狼男の花嫁


データ

脚本は田口成光。
監督は山本正孝。

ストーリー

満月の夜、女性が襲われて血を吸われるという事件が多発する。
スポーツセンターの猛は女子大生冴子の体操の特訓に付き合っていた。
冴子は風車という大技を成功させ、猛と2人で喜びを分かち合う。
それを見ていたゲンも技の成功を祝福する。
「冴子さんの家は確か三月市だよね」とゲン。
MACでは若い女性が襲われた事件について会議をしていた。
今度の被害者は三月市に住む女性で、体内に血液が一滴も残っていなかったという。
目撃者はいないが声を聞いたものによると、狼のような声がしたという。
ダンはウルフ星人の仕業ではないかという。
ウルフ星人は普段人間の姿をしてるが血が切れると狼の姿に戻ってしまうという。
ゲンは冴子たちの練習している体育館を訪れ、夜間の外出は危険だと注意する。
その時外から怪しい声が。
外へ出たゲンはウルフ星人を発見し銃を撃つ。
さらに星人と格闘するゲン。
「かなりの出血をしているはずだ、そう遠くまでは逃げられまい」とゲン。
その夜冴子が家に帰るとウルフ星人の声が。
星人に襲われる冴子。
冴子は血を吸われて気を失う。
さらに星人に体を乗っ取られる冴子。
冴子はそれを見ていた母親に
「お母さん、人を呼ぶのは止めて。私は狼男のお嫁さんになったの」と言う。
翌日付近を捜索するゲン。
その夜冴子の屋敷の前を通りかかったゲンは、母親が冴子の仲間を追い返すのを見て怪訝に思う。
近くで悲鳴を聞いたゲンは現場に駆けつける。
しかし星人は冴子の技である風車を使ってその場を逃走した。
冴子の屋敷を訪れたゲンは冴子の服に血が付いてるのを発見。
冴子にそれを問い質すが冴子は針が刺さったという。
しかし針なら左手に刺さるはずだとゲン。
何をしに来たのかと母親に問われたゲンは
「僕は狼男を追ってきたんです。狼男の技は冴子さんの風車と同じものです」。
冴子を同行しようとするゲンに掴みかかる猛。
猛は冴子とは幼馴染であり、ゲンを追い返す。
基地に戻ったゲンはダンに狼男を取り逃がしたことを咎められる。
「その女性が本当に狼男だという確認はまだ取れてないんだぞ。迂闊に決めるものではない。お前のそのやり方が猛君やその女性をどれだけ傷つけたか考えてみろ」。
「お前だっていきなり百子さんが狼男だと言われたらどうする」とダン。
「迂闊でした」とゲン。
「昼間狼男が出ないという保証はない」。
霧島家の見張りをしている白川隊員と交代するよう命じるダン。
「風車は風がなければ回らない。勝負は風を受ける前の一瞬だ」とダン。
その頃猛は部屋に閉じこもる冴子が苦しんでるのを発見する。
カーテンを開ける猛。
しかし日光を浴びると冴子は苦しみだした。
そこへ母親が現れ猛を追い出す。
「冴子は病気なんですよ」と母親。
「かわいそうな冴子、お母さんが付いてますからね」。
冴子の手が狼に変わる。
「今度見つかったらお前は殺されてしまう」。
冴子に血を飲ませようとする母親。
しかし冴子は母親の血を飲もうとしなかった。
「お母さんじゃ、歳を取ってるから駄目なのね。若い女の人じゃないと駄目なのね」と母親。
「大人になったら猛さんのお嫁さんになると言っていたのに、それももう駄目なのね」。
部屋の外からそれを聞く猛。
中から唸り声がするのを聞いてドアをこじ開ける猛。
部屋に入った猛だったが冴子は一足先に部屋を出ていた。
見張りをしていた白川隊員を襲う星人。
「撃たないでくれ」。
星人を庇う猛。
しかし駆けつけた隊員たちに銃で撃たれた星人は巨大化する。
マッキーで攻撃するMAC。
猛は星人の足下へ行きMACに攻撃を止めるよう叫ぶ。
しかし星人は飛び上がり風車のように回転を始める。
その勢いでマッキーは撃墜。
それを見たゲンはレオに変身。
MACロディを救出したレオは、星人と格闘する。
レオに噛み付く星人。
牙をへし折ったレオはその牙を星人に投げつける。
風車を使おうとする星人。
しかしエネルギー光球でそれを阻止。
最後はレオキックで星人を破壊する。
駆けつける猛の前には無残な姿になった星人の亡骸が。
「冴子さん」。
泣きじゃくる猛。
しかしその時奇跡が起きた。
獅子座から放たれた光により蘇る冴子。
冴子の無事を喜ぶ猛。
それを笑顔で見守るゲン。

解説(建前)

冴子は何故生き返ったか。
獅子座から光が放たれたように見えたことからレオが何らかの特殊能力を使ったことが考えられるが、果たしてレオに死者を復活させる能力があるのか疑問が残る。
これはやはり冴子はそもそも死んでいなかったと考えるのが妥当であろう。
すなわち冴子は最初は体を乗っ取られていたが、星人が元の姿に戻ったときには仮死状態で星人の体内に封印された。
その後星人は巨大化するが、冴子自身は等身大のままであったことから星人の爆破によるダメージは回避できたのであろう。
結局レオは星人の体内に閉じ込められていた冴子を解放しただけだと思われる。

白川隊員がウルフ星人のことを知っていたのはなぜか。
これはやはり以前にも同様の事件があったと考えるのが妥当であろう。
ウルフ星人は活動に周期があるものと考えられる。
活動していない期間の動向は謎だが、活動期にはこのような事件を頻発するものと思われる。

ウルフ星人の乗り移った冴子は何故日光に苦しんだのか。
星人は巨大化したあと平気で太陽の下で戦っていたので、これは女性に乗り移っている時だけ現れる症状だと思われる。
憑依状態ではエネルギーの消耗を抑えるため暗いところにいるのではないか。
外で力を発揮するにはある程度血液が必要なのであろう。
巨大化はMACの攻撃を受けてやむを得ず変身したものと思われる。

感想(本音)

何ともホラーチックなお話。
雰囲気がちょっと怪奇大作戦ぽい、今までとはかなり毛色の違う話である。
例えば冒頭の女性が襲われるシーンなど、あまり知らない人が見るとちょっとアダルトなシーンかもしれない。
ただこういう人間でも起こせそうな犯罪を引き起こす宇宙人というコンセプトはツルク星人から引き継いでおり、そういう意味ではレオらしい話といえよう。

今回は猛の幼馴染冴子が話の中心である。
冴子は風車という大技をこなすほど優れた体操選手であるが、それがゲンに疑われる原因になるという展開はある意味常道である。
そしてそれに反発する猛。
猛がいつの間に屋敷にいたんだろうという疑問はさておき、自分の恋人が狼男扱いされたら怒るのは至極当然である。
ダンも言っていたように、ゲンの決め付けはかなり強引なので、その辺り軽率という言われても仕方ないだろう。

ただダンは白川隊員に見張りをさせるなど、やはり冴子がウルフ星人であると疑っていた。
まあ、若い女性隊員にその役目を押し付けるのはどうかと思うが、その辺りは抜かりはなかったと思われる。
ただ星人に襲われた白川隊員がキャーキャー逃げ回るのは、MAC隊員としてどうかと思ったが。
このシーンが目立たない白川隊員の見せ場というところに、MACのやられ役体質が出ていて面白い。

冴子が体操の演技をするシーンは思いっきり吹き替え。
まあ、当時の子どもたちはそんなこと気にしないだろうけど、大人になって見返すと、もう少しどうにかならないかとは思う。
今なら少なくとも似た体格の女性が吹き返るんだろうけど、明らかに体格のいい男性のシルエットは如何ともし難かった。
しかし冴子は相当の実力を持っており、あるいはこの後オリンピック代表に選ばれたのかもしれない。
て、あれは床運動ということになるのかな。
正直何の競技かわからないところもありますが。

今回から白川隊員以外のMAC隊員は一新されている。
白土隊員以外は結局あまり印象に残らなかったが、少しずつ従来の路線に戻そうとしているのがわかるだろう。
ただ当時の子どもたちはどれほど気にしていたのか。
私は子供の頃レオはあまり見れなかったのだが、正直MACの隊員は誰一人として覚えていなかった。
スポーツクラブの面々はそれなりに覚えていたが、結局隊員たちの扱いはあまり変わらなかったということだろう。
その隊員たちの最大の見せ場が全滅というのは、やはりMACの(以下略)。

ウルフ星人は見た目はモロ狼男なんだが、やってることは完全にドラキュラ。
まあ女性に乗り移ったりと意味不明なところはあるが、設定としてはかなり安易であろう。
そしてその着ぐるみ。
正直チープさ全開で見ていて辛いものがあった。
ほとんどブーフーウーと変わらないと思う。

今回一番インパクトがあったのは、やはりお母さんと冴子のシーン。
ウルフ星人になった娘を庇ってゲンを追い返そうとしたり、自分の血を与えようとしたり。
ちょっと異常なシーンだったが、わが子を庇う母親の異常性がよく出ていた。
これで母親が一緒になって若い女性を騙したりしたら完全にヒーロー物を逸脱するが、さすがにそれはなく母親は冴子の犯罪を止めようとしていた。
この辺りはやはり子ども向けを意識したのであろう。

今回は珍しく猛が話の中心にいた。
いつの間にこんな恋人がいたのかと思わされるが、別に猛は今まで目だってなかったので、こういう幼馴染がいても不思議あるまい。
しかし最後はハッピーエンドなのに、何ともスッキリしない気持ちが残るのは何故だろう。
それはやはり我々が猛の今後を知っているからだと思われる。
せっかく冴子が助かったのに。
昔の特撮はやはりその辺が強引というか、配慮が足りない。

今回は血の付いた地蔵の意味ありげなシーンなど演出も凝っていた。
鏡に映るウルフ星人に話しかける母親のシーンといい、やはり怪奇大作戦ぽい雰囲気は意識されていたであろう。
今回の脚本はメインライターの田口氏。
今まで粗の多い特訓物が多かったが、今回は無難にオーソドックスにまとまっている。
猛のキャラなどやや紋切り型のところも見られるが、冴子とその母親のやり取りはなかなか面白かった。
まあ、子ども受けするかといわれると怪しい気もするが、大人の視点ではこれはこれでありだと思う。
プロットなんかはそのまま今の戦隊やライダーで使えそうだし、見ると意外と楽しめるタイプのエピソードの1つであろう。

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