よみがえる半魚人


データ

脚本は田口成光。
監督は外山徹。

ストーリー

休暇を利用して北海道に旅行するゲンたち。
4人はフェリーの甲板で北海道の食べ物の話をして盛り上がる。
その夜、ある漁村で釣りをしていた釣り人が半魚人を釣り上げてしまう。
慌てて木の棒で叩きのめす釣り人。
翌日、北海道に着いたゲンたちは海水浴客が少ない辺鄙な浜辺に来ていた。
「ここまで来たら海は空いてる」とゲン。
「でも、海岸に人がいないと、なんだか海水浴場の雰囲気が出ないわ」と百子。
すると、釣りをしようとしていたカオルとトオルが貸しボート屋の主人に捕まえられる。
「この村に来たからにはこの村の掟に従ってもらう」と主人。
主人によると、盆の間に殺生すると海坊主が出るという伝説があると言う。
現に海坊主の祟りで鮭がほとんど捕れなくなったという。
「心配ないよ、おゝとりさんはMACの隊員なんだよ。海坊主なんかイチコロだよ」とトオル。
それを聞いていた和夫という少年は、ゲンに海坊主が出たら倒して欲しいと頼む。
そこへ現れた主人。
「お前なんでそんなこと聞きに来たんだ。お前とこの父ちゃん漁をしてるんだな」と主人。
違う、と逃げ出す和夫。
すると天気が急に悪くなり、雷とともに浜辺に倒れていた海坊主が復活する。
「父ちゃん、海坊主だ。俺見たんだ浜で」。
「海坊主がこの世にいるはずがない。海坊主は俺が夕べ」と和夫の父。
夕べ海坊主を釣り上げたのは和夫の父であった。
逃げ出す和夫。
海坊主は和夫の父と母を襲い、殺してしまう。
それを見た和夫は助けを呼ぶ。
助けに向かうゲン。
しかし村人は誰も助けに行こうとしない。
間一髪で和夫を助けるゲン。
海坊主はゲンに撃退され海に帰る。
MACの調査によると、100年前にも同じような事件があったという。
「これはボーズ星人のものに間違いない」とダン。
そこへゲンがやってくる。
ゲンはダンに村人が誰も和夫を助けようとしなかったこと、和夫に同情しようとしなかったことを訴える。
しかしダンは、「村の掟だ」と言い放つ。
「ゲン、お前は星人を逃がしてしまったんだぞ。お前がやらなければならないことはただ一つだ。星人を倒すことに全精力を注ぎ込むんだ」とダン。
MACの調査で足跡が100年前のものと一致することがわかる。
MACの潜水艇で海底を調査するよう進言するゲン。
「いかん。村人たちの反感を買うような方法は避けるんだ。星人は100年以上もここに住み着いて村人の心の中に入り込んでる。いきなり現れた我々を信じ込ませることの方が無理というもんだ」とダン。
「奴は伝説を隠れ蓑にして、100年もの間村々を騙し続けてきたんだ。何て卑怯な奴だ」とゲン。
海岸のパトロールを強化して立ち入り禁止にするように指示するダン。
一方和夫はヤスを研いで、海坊主を倒すと意気込む。
ボートを海に出す準備をする主人夫婦。
「お父さん大丈夫かねえ」と妻。
「私たちは魚を捕るわけじゃないから」と主人。
そこへ海坊主が現れた。
必死に助けを呼ぶ主人。
その声を聞き、助けに駆けつけるMAC。
ゲンたちの活躍で海坊主は撃退したものの、妻は命を落としてしまった。
MACに妻の敵を取ってくれと頼む主人。
そこへ現れたダン。
ダンは「星人は再び現れる。大至急住民を避難させるんだ」と指示する。
「星人は今度は巨大化する。お前のためにもMACのためにも失敗は許されん。俺について来い」とゲンを連れ出すダン。 鞭を振るってゲンを特訓するダン。
星人の手の鞭の攻略法を伝授する。
巨大化した星人出現の報を受け出撃するMAC。
レオに変身するゲン。
レオは星人の鞭を受け止め体に絡ませると、手刀で星人の手を叩き斬った。
そして星人の体を回転させ、星人を頭から投げつける。
白骨化して最期を遂げる星人。
「父ちゃん、母ちゃん。レオが敵を取ってくれたんだよ」と和夫。
「伝説がなくなってしまうのは寂しいけど、安心して暮らせるようになった」。
ゲンに礼を言う主人。
和夫は主人が引き取って育てるという。
「和夫さんには新しいお父さんが出来たのね」。
羨ましがるカオル。
「僕たちにもお父さんとお母さんがいるじゃないか」とトオル。
「嫌だあ。おゝとりさんがお父さんだなんて」とカオル。
フェリーで帰る4人に手を振る和夫。

解説(建前)

ボーズ星人は何者か。
ゲンによると伝説を利用して村人を騙していたということだが、正直そこまで知能があるようには見えない。
単に宇宙から飛来して海に住んでいただけと考えるのが妥当であろう。
ボーズ星人がどれだけ村に損害を与えていたかはわからないが、他に仲間はいないようなので、そこまで漁民に打撃を与えたとは思えない。
自分を叩きのめした和夫の父以外の村人を殺害したことから成敗されても仕方はないが、ちょっと気の毒な点があることも確かである。

何故盆に殺生すると海坊主が現れるのか。
霊が帰ってくるからというのは宇宙人には関係ないので、実際はそれほど関連性はないと思われる。
伝説ということから、おそらく100年前に現れた時が丁度盆であったのであろう。
もしかすると盆の期間、海水の温度や潮の流れで比較的浅い海域に星人が移動するためとも考えられるが、こういう伝説の類はそこまで科学的根拠があるものとは言えず判断は難しい。
ただ冬場は冬眠してる可能性もあり、夏に上陸しやすいというのはあるとは思う。

感想(本音)

地味だけど筋は通ってる話。
ただロケものはやはりウルトラでは鬼門。
どうしてもスケール感の乏しさは否めないだろう。
ウルトラでは巨大な怪獣が街を壊すのが醍醐味の一つ。
予算不足のレオはそもそもその点で足りなかったのだが、浜辺でボーズ星人とゲンが格闘するのはアクションの良さはともかくとして、ウルトラシリーズ的にはやはりガッカリ感は残る。
着ぐるみの場合、等身大だとちゃちさもさらに強調されるので、等身大星人の多用が視聴率の低迷の一要因になった可能性は高いと思う。

今回は初の北海道ロケ。
北海道で海水浴はどうかと思うが、別に百子さんの水着シーンはなく釣りがメインだったよう。
ただ宿を取っていた風もなく、何故あの村を選んだのかよくわからない。
そもそも交通手段は何だったのか。
この辺り御都合主義と言われても仕方ないであろう。

4人が船の甲板で遊んでるシーンは、タロウ12話を思い出させた。
タロウでは九州ロケだったので、今度は北海道なのだろうか。
エースは中国地方だったので、少しずつ移動距離が大きくなっている。
今回は夏休み中のオンエアなので、旅行も違和感ない。
両親を失った2人を旅行に連れて行くのは、2人の親代わりになろうというゲンと百子の決意の表れであろう。
まあ、子どもをだしに2人で旅行という野望もあるのかもしれないが、子ども向け番組なのでそこまで考えてはいけない。

ボーズ星人の造型は半魚人そのまま。
わかりやすいといえばわかりやすいが、狼男、ドラキュラ、半魚人とちょっとストレートすぎる。
正直こういうキャラものは連続すると飽きが来る。
シリーズという括りは悪くないが、もう少し普通の作風の話も折り込んだ方がいいのではないか。
昔話シリーズ、円盤生物シリーズにもいえるが、初期の特訓編も含めレオはシリーズものに頼りすぎる傾向があり、ネタ切れ感が否めない。
タロウでやり尽くしたのもあろうが、視聴率が低迷してなくてもこれ以上シリーズを続けるのは難しかったと思う。

今回気になったのは、村民の冷たさ。
まあ、海坊主なんか出たら誰でも戦いたくはないが、それにしてもちょっと伝説を恐れすぎ。
100年前に出ただけにしては異常だった。
これはやはり100年前に相当被害が出たのであろう。
巨大化までしたかは謎だが、ボーズ星人は切れたら手をつけられない粗暴さというものを持っているように思われる。

今回ダンは、村の掟を守ることをゲンに要求している。
これは以前にもあったが、地球では地球のやり方が、村にはその村のやり方があるということだろう。
基本的にウルトラ一族は地球の生活に馴染んでおり、これは暗黙の了解となっている。
ハヤタもバルタン星人に地球のやり方に従うならば移民を認めると言っており、宇宙人の間の共通のルールとしてその星のやり方に合わせるというのがあるのであろう。
そういう意味ではボーズ星人は移民のルールに反している。
とはいえ、バルタンは結局問答無用で虐殺されていることから、その星のルールに従えば良いというものではなさそうであるが。
まあ、バルタンの件に関してはいつかウルトラマンの項で。

今回結構一般人に被害者が出ている。
描写があっさりしてたのでそれほど気にはならなかったが、この辺りはレオらしいといえるであろう。
両親を失った和夫があまり落胆してないとか、葬式はどうなったとか突っ込みどころはあるが、この辺りはお約束の部分もあるので言っても仕方あるまい。
最後、妻を失ったボート屋の主人に引き取られるというのはウルトラらしいオチではあった。

今回の特訓は比較的あっさり。
しかも珍しくダンが実践してくれるわかりやすいものだった。
おそらくそもそもそれほど難度が高い技ではないのであろう。
特に苦労することなく技を身につけており、特訓の比重の低下というものを物語る。

しかしダンはボーズ星人を何故知っていたか。
というか、何故それを知ってることに隊員は疑問を抱かないのか。
これはやはりダンがウルトラ警備隊で数多くの宇宙人と戦ってきたという事実を隊員たちが知っているためであろう。
キュラソ星とも親交があるし、デカレンジャーの世界みたいに宇宙犯罪者リストみたいなものも作られていたのかもしれない。
いずれにせよダンしか知らない星人も多く、一般隊員たちに星人の情報はあまり行き渡ってはいないようだ。

今回の話は伝説と怪獣(星人)を結びつける如何にもウルトラらしい話。
ただウルトラマンのアントラー編やウー編でなされたような、伝説や怪獣そのものの掘り下げというものはあまりなされていない。
同じ田口氏でもバルダック星人編では星人の侵略意図が明白であった。
その点、このボーズ星人はキャラとしてほとんど中身がないといっても過言ではないであろう。
結局、海坊主伝説は単にフォーマットを展開させるための小道具でしかないのである。
この辺り正直やっつけ感は否めない。

また釣り上げたボーズ星人を棒で殴って気絶させるシーンはタケチャンマンのコントでも見てるような気になる。
もちろんレオの方が古いのでそれに影響されたということはないが、ボーズ星人があまりにも魚なのでパッと見かわいそうである。
一応伝説があるので海坊主が悪役ということはわかるが、穿った見方をすれば村人が魚を虐待してるだけとも取れるであろう。

和夫が襲われても誰一人助けようとしない住民たち。
和夫を引き取ったおじさんが改心してるのはわかるが、他の住民は結局最後まで出てこなかった。
まあ、単に予算の都合で少人数でドラマを展開した結果そうなっただけかもしれないが、人間の冷たさというものを底辺に感じさせるのは田口作品独特のものである。
理不尽な伝説でもそれを尊重しなければならないという閉鎖性。
制作側がそれを意図したか否かは不明だが、和夫とおじさんの心温まるラストに比して重い印象が残るのはレオのそういう作風が本話にも表れてるからであろう。

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