ゾフィーからの贈り物


データ

脚本は久保田圭司。
監督は古川卓己。

ストーリー

ユキオ少年はある晩超獣に追い掛けられ水を浴びせられるという夢を見る。
朝起きてみると布団に超獣の形にしみが。
それを仲間に見られたユキオは寝小便小僧と馬鹿にされる。
放課後、サッカーの仲間に入れて欲しいと言うユキオに仲間達は 「おねしょする奴は仲間に入れられない」と言い、「TACをここに呼び出すことが出来たら仲間に入れてもいい」と言う。
言われたとおり「超獣が出た」とTACに電話するユキオ。
それを聞いたTACは出動しようとするが、レーダーには何も反応はなかった。
調査のため1人出かける北斗。
しかし何の異常もなく、超獣出現というのはユキオのついた嘘だと気づく。
ユキオを見付けた北斗はユキオを怒鳴りつけるが、それを聞いたユキオはお漏らしをしてしまう。
ユキオの友達のダンは、「おねしょをするから馬鹿にされているがユキオはそんなに悪い奴じゃないよ。誰かに無理矢理やらされたのではないか」と言う。
自らも9歳までおねしょをしていた北斗は「おねしょは病気の一種だ。おねしょに負けるな」とユキオを励まし元気付ける。
そしてもう嘘はつかないと約束したユキオにエースのバッジを渡した。
その頃ユキオの家ではなかなか乾かないおねしょに母親が怪訝な顔をしていた。
おねしょに効くという薬を飲んで寝るユキオ。
しかしまた超獣の夢を見ておねしょをしてしまう。
ダンにおねしょのことを相談するユキオだったが、それを聞いたダンは夢に出てくる一本杉のある湖を知っていると言う。
その湖を1人で見に行くユキオ。
ユキオがその夢と同じ湖を見てると湖から夢に出てくる超獣ドリームギラスが出現した。
ドリームギラスは飛んでくる自衛隊機と旅客機に白い液体を浴びせ両方墜落させてしまう。
それを見たユキオはすぐにTACに連絡。
しかしレーダーにはまた何も反応がない。
北斗はユキオが嘘をつくはずがないと1人アローで出掛け、湖にミサイルを撃ち込むが何も反応がない。
超獣は湖からユキオのおねしょへと居場所を移していたのだ。
警察の調査により飛行機同士がぶつかったものと聞いた北斗はパンサーでユキオの元に向かう。
バッジを取り上げ「君は友達の信頼を裏切った。そんな奴は友達じゃない」と突き放す北斗。
ユキオはショックで口が聞けなくなってしまう。
夜、北斗の部屋に来たダンは「兄ちゃん疑り深いんだな。ユキオ君すごくしょげていたぜ。許してやれよ。あいつ兄ちゃんを騙すような奴じゃないよ。兄ちゃん厳しすぎるんじゃないか」と言う。
それに対し北斗は「このままじゃユキオ君は一生嘘つきになってしまう。甘やかすと逆に駄目な奴にしてしまうよ」と言う。
「兄ちゃんの代わりにユキオ君を慰めてやるよ」とダン。
その時空から北斗に語りかける声がした。
声の主はゾフィ。
ゾフィは「弟よ。お前は過ちを犯した。少年の心を深く傷つけてしまった。お前はそれを償わなければならない。それ以外に少年の心を救う道はない」と言う。
「はい。兄さん」。
次の日、北斗は行方不明になったユキオを探しにダンとともに一本杉の湖に向かう。
橋の上にユキオを見付けた北斗は、「君の見たという超獣の存在を信じる。君の目の前で超獣を倒してやる。それが僕の償いだ」と言い、基地に超獣出現と連絡をする。
TACが来るまで待った方がいいと言うダンに「超獣を湖からおびき出す」と湖に潜る北斗。
湖の底に仕掛けた爆弾が爆発すると超獣ドリームギラスが姿を現した。
ドリームギラスは駆けつけたTACのアローとスペースを赤い液体で墜落させる。
さらに逃げるユキオとダンに赤い液体を掛けようとする。
それを見た北斗はエースに変身。
しかしエースはドリームギラスの悪臭のする白い液体を浴び苦戦。
さらに苦手の水中での戦いになり、絶体絶命となる。
その時空からゾフィが贈り物をくれた。
湖の水を蒸発させるウルトラマジックレイを投下したのだ。
水が蒸発し、地の利を取り返したエースはメタリウム光線でドリームギラスを撃破。
ユキオは声を出して大喜びする。
それ以後すっかり元気を取り戻し仲間とサッカーに興じるユキオ。
「人は誰でも過ちをおかすもの。過ちを改めることこそ大切なのだ」。
相手が少年であっても信じあうことが如何に大切かを身をもって知る北斗であった。

解説(建前)

まずドリームギラスについてであるが、例の通りヤプールの破片が生み出した超獣ということにしておこう。
それでは何故ユキオの寝小便のしみに住み着いたのか。
これはやはり超獣とユキオが何らかの関係があると考えなければならないであろう。
ユキオは寝小便をすることに強いコンプレックスを抱いていた。
そしてそのトラウマがどこかで触れ合ったヤプールの破片にでも吸い取られ超獣に取り込まれたのではないか。
破片自体はユキオのトラウマを吸い取った状態で湖に運ばれ(若しくは移動し)、水中の何らかの生物と合体し超獣化したものと考えられる。
少々強引だがありえない話ではあるまい。
これならわざわざ遠く離れたユキオの寝小便に住み着くのもわかるだろう。

夢に出てくるのはユキオ少年が無意識に、おねしょに住み着いたドリームギラスの残留思念を感知したからだと考えられる。
ユキオは目の前でエースに倒されるドリームギラスを見てドリームギラスの恐怖を払拭した。
そして自分を信じてくれる北斗の勇気ある行動を見て弱い気持ちを克服したのだ。
そんなことでおねしょが直るかはわからないが、ユキオのおねしょが心の弱さに起因しているならあながち無理とはいえないであろう。
レーダーに反応がなかったのは超獣が半分トラウマのようなものなので実体が不安定な点にあるだろう。
ワープしたり、小型化したり出来ることからもかなり特殊な超獣と考えられる。

感想(本音)

まあ正直この手の話は好きではないが、超獣自体は変わってて面白いと思う。
テーマは人と人との信頼。
それ自体は悪くない。
話も少年を信じきれない北斗という今までにないものだ。
今まで自分が信じてもらえなかった立場だっただけにもう少し信じてやった方が良かったのではとも思えるが、えてして人というのは立場が変わればこうなるもの。
そういう点では北斗の気持ちはリアルではある。
ただやはり今回も超獣にそれほど意味はない(トラウマではあるが)。
正直こういう教育的な話は苦手である。

以下ツッコミを少し。
飛行機の墜落は両者の衝突によるとの調査結果であった。
しかし白い液体を浴びたのに何の証拠もなかったのか?
それとも飛行機と一緒に炎上して証拠として検出されなかったのか。
まあどっかの県警だから調査が杜撰なのだろう。
と言うか航空事故調査委員会が正式に調べるまで結論を出しては行けないのではないか。
竜隊長少し軽率な気がする。

今回ダンはユキオ君の友達として大活躍。
ただし例の「ウルトラ6番目の弟」というセリフは一言も出てこない。
完全に普通の少年の扱いで、以後ダンが「ウルトラ6番目の弟」として活躍することはなかった(41話で少し活躍するが)。
そして気になったのが北斗を「兄ちゃん、兄ちゃん」と言っていた点。
今までは「北斗さん」だったのに、妙になれなれしい。
これは2人の絆が深まったのか、脚本家と監督がよくわかっていなかったのか。
しかし以後も「北斗さん」と言ってることから後者が正解なのだろう。
細かいことだがこういうシリーズ全体の構成に矛盾するようなことはやはり気になる(色眼鏡で見ているのもあるが)。

ユキオ君を演じていたのはヒッポリト編のひろし君を演じていた少年。
あの甲高い声で「もしや」と思ったが、前回に比べて演技が良くなっており、ちょっと見違えた感もあった。
前回の演技で見込まれたのか、今回もまた心の弱い少年の役。
まあでも最後は元気で逞しい少年になれたので、見てるこっちも何だか少し嬉しかったりしました。
TACのレーダーは相変わらず役に立たない。
しかしユキオ以外目撃者がいないとはどんな田舎だ。
ユキオから連絡があったとき隊長は何処にいたのだろうか。
隊長が簡単に基地からいなくなってはいけません。

北斗をたしなめるゾフィ。
しかしそんなことまでよく見てるな。
よほど北斗兼エースのことが気になるのだろう。
超獣がいるかどうか確かめずTACに連絡する北斗。
偶々超獣がいたから良かったものの、いなかったらどうするつもりなんだ。
信ずれば敵もいるということなのだろうか。
潜水服に爆弾と妙に準備もいい。
ただしそれで超獣がいなかったらますます少年は立ち直れなかったと思う。

エースのバッジをユキオに渡す北斗。
しかしよく臆面もなく自分のバッジを持ってるな。
商品化の許可に伴い見本としてもらったのだろうか。
北斗がエースに変身してるのは一般人なら誰でも知ってるようだから_(_^_)_。
その話はまたその時触れることにします。
エースが白い液体を浴びた時臭そうに鼻をつまむのが何とも笑える。
あれは小便なのか?
しかし水中では弱いウルトラ兄弟。
そんな豪快なことまでしなければ勝てないなんて、情けないといえば情けないであろう。
しかしゾフィは何処からマジックレイを投下したのだろう?

今回も少年中心のストーリーでエース中期お馴染みのやや教育的な話。
北斗の成長やユニークな超獣など見所もあるが、やはり全体的に甘さが目立つ。
加えてダンの扱いといい疑問点も多い。
やはりこれもウルトラに慣れてない監督と脚本家のためではないか。
もちろん脚本家はプロデューサーの意向に沿って脚本を書いており全て脚本家のせいにするのは良くないが、やはりウルトラシリーズとしてはもう少し怪獣(超獣)を中心に筋立てて欲しいものである。
始めに超獣ありき、ドラマはあくまでそれを補うもの。
この基本構図は出来るだけ守って欲しい。
この時期の話が好きな人には申し訳ないが、個人的には評価出来ないエース中期である。

エース第34話 エース全話リストへ エース第36話