが、4本の中では本話が一番SF色が強くセブンのテイストに近い作品となっている。
体裁は民話シリーズだが、人類と星人の利害が衝突する点などは「ダークゾーン」や「超兵器R1号」を彷彿させる。
人間の心に潜む悪魔性にスポットを当てるなど、かなりダークなところも若槻氏らしいといえるだろう。

しかし、本話で若槻氏は何を言いたかったのか。
単に民話に合わせるだけの適当な話作りだったのか。
もちろんその可能性も否定できないが、それにしてはあまりにも意味深なストーリーである。
やはりこの話の中にはある程度、作家の主張というものが入っているのだろう。
以下、私の独断と偏見。

まず漁民について。
漁民たちは村にやってきた星人の子どもを問答無用で殺そうとした。
確かに勝手に地球にやってきた密入国者で何を考えてるのかわからない宇宙人に遭遇したら、誰でも出来るなら退治してしまいたいと思うだろう。
レオの世界での星人たちの悪辣非道ぶりは言わずもがな。
正直、この村人の行動をそれほど非難は出来ないと思う。
正当防衛と言えないこともないだろう。

ただ、彼らは結局船長の持ち出したバロック真珠に目が眩んで子どもを釈放している。
相変わらず子どもを殺そうとしてたし、正直人間的に誉められたものではないだろう。
最後は改心したように根っからの悪人ではなさそうだが、人間の醜い一面、すなわちエゴイズムを象徴する存在である点変わりない。
漁師たちには漁師たちの論理はあるだろう。
しかし争いというのは大概こういうお互いのエゴから起きる。
この辺り、戦争を意識して書いていた可能性は高いのではないか。

一方、パラダイ星人。
正直パラダイ星人の行動も誉められたものではない。
人間の心に潜む悪魔性を異常に恐れる星人は報復として村の子どもを殺そうとし、挙句にはキングパラダイを使って村を滅ぼそうとまでした。
気持ちはわからないではないが、勝手に他所の星に来ていながらこれはやりすぎであろう。
あるいは、祖国で人に裏切られた経験から人を信じられなくなったのかもしれないが、それでもそもそも密入国者なのだからこれくらいの危険は覚悟すべき。
キングパラダイという強力な用心棒を従えてる点からも、あまり素行のいい星人とは思えない。
ちょっと強引ではあるが自分たちを正義と考えてる点、星人側にも大国のエゴ的な身勝手さは窺えるだろう。

それでは船長は何者か。
ズバリ、大国に翻弄される小国。
あえて言えば日本ということになろうか。
日本は大国のおかげで豊かな生活を手に入れた。
しかし、それによって失ったものも大きいだろう。
船長は星人から黄金のパイプを貰う。
しかし、それを吸ってはいけない。
豊かさにはその代償が必須なのである。

ただ、これも見方を変えると自分の意志を貫いた代償とも見れる。
すなわち、故意ではないにせよ大国の言いつけを破った船長は人間として自立した。
会社の命令だからと言って他国の領域にまで出かけて漁をすることに嫌気が差した船長。
老人になってしまってどうやって暮らしてるのかはわからないが、子どもたち相手に話す船長には一人の自立した人間の自信のようなものが感じられる。

と、自分勝手な解釈で若槻氏の真意からは程遠いものになった感もありますが、独断と偏見なのでご容赦を。
その他、気になった点。
最後、子どもたち相手に語る船長だが、その周りの子役は何処となく見覚えある子が多い。
バサラのカナエちゃんと思しき女の子、ゼラン星人の輝男くんが少し成長したかなという感じの少年などなど。
パラダイ星人の少年も何処かで見たような気もしますが、どうでしょう?
あと子役ではないけど、阿藤快さんの好演も光りました。

本話の最大の問題点は解釈でも書いたが、星人と村人、地球人との和解が描かれていない点である。
結局あの子はどうなったのか。
あの能面の女王は何だったのだろう。
その辺りが見事にすっ飛ばされているのである。
尺の都合とも考えられるが、さすがにこれだけ大事なところを尺の都合でカットするのは本末転倒。
まるで船長が見た夢の中の話であったよう。
もちろんそういう解釈も成り立つ。
そもそも元ネタである浦島太郎からして、竜宮城の数日間を夢のようだと表現しているので。
ただ、仮に乙姫たちが夢の世界の住人だとしても、太郎や船長は現実の世界の住人である点間違いないだろう。

太郎も船長も約束を破ってしまう。
恩人である浦島太郎は乙姫から老人になる玉手箱を贈られた。
一方、船長もパラダイ星人の女王から老人になるパイプを贈られた。
そして2人とも約束を破ったため老人になってしまうのである。
浦島太郎が何故老人にならねばいけなかったのか、私にはわからない。
それは快楽の代償だったのかもしれない。
同様に船長が老人になったのは、潜水艇での楽しい時間の代償かもしれない。
しかしその代償として老人になってしまうのはあまりにも酷に思える。
子どもの頃浦島太郎の童話を聞いて、浦島太郎に同情しなかった人は少ないだろう。
かく言う私もそうであった。

本来なら船長も気の毒な被害者ということになろう。
しかし本話においては、船長は自らの境遇を楽しんでさえいるように思える。
浦島太郎がまさか享楽主義を肯定した話とは思わないが、解釈のしようによっては人生短いんだから楽しまなきゃ損だよとも解釈できる。
本話のテーマはまさにそこにあるのではないか。

一見、レオの基本路線からはあまりに離れたテーマに見える。
しかし歯を食いしばって耐えるばかりが強い人間ではない。
自らの境遇を楽しむことが出来るのもまた強さなのだ。
そして、それが人間としての自立につながる。
正直子どもが見てもそのテーマは理解できないだろう。
大人になった今こそ、船長のような生き方も理解できるのである。

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