ふしぎな子熊座の少年


データ

脚本は阿井文瓶。
監督は外山徹。

ストーリー

宇宙怪獣同士の戦いを観測するゲン。
出撃を進言するゲンに対しダンは
「我々の任務は地球の安全を守ることだ」
とそれを却下する。
しかし2匹の怪獣は地球へ向かって落下していった。
出動を決意するダン。
「全員出動。というところだが我々2人か」。
本部を自動操縦に切り替えマッキー1号で出動する2人。
2人は怪獣が墜落したらしき地点を二手に分かれて調査する。
急に雨が降り出し雨宿りするゲン。
ゲンは木陰で子熊を発見する。
そこへ少年が現れた。
「君の熊かい」とゲン。
少年はゲンを子熊のお母さんのお墓へ連れて行く。
少年はボックと名乗り、葉っぱの傘をゲンに渡して去って行った。
ダンと合流したゲンはボックのことを知っていた。
ボックは子熊座に住む生物で、とても大人しい性質だという。
ただ子熊座にはドギューという宇宙の嫌われ者がいるという。
そのドギューがボックをいじめて追いかけてきたのではないかとダン。
空から地上のレーダーからドギューを探索するもドギューは見つからない。
そして一夜の内に何人もの人や何体もの動物が得体の知れない怪獣に襲われて殺された。
目撃者によると、熊のような全身毛むくじゃらの怪獣だったという。
動物園の熊を調べるダンとゲン。
するとそこにボックが現れた。
「ボック」。
笑顔で声を掛けるダン。
「あ、セブン」。
「ボック、久しぶりだね。どうしたんだこんなところで」。
「ドギューがこの子熊のお母さんを殺したんだ」とボック。
ボックは自分と間違えられて子熊のお母さんが殺されたという。
「君のお母さんもドギューに殺されたんだってね」とダン。
「ドギューは僕が大きくなってお母さんの敵討ちをするのを恐れて、今の内にやっつけようとしてるんだ」とボック。
そこへ大男が地元の村人を連れてやってきた。
「その子どもは怪獣なんだ」と大男。
大男は怪獣が子どもの姿に戻るのを見たという。
少年は子熊を連れていたと大男。
「この少年が怪獣に変身できるという証拠は何もないじゃないか」とゲン。
「じゃあ、何故マックがここにいるんだね。マックでも怪しいと思ったからこそ、ここを調べに来たんだろ」と大男。
「やっちゃえ」。
ボックに襲い掛かる村人。
子熊を連れて逃げるボック。
何とか村人の追跡を交わしたボックだったが大男に見つかってしまう。
「お前は、ドギュー」。
大男の正体を見破るボック。
斧を振り回して少年を追うドギュー。
子熊はドギューの切り倒した木の下敷きになってしまう。
追い詰められる少年。
危ないところをゲンの銃撃に救われるボック。
大男は駆けつけた村人たちに少年をやっつけるように言う。
「セブン、こいつがドギューだ」とボック。
ゲンの異星人探知機も大男に反応した。
「みんな、騙されてはいけない。こいつこそ怪獣なんだ」とダン。
「出鱈目言うな」と大男。
村人たちも大男に同調しダン、ゲンもろとも少年を退治しようとする。
子熊の亡骸にしがみつき泣き出す少年。
すると少年の涙が花の蕾に落ち花が咲いた。
「ドギュー、正体を現せ」と少年。
ダンが杖から白煙を浴びせるとドギューは巨大化した。
暴れる怪獣。
ゲンはレオに変身する。
ドギューの怪力に苦戦するレオ。
さらにドギューの目潰し攻撃を受けレオは視界を失う。
ピンチに陥るレオ。
そのときボックは母の形見の黒百合に一念を込めて投げつけた。
ドギューの目に刺さる黒百合。
手探りで怪獣を探し、ドギューの目に刺さった黒百合を押し込むレオ。
最後はレオブレスレットで止めを刺した。
子熊座に帰るというボックに対し、地球に残らないかとゲン。
「僕のためにお母さん熊を殺してしまった。ここは悲しい思い出が多すぎます」とボック。
ボックは空を飛んで子熊座に帰っていった。
「さようなら、ボック」とゲン。

解説(建前)

なぜ村人たちは大男の言うことを信じたのか。
普通に考えれば専門家のMACの言うことを信じるのが当然である。
これはおそらく大男が単なるドギューの変身ではなく、村人の一人の姿を模して変身したことによるのであろう。
その村人はドギューの性格からすれば、既に亡き者になってる可能性が高い。

ドギューはなぜ村人や動物を殺害したのか。
単に凶暴であるというのもあるだろうが、これはやはり事件をボックに擦り付けるためであろう。
そのために地元民になりすましてまで、村人を扇動した。
ボックを殺すために地球まで追いかけてきたのだから、手段は選ばないのであろう。

感想(本音)

正直内容の薄い話。
インパクトにも欠け、これは子どもが見てもあまり印象に残らない話だと思う。
まあ、まだキャリアの浅い阿井氏だけに致し方ないか。
ただ善良な宇宙人が子どもというアイディアはいいと思う。
子役の泣く演技もまあまあ良かったし。

この話で一番気になったのは、やはり他の隊員が全く出ないところ。
これはロケの都合だろうが、マックという組織の性格から考えるとあまりに不自然であろう。
怪獣退治の最前線にいるのに夏休みとか取ってる場合ではないと思う。
しかも2人以外全員。
ただ実際問題2人以外はいてもいなくても同じなので、無駄な犠牲者を出さないためにはいいのかもしれないが(笑)。

ボックはゲンに葉っぱの傘を渡している。
これは何を意味するか。
単にボックは優しい奴なのか、それともゲンの正体を知っているのか。
これはやはり前者であろう。
けだしボックはダンにはセブンと話しかけていたこと及び、ダンによるとボックはとても優しい性格だからである。
レオを知っていればそれなりの描写はあるはずである。

今回ドギューは容赦なく一般人を虐殺している。
子ども向けとは思えない生々しい描写に驚かされるが、レオではお馴染みなので特に問題はないだろう。
ただしこの話でこういうシーンがあるというのは違和感がある。
少年がレオの変身ポーズをするシーンと対比すると、とても同じ番組とは思えない。

今回のポイントの一つにダンとボックが知り合いというのがある。
しかもボックはダンをセブンと読んでいる。
ダンはやたら宇宙人に詳しいが、直接の知り合いは今まで出てこなかった。
光点観測員という仕事がら宇宙人や宇宙生物には詳しいのはわかるが、直接知り合いというのは珍しい。
おそらくダンは子熊座がまだ平和な時にボックと知り合いになったのであろう。
ドギューと面識がなかったことからも、その後にボックがやってきて星が荒らされたものと思われる。
ボックは母親をドギューに殺されており、レオと似た境遇にある。
この辺りさりげなくレオの境遇が再確認されているように思う。

今回はストロング金剛のような大男がインパクトがあった。
ボックが泣いてる時ちょっと同情するかのような表情になった気もしたが、基本的には憎憎しい粗暴なキャラをしっかり演じていたと思う。
ただ大男の行動原理は正直よくわからなかった。
話の都合に合わせて動いてる感が有り、この辺りは正直脚本の薄さは否めないと思う。

レオとドギューの戦いは目潰しという如何にも卑怯な手段で攻撃するドギューが良かった。
正直ドギューの最期はかわいそうでもあるのだが、あれだけ悪事を働き多数の死者を出しているのだから、葬られても仕方あるまい。
人の死をしっかり描くと怪獣を倒すことに対する正当化がしやすいので、そういう意味では残酷シーンも意味があるであろう。
ただ、最期目を串刺しの上足切断なんだから、こういうのを喜んで見てる日本の子どもってのは外国から見たら奇異に見えるんだろうな。

ボックの投げつけた黒百合はかなり唐突感があった。
あんなのいつの間に持ってたんだ。
しかもかなり威力あるし。
まあ、あれは母の形見として肌身離さず持っていた最後の切り札ということにしておこう。
しかし、ボックが最後飛び立つシーンはかなり脱力物。
シュワッチって…。

正直本話は展開がかなり強引かつ御都合主義なので、脚本の出来自体はあまり良くない。
ロケ先にありきだったのかもしれないが、それにしてもやっつけ感は否めないだろう。
一応話の中心は少年と子熊の物語のようにも見えるが、その辺りも結局あっさり流されており掘り下げは浅い。
ゲンと少年、ダンと少年の交流としても描きこみは浅いと言わざるを得ないだろう。
ドギューにしても如何にもなキャラであまり魅力は感じられない。

とまあ、辛口だが、話自体に破綻があるかというと特にそういうことはない。
そういう意味では無難にまとめられているとは言えるであろう。
ただウルトラではもっと上のレベルを求められるのは忘れてはならない。
北海道の美しい自然やダンとボックの交流など魅力もあるが、マックの隊員が出ていないなどの致命的な問題もあり、どうしても評価を低くせざるを得ないのが偽らざる本音だ。
欲を言えば、もう少し毒があった方が印象に残ったのかもしれない。

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