セブンが死ぬ時!東京は沈没する!


データ

脚本は田口成光。
監督は真船禎。

ストーリー

おゝとりゲン青年は城南スポーツクラブのインストラクター。
今日もこどもたちの前で華麗な試技を披露していた。
その頃東京の南250キロの洋上黒潮島でウルトラセブンが双子怪獣と戦っていた。
セブンは単身地球を守る任務を負っていたのだ。
双子怪獣のスピン攻撃に苦戦するセブン。
必殺技アイスラッガーも双子怪獣のスピンに弾き返されてしまう。
さらに黒雲の中からマグマ星人が飛来。
星人の右手のサーベルがセブンを襲う。
海の中で思うように動きの取れないセブン。
遂に双子怪獣に捕まり、脚を折られてしまう。
絶体絶命のセブン。
その時赤い炎に包まれウルトラマンレオがやってきた。
レオは得意のキックを星人に浴びせる。
セブンも双子怪獣と格闘。
レオの攻勢によりマグマ星人は煙幕を張り姿を消す。
引き続き、姿を消す双子怪獣。
しかしセブンはマグマ星人が去り際に浴びせた光線により立ち上がれなくなった。
そのまま変身を解除するセブン。
倒れこむダンの下へ駆けつけるゲン。
「私をモロボシダンと知って助けてくれたのか」とダン。
「あなたはウルトラセブンであり、地球の宇宙パトロール隊、MACの隊長であることも知ってます」。
「君は一体誰だ」。
「ウルトラマンレオです」。
ゲンは一月前、故郷獅子座L77星をマグマ星人と双子怪獣に滅ぼされ地球へ移住してきたとダンに告げる。
地球は故郷L77星によく似ているとゲン。
「地球は僕の第二の故郷です」。
「ゲン、君は愛する地球を君自身の手で守るんだ」とダン。
「ウルトラセブンがいるではないですか」とゲン。
ダンは「セブンはもういない」と言うとウルトラアイをかざし、セブンへの変身を試みる。
しかしウルトラアイは発火し焼け爛れてしまった。
「あそこに沈む夕陽が私なら、明日の朝日はウルトラマンレオ、お前だ」とダン。
そのときからゲンの特訓が始まった。
MACは宇宙人の侵略や宇宙船の航行の安全を守るために作られた国際組織で、その本部は宇宙ステーション内にあった。
ゲンを隊員たちに紹介するダン。
ゲンは隊長ダンの下、MACの隊員として地球を守る任務についた。
地球に戻ったゲンはスポーツクラブのメンバーにそのことを報告する。
ゲンのMAC入隊を喜ぶ、メンバーたち。
クラブの生徒カオルはゲンがクラブをやめるのではないかと心配する。
しかしゲンがMAC隊員とスポーツクラブを続けると聞いてカオルは喜ぶ。
カオルはゲンの部屋によく遊びに行き、一緒に公園で遊ぶほど仲が良かった。
その日もゲンにチューリップの花を持ってくる。
一方、黒潮島に再び双子怪獣が出現。
連絡を受け本部へ戻るゲン。
黒潮島は双子怪獣の巻き起こす津波に襲われ、沈没していた。
マッキー1号に乗り調査へ向かうMAC。
レオの能力を使い現地を調べるゲン。
ゲンはマグマ星人の仕業だと主張するが、隊員たちは星人の出来ることではないと否定する。
ゲンはもう少し調べるよう主張するがマッキーは基地へ戻る。
ダンにマグマ星人の狙いは東京だと進言するゲン。
それを聞いたダンはゲンに「人間の世界では人間のやり方でやらないといけない」と諭す。
しかしゲンは自分の力だけでマグマ星人を倒すといって聞こうとしない。
そこへ東京湾が異常潮位であるとの知らせが。
津波に襲われ、濁流に飲み込まれるビル群。
地獄絵図と化す東京。
東京に戻ったゲンはレオに変身。
単身双子怪獣に挑む。
双子怪獣に捕まり、スピン攻撃を受けるレオ。
「駄目だ、ウルトラマンレオが負ける。日本は沈没する!」とダン。
双子怪獣に挟撃され海中に投げ飛ばされるレオ。
ウルトラマンレオは地球上では2分40秒の命しかない。
立て、立つのだレオ。

解説(建前)

なぜ簡単にL77星がマグマ星人たちに滅ぼされたのか。
L77星の住人が皆ウルトラマンレオのように変身できれば、負けないと思われるので問題となる。
これはやはり変身して戦えるのが一部の人たちだけと考えるのが素直であろう。
ゲンが地球とL77星が似ていると言ってることからも、その住人も基本的に人間タイプなのではないか。
ナメック星人に戦闘タイプとそうでないタイプがおり、またサイヤ人にもスーパーサイヤ人とそうでないタイプがいるように、L77星にも変身能力があるものとそうでないものがいるのであろう。
レオが王族なのもそういう特殊能力に由来するところが大きいのではないか。
この問題については色々な説がありえるが、とりあえずそう考えておく。

ダンのウルトラアイが溶けてしまったのはなぜか。
まず前提として、ウルトラアイがセブンへの変身にどのように関わっているのかを考えることにしよう。
「ウルトラセブン」作中でダンはよくウルトラアイを盗まれて変身不能に陥っていた。
これらの描写からもウルトラアイがセブンへの変身に必須のアイテムであることが分かる。

それではウルトラアイを使ってダンはどのように変身するのであろうか。
これについても色々考えられるが、私はウルトラアイはエネルギーを集めるために必要なものだと考える。
すなわち普段から太陽エネルギーをウルトラアイに蓄えておき、そのエネルギーでセブンは変身し巨大化するのである。
しかし、今回の場合はダンに体力がないため体が拒否反応を示し、ウルトラアイを装着できなかった。
結果、集められたエネルギーが行き場をなくし、よってウルトラアイがただれてしまったのである。
ダン自らウルトラアイを溶かしたという説もあるが、私は以上のように解釈することにする。

感想(本音)

素直に楽しめる第1話という感じ。
前作タロウと雰囲気が違いすぎるのに戸惑うが、非常によくできた話だと思う。
タロウが初代のウルトラマンのように王道を行く作品なら、レオは内容こそ違えどセブンのようにハードな路線を狙った作品であろう。
そのハードさは本編にも現れている。
冬木氏の重厚なBGMに津波の大スペクタクル。
いきなり敗北するセブン。
マグマ星人に滅ぼされるL77星。
今後の展開を十分期待できる出来になっている。

まず驚かされるのが、セブンの敗北。
こどもの頃書籍を通じてこの話の概要は知っていたが、改めて見るとやはり衝撃。
これはこどもの頃見たら、軽いトラウマになったであろう。
てか、この辺りは1期、特にセブン信者には評判悪いだろうなと思う。
個人的には旧作ヒーローを貶めるのはあまり好ましくないが、ただこのようにヒーローも負けるという展開はある意味リアル。
出てくれば勝つと決まってるよりは、やはり盛り上がるのではないか。

こどもの頃は変身しないセブンに失望させられたものだが、今見るとダンがウルトラ念力や万能杖やマッキーの操作テクニックで怪獣を撃退するのは逆にカッコいい。
怪獣、宇宙人に対する知識も豊富だし、地球では地球のやり方をしないといけないと言ったり、地球は自分にとっての故郷だと言ったり、人間的な魅力もある。
「ウルトラセブン」当時のキャラからは違和感あるが、レオにおけるセブン=ダンのキャラはしっかり作られてると思う。
そして何より、レオにおけるダンは名セリフのオンパレード。
第1話の「あそこに沈む夕陽が私なら、明日の朝日はウルトラマンレオ、お前だ」というのは単純でありながら、心に食い込む内容を持ったセリフだと思う。

レオの格闘アクションは素直にかっこいい。
これはレオ演じる二家本氏の殺陣の賜物であるが、最初のセブンとの共闘だけ二家本氏はセブンに入ってたそうである。
言われてみると、セブンにしてはぶっ飛び方が派手なような。
しかし今までのシリーズでは格闘シーン自体が見所になったことはなかったので、これもレオの特徴だと思う。
ただ、レオとセブンのくぐもった声は何とかならなかったのか。
ちょっと気になってしまったぞ。

マグマ星人の特徴的なマスクはやはり気になる。
おまけに中の人の人相の悪さも手伝って、なかなかの迫力。
どっちかというとやーさん風味だが、凶悪さはよく出ていた。
そして、インパクト大なのはマグマ星人の登場の仕方。
あの雲の中から飛来するのは今までにないパターンで斬新。
手がサーベルに変形するのも良かった。

城南スポーツクラブの生徒ではカオルちゃんがやけに目立っていた。
しかしなぜ今回トオルは出なかったのだろう。
単にスケジュール上の都合か、狙ってのものか。
富永みーなさんのインタビューによると、撮影は第3話の父親とのシーンが最初だったとのこと。
とすると、やはり意図的なものであろうか。

しかし、カオルちゃんとゲンの遊ぶシーンは完全にイメージビデオというか、プロモビデオというか。
殺伐とした第1話の中の一服の清涼剤のようだった。
そして二人が遊ぶシーンで流れるのは名曲「星空のバラード」。
この曲は要所要所で流れるが、このシーンは明るいシーンでよかった。
しかしレオは前期後期OPなど、楽曲に恵まれている。
冬木氏の作るBGMも秀逸なので、サントラが欲しくなる。

MACの扱いは今までの警備隊に比べると格段に地味。
そもそもMACはゲンの仲間というよりは軋轢の存在として設定されているので、これは仕方あるまい。
本作は警備隊に二人宇宙人がいるという珍しい設定なので、力点は自然とそちらに置かれてしまう。
異文化理解までテーマに入ってると考えるのは穿ちすぎかもしれないが、第1話における「地球では地球のやり方でやらねばならない」というダンのセリフは含蓄深いものがあった。

今回は津波の映像が大迫力であった。
一部流用シーンもあったようだが、島が水没していくシーンは何気に残酷。
レオはこのように人が大量に死ぬことで有名。
しかし東京湾で津波が発生して怪獣まで暴れてたら、付近にいる人は助からないと思うぞ。
津波と同じスピードで逃げたのだろうか。
ただ大村さんの「魚だ、イカもいるぞ」は少し気を抜けるシーンであった。

ゲンはなぜダンがウルトラセブンであり、MACの隊長であることも知っていたのだろうか。
これはウルトラの星近辺で噂でも聞いたのであろう。
レオはその風貌からも、後のキングの言動からもウルトラ兄弟と何らかの繋がりがある可能性が高い。
それなりの情報網はあったと考えるのが素直であろう。

百子さんのことやダンのことなどまだまだ語るべきことが多いが、それは追々語ることにしよう。
第1話だけに設定も盛り込み、アクションもふんだんに取り入れ、贅沢な作りになっている。
当時はオイルショックの影響で制作費も減っていたそうであるが、そんなの微塵も感じさせない出来栄えだ。
これは1,2話を続きものにしたのもプラスしたのであろう。
ただ制作費の圧迫は今後の怪獣の造形などに顕著に現れる。
正直レオの怪獣の造形は行くところまで行った感じ。
中には秀逸なものもあるが、全体的な印象としてはあまり良くない。
その辺りも人気低下の一因ではないか。

本話の脚本はタロウ、レオでメインライターを務めた田口成光氏。
先輩金城哲夫氏を継ぐように、メインライターを2期連続で務めることになった。
タロウとレオは作風が正反対。
設定はスポ根やカンフー(空手)などやや安易ではあるが、田口氏の持ち味であるエンターテインメント性がよく活かされている。
金城、市川、上原などのエース級が抜けた中、これだけの作品を作ってくれた田口氏には素直に感謝したい。

本話の監督は真船禎氏。
ゲンとダンのシーンの演出や、カオルちゃんの映し方に氏独特のセンスが見られた。
真船氏はこの1,2話でウルトラシリーズを降板。
その一流の映像センスは他の監督にも影響を与えた。
2期ウルトラシリーズは一流の監督を集めたことでも知られるが、テレビ出身の真船氏の参戦はウルトラにまた新たな風を吹き込んだと思う。
ラストを飾るこの1,2話も素晴らしい出来に仕上がった。

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