美しいおとめ座の少女


データ

脚本は奥津啓二郎。
監督は前田勲。

ストーリー

地球に向かう宇宙船をキャッチするMAC。
「このスピードでは地上に激突します」と白川。
宇宙船はそのまま地球に墜落した。
中から老人と若い娘が。
「おじい様、しっかりして」と少女。
出動するMAC。
しかし現場には残骸があるのみで人の姿は見当たらなかった。
宇宙金属を発見するゲン。
MACは付近を捜索する。
その頃少女カロリンは病院で老人の往診を頼み込んでいた。
往診はしないと断られる少女。
地球人に不信を抱くカロリン。
パトロール中のゲンはカロリンをロディで轢きそうになる。
顔に泥がついたカロリンにハンカチを貸してあげるゲン。
カロリンが去った後、ゲンは道路に宇宙金属が落ちているのを発見する。
その夜、ゲンはカロリンに助けを求められる。
「お願いです助けてください。おじいさんが死にそうなんです」とカロリン。
「君は地球人じゃないね」とゲン。
「お願いです、助けてください」。
カロリンについていくと、怪我をした老人が高熱で苦しんでいた。
病院へ連れて行こうと言うゲンだが地球人は信用できないとカロリン。
「じゃ、何故僕を」とゲン。
「あなたは地球人じゃないわ。それにいい人だわ」とカロリン。
ゲンの必死の看病のおかげで老人は何とか回復する。
カロリンに宇宙金属を返すゲン。
「これね、おじいさまがお誕生日にくださったの」とカロリン。
ゲンはカロリンの胸にその金属をつけてやる。
星空を見上げる二人。
「あなたの星はどれ」とカロリン。
「もうないんだ。悪い宇宙人に滅ぼされてしまった」とゲン。
カロリンの星、サーリン星はおとめ座で一番美しい星であった。
しかしある日老人が作ったロボットが反乱を起こし、人々は滅んでしまったという。
「人々は皆殺され、サーリン星はおとめ座で一番醜い星になってしまいました」とカロリン。
「それで君たちは逃げてきたの」とゲン。
「でもきっと追いかけてくるわ。ロボットにはおじい様がまだ必要なの」とカロリン。
「大丈夫。そのときはMACが、いや、僕が守る、守ってみせるよ」とゲン。
「いつかまた、美しいサーリン星にきっと帰れるわよね」とカロリン。
楽しそうにシャワーを浴びるゲン。
ゲンはトオルに百子たちと一緒に映画を見に行かないかと誘われるが、ゲンは予定があると断ってしまう。
カロリンたちの隠れてる空き地へ行くゲン。
「おゝとり君じゃな。話はあの子から聞いています」と老人。
「この分なら、あと10日もすれば起きれるじゃろ。これもみな、あなたのおかげだ」と老人。
そこへ花を摘んできたカロリンが。
「この花綺麗でしょう。川原に咲いてたのよ」とカロリン。
「この花の名前なんていうの」とカロリン。
「これはね野菊って言うの」とゲン。
「野菊、まあ、かわいい名前ね。サーリン星にもね。このお花にそっくりなお花があったのよ」とカロリン。
楽しそうに話をする3人。
しかし、そのときゲンに宇宙船の来襲の連絡が入る。
「ロボット警備隊だわ」とカロリン。
「私はもうどうでもいい。だがこの子だけは助けたい」と老人。
「絶対ここを動いちゃ駄目だよ」とゲン。
「命令するまで決して攻撃するな」。
隊員に命令するダン。
「宇宙船に告ぐ、こちら宇宙パトロール隊。至急応答したまえ」とダン。
「我々はサーリン星ロボット警備隊だ。逃亡者を追ってやってきた。地球に危害を与えるつもりはない。逃亡者ドドルとカロリンを引き渡しなさい」とガメロット。
「勝手なことを言いやがって」。
ダンの命令を無視して攻撃するゲン。
しかしガメロットの攻撃を受けマッキーは墜落する。
「我々の力がわかっただろう。一時間だけ時間を与える。それまでに逃亡者、ドドルとカロリンを連れてきなさい。さもなくば地球を破壊する」とガメロット。
「一刻も早くサーリン星人を見つけ出すんだ」とダン。
「彼らを探し出してどうするんですか」と隊員。
「決まってるじゃねえか。ロボット警備隊に引き渡すのさ」と別の隊員。
「地球の安全を守るためだ。仕方があるまい」とダン。
「そんな酷い」とゲン。
「ゲン、お前サーリン星人の居場所を知っているな」とダン。
「言うんだ」。
「嫌です」とゲン。
2人の隠れ場所へ行くゲン。
ゲンは2人を逃がそうとするがダンに見つかってしまう。
「私はMACの隊長、モロボシダンです。さあ、急いでください。脱出用のロケットが用意してあります」 とダン。
MACロディに2人を乗せロケットに向かうダン。
しかしロディはガメロットに見つかり攻撃されてしまう。
レオに変身するゲン。
しかしガメロットの前に歯が立たず窮地に陥る。
それを見たカロリン。
カロリンはガメロットへ向かって走り出す。
「レオ~」。
銃で攻撃するカロリン。
しかしカロリンはガメロットの攻撃を受け倒れてしまう。
ロケット状に姿を変えるカロリン。
少女カロリンはロボットだった。
空を飛び、ガメロットの心臓部に突撃するカロリン。
動きが悪くなったガメロットに反撃するレオ。
最後はレオキックでガメロットを破壊した。
少女カロリンは宇宙からの逃亡者ドドル博士によって作られ、人を愛することを知ったアンドロイドだったのだ。
少女カロリンの墓を作ってやる3人。
墓に野菊を供え手を合わせる3人。
「たとえアンドロイドでも、この子は私の孫です」とドドル。
「この子がここに眠っている以上、ここが私の故郷です」。
カロリンと一緒にいるため地球にとどまるドドル。

解説(建前)

ダンは何故ドドルたちを信じたのか。
かつてキュラソ星から同じように逃亡者が来たときは、ダンはキュラソ星の警察を信じていた。
当然今回もロボット警備隊の言い分を信じるのが筋であろう。
まず考えられるのは最初からサーリン星の状況を知っていたのではないかということ。
しかしそれにしては隊員たちに逃亡者を引き渡すのを仕方ないと言っており、ダン自身にも逡巡が窺える。
したがって、ダンが最初から知っていた可能性は低いであろう。

それではゲンの言うことを全面的に信頼したためドドルたちを逃がしたのだろうか。
これも普段のダンの言動からは考えづらい。
結局ドドルを逃がしたのは、ダンの総合的判断と考えるのが妥当であろう。
ダンはサーリン星のロボット警備隊の存在自体は知っていた。
しかしそれがロボット自らの意志で行動してるのか、人間の命令に従ってるかの判断が難しかったのであろう。

しかしガメロットは逃亡者を引き渡さないなら地球を破壊するとまで言っていた。
この辺りでダンもガメロットを怪しく思ったのであろう。
加えてドドルたちを守ろうとするゲンの態度。
ガメロットの背後に人間の意志を感じられなかったことも合わせて、ダンはゲンを信じることにしたのであろう。
このことはダンにとっても非常に難しい判断だったに違いない。
結局容赦なくロディを攻撃する姿を見てダンも確信したものと思われる。

感想(本音)

同じ宇宙人でも前回とは違ってかなりシビアな話。
宇宙からの逃亡者をロボット警備隊が追っかけてくるというかなりSFチックな設定になっている。
セブンと言っても通用しそうな脚本であろう。
脚本はウルトラ初参加の奥津啓二郎氏。
ウルトラへの参加はレオくらいであるが、いい意味でアクセントとなる脚本を提供している。
中盤のバラエティに富んだ作品群の一翼を担うに十分貢献している。

本話は宇宙からの逃亡者という点ではセブンのキュラソ星人を思い出させるが、内容は全く違う。
むしろ宇宙人との恋愛という点では帰ってきたウルトラマンの「星空に愛を込めて」のほうが近いといえるだろう。
ただ、「星空に愛を込めて」が祖国を裏切る女スパイという「盗まれたウルトラアイ」にも通ずる、やや政治的な話だったのに比べると、本話はロボット軍の反乱というかなり鉄腕アトム的な内容になっている。
ロボットの反乱というのは「ターミネーター」に代表されるように今でも定番のSF設定だが、そういう意味では本話も王道SF的なストーリーといえるだろう。
変身したカロリンがアトム的な風貌であったこと、ドドルがロボットを作り出した科学者であることなどから、やはり鉄腕アトムの影響が大きいように感じられる。

本話はゲンとカロリンの恋愛が中心テーマとして描かれてる。
ウルトラマンとアンドロイドという成就困難な恋愛という点、岸田とケンタウルス星人あかねの恋愛と被るが、最後はレオを助けるため自爆するというより直接的な行動に出ている点、自分の罪を償うためにグラナダスに特攻するあかねよりも気持ちは強いだろう。
一方ゲンも満更ではなく、地球人の百子よりも同じ宇宙人である(と思ってる)カロリンのほうがやはり親しみが湧くのかもしれない。

この辺りのゲンの心情については、口笛を吹いてシャワーを浴びるというどう見ても浮気描写で描かれていたので、大人視点で今見てみると、レオでこんな話があったんだと驚かされてしまう。
実はゲンは円盤生物編でも女好きな側面を見せており、ウルトラの主役の中では最も女好きなキャラとして描かれてる。
他にも百子と親しくする津山に嫉妬したりと、光太郎辺りではありえなかった男としての弱さを見せている点、昭和ウルトラの中でも特殊なキャラづけであろう。

本話でドドルを演じるのは特撮ではおなじみ、天本英世氏。
ウルトラでは帰ってきたウルトラマン「暗黒怪獣星を吐け」以来の登場となるが、このときと同様科学者役というのは、やはりこういう役が似合うせいであろう。
当時は既に死神博士のイメージが定着してたはずであるが、いずれにせよ博士役が多いのは東大出身の天本氏の知的な雰囲気に負うところが大きい。

一方、可憐な少女カロリンを演じたのは松岡まりこ氏。
松岡さんも仮面ライダーなど特撮中心に出演しておられたようだが、女優としての活動はあまり多くない。
「心にウルトラマンレオ」の真夏氏のインタビューによると、最近(インタビュー時から見て)飲み屋で 偶然松岡氏に再会したとのこと。
現在(出版当時)は会社に勤めておられるとのことである。

今回の敵キャラ、ガメロットはなかなかいい感じのデザイン。
まあ、キングジョー辺りと比べて批判する1期ファンも多いだろうが、個人的にはガメロットのデザインは好きである。
まあ、確かにロボコン系のデザインではあるのだが、やってることの恐ろしさに反するどこかコミカルなデザインは逆にロボット警備隊の不気味さを増しているだろう。
カロリンが突撃するまでの圧倒的パワーといい、なかなか印象深い敵怪獣である。

しかし、ガメロットは本当に悪者なのであろうか。
SFロボットものだとやはりロボットが反乱するのは人間に原因がある場合が多い。
本話ではその辺りが描かれてないが、人間を滅ぼすほどのロボット軍団の威力からすると、やはり軍事的な緊張というのが星にあったのかもしれない。
その辺りを掘り下げてればもっと深い話になったであろうが、それでは30分に収まりきらないので子供向けとしてはこの程度で抑えるのが正解であろう。

本話は解説でも書いたが、ダンが何故ドドルたちを信じたのかについてやや説明不足となっている。
子ども番組的な視点からはドドルたちが正しいのは当然なのだが、ウルトラという大前提を取ってしまうと、どちらが正しいかは一概には判断できないであろう。
この辺り、もう少しダンの心情を描いてもらいたかったところである。
私なんかはダンがドドルたちを騙してロボット警備隊に引き渡すのかとすら思えた。
まあ、これは後年の森次氏の悪役イメージのせいでもあるのだが(笑)、急に脱出用ロケットを準備できるのも不自然ではあるし、この辺り唐突感は否めないだろう。
ただ、本話はSF的テーマや恋愛など上質なエンターテイメントとして完成度は高い。
前話とは打って変わった大人向けな内容。
ある意味レオの迷走を象徴してるとも言えるが、個人的にはバラエティに富んでるレオの中盤は評価が高い。

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