きみにも見えるウルトラの星


データ

脚本は田口成光。
監督は岡村精。

ストーリー

広場で遊ぶダンたちの前に黒い雲が。
その頃TAC基地でも異常を捉え、その雲が超獣らしいことを突き止める。
はっきりするまでK地区を立ち入り禁止にする竜隊長。
北斗は山中らとK地区の警備をするが、その時救急車が来てここを通してくれるよう頼まれる。
病人が危篤と言われて禁止区域を通す北斗だったが、それを見た山中は激怒。
パンサーで直ぐ後を追跡する。
しかしその時超獣が出現。
救急車は超獣に踏み潰され大炎上した。
超獣は間もなく姿を消し、基地に帰った北斗は山中に救急車を通した件を責められる。
必死で庇う美川。
隊長は難しい判断だったと北斗に注意を促し、同じ過ちを繰り返さないように警告する。
アパートに戻る道で北斗はダンと出会い、ダンの知り合いの少女に出会う。
しかしその少女は救急車に乗ってた女性の妹で北斗にお母さんとお姉さんを返してと責め立てる。
「北斗さんはそんなに悪い人じゃないよ」とダン。
しかし北斗の心は重く沈んでいた。
家にいる北斗に基地からK地区に超獣出現の連絡。
北斗がK地区に駆けつけると、少女が自転車を取りに行くと立ち入り禁止区域に入ろうとしていた。
北斗は自分が取りに行くと少女に言うが、ダンも一緒に来ると言う。
「お前にウルトラの星が見えるか」。
「うん見えるよ」。
ダンと2人で自転車を取りに行く北斗。
しかし北斗が持ち場を離れた隙に暴走族が来て、立ち入り禁止の看板を無視して中に入ってしまった。
自転車を見つけ外に出ようとする北斗の目の前に暴走族が。
暴走族は超獣に殺され、超獣はまたも姿を消す。
基地に戻った北斗は再び山中に責められ、北斗は隊長から謹慎を命ぜられる。
一方ダンは超獣の近くへ行って自転車を取り戻した自信から、仲間に今度は超獣の爪を取ってくると豪語する。
北斗が家で考えに耽っていると、隣の香代子が訪ねてきた。
香代子は田舎から送ってきた果物を差し入れ、北斗はTACの制服が似合うと言う。
その頃K地区には三度超獣が出現。
それを見たダンは超獣の爪を取りに超獣に向かうが、ウルトラの星が見えない。
マンションにいた北斗と香代子は外から少女の声がするのを聞き、ベランダに出る。
少女はダンが超獣の爪を取りに行ったと2人に伝える。
空と地上から超獣を攻撃するTAC。
地上から攻撃していた山中は、走ってくるダンを発見する。
直ぐにダンを追いかける山中だったが、超獣の攻撃に負傷してしまった。
それを見て山中を助け出す北斗。
北斗はさらにダンも助け出し、ダンの頬をはたく。
「ウルトラの星は本当に頑張る奴にしか見えないんだ」。
「ごめんなさい」。
微笑む北斗。
涙ぐむダン。
北斗は超獣を倒すため超獣に向かっていく。
単独変身する北斗。
エースはレッドジャックに苦戦するも最後はメタリウム光線で勝利する。
超獣を倒した夕暮れ時。
北斗は山中に自分を助けてくれた礼を言われる。
また隊長も傷が治ったら戻って来いと北斗の謹慎も解かれた。
集まったTAC隊員やダン姉弟、少女の目には1番星が輝く。
しかし北斗とダンの目には別の星、ウルトラの星がはっきりと光っていた。

解説(建前)

まずレッドジャックは何者か。
ヤプールの破片から新たに誕生した超獣かそれとも元ヤプールのノラ超獣か。
同じ場所に現れたり消えたり、出現する目的も謎だし意思があるのかないのかもわからない。
判断は難しいが個人的には一応ヤプールの作った超獣の生き残りと解釈しておく。
と言うのもレッドジャックは自然界の何らかの物と結合した感じはせず、現れ方も雲から現れるというように凝っており、ヤプールが以前から仕込んでいたと考えるのが素直だからだ。
おそらく黒雲を同じところにしか発生させられず、作戦的に没になってたものと考えられる。

香代子の田舎から送ってきたと言う果物。
しかし彼女達は天涯孤独な身だったはずではと疑問が残る。
これはおそらく田舎の家族以外の知り合いから送られてきたと考えるしかあるまい。
香代子にも地元に友達がいても不思議はないので、友達の家族から送ってきたとも考えられる。
いずれにせよ、2人に田舎があったとは意外だった。

感想(本音)

ストーリー構成的にチグハグして不自然さが残る話。
個人的な推測だが、これは田口氏が夕子がいる前提で作っていた脚本をダン用にアレンジしたのではないか。
前半部と後半部が特に乖離が激しいので、おそらくそういうことではないかと考えられる。
それではストーリーを追っていくことにしよう。

まず、前半部。
これは初期にもおなじみの北斗の失敗、謹慎の話。
田口氏はヤプール以後の展開を初期に戻すことで凌いで行こうと考えてたのではないか。
必死に庇う美川隊員は夕子の代わりとも考えられる。
しかし今回の失敗は洒落にならない。
確かに超獣がいたかどうかは不明だが、危篤の母親はおそらく助かるまいから無駄な犠牲が増えることを避けるのが先決だった。
これは一発謹慎もののミスだろう。

そして中盤。
今度はダン少年が絡んで北斗は自転車を取りに行くためだけに持ち場を離れてしまう。
その結果、自業自得だとはいえ暴走族が犠牲になるはめに。
しかも自転車を取るために少年まで連れて行っている。
ここまで来ればもはや免職もののミスだろう。
さすがに本編でも謹慎を喰らうが、結局最後は勝手に出動し超獣を倒せばお咎め無しじゃああまりにも都合が良すぎる。
結局この北斗の判断ミスの話は本編ではうやむやになって終わってしまった。

そして後半。
代わりに出てくるのがダンの話。
ダンは自転車を取りに行ったことで慢心し、今度は爪を取りに行くと言って北斗や山中に迷惑をかけてしまう。
その慢心を諌める北斗。
話は少年の慢心とそれを通じて深まる2人の信頼へと移って行く。
そこにはミスをした北斗の苦悩は微塵も感じられない。

このように前半は北斗の話でありながら、後半はダンの話になっている点エース中盤を象徴する。
北斗が真の主役として描かれてないと言ったのはこういうことだ。
本作はこのように話が首尾一貫を欠いている。
少女も最後は脇にやられていたし、何とも消化不良で終わった。
ダンがいなければ、北斗と少女の交流がメインで描かれていたのかもしれない。
その辺り、前半が見ごたえある展開だっただけに惜しまれる。

その他ツッコミを。
ダンは転校先の友達に早くも超獣バカと呼ばれている。
しかも自らウルトラ6番目の弟を名乗ってるし。
そんなこと言ってると、また前みたいにいじめられるぞ。
何れにせよ危ない少年である。
必死で北斗を庇う美川隊員に違和感。
やっぱりそれって夕子の役目では・・・。
隊長に君ならどうすると言われて答えない今野、北斗と同じことをするという吉村。
傍から見ると、山中が悪者だがどう考えても山中が正しい。
結構子供の頃山中は悪いイメージがあったが、大人になってみると凄くいい奴なのがわかる。
この辺り、2期特有の深みかもしれない。

北斗のアパートに抜け抜けとやってくる香代子。
あそこに夕子がやってきたら、「この泥棒猫!」という展開になるのが昼メロである(なんのこっちゃ)。
香代子は北斗の部屋に結構長居してたらしい。
身の上話でもしてたのであろうか。
しかし差し入れを持ってミニスカート(これは流行りか)、しかも「制服の方が似合う」なんてエリート狙いの性悪女に見えてしまって いかん。
考えすぎですね・・・。
「北斗さんはそんなに悪い人じゃないよ、ね」と言うダン。
何とも無神経な感じがして良い(ダンは悪くないが)。
「バカー」とビンタする北斗。
田口脚本にはビンタがやたら多い。
ゴルゴダ星、篠田三郎等。
これは当時の流行りに素直に影響を受けたのでしょう。

監督について。
岡村精監督はウルトラは初登板。
気合が入ってるらしく随所に凝ったカメラワークが目立った。
おそらく真船監督や実相寺監督を意識したものだろう。
しかしあまりにも画面をクルクル回すので少々やりすぎの嫌いも。
ちょっと見てて気持ち悪くなりそうになった。
しかしダンや少女のアップは表情がよく撮れてて良い。
次回も岡村監督で同じように少女をアップで撮っていたが、その辺りかなりこだわりがあるようだ。
ただ意味ありげな表情の割りにその意味がわからないまま終わってしまったのが残念。
まあ映像的な面白さだけで特に意味はないのかもしれないが。

また今回ダンの演技が格段に良くなった。
特に北斗に殴られた後の表情は良い。
まだセリフにたどたどしさが残るが、表情はだいぶ柔らかくなったと思う。
北斗の微笑みも良かった。
この場面音楽も良かったし、じっくりダンの表情を捉えたカメラワークも良かったので、なかなかに感動できるシーンに仕上がっている。

今回、山中が命の恩人と謝り、隊長もお咎め無しでハッピーエンド とストーリー的な粗さが目立つ。
個人的にはもう少し北斗のミスを掘り下げて欲しかった。
大体、ダンを自転車を取りに一緒に連れて行くのはまずかろう。
少女も母や姉を亡くした割りに淡々としてるし、そんな事故があったにも関わらず自転車を取りに行こうとするなんて何とも不自然な感じがする。
その辺り何のフォローもないから話が破綻してるように見えるのだろう。
前半と後半で話が変わってしまった本作。
やはり後から書き換えたのが正解ではないか。
出来れば元の脚本が見たいものである。

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