全滅!ウルトラ5兄弟


データ

脚本は田口成光。
監督は筧正典。

ストーリー

光化学スモッグの街に突如現れる星人。
「地球人に告ぐ。ウルトラマンAを渡せ。さもなくばこの世の地獄を見せてやる。我らは宇宙で1番強い生き物。ヒッポリト星人だ」。
「まず、風地獄を見よ」。
破壊される街。
星人は身長200メートル。
未知なる強敵に挑むべくTACは出撃した。
「TACは勝てるのかしら」と夕子。
「人間の持つ最高の科学で戦うしかない」と北斗。
しかしTACの攻撃は星人の体をすり抜け勝負にならない。
「ウルトラマンAを出せ。俺様がAを倒してやる」。
北斗、南はAになって星人を倒すべく星人に突撃するが、指輪が光らない。
その時何処からともなく声が聞こえてきた。
「Aになってはいけない。お前達の敵う相手ではない」。
「指輪が光らないわ」と夕子。
それでも2人は星人に突撃するが、スペースごとすり抜けてしまった。
「今度私が出てきた時にはAを渡してもらおう」。
「その時はこうだ」。
Aの人形の首をへし折る星人。
星人は煙の中に消えた。
命令違反を咎める隊長。
「人間の命は1つしかないんだぞ」。
美川らは北斗のおかげで星人の秘密を知ることが出来たと言うが、隊長は2人が無事だったからそんなことが言えると一蹴する。
北斗、南はスペースで谷の方へ向かう。
「Aになってはいけないという声を聞いた」と北斗。
「もしかして私達はもうAになれないのかしら」と夕子。
「馬鹿な。じゃあ誰が一体地球のピンチを救うというんだ」と北斗。
2人は空から事故にあった車を発見する。
運転手によると、超獣が谷間に立っていてそれに衝突した。
そして子供のプレゼントのA人形の首をもいだという。
北斗は星人と超獣が同一ではないかと疑う。
そして車を調べると超獣の肉片が。
それを調べた梶は超獣の細胞ではないかと言うが断定は出来ないと言う。
北斗は同一説を主張するが、非科学的だと梶。
風を吐いたことからも梶は星人の細胞が寒天状であると推測。
細胞破壊銃での攻撃を提案する。
結局北斗の同一説は却下され、北斗はせめて人形を子供に届けたいと願い出る。
一緒に行くと隊長。
買いなおした人形を子供(ひろし)に渡す隊長。
ひろしはそれを投げつけて「Aは父ちゃんを助けてくれなかった。あんなAを早く星人に渡しちまえばいいんだ」と言う。
「地球人はもうAを必要としないんだろうか」と心の中で呟く北斗。
その頃基地にはAを渡せと電話が。
不安そうな顔の夕子。
「いっそAを渡した方が」と山中も言う。
Aを渡したら次は地球を要求するに決まっていると一喝する隊長。
「ウルトラマンAを渡せ。今度は火炎地獄を見せてやる」。
ファルコンで攻撃するTAC。
星人は手からミサイルを発射してそれを撃墜する。
Aは最後まで人間の味方だと北斗。
その時2人のリングが光った。
「光った」。
嬉しそうに言う夕子。
2人はエースに変身し星人のいる谷の方へ向かう。
「エースが逃げたぞ」と山中。
エースは谷の星人を発見し、投影カプセルを破壊。
優勢に戦いを展開するが、突如星人の姿が消えた。
すると宙からカプセルが現れエースは閉じ込められてしまう。
「残念だなA。自分で自分の最後は見れまい。貴様の最後ゆっくり見せてもらうぞ」。
「苦しめ、苦しめ。段々と死んでいくのだ」。
最後の力を振り絞って兄弟にサインを送るA。
カプセルの中は煙に包まれ変わり果てたブロンズ像と化したAの姿がそこに現れた。
サインを受けた兄弟たちは急遽地球へやって来た。
しかしそこには変わり果てたAの姿が。
嘆き悲しむ兄弟たち。
しかしその時突如空からカプセルが下りてきて、ゾフィ、初代マンを閉じ込めてしまう。
難を逃れたセブンは星人を発見し戦いを挑む。
一方、新マンは2人を助けようとブレスレットを使おうとするが、さらに現れたカプセルに捕まってしまった。
星人と戦っていたセブンも星人の力の前に敗退。
結局カプセルに捕らわれてしまう。
4兄弟の入ったカプセルは煙で充満し、やがてそこには4体のブロンズ像が。
駆けつけたTAC隊員たちの目の前にその絶望的な光景が立ちはだかった。
5兄弟の亡骸は夕日の中に立ち尽くす。

解説(建前)

「まずAになってはいけない」の声の主は誰か。
最初はA本人かと思ったが、本人が勝てないとは言わないのでやはり他の何者かであろう。
ヒッポリトの恐ろしさを知ってるAの味方とすれば、やはり次回登場のウルトラの父ではないか。
父はヒッポリトが地球に向かったという情報を何処かで掴んでたのかもしれない。
ただ相手の能力に対する細かいことまではわからないので、とりあえず警告を発した。
それを受けてAがリングを光らせなかったものと考えられる。
しかし宇宙にそれだけ名を轟かせてるヒッポリト星人は流石だ。

ヒッポリト星人は自分を我らとか俺とか言っている。
つまり仲間が他にもいると考えていいだろう。
しかしそれらしい者の存在は確認できなかった。
これはこう考えるべきではないか。
つまりあの星人の体は何人かのヒッポリトの合体では。
宇宙人ならそう考えるのも不可能ではないだろう。
まあ本国に仲間がいて、このヒッポリトはただの斥候みたいなものかもしれないが。

本作最大の謎は攻撃する投影体であろう。
これについてはほとんど理解不能である。
影が風を吐いたり、火を吹くなんて考えられないからだ。
カプセルをレンズにして火を発生させた。
遠くから気象をコントロールして風を発生させた。
じゃあ、ミサイルは?
結論として我々の科学では理解不能。
北斗の言う念動力かもしれない。

感想(本音)

子供の頃とても衝撃を受けた話の筆頭格。
とにかくブロンズ像になる5兄弟の姿は恐怖以外の何者でもなかった。
今見ても身震いします(トラウマ)。

まず本作の最大の問題点は上でも指摘した攻撃する影の謎だろう。
もうこれは異次元空間を通って攻撃だけワープしたとかそれくらいしか説明のしようがない。
田口さんはどういうつもりでこの設定を考えたのだろうか。
カプセルを使うための伏線なのかもしれないが、ただの子供っぽい謎解きを狙っただけなのかもしれない。
何れにせよこの設定が本作最大の弱点であろう。

身長200メートルの星人。
子供の頃からどう考えても星人が特別大きく感じられなかったのだが、それもそのはず。
同じ大きさの着ぐるみ着てるから当たり前です。
それに合わせてミニチュアを小さくしたりもしてないですし。
細かいですが、この辺もやや問題ありですね。

ヒッポリト星人は宇宙人であり言葉も話せるんですが(妙にべらんめえ調)、何故か超獣のように啼き声を上げたりもします。
姿も超獣ぽいですし、宇宙で1番強い生き物って宇宙人と超獣のあいの子(放送禁止か?)なんですかね。
ただ豪語してただけあって、セブンとの対戦ではかなりの実力を発揮してました。
しかしセブンの着ぐるみがぼろかったのもあって、セブンの情けないこと。
よくあっさり捕まった他の兄弟が間抜けと言われますが、まともに戦ってKOされたセブンの方がよっぽど情けないでしょう。
まあ、子供心に滅多打ちにされるセブンの姿は恐怖を増幅しましたが。

本作はいきなり光化学スモッグのニュースからそれを利用した投影体のヒッポリト星人登場。
いきなりAを渡せですからその緊迫感はかなりのものがあります。
これだけ直接的にウルトラ兄弟に挑戦を挑んできたのも初めてではないでしょうか。
しかも宇宙で1番強い生き物ですから、その自信振りは凄いものがあります。
まあ、豪語するだけあってなかなかのものでしたが。
因みにセブンを弁護すると、光速で地球へやってきた疲れもあったのでは。
ほんとのところはただの噛ませ犬なんですがね。

今回は北斗、南はAに変身できないことや、地球人に必要とされてないのではと色々悩んでます。
TACにAを引き渡せと電話が掛かってきたシーンや変身できないのではと不安になるシーンの夕子の弱気な顔が印象深かったですね。
その分「光った」のシーンでは変身できる嬉しさというものが伝わってきました。
それは同時に自分達が地球人に必要とされている実感であり、地球を自分達の手で守ることが出来る喜びでもあるでしょう。
この場合は北斗との関係よりも地球人との関係の方がメインだと思います。
北斗と一緒に戦えるてのも当然あるとは思いますが。

山中のAを引き渡せは何とも目茶苦茶ですが、それは次回山中の口から説明されるので次回へ。
この前後編ではひろし少年が重要な役を担ってるのですが、それも次回へ回します。
後、この前後編は音楽の使い方が良かったと思いますね。
ピピピピという効果音も効果抜群でした。

最後にウルトラ兄弟のブロンズ化について。
これは正直かなり猟奇的ですね。
変態的と言ってもいいと思います。
どことなく背徳的と言うか。
生きたままカプセルに閉じ込めブロンズ像にするなんて、今テレビでやったら大問題になるでしょうね。
はっきり言ってやり過ぎです。
しかし子供は元来こういう残酷な物は好きなもんで、妙にドキドキしたのを覚えています。
今見てもやはりそういう変態的な快感みたいなもの感じますしね。
絶対であるべき正義のヒーローが敵の奸計にハマって生きたままブロンズ像へ。
背徳的なものを感じる人結構いるんじゃないでしょうか。
て、私が変態なだけ?

ところでこの話は先代のヒーロー達に泥を塗ったとして、特に1期のファンから評判が悪いと聞きます。
個人的にはそれもわかりますが、私は昔の話とこの話はあくまで別物と捉えてるので、それほど違和感は感じません。
ウルトラ兄弟が全滅する。
巨大イベントとしてこういうのもありかなあと見返して思いました。

作品全体の感想は後編でまとめて書きます。
ただ、イベントばかり強調されるこの前後編ですが、以外にドラマとしても完成度が高いです。
ゴルゴダ篇で話を持ってかれた田口さんが綺麗にまとめてなかなかいい仕上がりになったなあと思いました。
それでは後編へ続く。

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